学校施設

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学校施設(がっこうしせつ)とは、学校を運営する上で必要となる建築物設備を備えた施設のこと。学校施設としては、校舎運動場(屋外運動場=校庭)、体育館(屋内運動場)が挙げられる。

学校設置基準[編集]

校舎[編集]

日本県立高等学校校舎の一例
/2010年撮影。

校舎(こうしゃ)とは学校の建物のことである。

旧来の校舎はハードウェアとしての建物を意味していた。最近では「柔軟な学びの場」をキーワードに、「どこで学んだか」ではなく「何を学んだか」が重要となっている。つまり「校舎」という物理的な枠組を超えて、教育活動をする場を包括して「校舎」と考えることもある。

校舎は学校を象徴する建物である。学校の歴史は校舎に刻まれており、学校は地域の一部、校舎は街の一部であると言っても過言ではない。よって外観や内装は地域によって差が見られる。

老朽化廃校などによって校舎の建て替えや取り壊しが検討されると、地域で校舎をめぐる様々な論議が起こることはしばしばである。例えば日本公立小学校にあっては、地域住民の多くがその校舎で学んでいるため、校舎に対して特別な愛着が持たれている場合もある。また、古い校舎では当時の著名な建築家が関係していたり、著名人の随筆自伝伝記などに同施設に絡むエピソードが紹介されているなど、郷土史跡としての価値もあることから、部分的にでも保存しようとする動きも見られる。一例として、日本の広島県広島市に所在する広島市立袋町小学校の校舎の場合、被曝建造物として保護活動が行われていたが[1]、老朽化を理由に2000年平成12年)[2]に解体された。この際、黒板の下などから発見された、被爆被曝)当時の避難者の消息を伝える落書き(被曝伝言)は、切り取られた壁面などの形で平和教育史料として保存されている[3]

日本の校舎[編集]

フロアは一般的に都市部や市街地では3〜5階建てが多い。学校によっては稀に6〜8階、屋上にプール体育館を設置した校舎も見られる。ビル・マンションのような10階以上の校舎も存在する。過疎地離島では平屋建て・2階建ての校舎が多い。なお、校舎の面積は学校教育法第三条に基づき、文部科学省令によって下限が定められている。

明治元年1868年)の学校建築開始当時から木造建築の校舎(木造校舎)が大半を占め、煉瓦建築などがこれに次ぐ形で普及した。鉄筋コンクリート造の校舎は、1920年大正9年)、神戸市の須佐小学校校舎として日本で初めて登場している。さらには、関東大震災室戸台風空襲などの被害が、火災地震に強い鉄筋コンクリート製校舎への建て替えるを強く促す結果となった。東京市では関東大震災で117校が焼失し、それら全校の新校舎は鉄筋コンクリート造で建て直された。これは「初期モダニズムの(世界的にも)画期的動向」であった。画一的ではなく設計者の個性が出ていた[4]。木造校舎も耐震化などの改良を続けつつ、1970年代まで新築され続けたが、その後は鉄筋コンクリート製校舎が大半を占める時代が到来した。しかし、鉄筋コンクリート製校舎の全盛時代にあって木造校舎の良さを再認識する運動も市民権を獲得しており、木造校舎がいくつか新築されてもいる。

1950年代半ばから1960年代にかけて、校舎を円筒形とした円形校舎や、校舎を六角形あるいは六角形を組み合わせた形とした蜂の巣校舎を建設した学校もあったが、機能面などの問題からすぐに廃れてしまった。

日本の校舎の中には次のような部屋がある。

教室[編集]

一般教室
通常の授業を受けるための教室で、多くの場合は学級ごとに1部屋(1教室)が割り当てられる。「ホームルーム教室」と呼ばれることもある。
特別教室
理科室、音楽室、美術室など、教科別、用途別などに用意される教室。それらの授業に必要な設備が設けられている。
また、直接的に授業には用いられないながら、教育に欠かせない部屋もある。
体育が始まる前の休み時間に児童生徒更衣室に変わるところもしばしばある。
図書室
児童・生徒の知識欲を満たす書物が蔵書されており、これらを借り出して自宅で読むこともできる。中には極めて高価で珍しい書籍が寄贈されている場合もある。
しかし、借りた本を返さない「借りパク」というものが増えているため、学校側は頭を悩ましている。
教材室・準備室
授業に用いられる各種教材が保管されている部屋。特別教室に併設され、各学科に必要な機材がおかれている所もあるほか、特に大きな図表を必要とする普通教室で行われる授業内容に用いられる教材をまとめて保管している所もある。これらを運搬するのは主に当番の仕事となる。
稀に寄贈された珍しい標本や資料が保管されている場合もあり、歴史のある学校では学術的にも貴重な物品が保管されていることもあるため、一般の児童・生徒が入れないよう通常は施錠されていることが多い。

