実解析
数学において実解析(じつかいせき、英: Real analysis)あるいは実変数函数論(じつへんすうかんすうろん、英: theory of functions of a real variable)は、実数および実函数(実変数実数値の写像)について研究する解析学の一分科である。実数の公理的な取り扱い、実数列の収束性や極限あるいは、実函数の連続性や滑らかさに関する理論をはじめ、実一変数あるいは実多変数の実数値あるいは実ベクトル値の函数に関する初等的な微分積分学やベクトル解析、調和関数論、ルベーグ積分や函数解析学などの理論の一部を含む。
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対象範囲 [編集]
実解析は解析学の一領域であって、実数列やその極限、実函数の連続性、可微分性、可積分性や函数列といった概念を扱う研究を行う。字義の通り、実解析は実数について詳しく扱うが、しばしばこれに正と負の無限大を含めて補完数直線を想定することもある。
実数の順序構造 [編集]
実数の全体はいくつか重要な束論的性質を持つが、これは複素数にはないものである。最も重要なことは、実数の全体が順序体を成すことであり、この構造は加法と乗法が正値性を保つ。さらには、実数の間の順序(大小関係)は 全順序で、実数の全体は上限性質を持つ。これら順序集合論的性質は実解析における数々の重要な結果、例えば単調収束定理、中間値の定理、平均値の定理などを導く。
しかし、実解析において実数に対して述べられる結果は、その多くが他の数学的対象に対して一般化することができる。特に、函数解析学や作用素論における多くのアイデアが、実数全体の成す集合の持つ性質を一般化するもので、そのような一般化の例としてはリース空間や正値作用素の理論が挙げられる。あるいは、複素数列の実部や虚部を取れば実数列として実解析の範疇で扱うことができるし、作用素列は各点評価により函数列を与える。
複素解析との関係 [編集]
実数に関する性質を扱う実解析は、同様に複素数に関する性質を広汎に研究する複素解析と近しい関係にある。複素解析における微分法は正則函数を通して自然に定義されるが、その正則函数は反復微分可能性、冪級数展開可能性、コーシーの積分公式の成立など数々の有用な性質を持つ。
実解析であれば、ふつうは適用の広い可微分函数、滑らかな函数あるいは調和函数などを考えるのが自然であるが、これらは正則函数の持ついくつかの強力な性質を持たない。それでも、代数学の基本定理のような結果は、複素数の言葉で表す場合よりも簡素にすることができる。
複素函数論(複素変数解析函数論)の手法が実解析に用いられる場合もよくあり、その典型が実函数の積分の評価に留数計算を利用することである。
主要な概念 [編集]
詳細は「コーシー列#実数の構成」を参照
実解析の基礎を成すのは、有理数から実数を構成することであり、これは通例デテキント-マクニール完備化・デテキント切断若しくはコーシー列による完備化を用いることにで行われる。実解析における主要概念は、フィルター、ネット(有向点族)、実数列とその極限・収束性、函数の連続性、微分法・積分法である。また、実解析を解析学の他の領域、例えば複素解析、函数解析、調和解析などの足掛かりにすることもできるし、位相幾何学を展開する素地にすることもできるし、あるいはもっとほかの応用数学などにおける道具と見ることもできる。
実解析における重要な結果として、ボルツァノ・ヴァイエルシュトラスの定理、ハイネ・ボレルの定理、中間値の定理、平均値の定理、微分積分学の基本定理、単調収束定理などがある。
実解析における様々な概念を、実数空間から一般の距離空間、測度空間あるいはバナッハ空間やヒルベルト空間などに対して一般化することができる。
関連項目 [編集]
参考文献 [編集]
- 猪狩惺 『実解析入門』 岩波書店、1996年。ISBN 978-4000054447。
- Walter Rudin (1976). Principles of Mathematical Analysis. International Series in Pure and Applied Mathematics. McGraw-Hill Science/Engineering/Math. ISBN 978-0070542358.
関連図書 [編集]
- Nicolas Bourbaki 『ブルバキ数学原論 実一変数関数(基礎理論)1』 小島順, 村田全, 加地紀臣男訳、東京図書、1986年。ISBN 978-4489002014。
- Detlef Laugwitz 『リーマン: 人と業績』 山本敦之訳、シュプリンガー・フェアラーク東京、1998年。ISBN 978-4431707622。
- Aliprantis, Charalambos D; Burkinshaw, Owen (1998). Principles of real analysis (Third ed.). Academic. ISBN 0-12-050257-7.
- Browder, Andrew (1996). Mathematical Analysis: An Introduction. Undergraduate Texts in Mathematics. New York: Springer-Verlag. ISBN 0-387-94614-4.
- Bartle, Robert G. and Sherbert, Donald R. (2000). Introduction to Real Analysis (3 ed.). New York: John Wiley and Sons. ISBN 0-471-32148-6.
- Abbott, Stephen (2001). Understanding Analysis. Undergradutate Texts in Mathematics. New York: Springer-Verlag. ISBN 0-387-95060-5.
- Dangello, Frank and Seyfried, Michael (1999). Introductory Real Analysis. Brooks Cole. ISBN 978-0-395-95933-6.
- Bressoud, David (2007). A Radical Approach to Real Analysis. MAA. ISBN 0-88385-747-2.
- A.N.Kolmogorov,S.V.Fomin. Introductory Real Analysis. Dover Publications.
外部リンク [編集]
- real function - PlanetMath.(英語)
- Weisstein, Eric W., "real analysis" - MathWorld.(英語)