位相空間

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数学における位相空間(いそうくうかん、topological space)とは、集合に要素どうしの近さや繋がり方に関する情報(位相、topology)を付け加えたものである。この情報は関数連続性や点列収束といった概念の源といえる。ある集合に位相を与えて位相空間とみなすことを、しばしば「位相を入れる」という。位相空間論は位相空間の諸性質を研究する数学の分野である。

集合{1,2,3}における、開集合の公理を満たす部分集合の族や満たさない族の例。上二段の例はそれぞれ開集合の公理を満たしているが、最下段の例は、左側は{2}と{3}の和集合である{2,3}が入っていないため、右側は{1,2}と{2,3}の共通部分である{2}が入っていないため、どちらも開集合の公理を満たしていない。

位相空間を導入する意義[編集]

ユークリッド空間やその部分集合においては、点の間の距離をもちいて異なる点の間の近さを測ることができ、それに基づいた位相空間の構造が得られる。一般に、距離空間は最も想像しやすい種類の位相空間の例を与えているが、一方で距離空間の枠組みは柔軟性に欠ける面もある。幾何学においてはユークリッド空間(の開集合)と同相ないくつかの空間を基本的な部品とし、それらを張り合わせて得られるような空間が主な考察の対象となるが、この張り合わせはそれぞれの部品上に定まっている距離を保つとは限らない。

例えば、二次元の球面は二つの平面(二次元ユークリッド空間に同相な空間)を張り合わせることによって得られる。この張り合わせはそれぞれの平面を「ゆがめて」しまい、下の平面で考えていた距離は通常のやり方による球面の部品としての距離とは異なったものになる。

このような場合にも位相空間の商空間を考えることで、部品を張り合わせて作った空間上の位相を自然に定式化することが可能になる。

この他にも、積極的に位相空間を考える理由は存在する。無限次元ベクトル空間を扱う関数解析学の理論を見通しよく展開するにはベクトル空間に位相を入れて位相空間の一般論を用いることが必須であるし(位相線型空間)、代数幾何学で用いられるザリスキ位相は、通常、距離から定めることのできないような位相である。現在では数学の各分野において位相空間が独特の方法で応用されているが、本項目では最も一般的な部分について述べる。

定義[編集]

集合 X の部分集合からなる \tau で、条件

  1. 空集合 \emptyset および全体集合 X\tau に属す。
  2. \tau に属する集合の有限交叉はふたたび τ に属す。
  3. \tau に属する集合の任意個(無限濃度をも許す)の合併はふたたび \tau に属す。

を満足するものが与えられるとき、集合 X\tau の元を開集合とする位相いそう[1]が定まるといい、組 (X, \tau)X を台集合とし \tau開集合系とする位相空間と呼ぶ。紛れの虞が無いならば、位相空間 (X, \tau) を単に台と同じ記号 X で表したり、開集合系 \tau 自体を X の位相と呼んだりする。位相空間 X の元は、それが実際にどのような数学的対象であるかに依らず、位相空間のと呼ばれる。X の開集合の補集合は、X閉集合であるという。X の開集合でも閉集合でもあるような部分集合は X開かつ閉集合と呼ばれる(定義から明らかに \emptyset および X は必ず開かつ閉である)。X には、開でも閉でもないような部分集合が存在しうることに留意せよ。

定義から閉集合の補集合は開集合であり、開集合を定める三つの公理にド・モルガンの法則を適用することにより、閉集合の満たすべき性質が定まるが、逆にそれを閉集合の公理として開集合を定め、位相を決定することもできる。すなわち、X の部分集合族 \sigma

  1. 空集合 \emptyset および全体集合 X\sigma に属す。
  2. \sigma に属する集合の有限個の合併はふたたび \sigma に属す。
  3. \sigma に属する集合の任意個(無限濃度をも許す)の交叉はふたたび \sigma に属す。

