入学試験

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2012年度の CEED の告知用ポスター [注 1]

入学試験(にゅうがく しけん。旧字体入學試驗)とは、入学志願者の中から入学を許可すべき者を決定するために実施される試験[1][2][3][4][5][6]。略して入試(にゅうし)ともいう[2][3]。また、複数の団体が試験内容と実施方法を共通させて一斉に行う入学試験は共通入学試験(きょうつう - )という。

用語[編集]

漢語[編集]

入学試験旧字体入學試驗)」は和製漢語である。実態としての入学試験は明治時代の初頭からあったが、「入学試験」という語の初出(※記録上の初)は、作家巖谷小波1889年(明治22年)に江の島の老舗旅館「金亀楼」で著した短編小説『妹背貝(いもせがい)』の「秋」に見られる「陸軍医学校の入学試験があるので」という一節[5]と考えられる。1894年(明治27年)には、尋常中学校規定の中で、学力を基準に[1]「志願者が定員を超えた際には入学試験によって選抜する」ことが定められた[4][1]。それ以来、この入学試験の結果を基準として、成績上位者から順に収容定員まで合格者を決定する方式が[4]中等以上の[1]様々な教育段階における入学者選抜方式として用いられるようになった[4][1]。同じ漢語でも中国語では「入學考試簡体字入学考试)」という。

英語[編集]

英語では entrance examination [注 2][9]といい、entrance exam [注 3][11]と略すことも多い。ただ、これらは入学に限らず、入社などでも用いられる。共通入学試験は common entrance examination といい、頭字語では CE というのが通例[注 4](※右列の画像の例[注 5]のように構成素となる場合は CEE もあり)。

受験[編集]

受験(じゅけん。旧字体受驗)」は[12]明治時代生まれの和製漢語であり、中国の漢語では「應考簡体字应考)」あるいは「應試簡体字应试)」という。いずれも「試験を受けること」を意味する。現代における代表的な受験としては、入学試験を始め、入社試験公務員試験資格試験などがある[12]。「応募して受験する」を意味する動詞は、日本語には無いが、中国語では「投考」という。「受験する生徒」を日本語では「受験生(じゅけんせい)」といい、中国語では「應考生簡体字应考生)」などという。「受験する子供」を日本語では「受験子(じゅけんし)」というが[注 6]、中国語では確認できない。

概要[編集]

入学を志願する者に対して、当該学校での教育を受けるのに必要な学力を有しているか確認するために、入学試験を実施する場合が多い。また、志願者の数が入学定員を上回っている場合は、入学試験の結果を基に選抜される場合が多い。

入学試験は、進学を目指す試験対策(受験勉強や過去問の分析)、志望校選定、教科選択、入学試験の受験といった一連の活動を伴う。人生を左右する一大イベントであるため、合格を願って寺社に参拝したり、縁起物を買い求めたりする受験生やその保護者も多い[13]

初学年の始期から新入学するための「入学試験」、初学年の始期を過ぎてから編入学転入学するための「編入学試験」や「転入学試験」、一部大学で実施される飛び入学のための「飛び入学試験」などがある。

幼稚園小学校中学校中等教育学校高等学校高等専門学校大学学部短期大学大学院専修学校各種学校省庁大学校のいずれも、入学試験を課する事例が多い。多くの国で義務教育の公立学校は入学試験を課さないが、高等学校や大学は入学試験を課している。

日本の入学試験[編集]

北野天満宮絵馬/日本の受験生の大多数にとっては神頼みも大事。受験を控えた時期には日本各地の神社で合格を祈願する絵馬を目にすることができる。「学問の神様」として有名な菅原道真を祀る北野天満宮は、受験生にとって特別意味のあるパワースポットあるいは聖地といえる。
とある私立高校[注 7]の大学入試現役合格者に関する告知用ポスター
東京大学の入学試験の合格発表日、合格者の受験番号を記したパネルの前で、見事合格を果たした受験生が在校生達に祝福され、胴上げされている。ただし、安全面を考慮して2007年(平成19年)4月のこの時を最後に胴上げは禁止された。

