被曝
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被曝(ひばく)とは、放射線や化学物質にさらされることをいう[1]。被ばくとも表記される[注 1]。
表記
「被曝」と「被爆」は、発音が同じで意味や漢字での表記も似ている。「被曝」は「放射線などにさらされること」[1]、「被爆」は「爆撃を受けること」、「核兵器による被害を受けること」[2]である。「曝」という漢字が常用漢字に入っていない[3]ことから、「被曝」を「被ばく」と書くことが多い。
概要
本項では、人体が電離放射線にさらされることについて説明する。
電離放射線の被曝には、
の4種類ある[4]。
また放射線被曝は、放射線の発生源が体内か体外かにより内部被曝(体内被曝)と外部被曝(体外被曝)に、照射を受ける身体の範囲により全身被曝と局部被曝に、照射を受ける時間分布により急性被曝と慢性被曝に分類される[5]。
人は日常において一年あたり平均2.4ミリシーベルト[6]の自然放射線に被曝しており、国際放射線防護委員会の勧告では自然放射線被曝及び医療被曝を除く一般公衆の年間被曝限度を1ミリシーベルトに設定している。放射線に被曝すると放射線障害が生じる場合がある。なお、低線量の放射線被曝による健康被害については、各種議論がある(後述[注 2])。
放射線による生体への影響は動物実験、放射線療法を受けた患者の調査、広島・長崎の原爆被爆者の追跡調査、その他原子力事故などの疫学調査[7]などで研究されている。
放射能と崩壊系列
核分裂によってできた放射性原子は1回だけ放射線を出すのではない。ベータ線を出しては別の元素に変わり、安定した元素になるまで放射線を出し続ける。この一連の系列を崩壊系列という。核分裂しなかったウランやプルトニウムは同様にアルファ線を出す系列をもつ。
放射線測定で主に計測されるガンマ線は、ベータ崩壊やアルファ崩壊に付随して出る電磁波であり、放射線の主体をなすものではない[8]。
なお、放射能(radioactivity)とは、「原子核が崩壊して放射線を出す能力」のことであって、厳密には、放射性物質、また放射線とは意味が異なる。
被曝の分類
人体の被曝は、放射線源が体外にあって外部から放射線を被曝する外部被曝(体外被曝; 英: external exposure)と、飲み込んだり吸い込んだりして体内に取り込んだ放射性物質によって被曝する内部被曝(体内被曝; 英: internal exposure)に大きく分類することができる。
人体は天然に存在する微量の放射線源(自然放射線)からも被曝しており、これは自然被曝と呼ばれる。また、X線撮影や癌治療など医療・治療における被曝を医療被曝という。法律で規制される被曝限度には、自然被曝と医療被曝は含まれない[9]。
国連科学委員会(UNSCEAR)では放射線の種類やその用途、一般大衆と職業上などの切り口で以下のように分類している。
公衆の被曝 | ||
自然放射線によるもの | 普遍的な被曝 | 宇宙線 |
地上の放射線、主にラドンによるもの | ||
人間活動の結果、 増幅されたもの |
金属の採鉱と精錬に起因するもの | |
リン鉱石の精錬によるもの | ||
石炭の採掘とその燃焼の廃棄物フライアッシュによるもの | ||
石油や天然ガスの掘削によるもの | ||
希土類元素(レアアース)と二酸化チタン産業によるもの | ||
ジルコニウムとセラミックス産業によるもの | ||
ラジウムとトリウムの利用によるもの | ||
その他の被曝 | ||
人工起源の放射線 | 平和利用 | 原子力発電によるもの |
核燃料などの運送によるもの | ||
原子力以外での放射性物質の使用によるもの(主に医療被曝) | ||
軍事利用 | 核実験によるもの | |
環境中の残留放射性降下物によるもの | ||
: 経年履歴 | ||
: 原子力事故によるもの | ||
職業被曝 | ||
自然放射線によるもの | 飛行機のパイロットや客室乗務員、宇宙飛行士などの被曝 | |
採鉱・精錬加工等の鉱業従事者の被曝 | ||
石油天然ガスの採掘従事者の被曝 | ||
鉱山以外の就労環境中のラドンによる被曝 | ||
人工起源の放射線 | 平和利用 | 原子力発電従事者 |
放射線医学従事者 | ||
放射性物質の工業利用 | ||
その他の利用 | ||
軍事利用 | その他の業務上の被曝 | |
出典:原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)2008閲覧2011-7-4 | ||
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自然被曝
天然に存在する外部被曝源としては宇宙線や地殻からの放射線があり、内部被曝源としてはカリウム40や炭素14のような天然に存在する放射性同位体がある。体重60kgの人体で、カリウム40で4000ベクレル、炭素14で2500ベクレル、の天然の放射能があると言われている[10]。
一般にひとは、宇宙線から年間ほぼ390マイクロシーベルト、地殻、建材などからの自然放射性核種(コンクリート中のカリウム40ほか)から年間480マイクロシーベルトの外部被曝を受けており[11][12]、また、体内に存在している自然放射性核種(カリウム40、炭素14)から年間ほぼ290マイクロシーベルトの内部被曝を受けている。これらに加え、空気中に含まれているラドンから年間約1260マイクロシーベルトの被曝を受けている。
このように自然に存在する環境放射線から、ひとは、平均合計年間2400マイクロシーベルト(2.4ミリシーベルト)前後の被曝を受けているとされる[6][13]。
近年では日用品に含まれる天然放射性物質の影響の問題がクローズアップされている[14]。
- カリウムによる被曝
また、カリウムは、生体必須元素である関係上、成人で約140g程度の一定量が常に体内に保持され排泄調整される。カリウム中のK40の割合も一定であるため、カリウムの摂食量に関わらず成人で約4000ベクレル程のK40を体内に一定に保持し続けることになる[15]。体内のカリウムの量は人体のホメオスタシスによってほぼ一定に保たれる。バナナ、ジャガイモ、インゲン豆、ナッツ、ヒマワリの種はカリウム含有量が多いため、当然自然放射能をやや多く持っている[16]が、これらはバナナと同様に放射能的には無害であると考えることが出来る。なお、最も自然放射能が多いといわれる作物はブラジルナッツで1kgあたり244.2ベクレルが測定された例があるが[17]、これはラジウムの蓄積による部分があるため、カリウムの場合とは同一に考えることは出来ない(バナナ等価線量も参照)。
医療被曝
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医学の検査や治療で放射線が使用される。放射線を利用する医学の領域を放射線医学という、療法を放射線療法という。これらの医療被曝を問題視し、危険性を批判する研究者もいるが、他方、医学的効用についても多数の研究が蓄積されている。
外部被曝
外部被曝の防止
被曝を低減する三原則は、時間・距離・遮蔽である[18]。
- 被曝時間
- 線量は放射線場にいた時間に比例して増加する。放射線場での作業時間ができるだけ短くなるよう、作業計画を綿密に検討する必要がある。屋内退避も推奨されている。
- 距離
- 線量は線源までの距離の2乗に反比例する。線源はトングやマジックハンドを用いて扱い、直接触らないようにする。放射性物質が皮膚に付着しないよう、ゴム手袋などの保護具を装備する。
- 遮蔽