を満たすならば、X\sigma の元を閉集合とする位相が定まるといい、\sigma を位相空間 (X, \sigma)閉集合系と呼ぶ。

この開集合系による定義と閉集合系による定義は自然同値である(つまり、開集合系から閉集合を定め、その閉集合が成す閉集合系から作った開集合はもともとの開集合と一致する。逆もまた然り)。それ以外にもこれと同値なものとして、基本近傍系や対称近傍系による方法、あるいはクラトフスキーの閉包公理と呼ばれる閉包作用素が満たすべき性質から位相を定める方法もある。

xX の点とするとき、Ax近傍とは、開集合 U であって x \in U かつ U_A なるものが存在することである。近傍であって開集合であるものを開近傍、近傍であって閉集合であるものを閉近傍という。以下が成立する。

  • 開集合はその任意の点の近傍である。逆に、この性質をみたす集合は開集合である。
  • 特に、X 自身は X の任意の点の近傍である。

位相同士の比較[編集]

一つの集合 X を位相空間とするような X 上の位相は一般に複数存在しうる。二つの開集合系 \tau_1, \tau_2 について、\tau_1 に属する集合は必ず \tau_2 にも属するという条件が成り立つとき、\tau_2\tau_1 よりも細かいといい、また \tau_1\tau_2 よりも粗いという。定義により、ある位相に関する開集合はそれよりも細かい任意の位相においても必ず開となることが保証され、同様にある位相に関して開集合とならない部分集合はそれより粗い如何なる位相に関しても開となることはないことがわかる。細かい/粗いと言う代わりに(開集合族の集合としての包含関係に関する意味で)それぞれ大きい/小さいと言ったり、少々意図が紛らわしいが(開集合であるための制約条件に関する意味で)それぞれ強い/弱いと言うこともある。

一つの集合 X 上で定義される、可能な全ての位相からなる集まりは完備束を成す。すなわち、X 上の位相からなる任意の集合 F=\{\tau_\alpha:\alpha\in\Alpha\} に対し、F交わりF の元すべての集合としての交わりによって、また F結びF の元を全て含むような X の位相すべての交わりによって、それぞれ与えられる。

簡単な例[編集]

先の 1.-3. は、ユークリッド空間開集合という(位相空間よりも先に考えられていた)概念のみたす性質を抽象化したものである。ユークリッド空間 \mathbf{R}^n において、その部分集合 U が開集合というのは、U に属する任意の点 x に対して、十分小さい正の数 \varepsilon をとると x の周りの半径 \varepsilon の開球体が U に含まれることであった。いま、このようにして定義されたユークリッド空間の開集合の全体を \tau とすると、(\mathbf{R}^n, \tau) は上の条件 1.-3. を満たす。よって、

  • ユークリッド空間 \mathbf{R}^n と、\mathbf{R}^n の開集合の族 \tau との組 (\mathbf{R}^n, \tau) は位相空間である。

もちろん、ユークリッド空間に上に述べたものとは違う方法で「開集合」の概念を定義しても、それが上の 1.-3. を満たしさえすれば、それは位相空間を定める。しかし通常の文脈でユークリッド空間と言った場合、上のように開集合を定義して位相空間と見なす。

距離空間も、はじめに述べたように位相空間の重要な例である。距離空間には距離の概念があるため、「半径 \varepsilon の開球体」という概念がユークリッド空間と同様に定義でき、したがって開集合が同様に定義できる。そして開集合の全体が上記 1.-3. を満たすことも再び同様に確かめられる。よって、

  • 距離空間は位相空間である。

ここでも、余程のことがない限り、距離空間は上に述べた方法で位相空間と見なされる。このように距離空間に開集合系を入れることによって距離空間を位相空間としたとき、この開集合系を通常の位相と呼ぶことがある。

集合上の位相の極端な例として、離散位相と密着位相がある。X を集合とするとき、Xすべての部分集合からなる位相 \mathfrak{P}(X) を考えることができる。この位相を離散位相といい、それを開集合系とする位相空間を離散空間という。また、空集合と X 自身のみからなる族 \{\emptyset,X\} も位相となる。この位相を密着位相または自明位相といい、それを開集合系とする位相空間を密着空間という。離散空間は最も多くの開集合をもち、密着空間は最も少ない開集合をもつという意味で、この二つの例は両極端である。添字集合のように通常「近さ」の概念を考えない集合に位相を入れるときは、離散空間と見なす場合が多い。密着空間はのちに述べる分離公理をほとんど全く満たさないという意味で、ユークリッド空間からあまりにも遠く、利用される機会は稀である。

