ポテンシャル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ポテンシャル: potential)は、直訳すると「潜在性」を意味する物理用語。

最初にポテンシャル(スカラーポテンシャル)の考え方を導入したのは、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュである(1773年)。ラグランジュの段階ではポテンシャルとは言われておらず、これをポテンシャルと呼んだのは、ジョージ・グリーンである(1828年)。カール・フリードリヒ・ガウスウィリアム・トムソンペーター・グスタフ・ディリクレによってポテンシャル論における三つの基本問題として、ディリクレ問題、ノイマン問題、斜交微分の問題が注目されるようになった。

ポテンシャル(狭義)[編集]

空間内において、空間内の各点に働くF が、当該点上のある定まった量V から、

 \boldsymbol{F} = - \nabla V ( = - \operatorname{grad} V) \qquad\cdots(1)

として求まる時、V を力Fポテンシャルと言う。上式の関係より、V は勾配におけるスカラーポテンシャルである。なお、gradは勾配\nablaナブラである。

一つの質点を考え、これが力F の作用する(力場)にあり、当該質点がdl (dx , dy , dz )だけ変位した時、その力のなした仕事dW は(以下、直交座標系を考える)、

 \mathrm{d}W = \boldsymbol{F} \cdot \mathrm{d} \boldsymbol{l} = F_x \mathrm{d}x + F_y \mathrm{d}y + F_z \mathrm{d}z

となる。(Fx , Fy , Fz )は力F の各座標成分である。ポテンシャルに関して、

 F_x = - { \partial V \over {\partial x} } , \quad F_y = - { \partial V \over {\partial y} }, \quad F_z = - { \partial V \over {\partial z} }

と表現できるなら、

 \mathrm{d}W = - { \partial V \over {\partial x} } \mathrm{d}x  - { \partial V \over {\partial y} } \mathrm{d}y - { \partial V \over {\partial z} }  \mathrm{d}z = - \mathrm{d}V

となる。

保存力[編集]

力の作用する範囲内で質点が、位置AからBへ運動する間になす仕事WA-B は、

 W_\mathrm{A-B} \, = V_\mathrm{A} - V_\mathrm{B}

となる。VA は位置Aでのポテンシャル、VB は位置Bでのポテンシャルである。この結果は、質点の動いた経路に依らない。どのような経路を通るかに関わらず、なした仕事がどの経路でも等しい場合、この時に質点に働く力を保存力(conservative force)と言う。また、保存力のみが作用する場(力場)を保存力場(conservative force field)と言う。また保存力では、質点が位置Aから出発して位置Aに戻る経路(閉じた経路)の場合、質点のなした仕事は、途中の通った道筋に関係なくゼロとなる。

このように(スカラー)ポテンシャルによる力は保存力となる。また、逆に保存力は必ずポテンシャルを伴うことが言える。

ベクトルポテンシャル[編集]

ポテンシャルエネルギー[編集]

式(1)について、F は力なので、これに関しての質量m の質点(簡単のため1質点を想定)の運動方程式は、

 \boldsymbol{F} = m {\mathrm{d}^2 \boldsymbol{r} \over {\mathrm{d}t^2}} = - \nabla V

となる。d2r /dt 2 は質点の加速度である。真中と右辺にそれぞれdr /dt をかけ、時間t で積分すると次の式を得る。

 {1 \over 2} m \left( {\mathrm{d} \boldsymbol{r} \over {\mathrm{d}t}} \right)^2 + V(\boldsymbol{r}) = \mathrm{constant}

これは、

 {\mathrm{d} \over {\mathrm{d}t}} \left( {\mathrm{d} \boldsymbol{r} \over {\mathrm{d}t} } \right)^2 = 2 {\mathrm{d}\boldsymbol{r} \over {\mathrm{d}t}} \cdot {\mathrm{d}^2 \boldsymbol{r} \over {\mathrm{d}t^2}}

及び、

 {\mathrm{d} \over {\mathrm{d}t}} V (\boldsymbol{r}) = {\mathrm{d}\boldsymbol{r} \over {\mathrm{d}t}} \cdot \nabla V(\boldsymbol{r})

から求められる。constantは時間t に関しての積分から出てくる定数である。これは積分して得られた式の左辺において、第一項が運動エネルギーであり、それと第二項のV (r )との和が一定であることを意味し、この場合、V (r )のことをポテンシャルエネルギー位置エネルギー)と呼ぶ。形式上ポテンシャルと同じ形だが、この時のV (r )のr は質点の位置であり、r = r (t )である。

参考文献[編集]

  • 日本数学会 『岩波数学辞典(第3版)』 岩波書店、1985年ISBN 4000800167 

関連記事[編集]

その他のポテンシャル[編集]