- α線は紙1枚で遮蔽できる。放射性同位元素から放出される最大エネルギーのものでも空気中を10cm飛ぶことができない。
- β線はアクリル樹脂板で遮蔽できる。放射性同位元素から放出される最大エネルギーのものでも空気中を15m飛ぶことができない。β線を薄くて密度の高い物質で遮蔽しようとすると、制動放射線が多く発生することでかえって被曝線量を増やすおそれがある。
- γ線は透過力が高いが、ある程度遮蔽することができる。γ線(およびX線のような電磁放射線あるいは光子線)は主に原子核周囲の電子と相互作用して阻止されるため、鉛や金といった密度の高い物質(電子の密度も高い)のほうが効果的に遮蔽することができる。コンクリートならば厚さ30cmごとに、鉛板ならば厚さ5cmごとに線量を10分の1にまで減らす(コバルト60のγ線の場合)。このようにγ線やX線は指数関数的に減少するので、完璧に遮蔽することはできない。
- 中性子線に対しては、質量数の小さい水素や炭素を多く含む物質、例えば水やポリエチレンブロックがよく用いられる。これは、荷電粒子(電荷を持つ粒子)や光子が電磁気力で物質と相互作用して透過を阻止されるのに対して、電荷を持たない中性子は物質を構成する粒子と直接衝突することで運動エネルギーを失い、透過を阻止されるためで、中性子の運動エネルギーを効率よく奪うためには同程度の質量の粒子、つまり陽子(水素の原子核)と衝突させることが最も有効だからである。また、中性子の遮蔽体は中性子吸収材(中性子を比較的捕獲しやすい非放射性同位元素を含む物質)と組み合わせて使うこともある。
内部被曝
放射性物質を体内に取り込んだ場合の被曝を内部被曝という[19]。放射性物質を体内に取り込む経路には以下のものがある[20][21]。この場合、人体は物質が放射性物質か否かを区別しないで同じ扱いを行う[22]。
- 放射性の微粒子や気体を吸い込む(マスクを装着するか男性用の木綿ハンカチを八つ折りにした代用なら大きさが1から5ミクロンの微粒子の90%を除去する[23]。)(つまり呼吸)
- 放射性物質が付着した飲食物を摂取する (つまり食事)
- 皮膚や傷口についたまま洗わないでいると[21]、そこから吸収される(ヨウ素は、その放射性同位元素も含めて皮膚から取り込まれる)[22][24](つまり経皮吸収。皮膚接触)
放射性物質は、生物の体内に吸収されても尿や便に混じって排出されるものがあり、このことによって体内の量が半減する期間を体内半減期、あるいは生物学的半減期とよぶ[21]。これに対して、体内にある放射能の半減期を実効半減期といい、年齢や健康状態による個人差があるが、例えば物理学的半減期が約30年であるセシウム137は体外に排出されるため、実効半減期は約100日である[25]。
内部被曝の危険性
同一の放射性物質からの放射線に被曝する場合でも、外部被曝より内部被曝の方が危険な場合がある[26]。アルファ線は体外からの照射では、その大部分は皮膚の内側に達することはないが、体内にアルファ線を出す放射性物質が入ると、その周囲の細胞が照射されるため組織や器官の受ける放射線の量が大きく異なる[27]。透過力の弱いベータ線とエネルギーの低いガンマ線を出す放射性物質も外部被曝では影響を与える程ではないが体内にある場合の影響は大きくなる[26]。
生物学的半減期
体内に取り込まれた放射性物質は、時間とともに原子核崩壊をして減っていくのとは別に、生物学的な作用により体外に排出されることによっても減っていく。いずれの場合も、一定の時間に一定の割合ずつ減少していくので、その減り方は指数関数的[注 3]であり、一定の時間ごとに半分に減っていく。原子核崩壊のみによって半分に減る時間を物理学的半減期(または単に半減期)といい、生物学的な排出のみによって半分に減る時間を生物学的半減期という[28]。
両方の効果を考慮した実効半減期Teffは、物理学的半減期をTphysとし、生物学的半減期をTbiolとして以下の式で計算される。
核種の違いによる被曝の特徴
体内に取り込まれた放射性物質がどのように振舞うかは、その元素の化学的性質により様々である。例えば、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料として選択的に甲状腺に取り込まれ、第2族元素であるストロンチウムは骨中の同じく第2族元素であるカルシウムと置き換わって体内に蓄積することが知られている[29]。一方で、カリウムやセシウムは水に溶け込み全身の細胞内に広がる。このように、放射性物質の種類によって体内に摂取された後に存在する場所が変わる。
天然に存在する放射性カリウム、放射性炭素に関しては、これらが生体必須元素である関係上体内に保持される量はコントロールされており、放射性原子の数も一定に保たれている。カリウム、炭素の過剰摂取は即座の排泄、燃焼、摂食の低下などにより容易に是正される。したがって、大人の体内には約6000ベクレルのカリウム、炭素の放射性物質が一定量存在し続けている。一方で、体内に存在しないセシウム137を1年以上毎日10ベクレル摂取した場合は、生体半減期をふまえた上で約1400ベクレルのセシウム137が新たに体内に存在することになる[30]。放射性物質が体内から排出されることもあり、体内の放射能としてのセシウムの実効半減期は約100日である[31]。なお、セシウムは7万7000ベクレル分を食事から取り込めば、これによる内部被曝の線量は1ミリシーベルトになる[32]。
体内に入ってしまった放射線物質を検査する一般的な方法として、ホールボディカウンターによってガンマ線を測定・分析する方法がある。しかし、これはガンマ線が人体を透過することを利用したものであるため、ガンマ線を出さない核種の測定は不可能である。 例えば、ストロンチウム90はベータ線しか出さず、その娘核種のイットリウム90も極稀にしかガンマ線を出さない[33]ため、検出できない。そのような核種による被曝を調べるには、尿などの排泄物を検査・測定し、推定することになる[34]。
内部被曝の防止
チェルノブイリ原子力発電所事故で甚大な被害を蒙り、内部被曝により病気になる人が多発したベラルーシやウクライナでは、食品中に含まれる放射性セシウムの基準値を定めて、基準値を超える食品を流通させないことで内部被曝を防止している[35][36]。(→食の安全#放射能と食の安全を参照)
セシウム等の放射性物質を摂取後、速やかにプルシアンブルーを服用すると、消化管からの吸収を抑制する効果がある[37]。
放射性のエアロゾルまたは気体のある雰囲気中ではそれを除去できるフィルターを有した呼吸保護具等を装着しなければならない。ただし、内部被曝対策としてのマスク等の呼吸保護具は、外部被曝対策としては役に立たない[20]。
放射性物質が皮膚表面に付着しただけでは内部被曝とはならないが、閉じていない傷のある者は放射性物質の取り扱いを避けるべきである。また、手を汚染した場合は、その後の飲食、喫煙または化粧などによって汚染を体内に取り込む可能性が高い。したがって、放射性物質を取り扱う区域内では飲食、喫煙または化粧を行ってはならず、また取り扱いを中断・終了する時は必ず手に汚染がないことを放射線測定器で確認しなければならない。
細胞・遺伝子の被害と修復の過程
直接作用
電離放射線によるDNA分子の電離が直接にDNAの化学結合を切断するような作用を「直接作用」という[38]。
間接作用
一方「間接作用」とは、電離放射線によって水から反応性の高い・OH(ヒドロキシラジカル)などの活性種(水和ラジカル、Hラジカル、過酸化水素)が生成され、これらがDNAと化学反応することで損傷を引き起こすことである[38]。活性酸素の中でもヒドロキシルラジカルはきわめて反応性が高いラジカルであり、活性酸素による多くの生体損傷はヒドロキシルラジカルによるものとされている[39]。