なお、正の整数全体 \mathbf{N} や整数全体 \mathbf{Z} は、通常の距離で距離空間(よって位相空間)とみなせば、離散空間となる。このことから、離散空間の命名の由来を窺うことができる。

分離性を満たさない位相空間で代数学数論的に重要なものとして素スペクトルや極大スペクトルが挙げられる。これは単位的な可換環に対して自然に定義されるもので、環 \mathbf{R} のスペクトル \operatorname{Spec} \mathbf{R} は点集合としては \mathbf{R}素イデアルの集合として与えられ、その閉集合系は V(S) = \{p \in \operatorname{Spec} \mathbf{R}|\mathbf{S} \subseteq p\} (\mathbf{S} \subseteq \mathbf{R}) と書ける \operatorname{Spec} \mathbf{R} の部分集合全体によって与えられる。極大スペクトルは極大イデアル(スペクトルにおける閉点)全体からなるスペクトルの部分空間として与えられる。

特に整数のなす環 \mathbf{Z} の極大スペクトルは素数全体の集合 \mathbf{P} = \{2, 3, 5, 7, ...\} と同一視でき、その閉集合は \mathbf{P} の任意の有限部分集合および \mathbf{P} 全体としてあたえられる。

連続写像[編集]

二つの位相空間の間の写像が連続であることは、それらの開集合系を用いて簡潔に定義することができる。 位相空間 X から位相空間 Y への写像 f連続であるとは、Y の任意の開集合 \mathbf{V} に対して、その f による逆像

f^{-1}(V)=\{x \in X \mid f(x)\in V\}

X の開集合となることである。

写像 f が連続であることは次のように言い換えられる。

  • X の任意の点 xf(x) の任意の近傍 V に対して、x の近傍 U が存在して、f(U) \subset V となる。

ここで、最初の文言 「X の任意の点 x と」を除くと、

  • f(x) の任意の近傍 V に対して、x の近傍 U が存在して、f(U) \subset V となる。

という x に関する条件になるが、この条件を「f は点 x において連続である」という。つまり、写像 f が連続であることは、その定義域 X の任意の点 x において f が連続であることと同値である。 また、上の言い換えから、位相空間の間の連続写像は、実数の場合にイプシロン・デルタ論法で定義した連続関数の概念の自然な拡張になっていることが分かる。

次に挙げるものは連続写像の基本的な性質である。XYZ を位相空間として、fX から Y への連続写像、gY から Z への連続写像とする。

  • Y の任意の閉集合 F に対して、逆像 f^{-1}(F)X の閉集合である。
  • 合成 g \circ fX から Z への連続写像である。

同相写像[編集]

二つの位相空間 X および Y に対して、X から Y への写像 f同相写像であるとは、f全単射でありかつ連続写像で、しかも逆写像 f^{-1} が連続であることを意味する。このことは、写像 f によって X の点と Y の点とが一対一対応するのみならず、一方の開集合が他方の開集合に一対一対応しているということを意味する。X から Y への同相写像が存在するとき、XY とは同相であるという。定義から、同相写像の合成は同相写像であり、同相写像の逆写像は同相写像である。

たとえば、ユークリッド平面の部分空間である「三角形の周(X とする)」と「円周(Y とする)」は同相な二つの位相空間の例である。また、2つの合同な平面図形や空間図形は同相である。同相な二つの位相空間に常に共有される性質を位相的性質という。この例では、以下のような位相的性質を、実際に XY が共有している(以下では連結性の概念を用いる)。

