寄宿舎

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寄宿舎(きしゅくしゃ)は、日本の住宅の類型。相当数の労働者又は学生生徒児童などが宿泊し起居寝食をともにする施設である。

労働法規における寄宿舎[編集]

かつて紡績工場、製糸工場に女工寄宿舎が付属していた。これは女工の福利厚生のためではなく、女工には前借りがあるから逃亡しないようにしたということと、早朝から就業させたということからであった。過酷な待遇が、女工哀史などで問題となり、また風紀上かんばしからざることもあり、政府は、昭和2年4月6日、内務省令第26号工場附属寄宿舎規則を発布したが、これには罰則がなかったため、実効はとぼしかった。

こうした歴史を受け、1947年(昭和22年)施行の労働基準法では、使用者が労働者に提供するその事業に附属する寄宿舎については、その第10章(第94条~第96条の3)及び事業附属寄宿舎規程(昭和22年労働省令第7号)・建設業附属寄宿舎規程(昭和42年労働省令第27号)によって規制している。

  • 第94条
    1. 使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない
    2. 使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない
      寄宿舎生活は労働関係とは別個の私生活であり、これに使用者が干渉することは私生活の自由を侵すものであって、本条の運用にあたってはこの趣旨によらなければならない(昭和22年9月13日基発17号)。
      「寄宿舎」とは、常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるものをいう。「事業に附属する」とは、事業経営の必要上その一部として設けられているような事業との関連をもつことをいう。この二つの条件を充たすものが、事業附属寄宿舎として労働基準法第10章の適用を受ける(昭和23年3月30日基発508号)。社宅住込福利厚生施設として設けられているアパート式寄宿舎は、「事業附属寄宿舎」に含まれない。
      「役員の選任に干渉してはならない」とは、役員の選任に関する一切の事項に干渉してはならない趣旨である(昭和23年5月1日基収1317号)。したがって、自治組織体の役員の構成、員数、選出方法等に関して使用者が案を作成して寄宿労働者の自由な承認を求めることや、これにより決定した事項を寄宿舎規則に記載することは、違法となる。
      寄宿舎の管理人寮母を置いても私生活の自治を侵さない限り本条に抵触しない(昭和22年9月13日基発17号)。なお寄宿舎に寄宿する労働者に関する事項について、使用者のために事務を処理する者(舎監世話係等名称は問わない)は、たとえ寄宿舎に入舎していても本条でいう自治の主体としての「労働者」ではないから、寄宿舎の自治に必要な役員となることはできない(昭和23年6月3日基収1844号)。寄宿舎の自治のみに専任する寮長に対して賃金を支払うか否かは当事者の自由である(昭和23年6月16日基収1933号)。
  • 第95条
    1. 事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、左の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。
      1.起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
      2.行事に関する事項
      3.食事に関する事項
      4.安全及び衛生に関する事項
      5.建設物及び設備の管理に関する事項
    2. 使用者は、前項1~4の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
    3. 使用者は、第1項の規定により届出をなすについて、前項の同意を証明する書面を添附しなければならない。
    4. 使用者及び寄宿舎に寄宿する労働者は、寄宿舎規則を遵守しなければならない。
      第1項の1~4の事項については、寄宿舎生活中労働関係の要請を充たすために規制せらるべき部分であり、したがって寄宿労働者と使用者との共管事項として、これが規定の作成・変更について寄宿労働者の過半数の同意を必要としたものである(昭和23年3月30日基発508号)。食費、部屋代、寝具の損料を労働者に負担させる場合には、これらの労働条件に関する事項について就業規則に記載しなければならない。
  • 第96条
    1. 使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。
    2. 使用者が前項の規定によつて講ずべき措置の基準は、厚生労働省令(事業附属寄宿舎規程)で定める。
  • 第96条の2
    1. 使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、前条の規定に基づいて発する厚生労働省令で定める危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、工事着手14日前までに、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。
    2. 行政官庁は、労働者の安全及び衛生に必要であると認める場合においては、工事の着手を差し止め、又は計画の変更を命ずることができる。
  • 第96条の3
    1. 労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、行政官庁は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができる。
    2. 前項の場合において行政官庁は、使用者に命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることができる。
  • 第103条
    労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、且つ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、第96条の3の規定による行政官庁の権限を即時に行うことができる。
  • 第106条
    1. (略)
    2. 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
  • 事業附属寄宿舎規程第4条
    使用者は、次の各号に掲げる行為等寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵す行為をしてはならない。
    1. 外出又は外泊について使用者の承認を受けさせること。
    2. 教育、娯楽その他の行事に参加を強制すること。
    3. 共同の利益を害する場所及び時間を除き、面会の自由を制限すること。
  • 事業附属寄宿舎規程第7条
    第一種寄宿舎(労働者を6ヶ月以上の期間寄宿させる寄宿舎)を設置する場合には、次の各号の一に該当する場所を避けなければならない。
    1. 爆発性の物(火薬類を含む。)、発火性の物、酸化性の物、引火性の物、可燃性のガス又は多量の易燃性の物を取り扱い、又は貯蔵する場所の附近
    2. 窯炉を使用する作業場の附近
    3. ガス、蒸気又は粉じんを発散して衛生上有害な作業場の附近
    4. 騒音又は振動の著しい場所
    5. 雪崩又は土砂崩壊のおそれのある場所
    6. 湿潤な場所又は出水時浸水のおそれのある場所
    7. 伝染病患者を収容する建物及び病原体によつて汚染のおそれ著しいものを取り扱う場所の附近
    4~6については、第二種寄宿舎(労働者を6ヶ月未満の期間寄宿させる寄宿舎)についても同様である。
  • 事業附属寄宿舎規程第8条
    第一種寄宿舎においては、男性と女性とを同一のむねの建物に収容してはならない。ただし、完全な区画を設け、かつ、出入口を別にした場合には、この限りでない。

