ヒルベルト空間

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ヒルベルト空間(ヒルベルトくうかん、Hilbert space)とは、完備内積空間、すなわち、内積の定義されたベクトル空間であって、その内積から導かれるノルム によって距離を入れるとき、距離空間として完備となるような位相ベクトル空間のことである。フォン・ノイマンが命名した。一般に、ノルムに関して完備なベクトル空間のことをバナッハ空間といい、内積から導かれるノルムを持つバナッハ空間のことをヒルベルト空間という。ヒルベルト空間について、シュワルツの不等式、三角不等式、中線定理という三つの不等式が成り立つ。

ヒルベルト空間は、関数解析学において中心的な役割を果たしており、また、物理学、特に量子力学の数学的基礎づけに深く関連している。量子力学における状態あるいは固有関数はヒルベルト空間上の正規化されたベクトルであるといえる。また、弱収束する部分列を取り出すには、関数列の有界性だけで十分である(弱コンパクト性)。

目次

[編集] 定義

内積 (·, ·)H をもつベクトル空間 H について、内積 (·, ·)H の引き起こすノルム || · ||H;

|| a ||_H = \sqrt{(a,a)} \quad (a \in H)

完備、すなわちノルム || · ||HH に定める距離 d;

d(x,y) = || x - y ||_H \quad (x,y \in H)

に関して H が完備であるならば、このようなベクトル空間 Hヒルベルト空間という。

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[編集] ユークリッド空間

標準内積を考えた n 次元ユークリッド空間 Rn (あるいは Cn)はヒルベルト空間である(Rは実数体、Cは複素数体を表す)。

[編集] 数列空間

実数a = {ai}i=1 の内、

\sum_{i=1}^\infty a_i^2 < \infty

を満たすもの全体を l 2 で表す。a + b = {ai + bi}、αa = {αai}で、和とスカラー倍が定義できるから、これはベクトル空間である。l 2 に、内積(a, b) を

(a,b) = \sum_{i=1}^\infty a_i b_i

で定めると、||a|| = (a, a)1/2 は完備なノルムになる。よって、l 2 はヒルベルト空間である。 歴史的な経緯から、この l 2 のことを(狭義の)ヒルベルト空間とよぶことがある。

この例は、ヒルベルト空間はユークリッド空間の無限次元への自然な拡張になっていることを示している。

上の実数列を複素数列にしても、内積をエルミート内積

(a,b) = \sum_{i=1}^{\infty} a_i\,\bar{b}_i

とすることにより、同じようにしてヒルベルト空間の例が得られる。

(以下にもっと重要な例を書く)

[編集] ルベーグ空間

ルベーグ二乗可積分関数の空間 L2 は内積

(f,g) = \int f(x)\overline{g(x)}\,dx \quad (f,g \in L^2)

に関してヒルベルト空間となる。

[編集] 歴史

ヒルベルト空間の概念は、ヒルベルトの第二種フレドホルム積分方程式の研究に由来する。この積分方程式の解を求める問題はある無限連立一次方程式を解く問題へと捉え直された。その解決のために、無限次元のユークリッド空間のような新たな空間が、最初のヒルベルト空間として導入された。また、フレヒトとリースがルベーグ積分を使った関数空間がヒルベルト空間と似たような幾何学的性質を持つことを示し、さらに、リースとフィッシャーがこの空間が完備でありヒルベルト空間と同型であることを証明した。

1930年代になると、フォン・ノイマンとマーシャル・ストーンの一連の研究によって、量子力学の数学的基礎づけとしてヒルベルト空間が公理化され、ヒルベルト空間上の線形作用素の理論が発展した。

[編集] 参考文献

  • 日本数学会 『岩波数学辞典(第3版)』 岩波書店、1985年。ISBN 4000800167

[編集] 関連項目