  1. 連結である。
  2. 任意の 1 点を除いて得られる部分空間は連結である。
  3. 任意の異なる 2 点を除いて得られる部分空間は連結でない。

単位閉区間 I = [0, 1]X と同相でないし、よって Y とも同相でない。実際、IX と同相なら、上記の位相的性質 2. を持っていなければならない筈だが、I から中点 1/2 を除いて得られる部分空間は連結でないからである。 一般的に、二つの位相空間が同相でないことの証明には、一方がもち、他方がもたないような位相的性質を挙げることが有効である。 位相空間論(トポロジー)は主として位相的性質を取り扱う数学の分野である。例えば、上での XY との違いは位相空間論では本質的な差とは見なさないが、XI は本質的に異なると見なす。

収束[編集]

数列の収束と同様にして、位相空間内の点列の収束の概念を定義できる。\scriptstyle \{x_n\}_{n=1}^\infty を位相空間 X 内の点列とする。この点列が X の点 x に収束するとは、x の任意の近傍 U に対して、ある自然数 N が存在して、 n \geq N なるすべての n について x_n \in U となることである。 この収束の定義は、実数列の収束の拡張となっている。

なお、各点収束の位相を入れた関数空間など通常の点列では不十分な空間で有意義な収束の概念を定式化するために、点列の拡張である有向点列フィルターといった考え方が用いられる。このような一般化された収束の概念によっても一般の位相空間のコンパクト性や写像の連続性などを特徴付けることができる。また、収束している有向点列やフィルターの情報から空間の位相構造が復元できる。

位相空間の構成[編集]

集合には、部分集合をとる、直和をとる、直積をとる、商集合をとるといった操作がある。これに対応して、位相空間にも、部分空間をとる、直和をとる、直積をとる、商空間をとるといった操作が定義される。たとえば X が位相空間のとき、 X を集合と考えて部分集合 A をとれば、この A に自然な位相が決まり、こうしてできた位相空間 AX の部分空間という。また XY が位相空間のとき、集合の直積 X \times Y には自然な位相が定まり、こうしてできた位相空間を XY との直積空間という。

閉包・内部[編集]

以下に示す概念は、ユークリッド空間という特殊な場合に元々考えられていたものなので、その場合を想像することが理解の助けになると思われる。X を位相空間とし、A をその部分集合とする。

  • A閉包とは、次の条件を満たす X の点 x 全体の集合である:「x の任意の近傍 V に対して、VA と交わる。」集合 A の閉包を \operatorname{Cl} A または \overline{A} で表す。A の閉包 \operatorname{Cl} A に属する点を A触点と呼ぶ。
  • AX稠密な部分集合であるとは、A の閉包が X に一致することである。つまり、X の任意の点の任意の近傍が、A と交わることである。可算な稠密部分集合をもつ位相空間は可分であるという。
  • A内部または開核とは、条件「Ax の近傍である」を満たす X の点 x 全体の集合である。このとき xA内点であるという。集合 A の内部を \operatorname{Int} A または A^o で表す。
  • A境界は、A の閉包に属するが A の内部には属していない点の全体である。集合 A の境界を \operatorname{Bd} A\operatorname{Fr} A または \partial A と書く。境界に属する点を境界点という。

以上の概念について次が成立する。

  • 閉包 \operatorname{Cl} AA を含む最小の閉集合である。
  • 内部 \operatorname{Int} AA に含まれる最大の開集合である。
  • 境界 \operatorname{Bd} A は閉集合であって \operatorname{Cl} A に含まれる。
  • \operatorname{Int} A \subset A \subset \operatorname{Cl} A\operatorname{Int} A = X \smallsetminus \operatorname{Cl}\ (X \smallsetminus A)\operatorname{Bd} A = \operatorname{Cl} A \cap \operatorname{Cl}\ (X \smallsetminus A)

基本近傍系[編集]

ユークリッド平面 R^2 を位相空間と考え、その上に任意に固定した点 p を考える。p の近傍であるような R^2 の部分集合は多種多様であるが、どのような近傍 V についても、十分に大きな正の整数 n を選べば、p を中心とする半径 1/n の開円板 B(p,1/n)V に含まれる。もちろんこの開円板は p の近傍である。以上から、開円板の族 \{B(p,1/n)\ |\ n\in\mathbf{N}\} がある意味で p の近傍たちを代表していると考えられるが、このような近傍の族を基本近傍系あるいは局所近傍基と呼ぶ。