間接作用ではDNA主鎖切断や、塩基障害、糖障害、酸化、水和化などの化学変化が発生する[38]。鎖切断には一本鎖切断と二本鎖切断がある[38]。一本鎖切断は正確な修復が可能であるが、二本鎖切断は修正不能や修正エラーを引き起こす場合があり、細胞死や突然変異の原因となる[38]。塩基への障害は直接、またはDNAの誤修復などを介して、これも様々な突然変異の原因となる[38]。これらは発ガンに関与し、遺伝的な影響に関係する[38]。このように損傷が修復できずに遺伝子に異常が残る時、細胞は自爆し消滅する[40]。なお、人体では数十個の細胞が失われて困ることはなく、異常な細胞が除かれることはむしろ望ましいことである[41]。
ペトカウ効果
長時間の低線量放射線被曝の方が短時間の高線量放射線被曝に比べ、はるかに生体組織を破壊するペトカウ効果の発見は[42][43]、合計被曝線量あるいは線量率とその被曝結果は直線的な関係となるとするLNT仮説(後述[注 4])を見直す契機ともなった。
バイスタンダー効果
また、放射線が1つの細胞を打撃した場合、打撃を受けなかった周囲の細胞の遺伝子も変性を受けることが明らかになっている。これをバイスタンダー効果という[44][45]。放射線に直接曝露された細胞とそうでない細胞(バイスタンダー細胞)間のシグナル伝達系が重要な役割を果しているとされる[46]。
なお、これまで報告された放射線誘発バイスタンダー効果による影響には、染色体異常、核分裂異常、突然変異、遺伝的不安定性、細胞死(アポトーシス)といった負の面が多かったが最近では増殖促進、分化誘導、放射線抵抗性及び温熱抵抗性の獲得という有益な影響が確認されている[47]。
高LET放射線と低LET放射線
α線や中性子線などのような、物質中を通過する際、飛程の単位長さ当りに失うエネルギーが大きい電離放射線のことを高LET放射線という[48]。高LET放射線による傷害の原因の大半は直接作用である[38][49]。アルファ線が細胞核に当たった場合、20%の細胞が死に、生き残った細胞もほとんどが異常となり、アルファ線が細胞質に当たった場合も、多くの細胞が異常細胞となる[50]。
一方、X線、γ線のような、物質中を通過する際、飛程の単位長さ当りに失うエネルギーが小さい電離放射線のことを低LET放射線という[51]。低LET放射線では、直接作用によるDNA鎖の切断と、間接作用による種々の塩基への傷害を起こす[38][49]。放射線等によってDNA分子に発生する構造の変化を「DNA損傷」と呼び、DNA損傷は低LET放射線の場合は直接作用より間接作用の方が多いとされている[52]。X線照射の場合、生物学的損傷の約1/3は直接作用、約2/3は間接作用の結果と考えられている[38]。
放射線の生物学的効果と細胞修復過程
以前は、放射線の影響はそのまま蓄積されるとされていたが、近年、被曝の影響は単純には蓄積されないことが明らかになっている[53]。放射線による生物学的効果は、同じ吸収線量でも放射線の種類や線量率(単位時間当たりの線量)によって異なる。短時間に高線量率で照射した場合に生じる生物効果に比べて、時間をかけ線量率を下げて照射すると生物効果は減弱する。これを線量率効果(dose rate effect)と呼ぶ。
線量率効果が顕著にみられるのは低LET放射線(エックス線やガンマ線)による生物効果であり、これは低線量率の場合は放射線による細胞の障害が照射中に回復するからと考えられている[54]。被曝によって発生する活性酸素は、生体の防御能力で消去され、DNA損傷が発生しても修復され、遺伝子に傷がある細胞ができてもがんにならないように自爆するという機能があるため、時間的に余裕があればあるほど影響は修復される[53]。たとえば、1年に1ミリシーベルトの割合で10年浴び続けることで計算上10ミリシーベルトになっても10ミリシーベルト分の影響があるわけではない[53]。
一方、高LET放射線(中性子線、アルファ線など)では低LET放射線のような回復は生じず、線量率効果はみとめられない。また、稀に高線量率より低線量率の方が効果が大きくなる場合もあり、これを逆線量率効果と呼ぶ[54]。一例として、ラドンの被曝や[55]中性子線は低線量率被曝の方が生物影響が大きい[56]。
直接作用と間接作用による損傷の殆どは、修復酵素等によって修復されるが、損傷が十分に修復できなかった場合、生体防御機構としてアポトーシス(細胞が自ら死滅すること、細胞自爆)等がある。しかし、損傷を受けた細胞が完全に取り除かれるわけではないため、細胞の損傷はたいへん小さな割合ではあるが残存することになる[57]。線量率効果については現在でも十分に解明されていないため、放射線防護の立場からは、急性被曝の場合でも慢性被曝の場合でも、線量当量が同じならば放射線被曝によって受ける人体の影響は同じであると見なされる[58]。
線量・線量率効果係数
原爆被爆者の調査から一気に被曝した場合100ミリシーベルトで発がんのリスクが1%高まることがわかっているが、同じ100ミリシーベルトでも長時間、長期間かけて被曝した場合はリスクは減少する[59]。このような線量率効果の度合を線量・線量率効果係数(低減係数[注 5])と呼ぶ[60][61]。国連科学委員会は動物実験からその影響は2 分の1 から10 分の1 と推測しており、ICRP は安全サイドに立ち2分の1 としている[59]。
生体防御機能群
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細胞は次のような防御機能を持っている[62]。まず細胞内で抗酸化分子を生産していること、DNAの修復機能があること、DNAのエラーごと細胞を廃棄する細胞死とアポトーシスがあること、および異端と判断された細胞を排除する免疫システムである[63]。なお、今日の放射線生物学者たちはこれらの防御機能が主に酸化攻撃に対応するものであり、放射線への対応は副次的としているが、米国科学アカデミーのBEIR委員会(電離放射線の生物学的影響に関する委員会)は対放射線防御と対酸化防御はまったくの別物であると主張している[64]。
放射線が当った場所には分解された分子の断片が残され、その中で反応性が高いラジカルと呼ばれるものは無傷の分子にも解離を生じさせるが、この反応は化学の領域に属するもので放射線と放射能は関与しない[65]。放射線が水分子に衝突すると水分子がOHとHに分かれ、・OH(ヒドロキシラジカル)という毒性の強い活性酸素が生じる[66][67]。中村仁信[68]によれば、運動・呼吸・食事によっても細胞ひとつについて1日10億個ほどの活性酸素が生じており、これに対応する生体の活性酸素消去能力があるので微量の放射線による分の活性酸素を特別に危険視する必要はない[66]。細胞は抗酸化分子を使い、放射線により直接生じたラジカルあるいは上記のように放射線に起因した化学反応によって生じたラジカルを抑え込むが、この防御は酸化全般に対するもので放射線被曝に応じたものではなく、細胞間の情報伝達の仕組みは警報システムとして機能し、細胞を協調させ、警告が行きわたる[69]。
