おとうと (1960年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
おとうと
Her Brother
監督 市川崑
脚本 水木洋子
原作 幸田文
製作 永田雅一
出演者 岸惠子
川口浩
音楽 芥川也寸志
撮影 宮川一夫
編集 中静達治
製作会社 大映
配給 日本の旗 大映
公開 日本の旗 1960年11月1日
上映時間 98分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

おとうと』は、1960年11月1日に公開された日本映画。併映は『鎮花祭』、11月9日より『一本刀土俵入り』と短編アニメ『リスの大逆襲』。

幸田文の同名小説(『おとうと中央公論社版)の映画化で、脚本水木洋子監督市川崑。製作・配給は大映(東京撮影所)。宮川一夫により撮影された映像は、映画初の銀残しといわれる手法で現像され、独特の映像美が施されている。

受賞[編集]

  • キネマ旬報ベストワン、日本映画監督賞、スチール・コンテスト選出。
  • 毎日映画コンクール日本映画賞、監督賞、主演女優賞、男優助演賞、女優助演賞、撮影賞、美術賞を受賞。
  • ブルーリボン賞作品賞、監督賞、女優主演賞、技術賞、ベストテン第1位。
  • 芸術祭賞、日本映画技術撮影賞、照明賞、美術賞、選奨(劇映画部門・ラボ技術=東京現像所)。
  • NHK映画賞監督賞、助演男優賞、撮影賞、ベストテン第1位。シナリオ賞。
  • 国民映画賞ベストテン第2位。
  • カンヌ国際映画祭フランス映画高等技術委員会賞。
  • 昭和35年度芸術祭参加作品。

概要[編集]

当初は松竹で企画されていたが、その後東京映画に移って田坂具隆が監督する予定があった。しかし此方も実現せず、前々から原作や、原作を基に書かれた水木洋子の脚本に感銘を受けていた市川崑の手に渡ることになる。市川は時間をかけて大映を説得して映画化にこぎ着け、映画冒頭部分に当たる脚本箇所を、水木の了承を得て変更した以外は、一切脚本を弄らないなど、敬意を表した映画作りを行った。ところが撮影終了後の完全試写の際、市川の妻で脚本家でもあった和田夏十が、映画のラストカットに劇伴がないことに異議を唱えた。市川は「音楽なしで終わった方が、姉の孤独感と、生命に対する勇気と心構えが出る」と力説したが和田は譲らず、「映画らしい素直な終わり方にした方がいい。優しく音楽を入れるべきだ」と頑なに主張したため、市川はプロデューサーに頼んで急遽、劇伴を追加収録してダビングをやり直したという。また、本作で一躍知られるようになった銀残しについて、市川は「激動の明治昭和と違い、大正時代は無風の状態だったと考え、大正という時代の空気の色を、モノクロでもカラーでもない映像で表現してみたかった」と語っている[1]1976年には、山根成之監督によりリメイクされている。その時はげんを浅茅陽子が、碧郎を郷ひろみが演じ話題になった。

あらすじ[編集]

小説家の娘であるげんは、放蕩者に身を落としている弟、碧郎(へきろう)の世話を甲斐甲斐しく焼いていた。それというのも、父の後妻である厳格なクリスチャンの義母が子供たちを冷淡に扱うからだった。げんはデパートで万引きの疑いをかけられて激昂して帰宅するが、その話を聞いた碧郎は面白がって悪友たちと窃盗に興じるのだった。しかし、ありとある遊戯に現を抜かす弟にげんは時に怒り、時に愛情をもって接する。そんな日々のなかで、碧郎は肺病を病み、再び回復することのない体になっていった。げんは病気が感染することも恐れず、碧郎のそばで生き、その傍らで眠る。弟とおのれの腕をリボンでしっかりと結びつけて。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『完本 市川崑の映画たち』、2015年11月発行、市川崑・森遊机、洋泉社、P185~192

関連項目[編集]

外部リンク[編集]