烏枢沙摩明王

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烏枢沙摩明王(宝山寺)

烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう、うすしまみょうおう[1]: Ucchuṣma)は、密教における明王の一尊である。「烏枢瑟摩」[2]「烏芻沙摩」「烏瑟娑摩」「烏枢沙摩」とも表記される。真言宗天台宗禅宗日蓮宗などの諸宗派で信仰される。台密では五大明王の一尊である。日蓮宗では「烏芻沙摩明王」の表記を用い、火神・厠の神として信仰される[3]

概説[編集]

大威力烏枢瑟摩明王経』などの密教経典(金剛乗経典)に説かれる。

人間界との世界を隔てる天界の「火生三昧」(かしょうざんまい)と呼ばれる炎の世界に住し、人間界の煩悩が仏の世界へ波及しないよう聖なる炎によって煩悩や欲望を焼き尽くす反面、仏の教えを素直に信じない民衆を何としても救わんとする慈悲の怒りを以て人々を目覚めさせようとする明王の一尊であり、天台宗に伝承される密教(台密)においては、明王の中でも特に中心的役割を果たす五大明王の一尊に数えられる[4]

烏枢沙摩明王は古代インド神話において元の名を「ウッチュシュマ」、或いは「アグニ」と呼ばれた炎の神であり、「この世の一切の汚れを焼き尽くす」功徳を持ち、仏教に包括された後も「烈火で不浄を清浄と化す」神力を持つことから、心の浄化はもとより日々の生活のあらゆる現実的な不浄を清める功徳があるとする、幅広い解釈によってあらゆる層の人々に信仰されてきた火の仏である。意訳から「不浄潔金剛」や「火頭金剛」とも呼ばれた。

功徳[編集]

不浄を浄化するとして、密教や禅宗等の寺院では便所に祀られることが多い。

また、この明王は胎内にいる女児を男児に変化させる力を持っていると言われ、男児を求めた戦国時代の武将に広く信仰されてきた。

静岡県伊豆市明徳寺などでは、烏枢沙摩明王が下半身の病に霊験あらたかであるとの信仰がある。

伝承[編集]

『穢跡金剛霊要門』では、釈尊が涅槃に入ろうとした時、諸大衆諸天鬼神が集まり悲嘆している中、蠡髻梵王のみが天女との遊びにふけっていた。そこで大衆が神仙を使って彼を呼んだが、慢心を起こした蠡髻梵王は汚物で城壁を作っていたので近づくことが出来なかった。そこで釈尊は神力を使って不壞金剛を出現させた。金剛は汚物をたちまちに大地と変えて蠡髻梵王を引き連れてきた。そこで大衆は大力士と讃えた。

真言[編集]

  • オン クロダノウ ウンジャク - 解穢真言(ぐえしんごん) Oṃ krodhana hūṃ jaḥ[5]
    • オン・クロダナウ・ウンジャク・ソワカ (臨済宗)[1]
  • オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ

像容[編集]

烏枢沙摩明王は彫像や絵巻などに残る姿が一面六臂であったり三面八臂であるなど、他の明王に比べて表現にばらつきがあるが、主に右足を大きく上げて片足で立った姿であることが多い(または蓮華の台に半跏趺坐で座る姿も有名)。髪は火炎の勢いによって大きく逆立ち、憤怒相で全ての不浄を焼き尽くす功徳を表している。また複数ある手には輪宝や弓矢などをそれぞれ把持した姿で表現されることが多い。

五大明王の中の一尊としての造像遺例には、奈良の宝山寺の木像が見られる。江戸時代元禄14年(1701年)に、湛海により造像されたものである。

烏枢沙摩明王を祀る寺院[編集]

【曹洞宗】

【真言宗】

【天台宗】

【浄土宗】

  • 大龍寺(京都市)

【日蓮宗】

【その他】

参考文献[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 慈恩護国禅寺webページ
  2. ^ 縮刷大蔵経刊行会 編『大日本校訂 大蔵経 秘密部 閏13』、縮刷大蔵経刊行会、1937年7月、p. 78
  3. ^ *王地山本経寺(兵庫県篠山市河原町)webページ
  4. ^ この点においては、村岡空による、次のような指摘がある。”不空訳『仁王護国般若波羅蜜多経陀羅尼念誦儀軌』全一巻(大正蔵一九・五一四上)によりますと、「第一東方金剛手菩薩は威怒降三世金剛、第二南方金剛宝菩薩は威怒甘露軍荼利金剛、第三西方金剛利菩薩は威怒六足金剛、第四北方金剛夜叉菩薩は威怒淨身金剛、第五中方金剛波羅蜜多菩薩は威怒不動金剛になっています。"
    "金剛夜叉は『摂無礙経』(不空訳・大正蔵二〇・一三〇上)によりますと、「金剛夜叉は不空成就仏の忿怒。自性輪は即ち牙、是は寂静身。又、穢積金剛を不空成就の忿怒と為し、自性輪は金剛業也。穢積は即ち烏芻渋摩菩薩也。」とあります。  簡単に言いますと、自性輪身は不空成就仏、すなわち釈迦如来、正法輪身は金剛牙菩薩、すなわち摧一切魔怨菩薩。教令輪身は金剛薬叉(夜叉)明王。ですから、前述の『仁王軌』で教令輪身を威怒浄身金剛と記すのは明らかに誤りです。これは不空成就仏が自性輪身、金剛業菩薩(虚空庫菩薩)が正法輪身、穢積金剛(烏芻渋摩菩薩)が教令輪身としなければなりません。けれども、この点、天台密教ではどういうわけか、当の明白な誤りを認めずに、五大明王を指す場合、金剛夜叉明王の代わりに烏芻渋摩明王をおいています。”『不動尊』集英社,1987,p.74/p.77
  5. ^ Jørn Borup『Japanese Rinzai Zen Buddhism: Myashinji, a Living Religion』、ISBN 978-9047433095、Brill、2008年、p. 242

外部リンク[編集]

関連項目[編集]