株式会社立学校

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株式会社立学校(かぶしきがいしゃりつがっこう)は、小泉純一郎内閣の下で実施された構造改革特区の制度(特例措置番号816;学校設置会社による学校設置事業)を利用して、「構造改革特別区域法」第12条により株式会社(同条における「学校設置会社」)が設置した学校[注釈 1]である。

概要[編集]

日本では2004年から2009年春までに全国で高等学校21校、中学校1校及び小学校1校が設置された。既存の学校と違い、カリキュラムを自由に組んで特色を打ち出すことができたり、校舎や運動場等の施設についての条件が緩いのが利点であるが、逆に私学助成金が受けられず[注釈 2]、また学校法人への寄付には認められている税制上の優遇措置がないという財政的に不利な点がある[1]

この不利な点のためか、中には学校法人立に転換した学校も存在する。また、特区制度が地域おこしの手法として用いられることもあって、所在地も地方の辺地に偏っているのも特徴である。

現在はLCA国際小学校およびフェリーチェ玉村国際小学校の2校を除き、株式会社立の学校は通信制高等学校のみである。

なお、近江兄弟社中学校・高等学校は、近江兄弟社が創立に関わるものの、学校法人ヴォーリズ学園を設立して設置者としており、株式会社立ではない。

また、これらの他にも株式会社立大学が存在するが、それについてはこちらを参照のこと。

株式会社立学校の一覧[編集]

通学制学校[編集]

学校名 開校年 運営者 本部所在地 備考
LCA国際小学校 2008年 株式会社エデューレエルシーエー 神奈川県相模原市緑区
フェリーチェ玉村国際小学校 2015年 株式会社群馬フェリーチェ学園 群馬県佐波郡玉村町

通信制学校[編集]

学校名 開校年 運営者 本部所在地 備考
アットマーク国際高等学校 2004年 アットマーク・ラーニング 石川県白山市
美川サイバータウン教育特区
第一学院高等学校高萩校
(旧:ウィザス高等学校)
2005年 ウィザス 茨城県高萩市
高萩市教育特区
2012年、現校名に改称。なお第一学院高等学校養父本校は、ウィザスナビ高等学校時代はウィザス出資のナビが運営していた。
第一学院高等学校養父本校
(旧:ウィザスナビ高等学校)
2008年 兵庫県養父市
養父市教育特区
代々木高等学校 2005年 代々木高校 三重県志摩市
伊勢志摩インターネット高校特区
本校校舎は三重県志摩市に在るが、東京本部が東京都渋谷区代々木に所在することからこの校名を採用している。また、嘗て存在した東京都立代々木高等学校は同一校名であるが、所在地が東京都渋谷区の代々木地区であることが共通している以外は全くの無関係。
創学舎高等学校 2006年 愛郷舎 埼玉県深谷市
渋沢記念深谷人づくり特区
大智学園高等学校 2006年 コーチング・スタッフ 福島県双葉郡川内村
川内村教育特区
ルネサンス高等学校 2006年 ルネサンス・アカデミー 茨城県久慈郡大子町
大子町教育特区
ソフトバンクグループ傘下。
ルネサンス豊田高等学校 2011年 愛知県豊田市
豊田市教育特区
ルネサンス大阪高等学校 2014年 大阪府大阪市北区
大阪市教育特区[2]
相生学院高等学校 2008年 富士コンピュータ 兵庫県相生市
相生市教育特区
ECC学園高等学校 2008年 ECC 滋賀県高島市
高島市環の郷教育特区
英会話スクールを運営するECCが設置。
一ツ葉高等学校 2008年 I am succsess. 熊本県上益城郡山都町
山都町潤い、文楽、そよ風でつづるまちづくり特区
明蓬館高等学校 2009年 アットマーク・ラーニング 福岡県田川郡川崎町
川崎町地産・地習・e環境教育特区
札幌自由が丘学園三和高等学校 2009年 札幌自由が丘教育センター 北海道上川郡和寒町
野和寒町教育特区
特定非営利活動法人フリースクール札幌自由が丘学園を母体とする。
AIE国際高等学校 2013年 エーアイイー 兵庫県淡路市
淡路市教育特区
鹿島山北高等学校 2017年 山北学園 神奈川県足柄上郡山北町
山北町教育特区
学校法人鹿島学園理事長の大森伸一個人出資により設立。鹿島学園高等学校・鹿島朝日高等学校とともに「カシマ通信教育グループ」を形成する。

学校法人立に転換した学校[編集]

通学制学校[編集]

学校名 開校年 開校当時の運営者 本部所在地 転換年 現在の設置者 備考
朝日塾中学校 2004年 株式会社朝日学園 岡山県岡山市
御津町教育特区
2011年 学校法人
みつ朝日学園
現・朝日塾中等教育学校
朝日塾高等学校 2007年

通信制学校[編集]