高校・大学の入学時には、基本的に下級学校の卒業または卒業見込(学校の最高学年に在籍者の場合のみ)が前提になる。卒業していない場合は入学資格試験を受験しなければならない場合が多い。中学校の場合は中学校卒業程度認定試験(中検、中認)、高校の場合は高等学校卒業程度認定試験(高認)の合格をもって、卒業と同等とみなされる。高校・大学では学業やスポーツなどで優れた技能を持つものを推薦入試で採用することもある。大学、大学院。専門学校では、社会人としての経歴(職歴など)を有する人に対して社会人入試を実施する学校も増加してきている。

入学試験を受けることを予定している者、及び入学試験を受ける者を受験生という。学校の最高学年に在籍中の受験生は現役生といわれ、既に学校を卒業した受験生は過年度生といわれる。また過年度生のうち、受験で不合格になったまま卒業し、翌年の合格を目指して予備校や自宅などでもう1年の準備を続けている受験生は既卒生または浪人生と言われる。なお既卒生といえばいったん就職して社会人になって受験を目指している人も指す。

入学試験は1月末から3月前半にかけての期間中に行われることが多い。中学受験等では、最近では、12月末頃から翌年1月中旬にかけての期間中に実施されることが多くなった。また、中学受験では、同じ地域の学校が同じ日に一斉に実施するのが通例である。入試は一般に午前中から行われるが、一部の中学校は午後に実施し、併願が可能な例もある[14]

大学受験等は大学入試センター試験等を除けば試験日が意図的に統一されることはないが、一般入試では私立大学は2月前半、国公立大学の前期日程では2月後半に集中することが多い。

なお、入学試験の問題は、数学の問題における数式そのもの、社会科の問題における歴史的事実そのものといった場合を除き、問題を作成した学校等に著作権が生じるとされる[15]。それにも関わらず、2019年(平成31年)には大学入試センター試験の英語リスニングテスト問題に登場したキャラクター(通称:リスニング四天王)について、試験終了直後からコラージュ画像や動画などが次々に無断で制作される事象が発生した[16]

特に、2000年代以降の日本では各高校・大学の入学試験で出題ミスや採点ミスが報道されるようになってきている。兵庫県立高校2009年(平成21年)に行われた入学試験や、大阪府立高校2013年(平成25年)に行われた入学試験では、多数の高校において採点ミスが報道された[17][18]

ギャラリー[編集]

日本以外の入学試験[編集]

中国韓国シンガポールなどといったアジア東部のいくつかの国においても、共通試験や各大学の個別試験などが大学等の入学試験として課される。学歴社会である韓国では、入試に遅刻しそうな受験者をパトカーが送るなどといった光景が風物詩となっている[19]

ヨーロッパでは、国際バカロレア資格におけるスコアを大学等の高等教育機関の入学試験の要件として課す場合が多い。

イギリス連邦イギリス本国を含む)では、一般教育修了上級レベル(通称:Aレベル)という試験を大学等の高等教育の入学試験として課している。

オーストラリアでは、Year 12 (en) と呼ばれるコースを履修し、その結果受験者に与えられる Australian Tertiary Admission Rank(en頭字語:ATAR。意訳:オーストラリア高等教育入学ランク)と呼ばれるスコアを元に大学の入学者選抜が行われる。

アメリカ合衆国では、学科試験、高校の成績と面接、各受験者の特別な才能等、大学ごとに入学者選抜が行われる。同時にアメリカ合衆国の最高水準の大学の入学許可を得るのは、受験(努力して合格する)という範疇を超えており、家柄先天的知能、天才的才能、誰から推薦状を貰っているかなどといった、先天的部分が大きく影響する(通称:グラスシーリング〈ガラスの天井[注 8])ため、トップレベルの大学への入学が困難である場合が多い。

季語[編集]