正確な定義は以下の通り。p が位相空間 X の点であるとき、p の近傍からなる族 \scriptstyle\mathcal{U}p の基本近傍系であるとは、p の任意の近傍 V に対して、\scriptstyle\mathcal{U} の要素 U が存在して、U \subset V が成立することである。

もちろん、p が決まってもその基本近傍系は一通りには決まらない。たとえば上の例では、「p を中心として軸に平行な辺をもった一辺 1/n の開正方形全体」も基本近傍系である。また、p の近傍すべてからなる族も基本近傍系である。

開基と準開基[編集]

一般に位相空間の開集合は多種多様であって、容易に制御できない。これはユークリッド平面の開集合の様子からも想像されよう。しかし、ユークリッド平面のあらゆる開集合は、(一般には無限個の)開円板の和集合として表すことができる。実際、U を開集合とすると、 U の各点 x に対して、 x を中心とする半径の十分小さい開円板 B_xU に含まれるから、このような B_x すべての和集合 \bigcup_{x\in X}B_xU に等しい。この例での開円板たちのような役割を果たすものとして開基を定義しよう。

位相空間 X の部分集合の族 \scriptstyle\mathcal{B} が位相空間 X開基かいき[2]ないし X 上の位相の開基であるとは、次の二条件が満たされることである。

  • \scriptstyle\mathcal{B} の要素はすべて開集合である。
  • X の任意の開集合 U に対して、\mathcal{B} の適当な部分集合 \mathcal{B}' をとると U = \bigcup\mathcal{B}' が成立する。

これは次のように言い換えてもよい。開集合からなる族 \mathcal{B}X の開基とは、X の任意の開集合 U の任意の点 x に対して、x \in B \subset U を満たす \mathcal{B} の要素 B が存在することである。

開基の満たすべき条件[編集]

基本近傍系が位相を定めるように、開基を指定することで位相を定めることができる。実際、「開基に属する集合の任意個の和集合」が、ちょうど開集合になっているから、開基は開集合系を復元することができる。そのとき開基 \mathcal{B} が満たさなければならない条件を述べる。

集合 X の部分集合族 \mathcal{B}X 上のある位相の開基であるための必要十分条件は以下の通り。

  1. \bigcup\mathcal{B}=X
  2. 任意の B_1, B_2 \in \mathcal{B} および任意の x \in B_1 \cap B_2 に対して、ある B \in \mathcal{B} が存在して、x \in B \subset B_1 \cap B_2 となる。

準開基の満たすべき条件[編集]

開基の条件 2. を見る限り、「勝手に」部分集合族 \mathcal{B} を与えたところで、それが位相を定めるとは期待しがたい。しかし、準開基という概念によってその制約は緩和される。位相空間 X の部分集合族 \mathcal{S}X準開基じゅんかいき[3]であるとは、集合族

\mathcal{S}'=\left\{\bigcap_{i=1}^n S_i\,\bigg|\,n\in\mathbb{N},\,S_i\in \mathcal{S}\right\}

が、つまり \mathcal{S} の要素の任意有限個の共通部分の全体が、位相空間 X の開基をなすことである。

一般に集合 X の部分集合の族 \mathcal{S}X 上のある位相の準開基であるための必要十分条件は

\textstyle\bigcup\mathcal{S}=X

が成立することである。要するに X の部分集合族がある位相の準開基であるためには、それが X被覆していればよい。たとえば、実数直線 \mathbf{R} の例でいえば、片方に無限に伸びた半開区間 (a, \infty) および (-\infty, b)(但し ab は実数)の全体は準開基をなす。

ある位相の開基は、同じ位相の準開基にもなっていることに注意する。位相空間 X が準開基(とくにそれは開基でもよい) \mathcal{S} をもっているとき、X の位相は \mathcal{S} によって生成されるという。

位相空間の分類[編集]

コンパクト性、連結性[編集]