学校名 開校年 開校当時の運営者 本部所在地 転換年 現在の設置者 備考
さくら国際高等学校 2005年 新教育システム
株式会社
長野県上田市
上田市コミュニティー
教育・交流特区
2015年 学校法人
上田煌桜学園
2015年4月1日を以て学校法人格を取得。
くまもと清陵高等学校 2005年 ふりーだむ 熊本県阿蘇郡南阿蘇村
南阿蘇村教育特区
2017年 学校法人
熊ゼミ学園[3]
日々輝学園高等学校 2006年 株式会社
エデュコジャパン
栃木県塩谷郡塩谷町
塩谷町教育特区
2010年 学校法人
開桜学院
2010年10月設置者変更。
北海道芸術高等学校 2006年 株式会社
日本教育工房
北海道余市郡仁木町
2015年 学校法人
恭敬学園
2015年3月に一旦廃止。4月に現法人[4]が新設。
本校舎を北海道上川郡清水町[5]から移転。
ヒューマンアカデミー
高等学校
2009年 ヒューマンアカデミー
学園
株式会社
長野県木曽郡南木曽町
南木曽町教育特区
2014年 学校法人
佐藤学園
ヒューマンホールディングス傘下から運営法人を変更。
現在はヒューマンキャンパス高等学校沖縄県名護市)。

閉校した学校[編集]

学校名 開校年 閉校年 開校当時の運営者 本部所在地 備考
高島町立端島小学校・中学校 1893年 1974年 三菱 長崎県西彼杵郡高島町端島
(現・長崎市高島町字端島)
開校当初は「三菱社立」を名乗る。
その後、公立に移管され「高浜村立」を経て「高島町立」を名乗る。
ウィッツ青山学園高等学校 2005年 2017年 株式会社
ウィッツ
三重県伊賀市
伊賀市意育教育特区
学校法人神村学園が生徒と校舎を継承。
2017年4月1日、神村学園高等部伊賀分校が開校。
師友塾高等学校 2008年 2017年 株式会社
文学の館
広島県尾道市
尾道市人間教育特区
閉校時に残っていた生徒は相生学院高等学校が事実上引き継ぎ、2017年4月に「相生学院高等学校尾道校」が開校した。
師友塾高等学校の各種証明書等発行については尾道市教育委員会学校経営企画課が行っている。
東豊学園つくば松実高等学校 2008年 2020年 株式会社
つくば東豊学園
茨城県つくば市
つくば市教育特区
閉校時の在校生は他校へ転校。

問題点[編集]

既述のとおり、学校法人立の学校と比べ財政的に不利な点もあって[6]、約4割の学校が赤字に陥っている。また、大半が通信制高校であり、多くの生徒が特区認定を受けた地域にある本校に通学する機会は数日間のスクーリング[注釈 3]のみと少なく、地域おこしとしての効果も限定的であった[注釈 4]

さらに、一部では設置母体となったサポート校等の活動と渾然一体となり、本来は禁止されているサポート校でのスクーリング実施[注釈 5]等の教育上問題のある学校も見受けられた[1]

このため、政府は本制度を全国で解禁しない方針を固め、既設校は希望すれば学校法人に移行できるよう支援することとした[7]

構造改革特区法に基づく株式会社立の通信制高校の7割が、同法が禁じている特区外での教育活動をしているとして、文部科学省は規制に乗り出す方針を固めた。また、教育内容に関しても「不適切な状態にある」として、質の改善を促すとした。文部科学省の担当者は「脱法行為であり、教育の質も低く、高卒資格取得を売りにしたビジネス」と指摘した[8]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
注釈
  1. ^ ここでいう「学校」とは学校教育法第1条に規定するもの(いわゆる「一条校」)をいい、第124条の専修学校や第134条の各種学校は含まれない。なお、専修学校や各種学校は、公益法人や個人が設置者になれるため、学校法人の設立は要しない。
  2. ^ 私立学校振興助成法の適用は、「協力地方公共団体が協力学校法人に対し助成を行う場合」(構造改革特区法第20条第13項)に限られている。
  3. ^ 自宅でのネット学習のみで学士号が取得できる大学通信教育と異なり、通信制高校のスクーリングは実技科目等の単位修得や特別活動の出席認定に必要である。
  4. ^ 一方で、地方独立行政法人による高等学校中等教育学校の設置や管理については、地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第21条第2項や学校教育法附則第5条により構造改革特区内でもなお認められていない。
  5. ^ 直営の分校と認可されていない委託のサポート校でのスクーリングや教員免許を持たない教員によるスクーリングが問題になる。
出典
  1. ^ a b 特例措置番号 816 の関連資料 (PDF) - 教育部会(第12回)配布資料 評価・調査委員会 構造改革特別区域推進本部 首相官邸 2011年10月6日
  2. ^ 大阪市教育特区 (PDF)”. 首相官邸. 2015年4月4日閲覧。
  3. ^ 広域通信制高校一覧”. 文部科学省. 2018年10月29日閲覧。
  4. ^ 学校の設置・廃止等一覧(26年4月2日~27年4月1日)北海道教育委員会
  5. ^ 文化と人が響き合う清水町教育特区内閣府地方創生推進事務局 構造改革特区
  6. ^ “営利企業で敬遠?初の株式会社立学校行き詰まる”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2010年10月15日). http://web.archive.org/web/20101018055651/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101015-OYT1T00178.htm 2010年10月18日閲覧。 
  7. ^ “株式会社の学校縮小へ 政府、特区を全国解禁せず”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2012年6月12日). http://www.nikkei.com/article/DGXNZO42480830S2A610C1EA1000/ 2012年6月12日閲覧。 
  8. ^ “特区外で「違法」授業・試験 株式会社立の通信制高7割”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2012年8月19日). http://www.asahi.com/national/update/0819/TKY201208180486.html 2012年8月19日閲覧。 、朝日新聞夕刊 2012年8月19日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]