生体組織に放射線が当り、その影響を受けた分子は、細胞内における生物学的機能を果せなくなることが考えられ、このような損傷を引き起こすものには分子同士のランダムな衝突や酸化などの化学作用もあるが、放射線によって損傷が起こされる場合は影響を受けた分子が狭い範囲に集中する点が異なる[70]。細胞にはふたつのレベルにおけるコピーによる防御の機能があり、そのひとつは各細胞内で重要な機能を担うタンパク質のほとんどは複数のコピーが存在することであるが、このしくみは細胞が再生したばかりでコピーの数が最も少ないときは放射線に対する感知能力が最も高くなるというようにできている[69]。タンパク質分子が損傷を受け機能を停止すると、無傷でいるほかの分子が役目を引き継ぎ、やがて傷ついた分子と無傷の分子の両方とも細胞の再生サイクルにより、何の悪影響も与えることなく新しい分子に置き換えられる[71]。
遺伝情報を持つDNAは、各細胞内に予備のコピーを抱えていないが、細胞そのものがコピーされること、さらに各DNAが属する細胞のみならず組織全体の完璧な情報を持つため不測の事態に対応できる[69]。DNAの鎖に起きた単独の破断を修復する酵素は各細胞にあり、しかもDNAが二重らせん構造をもつために1本の鎖が切れても全体はつながったままでいることから損傷の修復はミスなく行われる[69]。しかし発生頻度の低い、2本の鎖とも破断される場合には修復においてミスが起こる場合があり、別の防御策が必要となる[72]。活性酸素は細胞内DNAを損傷させ、普通の生活でもDNA損傷の数は1日当り数万から数十万個になるが、DNA損傷はすぐに修復される[73][74]。運動、過食、飲み過ぎ、紫外線、喫煙、ストレス、炎症などにより活性酸素は一層増加し、その分DNA損傷も増える[73]。これに対して、中村仁信によれば、放射線被曝線量が1000ミリシーベルトであればDNA損傷の数は2000個、100ミリシーベルトであれば200個程度であり、被曝線量が100ミリシーベルト以下の場合のDNA損傷は自然の変動幅に埋没してしまう程度であるが、放射線だけで生体の防御能力を超えなくてもタバコ+ストレス+放射線というように発がんの原因が重複して生体の防御能力を越えることもある[40]。細井義夫によれば、X線あるいはγ線による1Gy照射(1000ミリシーベルト)では人の細胞1個についてのDNA損傷の量は塩基損傷が約6,400個、一本鎖切断は600から1,000個、二本鎖切断は16から40個、DNA-タンパク質間架橋は約150個である[75]。
細胞内の幾層もの防御機能が対応できない場合には細胞全体の活発な再生機能が守ることになり、組織化された浄化プロセスであるアポトーシスと呼ばれる機能によって細胞は自発的に死ぬこともあれば細胞間の情報伝達で死を促されたり、攻撃されて死ぬこともある[76]。この防護機能の主な対象は、化学的な被害とランダムな破損であって電離放射線に特化したものではないが、重要な点は細胞間の情報伝達により特定の細胞が被害を受けたとか廃棄されるべきということが伝わり、免疫学的プロセスが不必要な細胞を排除することである[76]。人間には2万5千の遺伝子があるが、一定の数のDNA修復に関係する遺伝子、DNAの保護に関わる遺伝子があり、(アポトーシスを起させる)p53のような、最初のDNAを守っていたり、そういうところに関わる遺伝子を壊れるとガンになるということが分かっている。2万5千の遺伝子の中でどこがやられるかということは、極めて確率論的である[77]。放射線は腫瘍抑制遺伝子の不活性化因子として有効に働き、発癌の後期で進行因子の役割を果たすとする説がある[78]。
人体には通常においても放射性カリウムによる平均4000ベクレル分の放射能もあることから、人および動物は放射線障害に対して耐性(修復能力)を持っていると言える[79]。即死するか半数の人が60日以内に死亡する場合は全身に4シーベルト以上の放射線を浴びたときであるが[80]、これをグレイに換算するなら放射線荷重係数が20であるアルファ線なら0.2グレイ、放射線荷重係数が1であるX線、ガンマ線、ベータ線なら4グレイである[81]。これらに比べ癌治療のために行われる放射線の照射[82]は英国の場合、乳癌であれば2.7グレイの照射を週5回の頻度で16回行うことが推奨されており、その合計の線量は42.5グレイとなり、また前立腺癌であれば2グレイの照射を週5回の頻度で39回行うことが推奨され、合計の線量は78グレイに及ぶ[83]。これらの量は1回で全身に浴びれば死亡するレベルをはるかに越えているが[80][84]、これほど大量の放射線を治療として使用できるのは照射を分割していることと全身ではなく必要な範囲だけに放射線を浴びせていることが主な理由であり[85]、線量の分散化はDNAの簡単な損傷を修復するための時間を健康な組織に与えている[86]。生物学の研究によれば年齢と部位による差があるものの、標準的な修復時間は数時間と考えられているが[87]、一方、放射線治療(放射線療法)では事実上、その時間を1日と判断している。[88]。なお、癌治療における放射線治療は、局所的な照射であり、患者は治療期間において局所被曝を受け続けることになり、全身に対する照射でないだけに、生体に備わった軽減効果が小さくなっていると考えられる[89]。
放射線線量とリスクの数値化
被曝の程度は、被曝した放射線の線量によって表すことができる。放射線線量の単位系は、吸収線量と線量当量に大別することができる。
吸収線量とは、放射線が物体に与えた(物体に吸収された)エネルギーの量である(単位はグレイ(Gy))。
他方、線量当量は、放射線によって生体が受ける生物学的影響を表す量である(単位はシーベルト(Sv))。
吸収線量
放射線が物体に照射されると、放射線のエネルギーの一部は物体に吸収される。被曝の程度を物体1kgに吸収されたエネルギーで表したものが吸収線量(absorbed dose)である。
単位は J(ジュール)/kgであるが、1グレイ(Gy)=1J/kgと定義し、吸収線量では「グレイ」(Gy) を使う。放射線の種類によりエネルギーの吸収度は異なる[90]。過去にはラド(rad)という単位も使われていた。1Gy=100radとして換算することができる。
線量当量
放射線が生体に与える生物学的影響を考えるとき、それぞれの放射線の特性により同一の吸収線量(エネルギー量)でも影響が異なる。このことから、生物学的影響を共通の尺度で評価するために考案されたのが線量当量(dose equivalent)である。線量当量は吸収線量に修正係数を掛けることで求められる。単位はシーベルト(Sv)が使用されるが、レム(rem)もまだ使われており、「1rem=0.01Sv」として換算することができる[91]。
線量当量には、局所臓器を対象とする等価線量と、全身を対象とする実効線量がある。
等価線量
等価線量(equivalent dose)とは、修正係数として放射線荷重係数を使用することで算出される線量当量であり、各臓器への個々の生物学的影響をはかるために用いられる[90]。すなわち、計算式は、以下の通りである。
- 等価線量 = 吸収線量 × 放射線荷重係数
放射線荷重係数は、放射線の種類によって値が異なり、X線、ガンマ線、ベータ線は 1、 陽子線は 5、 アルファ線は 20、 中性子線はエネルギーにより 5 から 20 までの値をとる。
実効線量
実効線量(effective dose)とは、各組織・臓器ごとの等価線量に組織荷重係数を乗じて合計したものであり、体全体への生物学的影響をはかるために用いられる[90]。組織荷重係数とは、各組織・臓器における放射線の影響度(放射線感受性)の指標となる係数であり、各組織・臓器がどれだけ放射線の影響を受けやすいかという度合いである[90]。
計算式は、以下の通りである。
- 実効線量 = (その臓器の等価線量 × その臓器の組織荷重係数)
- = (生殖腺の等価線量 x 生殖腺の組織荷重係数) + (赤色骨髄の等価線量 x 赤色骨髄の組織荷重係数) + ()+()+()....