俳句において、入学試験とは「(日本で)入学に際して2月下旬から3月上旬にかけての期間中に行われる入学選抜試験[20]」を意味しており、季語(仲春の季語)[21][20]である。分類は人事/行事/生活[注 9][20]。 子季語としては、受験(入学試験〈上述の時期の入学試験〉を受けること)[21][22]受験生(受験する生徒[21][23]受験子(じゅけんし。受験する子供[21][24]受験期(受験する期間)[25]受験禍(受験によって引き起こされる禍わざわい[26]受験苦(受験によって起こる苦難)[27]合格(入学試験に合格すること)[28]不合格(入学試験に不合格すること)[29]及第(入学試験に合格すること)[30]落第(入学試験に不合格すること)[31]がある。

  • 例句 - 入学試験にふがくしけん 幼きくびみぞふかく ──中村草田男 [29]
  • 例句 - あす受験じゆけん 前髪まへがみ少しそろへやる ──酒井みゆき [32]
  • 例句 - 受験生 マントひるがへし 街頭ヘ ──山口青邨 [32]  [注 10]
  • 例句 - 受験生 呼びあひて坂下りゆく ──廣瀬直人 『帰路』(1972年)所収[33]  [32][注 11]
  • 例句 - 何見るとなき 受験子じゆけんしおほき瞳よ ──能村登四郎 [32][34]
  • 例句 - 受験期や 少年せうねん犬をかなしめる ──藤田湘子 『途上』(1955年)所収[34]  [32]  [注 12]
  • 例句 - 受験禍じゆけんくわの 子の手にうすき 菓子くわし最中もなか ──中村草田男 [32]
  • 例句 - 受験苦の 屋根にまろべる すゞめども ──村山故郷 [32]
  • 例句 - 合格がふかくいはひの母子旅ははこたびらしき ──伊藤白潮 [32]
  • 例句 - かすむ野に 子の落第を はや忘る ──相馬遷子 『雪嶺』(1969年)所収 [32]

禁句[編集]

