それでもボクはやってない

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それでもボクはやってない
監督 周防正行
脚本 周防正行
製作 亀山千広
関口大輔
佐々木芳野
製作総指揮 桝井省志
出演者 加瀬亮
瀬戸朝香
もたいまさこ
山本耕史
鈴木蘭々
光石研
野間口徹
大森南朋
田中哲司
正名僕蔵
高橋長英
小日向文世
役所広司
音楽 周防義和
撮影 栢野直樹
編集 菊池純一
製作会社 フジテレビジョン
アルタミラピクチャーズ
東宝
配給 東宝
公開 日本の旗 2007年1月20日
上映時間 143分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 11.0億円[1]
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それでもボクはやってない』は、2007年1月20日に公開された日本映画

周防正行による、『Shall we ダンス?』以来11年ぶりの新作映画[2]痴漢冤罪を題材に、日本の刑事裁判に疑問を投げかける社会派作品である[3][4]

2007年8月には、第80回アカデミー国際長編映画賞に日本代表作品として出品された(結果は落選)。第31回日本アカデミー賞では優秀賞の1つに選出された[5]

あらすじ[編集]

フリーターの金子徹平は、朝の通勤通学ラッシュで大混雑する電車で就職面接に向かっていた。電車から降りると、女子中学生から身に覚えのない痴漢行為を咎められ、駅員室に連行された。無実を主張する金子は、示談で済ませるという妥協案を拒み、まもなくやってきた警官に逮捕・連行され、起訴された。

少女に事実確認することもできず、目撃者の女性とも話ができない中、刑事たちは彼の弁明を信じようとしない。焦燥感に駆られて心が折れかけた徹平だが、彼の無実を信じる家族や親友、元彼女らの運動で、元判事の荒川弁護士や市民団体の助力を得て、徹平は証拠を固めて裁判で真実を明らかにしようとする。目撃者の女性を探し出し証人尋問を行う、再現ビデオを製作するなどの努力も行った。

しかし、検察の立証が不十分と考えていた若手の担当裁判官である大森判事が突如異動となり、検察寄りの室山判事が担当裁判官となったことで、裁判の行方には暗雲が立ちこめ始める。さらに、自身の部屋にあった痴漢もののアダルトビデオを提示されるなど、ますます状況は不利な立場になっていく。

地方裁判所の第一審では、懲役3か月(執行猶予3年)の有罪判決が下される。無罪判決を期待していた徹平はこれを不服として控訴を宣言する。しかし、本当に徹平は痴漢をしたのかそれとも冤罪なのか、その後の裁判がどうなっていくのか、真実が明かされないまま物語はここで幕を閉じる[2][注 1]

キャスト[編集]

主要人物[編集]

  • 金子徹平(加瀬亮) - 主人公。
  • 荒川正義(役所広司) - 徹平の主任弁護人で元裁判官。
  • 須藤莉子(瀬戸朝香) - 徹平の弁護人。当初は痴漢事件の弁護を嫌がっていた。

主人公の家族・知人[編集]

裁判官[編集]

検察[編集]

弁護士[編集]

  • 田村精一郎(益岡徹) - 徹平の母から相談された弁護士。
  • 浜田明(田中哲司) - 徹平が呼んだ当番弁護士。アティカス法律事務所所属。

警察[編集]

その他[編集]

スタッフ[編集]

受賞[編集]

2007年度の以下の映画賞を受賞する。

書籍[編集]

周防の見解[編集]

監督の周防は、東京高裁での痴漢事件の無罪判決の新聞記事を読み、自身が考えていた刑事裁判と現実の刑事裁判の違いを感じた。それをきっかけに司法関係者への取材や刑事裁判の傍聴などを行い、裁判の現実を多くの人に知ってもらいたいとして制作された[8][9]

また、人質司法については、「以前は、東京地裁は『否認していると勾留23日間』という現実があったのですが、今は否認しているからといって必ずしも勾留するわけではなく、2日ほど警察にいて、そのあと検察に送致。そこで検察官が勾留請求しても裁判所が却下するケースが増えているようです」とし(「痴漢冤罪#冤罪被害の問題点」も参照)、この年の上半期に相次いだ「痴漢被疑者による線路への逃走」に触れ「ホーム上に誰かを突き落とすことになったり、線路に飛び降りて危険な目にあったり、誰かに取り押さえられたら痴漢の犯人だという証拠を与えてしまうことになるので、絶対やらないで。今は勾留期間も短くなっているので、(身分を明かして弁護士を呼ぶなどの)ちゃんとしたプロセスを踏んでほしい」と呼びかけている[6]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 周防はこのオチにした理由について、「あれが現実だから。裁判が最後に真実を明らかにするという幻想を打ち砕きたくて、みんなに、本当に嫌な思いで映画館を出てほしかったんです。日本の刑事裁判はこれほど酷いものだということをきちんと伝えたかった」と述べている[6]
  2. ^ 徹平が保釈された際には、労い、担当刑事が不起訴だと思っていたことを伝えた。

出典[編集]

  1. ^ 2007年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
  2. ^ a b 真実はどこにあるのか?『それでもボクはやってない』瀬戸朝香インタビュー”. 株式会社イード (2007年1月16日). 2023年1月22日閲覧。
  3. ^ 犯罪学研究センター(CrimRC)おすすめシネマ No.2 「それでもボクはやってない」”. 龍谷大学犯罪学研究センター (2018年11月1日). 2023年1月22日閲覧。
  4. ^ デビューのきっかけなど語る 周防正行監督”. 中日新聞 (2021年12月23日). 2023年1月22日閲覧。
  5. ^ 第31回日本アカデミー賞優秀作品”. 日本アカデミー賞協会. 2023年1月22日閲覧。
  6. ^ a b “周防正行に聞く、痴漢に疑われたら真っ先にすべきこと”. J-WAVE NEWS (J-WAVE). (2017年6月14日). https://news.j-wave.co.jp/2017/06/post-199.html 2018年10月3日閲覧。 
  7. ^ 周防正行『それでもボクはやってない』(幻冬舎 、2007年) ISBN 9784344012738
  8. ^ 周防正行監督”. アクティオ (2021年5月18日). 2023年1月22日閲覧。
  9. ^ 「ボクはやってない」救うには 周防監督ら冤罪を語る”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞 (2019年10月11日). 2024年4月7日閲覧。

関連項目[編集]

  • 誰かが嘘をついている - 2009年10月6日フジテレビ系列にて放送された痴漢冤罪をテーマにしたスペシャルドラマ。
  • 地上波テレビでの放送・・・2008年3月1日フジテレビ系列(土曜プレミアム枠) 視聴率17.1%(東京地区)
    • ちなみに同作品の放送直前の時間帯には同局で「めちゃ×2イケてるッ!」が放送されていたのだが、この回では偶然にも同番組の人気コーナー「笑わず嫌い王決定戦」にて、2007年7月11日に痴漢容疑で逮捕され(後に不起訴)活動を自粛していた高橋健一(当時・キングオブコメディ)が復帰後テレビ初出演を果たしている。しかし、その後2015年12月26日、都内の高校に侵入して女子高生の制服や体操服など24点を盗んだとして、窃盗および建造物侵入の容疑で警視庁に逮捕された。20年前から同様の行為をしていたとの供述のもと、自宅からは制服など約600点が押収された。これにより痴漢容疑についても疑念が再燃することとなった。コンビ解散及び当時所属していた事務所を解雇されている(詳細は本人の項も参照)。
  • 府中競馬正門前駅 - 岸川駅として登場する。
  • 秦野市 - 市役所庁舎が岸川署庁舎として登場する。

外部リンク[編集]