国際バカロレア

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国際バカロレア(こくさいバカロレア、: International Baccalaureate)とは、1968年にスイスのジュネーブで設立された非営利団体である。その後、その団体の教育プログラムも指すようになった。

もともと世界各国から人が集まる国際的な機関や外交官の子供が母国での大学進学のため、様々な国の大学入試制度に対応し、1つの国の制度や内容に偏らない世界共通の大学入学資格及び成績証明書を与えるプログラムとして開発された。国際バカロレア(IB)は、より良いより平和な世界を築くために貢献する人材の育成を目的としており、その教育プログラムの特徴として「全人教育」を掲げている。

2015年11月現在で、世界147の国や地域で、4300校以上の学校で提供されている(日本国内は35校)[1]

教育課程[編集]

国際バカロレアでは、3歳~19歳までの総合的な教育プログラムを開発・提供しており、初等中等教育課程で成長段階や進路に合わせた4つのプログラム(PYP、MYP、DP、CP)が提供されている。

日本でいう高校にあたるDPプログラムを修了した生徒が世界統一の卒業試験を受け、一定の成績を取ることで、国際バカロレア機構から大学進学のための国際バカロレアの修了資格(成績証明書)が授与される。当初は卒業試験の関係から、DPプログラムは英語スペイン語フランス語が公式教授言語として定められていたが、近年、導入している国に合わせて他の言語でも学べるような動きが活発となっている。世界で最初に認められたのはドイツ語で、日本では、2013年に日本語で受けられるプログラム(日本語DP)の開発・導入が決まり、2015年から国内2校で日本語DPが実施されている。

なお、PYPとMYPでは言語の制限はなく、国際バカロレア機構から母国語での提供を推奨されている。CPとは高校卒業後に大学進学を希望しない生徒を対象としており、就職や専門学校へ行くことを目指したキャリア関連プログラムである。[2]

PYP(ぴーわいぴー、:Primary Years Programme)[編集]

3歳~12歳を対象としたプログラム。

探究する人としての基礎教育、そのために必要な知力、体力、精神力のバランスが取れた人間になることをめざすプログラム。国際バカロレアの入り口となるプログラムであり、日本の小学校同様の基礎学力を身に付ける。日本でいうところの幼稚園・小学校レベルのプログラムであり、幼稚園もしくは小学校のみでの導入も可能である。

プログラムの内容は6つのテーマを柱とした教科融合型の教育となっている。

国際バカロレア機構が定めた公式教授言語はなく、母国語で学ぶことができる。

2015年11月現在で、PYPを提供している学校は、世界で1327校、日本では19校となっている。[3]

MYP(えむわいぴー、:Middle Years Programme)[編集]

11歳~16歳を対象とした5年間のプログラム。

教科を学びながら、実社会とのつながりを理解し、分析し、省察して考える人間になることをめざすプログラム。日本の学校でいうと、小学校6年から高校1年までの5年間を対象としてプログラム。学校によって4年間での運用も可能である。 (例:中学3年間+高校1年間)

5つのテーマを柱として8つの教科を学ぶ。

PYPと同様に母国語で学ぶことができる。大学入学準備コースであるDPの基礎学習として位置づけから、一般的な教科に近いカリキュラムとなっている。

2015年11月現在で、MYPを提供している学校は、世界で1225校、日本では9校となっている。[4]

DP(でぃーぴー、:Diploma Programme)[編集]

16歳~19歳を対象とした2年間のプログラム。

大学受験やその先の人生を見据え、強みや個性を明確にして、自らが進む道を見極められる人間になることをめざすプログラム。日本の学校でいうと、高校2、3年の2年間を対象としたプログラムで、いわゆる大学入学準備コース。

DPでは、MYPよりさらに日本の高校教育に近い枠組みになっている。

6つの教科グループから1科目ずつ選択し、また、科目のレベル(ハイヤー、スタンダードなど)を選ぶ。6つの選択教科のほかに、課題論文(略称EE、:Extended Essay)、知の理論(略称TOK、:Theory of knowledge)、課外活動(略称CAS、:Creativity/Activity/Service)を取る必要がある。 日本語DPを受ける生徒の場合、6つの選択教科のうち、外国語(英語)ともう1教科を英語で受ける必要があり、残りの4教科及びEE・TOK・CASを日本語で受ける。[5]