教室以外の施設[編集]

教室以外の施設としては次のようなものがあげられる。

理事長室
理事長の部屋。主に私立学校の学校法人の長の部屋も校内に併設されていることも多い。
校長室の隣に設けられる部屋。公立の学校にはない。
校長室
校長の部屋。校長の執務のほかに、来客の応接や、地域の教育関係者との会合なども行われる。このためソファーなどの応接セットが用意され、上質の内装が施されていたり調度品が置かれている場合も多い。ただ、これら重厚な内装は児童や生徒を萎縮させるにも十分効果があるため、学校の懲罰制度の中に「校長室への呼び出し」などが盛り込まれている所も見られる。学校によっては、職員室と通路で繋がっている学校もある。
教頭室(副校長室)
教頭副校長)が執務を行う部屋。存在しない学校のほうが多い。
職員室(教務室)
日本の学校の職員室の一例
/2005年撮影。
学校職員(高校・特別支援学校では一般的には教員)が執務する部屋。授業準備等を行うため、教材や教具も多く置いてある。また、学校内を児童・生徒が安全に生活できるようにするための管理設備が集約されていることも多く、防災コントロール設備が設置されているほか、近年[いつ?]では学校を巻き込む殺傷事件も起きていることから、同室内に刺又(さすまた)防犯スプレー等の防犯用具、また、校内監視カメラなどの監視設備が設けられている所も見られる(警備会社による警報・監視システムを用いる場合もある)。
特に校内への不審者侵入を防止するため、校舎玄関から入ってきた人間は、必ずこの前を通るように設計されている所も見られる。また、夜間の場合は玄関と繋がっている場合が多い職員室の電灯を常時点灯させる場合もある(場合によっては1階全部の所も)。これは、夜間における学校敷地内侵入者の視認を容易にするための措置である。特に中学校などでは警備が厳重な所が多く、学校によっては警備会社の赤外線人感センサー式警報装置を複数用いる学校もある。
生徒会室
生徒会執行部の役員が会議をするため部屋。一般生徒は原則立ち入ることはできないが、生徒会顧問教師に許可を得れば傍聴できる学校がほとんど。小学校の場合は「児童会室」と呼ばれる。
生徒指導部室
生徒指導担当の先生の職員室。中学校の場合は小さな部屋やない場合が多いが、高校では生徒指導室が設けられる学校も多い。主に校則違反などを取り締まり学校の秩序を守るために作られた職員室である。
その他学校では、「生活指導室」や生徒指導室」と呼ばれる。
講堂多目的ホール
主に体育の授業や学年集会などに使われ、校外からのセミナーや講義などを行う部屋。
部活動では剣道部や卓球部、柔道部なども行う。
視聴覚室
主にAVやプロジェクターなどの装備が整った部屋、主に職員会議や評議会や委員会活動などを行う部屋。
生徒の健康診断では視力検査なども行う場合も多い。
保健室
健康診断、健康相談、救急処置等を行うための部屋学校保健安全法第7条)。怪我や病気をした児童生徒教職員などの手当や看護が行われる。養護教諭が常駐している。ベッドや薬品の他、身長計や体重計などの計測器具も備え付けられている。
近年ではいじめや社会的ストレス増大の問題も在って、精神的な待避所としての位置付けも成され、養護教諭がカウンセラーの資格をもっている・またはカウンセラーも常駐している所もあり、校舎を利用する人間が心身の健康を維持するのに必要な場所として扱われている。
教育相談室
児童・生徒や保護者などの生活に対する疑問や心の相談(カウンセリング)を行う部屋。スクールカウンセラーが待機している。中学校・高校では進路相談室という名目になっているところもあるが、その場合は専門のカウンセラーが居ないこともある。この場合では主に三者面談などに利用される。
上記の保健室では直接的なケアが行われるが、特に教育相談室では親や教師などの関係者が集まって相談しあえるように配慮されているため、保健室よりも広いスペースが確保されている。
放送室
校内放送を行う部屋。また、ビデオカメラマイクロフォンなどの視聴覚教育機材の保管場所となっていることもある。一般に教職員と(学校の実態によって異なるが)放送委員以外は立入禁止である。小型の収録スタジオ設備が併設されていることもあるが、工事中の学校が多い。(