以下の言葉は、受験の失敗を連想してしまうため、受験生への禁句とされている。

また、「勉強頑張れ!」などの言葉も、受験生に不快感を与えてしまうため禁句とされている[36]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ Common Entrance Examination for Design(en. 頭字語:CEED)は、インドにおける技術設計分野の大学院のための共通入学試験で、全てのインド工科大学 (IIT) とインド理科大学院 (IISc) で毎年実施される。試験はインド政府の人材開発省英語版に代わってインド工科大学ボンベイ校 (en. IITB) の旧インダストリアルデザインセンター (en) が主催している。
  2. ^ 日本語音写例:エントゥランス イグザミネイション、エントランス エグザミネーション。[7][8]
  3. ^ 日本語音写例: - イグザム、- エグザム。[10]
  4. ^ CECommon Entrance (examination) ]
  5. ^ CEEDCommon Entrance Examination for Design ]
  6. ^ ただし、21世紀の日本では俳句を始めとする詩歌以外で使われることはほとんど無い。
  7. ^ 東山中学校・高等学校
  8. ^ 「天に手が届くように見えて決して届かない見えざる壁」の意。
  9. ^ 歳時記によって用語が異なるが、要するに、「人が生活するなかで行うこと」を指す。
  10. ^ マントを翻しながら街灯をゆく受験生はかなり古風なイメージ。
  11. ^ 作者は高校の国語教師であり、1970年代前半の入学試験の頃の日、無事に受験し終えて母校への報告も済ませた生徒達の、すっかり緊張を解いて仲良く帰路に着く様子を、ほっとした心持ちで職員室から眺めた情景を詠んでいる[33]
  12. ^ 「かなしめる」は「愛かなしめる」を意すると同時に「悲かなしめる」でもある。漢字を使っていないのは、「かなしむ」の原義どおりにどちらも含意させているということ。この句では、受験を控えた大変な時期のやり場の無い重圧感のなかで愛犬をいつにも増して可愛がっている少年の、その心の内をおもんばかって詠んでいる。[34]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
  2. ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
  3. ^ a b 三省堂大辞林』第3版. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
  4. ^ a b c d 日立デジタル平凡社世界大百科事典』第2版. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
  5. ^ a b 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “入学試験”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
  6. ^ 桑原敏明[1]、広瀬義徳[2]、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “試験制度”. コトバンク. 2020年2月7日閲覧。
  7. ^ entrance”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年2月7日閲覧。
  8. ^ examination”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年2月7日閲覧。
  9. ^ entrance examination”. Weblio英和辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  10. ^ exam”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年2月7日閲覧。
  11. ^ entrance exam”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年2月7日閲覧。
  12. ^ a b 受験”. コトバンク. 2020年2月15日閲覧。
  13. ^ 東日本大震災 合格祈願で人気「オクトパス君」宮城・南三陸、復興のシンボル」『産経フォト』産経デジタル、2019年2月4日。2019年2月16日閲覧。
  14. ^ 【変わる進学 大学入試 新時代へ】中学受験 増える「午後入試」日程集中、同日の併願可能に」『朝日新聞デジタル朝日新聞社、2019年2月2日朝刊(第2東京面)。2019年2月16日閲覧。
  15. ^ 井奈波朋子(取材協力) (2013年12月5日). “大学入試の「過去問」 自分のサイトに無断で掲載したら「著作権侵害」になる?”. 弁護士ドットコム. 弁護士ドットコム株式会社. 2019年2月28日閲覧。
  16. ^ 岡田有花「センター試験「リスニング四天王」の衝撃 コラ画像、3D化……止まらない2次創作」『ITmedia News』アイティメディア株式会社、2019年1月21日。2019年2月28日閲覧。
  17. ^ 122校で採点ミス「意識が甘い」と教育長 兵庫県立高校入試」『産経ニュース』産業経済新聞社、2009年4月20日。2020年2月6日閲覧。Archived 2009-04-24 at the Wayback Machine.
  18. ^ 大阪府立高入試、54校採点ミス 4人の不合格取り消し」『朝日新聞デジタル朝日新聞社、2013年6月15日。2020年2月6日閲覧。
  19. ^ 崔碩栄韓国の大学入試騒ぎに見る「学歴偏重社会」」『WEDGE Infinity』株式会社ウェッジ、2016年11月22日。2019年2月16日閲覧。
  20. ^ a b c 日外アソシエーツ『季語・季題辞典』[3]. “入学試験”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  21. ^ a b c d 入学試験”. きごさい歳時記. NPO法人 きごさい(季語と歳時記の会) (2010年3月25日). 2020年2月7日閲覧。
  22. ^ 『季語・季題辞典』. “受験”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  23. ^ 『季語・季題辞典』. “受験生”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  24. ^ 『季語・季題辞典』. “受験子”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  25. ^ 『季語・季題辞典』. “受験期”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  26. ^ 『季語・季題辞典』. “受験禍”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  27. ^ 『季語・季題辞典』. “受験苦”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  28. ^ 『季語・季題辞典』. “合格”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  29. ^ a b 今月の季語(3月) 受験”. カフェきごさい. NPO法人 きごさい(季語と歳時記の会) (2013年2月28日). 2020年2月7日閲覧。
  30. ^ 『季語・季題辞典』. “及第”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  31. ^ 『季語・季題辞典』. “落第”. Weblio辞書. ウェブリオ株式会社. 2020年2月7日閲覧。
  32. ^ a b c d e f g h i 試験 の俳句”. 575筆まか勢 (2015年3月). 2020年2月7日閲覧。
  33. ^ a b 清水哲男 (2001年1月29日). “受験生呼びあひて坂下りゆく”. 新・増殖する俳句歳時記(公式ウェブサイト). 2020年2月7日閲覧。
  34. ^ a b c 清水哲男 (2000年2月27日). “受験期や少年犬をかなしめる”. 新・増殖する俳句歳時記(公式ウェブサイト). 2020年2月7日閲覧。
  35. ^ a b c d 受験のゲン担ぎは本当に効果がある!?本末転倒にならないジンクスの総まとめ‼ | 中学受験ママのお悩みあれこれ… プロ家庭教師の総合進学セミナー”. www.sougousingaku.co.jp. 2020年6月3日閲覧。
  36. ^ 『勉強頑張れ!』は禁句!受験生に言ってはいけない禁句5選と対処法を東大生が解説!” (日本語). 東大BKK(勉強計画研究)サークル (2018年7月27日). 2020年6月3日閲覧。

関連項目[編集]