国際バカロレアと学習指導要領の双方を無理なく履修できるようにする特例措置が2015年8月19日付で公布・施行された。これにより以前より課題であった国際バカロレア授業の単位認定の拡大や英語による指導が可能となった。[6]

2015年11月現在で、DPを提供している学校は、世界で2927校、日本では26校となっている。[7]

DPでは、高校3年生のときに世界統一の最終試験を受ける。試験実施時期は、北半球は5月、南半球は11月である。なお、日本語DPを受ける生徒の場合は11月に試験を受ける。(日本語DPの場合、試験は日本語で実施される。)

選択科目による内部評価と最終試験による外部評価によってスコアが算出され、合計45点満点中、原則として24点以上で、国際バカロレアの修了資格(成績証明書)が授与される。点数配分は6つの選択科目は各7点満点、EE・TOK・CASで計3点となっている。

各教科で3点未満は不合格とみなされ、1教科でも不合格をとると国際バカロレアの修了資格は授与されない。世界全体での国際バカロレアの修了資格の取得率は8割程度。ただし、教科ごとの修了書(Certificate)は授与され、アメリカなどの大学によっては、教科の点数が重要視されることもあり、特定の教科のみ国際バカロレアを取る生徒も多い。なお、最終試験に不合格となった場合でも、19歳になるまで再試験を受験することができる。

大学進学[編集]

日本では、昭和54年から、国際バカロレアの修了資格を取得した18歳の生徒を高校卒業した生徒と同等以上の学力を有していると認められており、大学入試の受験資格が認められている。[8]

近年、国際バカロレアのスコアを用いた特別入試(国際バカロレア入試)を導入する大学が増えており、国公立大学では、筑波大学岡山大学が先んじて全学部で国際バカロレア入試を導入しており、2015年11月現在で、17校で国際バカロレア入試が実施。25校で国際バカロレア入試の導入が検討されている。[9]また、国立大学協会が2015年9月に発表したアクションプランには、入試改革として、推薦入試・AO入試・国際バカロレア入試等の拡大が掲げられており、2021年までに定員の30%を目標とすることが定められた。[10]

アメリカ、イギリス、カナダといった国の多くの大学ではDPを卒業した生徒で、選択していた科目をHL(ハイヤーレベル)で修了し、さらにその成績が6以上の場合、大学初年度でその学科を受講しなくても単位を無条件で与えられる所がある。例えばカナダの名門大学・ブリティッシュコロンビア大学では数学のMathematics HLで6を取った場合、大学1年目では数学の授業に出る必要はなく、またその授業料を支払う必要も無い。しかし、この成績は大学によって変わるため、確認する事が必要である。

IB生徒の多くは、大学進学の前にPredicted Grade(予想スコア)を学校の各科目の教師から受け取り、希望する大学に送る。アメリカの場合であれば、同時にSATACTといった、外部の試験を受けなくてはいけない。また、多くの大学は英語を第一言語としない生徒や、DP課程で英語をEnglish Bで習得している生徒にTOEFLのスコアを要求する。そして、そのPredicted Gradeと他のテストのスコアで内定が決まる。

内定にも二つあり、内定がPredicted GradeとSAT等のスコアで十分と見なされ確実となる物。もしくは最終試験(IB Exam)後に発表される修了資格によって合否を左右される物(Conditional)の二つがある。日本の大学を受験するためには、このPredicted Gradeを送る他に、卒業後に各大学の試験を受ける事も出来る。その場合は修了資格が授与されている事が条件である。

日本での展開[編集]

2015年11月現在、以下の35校がIB認定校となっている[11]