コンパクト性とは、ユークリッド空間における有界閉集合の概念に相当するもので、一般に位相空間がコンパクトであることを定義できる。たとえば、 単位閉区間 [0,1] はコンパクトな位相空間であるが、実数直線 \mathbf{R} はコンパクトでない位相空間である。 また、連結性とは、直観的には位相空間が「ひとつながりである」 という性質である。閉区間 [0,1] は連結性をもつ(連結である)が、二つの交わらない閉区間を合併した [0,1] \cup [2, 3] という位相空間は連結ではない。

分離性[編集]

位相空間内に相異なる二点 xy が与えられたとき、その二点を分離するような開集合をとりたいことが、位相空間の議論ではしばしば生ずる。「分離する」の意味には色々あるが、一例として、x を要素とする開集合 Uy を要素とする開集合 V とを、UV とが交わらないように取りたい、という場合がある。(このようなことが常に可能な空間をハウスドルフ空間という。)より強く、位相空間内の交わらない二つの部分集合についても、一定の条件下で分離が可能であると便利なことがある。この類の「分離」が可能であると主張する性質を一般に分離公理と呼び、その強さにいくつかの段階がある。一般に、距離空間に近い位相空間であるほど強力な分離公理を満たす。なお、公理という名が付いているが、自明に成立する主張といった意味ではなくコンパクト性、連結性と同じく位相空間の一つの性質である。

位相空間 名前
T_0 コルモゴロフ空間
T_1 フレシェ空間(到達可能空間)
T_2 ハウスドルフ空間
T_{2\frac{1}{2}} 完備ハウスドルフ空間、ウリゾ-ン空間
T_3 正則空間、正則ハウスドルフ空間
T_{3\frac{1}{2}} チコノフ空間、完全正則空間
T_4 正規ハウスドルフ空間
T_5 全部分正規ハウスドルフ空間
T_6 完全正規ハウスドルフ空間

この他の諸性質[編集]

一般の位相空間についても、連続性や収束を大枠において論じることができる。しかし、当然のことながら、ユークリッド空間がもつような「都合のよい」性質がすべての位相空間で成り立つ訳ではない。個々の位相空間を取り扱うには、その位相空間がどのような点でユークリッド空間に類似し、どのような点が違うのかを明確に知っておくことが重要である。

位相空間についての性質は、上に挙げたコンパクト性、連結性などの他にも色々考えられるが、よく用いられるものの多くはユークリッド空間について成り立つ性質の一つを取り出してきたものである。このような性質の有無を知ることにより、どのような議論がユークリッド空間と並行してできるのかを識別できる。例えば局所コンパクト性とは、各点がコンパクトな近傍をもつという性質であるが、これはユークリッド空間について成り立つ性質の一つである。しかし、この性質は整数論で用いられるp-進数体 Q_p についても成立する。一方、有理数全体 Q は局所コンパクトではない。

ユークリッド空間については成立しない性質の中にも注目に値するものがあり、時として利用される。たとえば、連結な部分空間が一点に限られる空間を完全不連結というが、これはユークリッド空間にはない性質である。Q はこの性質を満たすし、また p-進数体 Q_p もこの性質を満たす。

付加構造を持つ位相空間[編集]

位相代数的構造[編集]

任意の代数系は、その代数演算が離散位相に関して必ず連続となるから、位相代数系と看做すことができる。さらに代数系が位数有限でない場合には、その代数演算が連続になるという意味で演算と両立する十分粗い位相が存在しうる(そのうちで「自然な」位相は必ずしも一通りでない)。

よく知られた位相代数系のクラスとして、位相群位相環および位相体、あるいは位相線型空間などがある。

位相順序構造[編集]

歴史[編集]

集合論の創始者ゲオルク・カントールはユークリッド空間の開集合や閉集合などについても研究したが、これが位相空間の研究のはじまりである。カントールの行ったような位相空間の古典的な研究は、点集合論と呼ばれる。その後、モーリス・フレシェはユークリッド空間から離れて距離空間において極限の概念を考察し、さらにその後フェーリクス・ハウスドルフカジミェシュ・クラトフスキらによって、次第に現代のような一般の位相空間の形に整えられていった。

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ : topology
  2. ^ : open baseopen basis
  3. ^ : open subbaseopen subbasis

関連項目[編集]

外部リンク[編集]