国際放射線防護委員会(ICRP)がこれまでに勧告した各組織・臓器の組織荷重係数は下表の通り[92][93][94]。なお、各個人の組織・臓器の係数の和は1であり、現行の国内法は1990年勧告の組織荷重係数を元にしている。
組織・臓器 | 組織荷重係数 | ||
---|---|---|---|
ICRP103 (2007年) | ICRP60 (1990年) | ICRP23 (1977年) | |
生殖腺 | 0.08 | 0.20 | 0.25 |
赤色骨髄、肺 | 各 0.12 | 各 0.12 | 各 0.12 |
結腸、胃 | 各 0.12 | 各 0.12 | 項目なし |
乳房 | 0.12 | 0.05 | 0.15 |
甲状腺 | 0.04 | 0.05 | 0.03 |
肝臓、食道、膀胱 | 各 0.04 | 各 0.05 | 項目なし |
骨表面 | 0.01 | 0.01 | 0.03 |
皮膚 | 0.01 | 0.01 | 項目なし |
唾液腺、脳 | 各 0.01 | 項目なし | 項目なし |
残りの組織・臓器 | 0.12 | 0.05 | 0.30 |
ここで注意が必要なのは、等価線量も実効線量も同じシーベルト(Sv)の単位で表しているために混同しがちであることである。例えば、被曝が皮膚のみで、その被曝量が100mSv(等価線量)である場合、実効線量は、皮膚の組織荷重係数(0.01)をかけて、1mSvとなる。被曝しきい値などの記述で実効線量と等価線量が併記されている場合は、それぞれどちらの線量を示しているのか確認する必要がある。組織荷重係数は小数点以下なので、実効線量は等価線量よりもはるかに低い値となることが多い。
なお、臓器・組織の線量を直接測定できないため、放射線業務従事者等の外部被曝の実効線量は通常は個人線量測定器の測定結果から法令等に基づく計算式で算出し、内部被曝の場合は実効線量係数を用いて算出する。実効線量係数とは、内部被曝の元になる体内に入ってきた核種からの被曝線量を算出する為の係数である。各放射性元素でもその化学形態で被曝量はことなり、また吸入か経口摂取かの違いでも異なってくる、等で換算係数には大きく幅がある[90][95]。
例) 単位は(mSv/Bq) Bqはベクレル
核種 | 換算係数 |
---|---|
三重水素 3H | 1.8x10-8 |
ヨウ素 131I | 1.1~2.2x10-5 |
セシウム 137Cs | 1.3x10-5~6.7x10-6 |
プルトニウム 239Pu | 9.0x10-6 ~ 3.2x10-2 |
外部被曝による実効線量の計算
ここでは放射線業務従事者等が装着した個人線量測定器[96]の測定線量から日本の法令に基づいて外部被曝による実効線量を計算する場合を述べる。
外部被曝による実効線量計算式を示すにあたっては個人線量モニタリングの方法に触れる必要がある。
線量当量には区分があり、皮膚表面からの深さによって70μm線量当量、3mm線量当量、1cm線量当量となっていて、70μmは皮膚の基底層、3mmは眼の水晶体、1cmはその他すべてを対象とする線量当量である[97][98]。
また、個人線量モニタリングは全身均等被曝を基本的な仮定とし、男子(および妊娠不能な女子)は胸部に、妊娠可能な女子は腹部に個人線量測定器を装着する。これは女子では胎児被曝を主に考慮しており、男子では造血組織である赤色骨髄の被曝を主に考慮しているためである。
不均等被曝が考慮されるべき場合には全身を「頭頸部」、「胸部・上腕部」、「腹部・大腿部」、「その他」の4部位に区分してその部位内では均等被曝を仮定し、全身均等被曝の場合の個人線量測定器装着部位以外の部位が最大被曝をするおそれのある場合にはその部位にも装着する。手指などの「その他」の部位が多く被曝する放射線作業では指輪型個人線量測定器も用いられるが、「その他」の部位は(中性子線被曝がない限り)皮膚の70μm線量当量のみを測定する[99]。例えば、X線使用業務で肩から膝下まで鉛入り防護エプロンを着用する場合は個人線量測定器をエプロンの下の胸部または腹部に装着し、さらに頭頸部(エプロンの外)に装着し、また作業内容によっては手指にも装着することになる。
以前は3種類の線量当量すべてを測定することとなっていたが、2001年の改正法令施行により70μm線量当量と1cm線量当量のみの測定となった。これは実務上、3mm線量当量が他の二者の大きい方を超えないためで、眼の水晶体の等価線量はいずれか大きい方の値(安全評価側)を採用する[100]。
実効線量の計算には1cm線量当量のみが用いられる。過去の法令では組織荷重係数を元にした「実効線量当量」の計算式が示されていたが、ICRP 1990年勧告を受けた2001年の改正法令施行により組織加重係数がICRP 1977年勧告から変更され、不均等被曝による影響が小さくなったとして実効線量の計算式は放射線障害防止法令に明示されず、「適切な方法による」という表現になった。しかし、科学技術庁(当時)の通知には参考として平成11年4月の放射線審議会基本部会の示した式を掲載しており[101][94]、事実上以下の式が現在の計算式となっている。
- HEE = 0.08Ha + 0.44Hb + 0.45Hc + 0.03Hm
ここで
HEE : 外部被曝による実効線量当量
Ha : 頭頸部における1cm線量当量
Hb : 胸部および上腕部における1cm線量当量
Hc : 腹部および大腿部における1cm線量当量
Hm : 頭頸部、胸部・上腕部および腹部・大腿部のうち外部被曝による線量当量が最大となるおそれのある部分における1cm線量当量
である。
男性がX線使用業務で肩から膝下まで鉛入り防護エプロンを着用し、頭頸部線量当量が胸部・上腕部線量当量より大きかった場合を例にすると
HEE = (0.08 + 0.03) Ha + (0.44 + 0.45) Hb
となる。
預託線量
内部被曝分を物理学的半減期と生物学的半減期(人体の代謝排泄機能による)を考慮して一生(50年間; 子供の場合は70歳になるまで)における総被曝量を累計したものが預託線量である[90]。また、これに放射線荷重係数、組織荷重係数を掛けることで、実効線量に相当する値を算出することができ、これを預託実効線量と称する。内部被曝による被曝は長期にわたるため、生涯の健康リスクを評価するには預託実効線量を用いる[102]。
集団積算線量
原子炉など原子力関連施設に起因する社会的リスクを把握する為の指標として集団積算線量(集団実効線量とも)がある(単位は「人・Sv(man Sv)」)[103]。これは、評価対象とする集団における1人当たりの個人被曝線量を全て加算したもので[104]。この指標は疫学研究の指標でなく、原子炉の立地審査や核実験による放射性降下物や重大事故の評価等に使われる[105]。
放射線障害
放射線障害は、「出現パターン」(発症率と発症メカニズム)や「影響パターン」(影響を与える領域と発症時期)によって、下表のように分類することができる。
影響の出現する個体に 着目した分類 |
疾患名 | しきい線量の有無に 着目した分類 | |
---|---|---|---|
身体的 影響 |
早発性(急性)障害 | 急性放射線症候群、不妊 | 確定的影響 |
晩発性障害 | 放射線性白内障、胎児への影響(胎児の奇形など)、加齢(老化)現象 | ||
悪性腫瘍(癌、白血病、悪性リンパ腫) | 確率的影響 | ||
遺伝的影響 | 染色体異常(突然変異) |
人体に対する影響についての一覧表
以下、放射線の人体に対する影響に関する一覧表である。
単位はミリシーベルト (mSv)。1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト。(1レムremは0.01シーベルト)
実効線量 | 期間 | 内訳 |
---|---|---|
0 | 細胞の死滅(カリウム40を排除した細胞実験の報告)[106] | |