学校名 所在地 認定資格
PYP MYP DP
学校教育法第一条に基づき設置された学校(一条校)
仙台育英学園高等学校 宮城県
ぐんま国際アカデミー初等部・中等部・高等部 群馬県
玉川学園中学部・高等部 東京都
東京学芸大学附属国際中等教育学校 東京都
東京都立国際高等学校  東京都
インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢 長野県
加藤学園暁秀中学校・高等学校 静岡県
名古屋国際中学校・高等学校 愛知県
立命館宇治中学校・高等学校 京都府
AICJ中学校・高等学校 広島県
リンデンホールスクール中高学部 福岡県
沖縄尚学高等学校・附属中学校 沖縄県
各種学校及び学校教育法の管轄外の施設
つくばインターナショナルスクール 茨城県
アオバ・ジャパン・インターナショナルスクール 東京都
インディア・インターナショナルスクール・イン・ジャパン 東京都
カナディアンインターナショナルスクール 東京都
K.インターナショナルスクール東京 東京都
神宮前小学校国際交流学級 東京都
清泉インターナショナル学園 東京都
セント・メリーズ・インターナショナル・スクール 東京都
東京インターナショナルスクール 東京都
サンモール・インターナショナル・スクール 神奈川県
ホライゾン・ジャパン・インターナショナルスクール 神奈川県
横浜インターナショナルスクール 神奈川県
名古屋国際学園 愛知県
京都インターナショナルスクール 京都府
同志社国際学院初等部・国際部 京都府
大阪YMCAインターナショナルスクール 大阪府
関西学院大阪インターナショナルスクール 大阪府
カナディアン・アカデミー 兵庫県
関西国際学園 兵庫県
神戸ドイツ学院 兵庫県
広島インターナショナルスクール 広島県
福岡インターナショナルスクール 福岡県
沖縄インターナショナルスクール 沖縄県

2013年5月の教育再生実行会議第3次提言に、日本語DPの開発・導入を進めることで大幅な増加(200校)をめざすことが記載されている。[12]また、6月には、経団連が、国際バカロレアをグローバル人材の育成に有効な手段と評価した声明を発表したほか、政府が日本再興戦略の中で、国際バカロレア認定校等を2018年までに200校とすることを閣議決定した。 国際バカロレアのアジアパシフィックに坪谷・ニュウエル・郁子氏が委員として就任した。 東京学芸大学が中心となり国際バカロレア・デュアルランゲージ・ディプロマ連絡協議会が2013年5月に発足。 2015年10月に文部科学省が認定に向けた初の手引書を作成しHPにて公表した。[13]

問題点[編集]

一般的に広く知られるカリキュラムであり、世界的に評価されている物である。しかし、豊富な科目数や科目間での難易度の差に置いての問題点を指摘する声もある。 例えば、科学(Science)で選択する科目は物理(Physics)化学(Chemistry)生物(Biology)環境情報(Environmental Systems)があるが、物理学の上級コース、Physics HLの合格率は、他のクラスと比べて低い。 数学には4つのクラスが存在し、難易度的に上からFurther Mathematics(学校によっては選択不可)、Mathematics HL、Mathematics SL、そしてMath Studiesとある。 学部にもよるが、一般的に大学はMathematics SLまでの就学を入学の必須条件としている。しかし、Mathematics SLとMathematics HLでは修了成績に大きく差があり、Mathematics HLで落第点(3以下)を取っていた生徒が、Mathematics SLで最高得点(7)を取る事も少なくない。 こうした選択科目間にある難易度の差、そして同学科においてもレベルによっての差によって、選択する科目によって生徒の成績は大きく変動するとみている。

  • 最終試験料、教員のトレーニング、認定料が高額といった問題がある。
  • 政府は200校の目標を掲げているが26校にとどまっている。
  • 公立校での導入が進んでいない。(2015年11月現在で公立のIB認定校は東京都立国際高等学校のみ)
  • 名称が似ているフランスのバカロレアは、フランスの大学の「大学入学資格」であるが、「国際バカロレア」はプラス語学試験や、大学独自の試験などを課すところが多く、「国際的大学受験資格」という扱いである。
  • 教材の指定がなく、多くが教員の裁量に任されているため、学校ごとの授業の質が大きく異なる懸念がある。

脚注[編集]

  1. ^ International Baccalaureate:Find an IB World School
  2. ^ what is cp
  3. ^ 文部科学省HP 国際バカロレア認定校
  4. ^ 文部科学省HP 国際バカロレア認定校
  5. ^ 文部科学省HP 国際バカロレアのプログラム
  6. ^ 文部科学省HP 我が国における取組等
  7. ^ 文部科学省HP 国際バカロレア認定校
  8. ^ 文部科学省HP 昭和23年文部省告示第47号
  9. ^ 我が国の大学入学者選抜における取扱い
  10. ^ 「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」の公表について
  11. ^ 2. 国際バカロレアの認定校:文部科学省
  12. ^ 首相官邸 教育再生実行会議
  13. ^ 文部科学省HP 我が国における取組等

関連項目[編集]

外部リンク[編集]