建築・消防・税務法規における寄宿舎[編集]

建築基準法(昭和25年法律第201号)、消防法施行令(昭和36年政令第37号)、固定資産評価基準(昭和38年自治省告示)、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)などで、建築物の種類として「共同住宅」「下宿」などと並列して「寄宿舎」という種類が示されている。

これらの法規の実務運用において、何をもって寄宿舎と定義するのか、共同住宅と寄宿舎の違いは何かといった点について明確に示されていないため、行政部署の担当者の主観によるところも大きい。

社会通念的な認識として実質的に多くの行政担当者が想定している定義は、「各戸に独立の玄関があり、それぞれの独立空間に厨房・便所などの生活設備がある形式」を共同住宅とする、「玄関・厨房・便所などは原則的に共用で、寝室だけが各入居者用に用意されている形式」を寄宿舎とするものである。 この定義に従って法解釈される限りにおいて、老人ホームグループホームは寄宿舎ということになる。建築・消防法規上の書類で実際にそのように分類している市町村も多い。2012年現在、福島県土木部建築指導課が出している『戸建て住宅を活用する「グループホーム等」の建築基準法上の取扱い』で2階建て以下で延べ面積が200㎡未満のグループホーム等については基本的に一般住宅として扱うとしているのが唯一の例外。

ただし、この定義はいかなる法規に明記されているものでもないことに注意すべきである。

学校における寄宿舎[編集]

学校における寄宿舎は、学校との通学距離が長い、交通が不便という地理的な理由の他に、特別支援学校(盲学校・聾学校・養護学校)のように、重度又は重複障害を持っている場合などで、毎日の通学が困難な場合に生徒・児童のために学校に附属して設置される事がある(=全ての学校にあるわけではない)。主に後者の理由で設置された方を寄宿舎として呼ぶ事が多い。但し、看護師はいない為、重度障害の中でも吸引など医療的ケアを必要とする児童・生徒の入所は不可能である。また、建物の構造上、エレベーターがない寄宿舎では、車椅子の児童・生徒の入所も出来ない場合がある。寄宿舎指導員が児童・生徒の生活支援、夜間巡視(宿直)などの業務にあたっている。ただ、特別支援学校の寄宿舎は全国的に減少傾向にある。

関連項目[編集]