0.02 | 年 | 1日1時間ブラウン管テレビを見ることによる年間被曝量[107] |
0.05 | 年 | 原子力発電所の事業所境界での1年間の線量。 |
0.1 - 0.3 | 胸部X線撮影1回分の線量。 | |
1 | 年 | 一般公衆の1年間の人工放射線による被曝の限度(ICRPの勧告)。 |
1 | 日 | 宇宙に滞在する宇宙飛行士の1日当りの被曝線量[108]。宇宙線による被曝線量は半年の宇宙滞在で180ミリシーベルトに達し[108]、宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士のリンパ球には高頻度の染色体異常が見出される[109]。これによる健康被害を考慮し、宇宙飛行士の宇宙滞在期間は半年となっている。 |
1.5 | 年 | 1年間に自然環境から1人が受ける放射線の日本平均[108]。 大気中のラドンからの年間被曝以外の県別平均被曝線量0.81~1.19mSv、最も低いのが神奈川、高いのが岐阜[110]。(2011福島原発事故以前) 日本ではラドンからの被曝は0.4mSvと世界平均(1.26mSv)より低いと推定されている[111]。 |
2 | 原爆手帳が交付される境界となる爆心地から12km地点における被曝量。[112][113]。 | |
2.4 | 年 | 1年間に自然放射線源から人が受ける放射線の世界平均[6][13]。
主な範囲は1.0~13.0mSvであり[114]、世界各地の高線量地域では何十万もの人口が10mSv以上の被曝をしている[115]。 |
4 | 胃のX線撮影1回分の線量。 | |
10 | 年 | 日本国原子力安全委員会の指針での一般人の「屋内退避」 |
7 - 20 | X線CTによる撮像1回分の線量。 | |
20 | 年 | アメリカにおける汚染地区からの移住しきい値(初年度の年間総合被曝)、以降の年は5mSv[116]。放射能汚染対策#アメリカでの体制を参照。 |
50 | 年 | 日本国原子力安全委員会の指針では一般人の「避難」自衛隊・消防・警察 (妊娠可能な女子を除く) が1年間にさらされてよい放射線の限度[要出典]。 放射線業務従事者の単年での最大被曝限度であり、5年間での限度値100mSvの年平均は20mSv。次節参照。染色体異常が確認できる[117]。 |
81 | 広島における爆心地から2km地点での被曝量[118]爆発後2週間以内に爆心地から2km以内に立ち入った入市被爆者(2号)と認定されると、原爆手帳が与えられる[113]。 | |
100 | 急性 | 原子力安全委員会によると、比較的高い線量を短時間に受けて現れる「確定的影響」の閾値は100mSv。被曝から一定期間を経た後にある確率で、固形がん、白血病等を発症する「確率的影響」は、100mSvを超える被曝線量とその影響の発生率との間に比例性があると認められている。ICRPは、全世代を通じたがんのリスク係数(100mSvの被曝は生涯のがん死亡リスクを0.55%上乗せする)を示している。100mSv以下の被曝線量では、確率的影響の存在が見込まれるが不確かさがある[119]。沢田昭二によれば、放射線感受性には大きな個人差があり、確定的影響には発症する線量に個人差がある[120]。放射線影響研究所の論文(2000年)では原爆生存者の追跡調査から100mSv以下の被曝でも統計学的に有意なリスクがあるとしている[121]。David J. Brenner(コロンビア大学放射線研究センター)らによる研究グループは、10mSv~50mSvの急性被曝、あるいは50mSv~100mSvの長期(慢性)被曝を超える被曝量について、ヒト集団から得られる疫学的証拠は、被曝がガンのリスクを増加させることを示していると結論付けた[122][123][124]。 |
100 - 150 | ガン(転移している可能性が高い悪性リンパ腫)に対する生体の免疫機能を最も高める全身あるいは半身への照射量であり、治療のための局所照射の効果を増強し治癒率を高めたとする報告がある[125]。 | |
250 | 急性 | このレベル以上でリンパ性白血球の減少が起きる[117]。これ以下では身体的所見はないものとしている[117]。(一度にまとめて受けた場合、以下同じ) |
500 | 急性 | このレベル以上で白血球の内のリンパ球および顆粒球が減少する[117]。 国際放射線防護委員会による人命救助を例外とする上限[要出典]。 |
1,000 | 急性 | 急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁[要出典]。 |
2,000 | 骨髄移植のために行われる全身照射の一回の照射量(総量で12,000mSvを照射するが1日2回の照射を3日間で行うというように分割されている[126])。これは、患者の体内の白血病細胞をすべて死滅させること、また免疫力を喪失させて、患者が移植されたドナーの骨髄を受け入れるようにすることを目的としている[127]。 | |
2,000 | 急性 | 全身被曝によって2 週間以内に5%が致死[117]。 |
3,000 - 5,000 | 急性 | 50%の人が死亡する。半数が死ぬ線量(半致死量)は文献によつて2,500mSv〜4,000mSvの幅がある。それより低い線量でも各種の急性障害が生じる[128]。(人体局所の被曝については3,000 : 脱毛、4,000 : 永久不妊、5,000 : 白内障、皮膚の紅斑)[129] |
7,000 - 10,000 | 急性 | 99%の人が死亡する。ただし、頭部や胴体ではなく手足のみに被曝をした場合は、手足の機能に障害 (熱傷等) が出る[要出典]。 |
10,001以上 | 急性 |
放射線の人体に対する影響は、被曝した体の部分などにより異なる。上記の表ではX線撮影、X線CTおよび注記されているもの以外は全身に対するものである。
X線検査の数値は調査年代(検査装置の性能)や報告(調査対象となった医療機関による使用方法)によってばらつきがあるため、目安である。
法令による被曝線量の限度には、自然放射線による被曝と診療を受けるための被曝は含まれない[9]。
職業被曝
職業被曝は就業中に受ける放射線および放射性物質(内部被曝は非勤時にも継続する)による被曝である。これらには核燃料サイクル従事者、放射線医学従事者、放射性物質の産業・教育・軍事利用にたずさわる業務の他に、天然に存在する放射性物質(NORM;Naturally occurring radioactive material)からの作業環境での増幅された被曝があり、鉱山、石油、天然ガス、航空産業などがあげられる。
以下の数値はUNSCEAR2008報告書より[130]。
- 核燃料サイクル従事者では平均年間1.0mSvで、70年代からは数分の一と大きく改善された。
工程 | モニターされた従業員数 (x1000) |
平均集団積算線量 (man Sv) |
平均実効線量 (mSv) |
---|---|---|---|
採鉱 | 12 | 22 | 1.9 |
精錬 | 3 | 3 | 1.1 |
濃縮 | 18 | 2 | 0.1 |
燃料製造 | 20 | 31 | 1.6 |
原子炉運転 | 437 | 617 | 1.0 |
再処理 | 76 | 68 | 0.9 |
研究 | 90 | 36 | 0.4 |
合計 | 660 | 800 | 1.0 |
- その他の業務で天然に存在する放射線(NORM;Naturally occurring radioactive material)による被曝についてはUNSCEARでは9つの業種を重要視している。
- 金属の採鉱・精錬、リン鉱石・肥料関連、採炭とその燃焼、石油、天然ガスの採掘、希土類とチタニウム関連業種、ジルコニウムとセラミック業界、天然放射性物質を利用する業界、建築物解体廃棄業界。
業種 | 就業者数 (百万人) |
集団積算線量 (man Sv) |