広島、滋賀、秋田、岩手、神奈川、青森、熊本、沖縄、山梨、福岡)などの学校は永久的に工事を続けている学校が多い。

クラブ部室
クラブ部室は主に部活動ほ拠点となる部屋である。部屋の管理は生徒会執行部が行う。
部室ではチーム編成や大会の賞状などが飾ってあり、部員の憩いの場として活用されている。
会議室
職員会議やさまざまな会合等を行うための部屋。便宜的に児童・生徒などが学校行事の準備のために利用することもある汎用の部屋である。
教官室
教官室とは体育科の教員のみがいる部屋である。別名「体育科教官室」と呼ばれる。主に体育祭、球技大会などの運動行事などの安全を練る部屋である。体育館や講堂、プール、クラブ部室などの鍵を保管する部屋ともなっている。
事務室
学校事務を行う部屋。学校に関連する様々な文書の発行や、業者との連絡などを行っている。また廊下側には窓口があり、特に高等学校では学割の手続きや許可の申請などで使用されるほか、公衆電話がここに取り付けてある場合もある。公立の小中学校では職員室で学校事務を行っている場合もあるため、事務室がない学校も存在するほか、近年[いつ?]はあってもあまり利用されない場合がある。
管理員室(用務員室)・宿直室
学校用務員が待機する部屋。住み込みの用務員または警備員が夜間警備等の常駐管理を行うことからコンロがある場合もあり、生活感が漂っている。場所によっては生活に困らないよう小さな平屋一戸建ての住宅が学校施設の敷地内に設けられており、風呂台所などもあったり大抵の家財道具が揃っている場合も見られる。現在は、住込みの用務員、泊まり込みの警備員がいない学校でも、古い校舎の場合は宿直室が残っていることもある。
給食室(配膳室)
給食を準備する部屋。給食室の代わりに食堂を置いている所もある。
機械
学校施設が提供する水道電気冷暖房などの各種機能を維持するための装置が備え付けられた部屋。通常は故障の際に修理工が出入りする以外には施錠され、一般の児童・生徒が入れないようになっていることが多い。学校施設が水害地震などの災害の際には避難施設となることから、自家発電設備を持つ所も見られる。

運動場[編集]

学校施設では教育の一環として、体を動かし鍛える場を提供する。またこれらは児童・生徒のレクリエーションにも供される。

屋外運動場[編集]

屋外運動場(おくがい うんどうじょう)は校庭(こうてい)ともいい、運動や遊戯を行う広場のことである。主に屋外での体育や、昼休みなどの遊び場として使用する。小学校ではブランコジャングルジムなどといった据え置き型の遊具も設置されている。

屋内運動場[編集]

体育館
主に室内での体育や、鼓笛隊の練習、入学式卒業式などの学校行事、その他を行う施設である。バスケットボールのゴールや、各種球技のラインなどが備え付けられている。
その他の施設
特に高等学校などでは柔道剣道空手道などといった武道の授業を行うため、武道場が設置されている場合も多い。近年[いつ?]では、遊具などが置いてあるプレイルームを設置する学校もある。

科別の実習棟[編集]

主に学科が多い実業高等学校で設置される。それぞれの学科の専門教科の授業・実習ができるように教材や機械を扱う学科では専用の電子機器が用意されている。エアコンが普通教室がある校舎に完備してある学校でもこれらの施設では設置されない場合も多く、古い建物が多い。ただし、これらは土木工学・機械関係を扱う学科にのみ設置し、福祉食品などは本校舎内で教室を設け、行う場合もある。

その他の学校施設[編集]

購買

これ以外に学校に設置されている施設としては、プール北海道では設置されていない学校が圧倒的に多い)、農場花壇)などがある。かつてはゴミ焼却炉がある学校も多かったが、環境への影響が懸念され、現在ではほぼ無くなっている。

冷暖房[編集]

学校は公共施設の中では冷房の設置率が非常に低い施設である。近年までは航空機による騒音問題で窓を全開できない空港や自衛隊・在日米軍基地の近くにある学校に設置されているくらいであった。

設置率が低い理由としては、子供は夏の暑さに耐えさせるべきだという教育的・医学的な理由、猛暑の時期は夏休みであること、ベビーブームで学校の増設が優先されて快適性が後回しにされてきたことなどが挙げられる。

しかし、近年は地球温暖化ヒートアイランド現象で健康を害すほどの猛暑が珍しくなくなっており、学校の冷房化率が上がりつつある。

特記事項[編集]

学校施設、および、義務教育の成立以前の時代に属する学校的施設に関する記録

脚注[編集]

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  1. ^ [1][リンク切れ]
  2. ^ 作業着手は8月7日。
  3. ^ [2][リンク切れ]
  4. ^ 『復興建築の東京地図』10、松葉一清平凡社〈別冊太陽 太陽の地図帖〉、2011年10月27日ISBN 4-5829-4538-4 ISBN 978-4-5829-4538-6

関連文献[編集]

  • 藤原直子「わが国の学校における職員室および校長室の成立とその機能」、『日本建築学会計画系論文集』第77巻第674号、日本建築学会、2012年、 759-766頁、 doi:10.3130/aija.77.759

関連項目[編集]