偏微分方程式

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偏微分方程式(へんびぶんほうていしき、: partial differential equation, P.D.E.)とは未知関数の偏微分を含んだ等式で表現される微分方程式のことである。

概要[編集]

微分方程式は通常多くの解を持ち、しばしば解集合を制限する境界条件を付加して考える。常微分方程式の場合にはそれぞれの解が幾つかのパラメータの値によって特徴付けられるような族を解に持っているが、偏微分方程式については、パラメータは関数値をとると考えるほうが有用である(砕けた言い方をすれば、これは解の集合がとても大きいということである)。このことは、ひどく過剰決定的な方程式系でない限りかなり一般に正しい。

偏微分方程式は、自然科学の分野で流体や重力場、電磁場といった場に関する自然現象を記述することにしばしば用いられる。これらの場というものは例えば、フライトシミュレーションやコンピュータグラフィックス、あるいは天気予報などといったものを扱うために重要な役割を果たす道具である。また、一般相対性理論量子力学の基本的な方程式も偏微分方程式である。また、経済学においても重要な概念であり、特に計量経済学において多用される。

記法と例[編集]

以下では未知関数 ψ の変数 x に関する偏微分を ψx のように表す。

\psi_x := {\part \psi \over \part x},
\psi_{xy} := {\part^2 \psi \over \part y\, \part x}.

また、特別な記述がない限り、変数は時間t3次元空間(x, y, z ) とするが、数学的には一般の次元に拡張できる。

楕円型方程式[編集]

ラプラス方程式[編集]

非常に重要で基礎的な偏微分方程式として、

\psi_{xx} + \psi_{yy} + \psi_{zz} = 0

で定義される楕円型偏微分方程式をラプラス方程式と呼ぶ。これはまた、∇(ナブラ)や Δ(ラプラス作用素)といった微分作用素を用いて

{\nabla}^2 \psi = 0, \quad \Delta \psi = 0

のようにも書かれる。ラプラス方程式の解は調和関数と呼ばれ、重力場静電場といった物理的なベクトル場のポテンシャルを与える。

ポアソン方程式[編集]

ラプラス方程式は既知の関数 f (x, y, z) に関する微分方程式

\nabla^2 \psi = \psi_{xx} + \psi_{yy} + \psi_{zz} = f(x,y,z)

に一般化される。この偏微分方程式をポアソン方程式という。これは質量の存在する重力場や、電荷の存在する静電場など、場に発生源がある場合のポテンシャルを記述する方程式である。

ヘルムホルツ方程式[編集]

次の方程式のことをいう。電磁波放射地震学音響学などで用いられる。

(\nabla^2 + k^2) \psi = 0

双曲型方程式[編集]

波動方程式[編集]

波動方程式は時間変数 t を含む双曲型偏微分方程式

\psi_{tt} = c^2 \nabla^2 \psi = c^2 (\psi_{xx} + \psi_{yy} + \psi_{zz})

のことである。この方程式は光波音波といったを記述するもので、定数 c は波の速さを示している。より身近な現象として、ひもの振動であるとか太鼓の鼓面の振動などといったものもこの方程式に従う。波動方程式の解は基本的には正弦波を重ね合わせることによって得られる。

移流方程式[編集]

移流方程式en:Advection)は速度場 u = (u, v, w )のもとでの保存スカラー量ψの輸送を記述するもので、方程式は

\psi_t+\nabla\cdot(\bold{u}\psi) = \psi_t+(u\psi)_x+(v\psi)_y+(w\psi)_z = 0

であたえられる。もし速度場 u管状ベクトル場、すなわち ∇・u = 0 ならば方程式は

\psi_t+\bold{u}\cdot\nabla\psi = \psi_t+u\psi_x+v\psi_y+w\psi_z = 0

と簡略化される。

一次元定常移流方程式

\psi_t + u\psi_x = 0

u は定数)は一般に豚小屋問題 (pigpen problem) と称される。

放物型方程式[編集]

拡散方程式[編集]

拡散方程式は与えられた領域において時間とともに変化する場を記述する放物型偏微分方程式で、

u_t = k\nabla^2\psi = k (\psi_{xx} + \psi_{yy} + \psi_{zz})

によって与えられる。ψはたとえば温度場(熱伝導方程式)や、物質の濃度場(フィックの法則)などを表す。定数 k は物質の熱伝導性や拡散係数などを示している。解は時間の増加とともに大体均一に分布するように変化し、t→∞で調和関数に近づく。

その他の方程式[編集]

以上の例はすべて、 与えられた線形作用素 A と既知関数 f によって、Aψ = f という形に表されるという意味で線型である。 重要な非線型方程式には、

などがある。

偏微分方程式の解法[編集]

線型偏微分方程式は基底関数の集合で未知関数を展開することにより一般的に解かれる事が多い(たとえば正弦波関数を使ったフーリエ級数展開など)。展開した個々の解の線形結合がもとの方程式の解である。変数分離法はいくつかの重要な特別の応用をもつ。

非線型な微分方程式には一般に通用する解法というものは存在せず、実際に多くの微分方程式がまったく解析的には解くことが出来ない。しかしながら、いくつかのタイプの方程式には使える方法というのがある。たとえば、ホモトピー原理は過少決定性の方程式系を解くための非常に強力な方法である。

ある場合には、偏微分方程式は解が、解の知られているある方程式の修正であると考えることで摂動解析によって解くことが出来る。別な方法として、単純な有限差分スキームから複雑なマルチグリッド法有限要素法に至るまでの数値解析の手法が挙げられる。 科学や工学における多くの興味深い問題は高性能のスーパーコンピュータを用いてこのような方法で解かれる。

fill in: ディリクレ-ノイマン境界、双曲的/放物的/楕円的変数分離、フーリエ解析グリーン関数

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]