平均実効線量 (mSv) |
備考 |
---|---|---|---|---|
炭鉱 | 6.9 | 16560 | 2.4 | |
その他の鉱山 | 4.6 | 13800 | 3.0 | ウランを除く |
放射線医療従事者 | 1.24 | 日本1.33 | ||
航空機乗務員 | 2~3 | 宇宙線によるもの | ||
その他の業務 | 1.25 | 6000 | 4.8 | |
平均 | 2.9 |
軍事兵器等による被曝
原子爆弾、水素爆弾、中性子爆弾などの核兵器の使用やまたその開発のための核実験などによって、被曝する事例がこれまでに多数ある。
原子爆弾
太平洋戦争で連合軍によって広島と長崎に投下された核兵器の原子爆弾は、高温の熱線と強い爆風だけでなく、強い放射線を放出し、放射能を有する塵などを多量に排出したため、被害はTNT換算で推し量れる爆発の熱や爆風だけに留まらず、原爆症と呼ばれる放射線障害・ 急性放射線症や、白血病や癌などの病気を被曝者に引き起こした。なお、被爆は爆撃による被害を受けること、他方、被曝は放射線にさらされた場合を指すため、厳密には、核爆弾による直接攻撃を受けた者は「被爆者」、直接の被害は受けず、核爆発に伴う残留放射能を浴びた者は「被曝者」であるが、日本では便宜上前者を「一次被爆者」、後者を「二次被爆者」と呼ぶ。
東北大学の医師瀬木三雄の統計に基づく研究によると、広島・長崎の原爆投下から5年後に小児がんによる死亡率が3倍に上昇し、その後も核実験が繰り返されるとその5年後に死亡率が急上昇した。1965年には戦前の7倍に達し、その後、大気圏内で核実験がおこなわれなくなると、死亡率は低下傾向を示した[131]。
核実験による被曝
核兵器の開発を目的とした核実験による被曝もある。1945年7月16日にアメリカで人類最初の核実験であるトリニティ実験が実施された。その後、日本への実戦使用を経て、第二次世界大戦後はマーシャル諸島のビキニ環礁やエニウェトク環礁と合わせて67回の核実験を行い[132][133]、米国のネバダ州では928回行われた。1954年には遠洋漁船第五福竜丸がビキニ環礁での核実験の際、被爆し、船員が帰国後死亡する事件が発生した。船員は多量の放射性降下物(いわゆる死の灰)を被曝したと日本人医師団は主張したが、米国側は「放射能よりもむしろサンゴの塵の化学的影響」として放射線障害を否定した。
この他、ソ連(現ロシア)はセミパラチンスク核実験場やノヴァヤゼムリャなどで、他にイギリスやフランス、インドなども核実験を実施した。ソ連からの技術供与を受けた中華人民共和国も、ロプノールなどで核実験を行っており(中国の核実験参照)、東トルキスタン地域住民の被曝と健康被害が報告されているほか、チベット地域では放射性廃棄物を地層処分する際の浅層処分による住民の被曝が問題になっている。放射性廃棄物の処分は国際的に深層処分が主流であるが、中国政府は浅層処分で 「充分に安全」 としている。
劣化ウラン弾
その他、劣化ウランを原料とした劣化ウラン弾による被曝もある。1991年の湾岸戦争、2003年3月以降のイラク戦争で米軍によって使用されたが、人道的な観点から是非が議論されている。しかし、劣化ウランの放射能は14.8 Bq/mgであり[134]、天然ウランの25.4 Bq/mgと比較すると約6割と低く、また劣化ウラン粉塵の吸入や経口摂取で人体に吸収される質量は少なく、放射能は多くないため、放射線障害の確定的影響を考慮する必要はないとされる。問題となるのは確率的影響によるガン性のものであるが、確率を推定するための疫学データが乏しく、ICRPの確率的影響の評価でも、この劣化ウランによる低線量被曝は言及されていない。
原子力事故による被曝
原子力発電所や、原子力潜水艦の事故を原子力事故といい、原子力の利用がはじまって以来、多数の事故が発生しており、多数の人間が被曝している。
国際原子力事象評価尺度 (INES) による影響度指標[135]のうち、最悪レベルのレベル7とされる事故には、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故、2011年の福島第一原子力発電所事故がある(福島第一原発事故による放射性物質の拡散も参照)。ほかに1957年のウラル核惨事(レベル6)、ウィンズケール原子炉火災事故(レベル5)、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故(レベル5)などがある。チェルノブイリ原発事故によって日本にも放射性降下物が降ったが、その降下物の量に相関して10年後に乳がんの死亡率が上昇したとされる[136]。
※各事例の被曝の詳細については、各記事を参照のこと。
また、濃縮ウランやプルトニウムのような核分裂性物質の内部で核分裂連鎖反応が不始末の状況下で偶発的に起こった事故を臨界事故といい、臨界事故によって放出される中性子線は付近にいる人間にとって極めて危険である。1945年のアメリカのダリアンによる事故以来、ユーゴスラビアやアルゼンチンや日本の1999年の東海村JCO臨界事故まで複数発生している。
化学 ・生物 ・放射性物質 ・核 ・爆発物 によって発生した災害を頭文字をとってCBRNE(シーバーン)災害という。
生活用品などによる公衆の被曝
生活用品などには意図的に放射性物質が使用されているものもあり、農産物、特にタバコのようにリン酸系肥料(Pb210やPo210を含む)により汚染されたものもある。それらからの被曝は以下のように報告されている[137]。
製品 | 実効線量(μSv/年) | 備考 |
---|---|---|
腕時計の夜光塗料 | 0.3~10 | プロメチウムやトリチウムによるもの |
煙探知機 | 0.07 | |
ウラン釉薬の壁タイル | 1未満 | |
カメラのレンズ(放射能レンズ) | 200-300 | レンズに添加されたトリウム酸化物等によるもの |
タバコの喫煙 | 10 | タバコの葉に付着した放射性物質によるもの |
喫煙による被曝
喫煙による被曝は主にタバコの葉に付着したポロニウム(Po210)の吸引によるもので、ポロニウムはリン鉱石からつくられた肥料に由来するものである。1966年のアメリカにおけるアメリカ合衆国農務省(USDA)とアメリカ原子力委員会による実験では市販のリン酸系肥料と化学的に純粋なリン酸カルシウムとでのタバコの栽培の比較では、市販の肥料には13倍のラジウム226が含まれ、栽培されたタバコの葉には7倍近いポロニウムが蓄積されていた。1974年の追試ではウランの濃度の高いリン酸系肥料の使用により、ラドン222が大気中に拡散し、崩壊した鉛210が葉の毛状突起等に付着し崩壊してポロニウム210となると分析された。ポロニウムは喫煙に起因する肺癌の少なくとも2%を占めていると予想されている[138][139]。
被曝線量に関してはUNSCEARの報告の10μSv/年とはかけ離れた様々な報告がある。例:イタリアのウルビーノ大学の研究者たちは、一日20本の喫煙でポロニウム210から124.8 μSv/年、鉛210から162.6 μSv/年の被曝があると報告している[140]。 放射線医学総合研究所の研究グループはタバコによる喫煙者の年間実効線量をおよそ200μSv/年と評価した[141]。 アメリカ陸軍工兵隊では除染作業(FUSRAP)の関連資料の中で一日二箱の喫煙で8000 mrem/年(80 mSv/年)の被曝があるとしている[142]。
上記のように喫煙による被曝は数十mSvにのぼるというような報告もあり、その数値は原発事故の避難区域で想定される被曝線量を大きく上回る。なお、福島原発事故の際、作業員が「喫煙者だから避難しても意味が無い」と語ったり、原発復旧作業中にマスクを外して喫煙していたことなどが報道された[143]。
被曝と社会運動
上記の被曝のうち、特に核兵器による被曝や、核実験また「原子力の平和的利用」として開発と設置が進められてきた原子力発電などの原子力事故を受けて、放射性物質による被曝および被曝のリスクも含めて、これまでに世界規模で反核運動が行われてきた。
日本では第五福竜丸被爆事件を契機に安井郁(やすいかおる)が原水爆禁止運動を組織化し、1955年に原水爆禁止日本協議会を設立した。以降、大規模な事故や事件に応じて、様々な反核運動や原子力撤廃運動が展開した。2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、様々な運動が展開している(福島第一原子力発電所事故の影響を参照)
※各運動団体、運動の歴史、また各界による発言や対応などについては反核運動および原子力撤廃を参照のこと。
被曝限度と規制
国際放射線防護委員会の勧告
国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告は、放射線防護の世界的基準となっている[144]が、他方、同委員会による勧告については、基準が緩すぎるとする批判や、また逆に基準が厳しすぎるとする批判がある。
また、矢ヶ崎克馬などは、ICRPの基準は分子生物学以前の体系を保ったままであり、DNAや細胞レベルの放射線障害を評価する手段をもたないと批判している[145]。ヨーロッパの市民団体である欧州放射線リスク委員会は、低線量の内部被曝についてのICRPのリスク評価モデルが100倍から1000倍の規模でリスクを過小評価し、誤っていると主張している[146]。
日本の法規制
法律で規制される被曝限度には、自然被曝と医療被曝は含まれない[9]。
被曝のおそれのある場所は放射線管理区域に指定され、厳密に管理される。さらに、放射性物質の付着や内部被曝のおそれがある区域は「汚染のおそれのある管理区域」(その他は「汚染のおそれのない管理区域」)として、防護服を着用するなどの汚染防止策が採られる。
また、業務上放射線を扱うため被曝のおそれがある労働者については年間等の被曝線量に限度が設けられており、これを超えて従業することは国際放射線防護委員会の勧告に基づいた放射線障害防止法、電離放射線障害防止規則、人事院規則10-5、医療法施行規則等により多重規制されている。
管理区域に立ち入らない一般公衆の被曝線量限度は、これらの法令による放射線管理区域等からの漏洩放射線線量率や、放出される放射性同位元素濃度の規制により放射線業務に従事する者の限度より遥かに低く抑えられるように義務付けられている[147]。
放射線業務従事者に係る線量限度
「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」では放射線業務従事者に係る線量限度を以下のように規定している。原子力事故の際の放射能汚染に対する各国の対策については「放射能汚染対策」を参照。
実効線量限度(mSv) | 期間 | μSv/時 | 対象 注5 |
等価線量限度 mSv (組織荷重係数= ) |
備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
皮膚 (=0.01) | 目の水晶体 (=0.05) | ||||||
通常作業時 | |||||||
1注1 | 8か月注2 | 約0.17注3 | 妊婦 | 500 /年 |
150 /年 |
腹部表面の等価線量限度は2 mSv 電離放射線障害防止規則第5条および第6条 東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則第4条 参考(生殖腺の組織荷重係数=0.08 ICRP103勧告) | |
5 | 3ヶ月 | 10注4 | 女 | 20 mSv/年、100 mSv/5年、結果的に通期で妊娠していなかった場合 電離放射線障害防止規則第4条第2項および第5条 東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則第3条第2項 | |||
50 | 1年 | 25注4 | 男 | 単年で最大50 mSv、ただしその前後5年間で100 mSvを超えてはならない。平均20 mSv/年 電離放射線障害防止規則第4条第1項および第5条 東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則第3条第1項 | |||
100 | 5年 | 10注4 | 男 | ||||
緊急災害復旧作業(民間の臨時復旧作業者も含む) | |||||||
100 | 累計 | 33注6 | 男 | 1000 | 300 | 原子炉の冷却や放射性物質放出抑制設備の機能維持のための作業者 電離放射線障害防止規則第7条第2項 | |
出典)日本原子力研究開発機構 「放射線業務従事者に係る線量限度」より 閲覧2011-7-15 高度情報科学技術研究機構ATOMICA「緊急作業に係る線量限度2002年2月」閲覧2011-7-17
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- アメリカの放射能汚染復旧作業指針における人命を守るための作業者の被曝上限値は250mSv(外部被ばくのみで内部被曝は回避できるとの条件付き)。
低線量被曝と「しきい値」
低線量の放射線による被曝の人体・生体への影響および健康被害については様々な学説と議論があるが、とりわけ、ある「しきい値」(境界値)よりも少量の被曝は安全とする学説と、どれほど低線量であっても放射線被曝は有害とする学説(直線しきい値無し(LNT)仮説)があり、議論が続いている[148][149]。しきい値の存否、またその具体的な値については、現在も確定していない[129]。
直線しきい値なし仮説
直線しきい値なしモデル(LNTモデル)は、線量とがんや白血病などの発生確率は比例するとし、「しきい値」はないとする。LNTモデルは1977年に国際放射線防護委員会(ICRP)勧告において、人間の健康を護る為に放射線を管理するには最も合理的なモデルとして採用された[150][151]。各国の国内規制もこの勧告に準じていることが多い。その他、米国科学アカデミーによる電離放射線の生物学的影響に関する委員会(BEIR)報告[152]や、アメリカ放射線防護測定審議会(NRCP)科学委員会による報告[153]などもLNT仮説を支持している。
しきい値仮説
2005年にフランスの医学・科学アカデミー合同報告書は、100ミリシーベルト以下の低線量域でLNT仮説を適用することは過大評価になるとしている[154]。
日本の原子力安全委員会は100mSv以下の被ばく線量による確率的影響について「見込まれるものの不確かさ」があるとしている[155]。
- 放射線ホルミシス仮説
しきい値仮説に含まれる学説として、トーマス・D・ラッキーが提唱した放射線ホルミシス仮説がある。この考え方では、少量の放射線被曝がもたらす影響について、「むしろ健康によい」とする[129]。この放射線ホルミシス仮説に関するものとしては、放射性同位体であるラドンやラジウムによる放射線を利用したラドン温泉やラジウム温泉などの放射能泉がある。
リスクを過小評価しているという批判
しきい値の問題とは異なる観点からは、1974年にタンプリンとコクランによって提唱された局所被曝の危険性は全身被曝より高いとするホットパーティクル仮説からのものがある(この仮説をICRPは採用していない。)[156][157][158]。欧州緑の党が設立した民間団体欧州放射線リスク委員会 (ECRR) は2003年勧告の中で、この仮説に準じて、LNT仮説は内部被曝や低線量の被曝を過小評価していると批判した[159]。なおECRRはしきい値は認めていない。
脚注
注釈
- ^ 後述
- ^ 被曝#低線量被曝と「しきい値」参照
- ^ ヨウ素など生物学的半減期が臓器によって差異がある(甲状腺で約120日、その他の臓器で約12日)ものもある。
- ^ 被曝#直線しきい値なし仮説参照
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