放射線障害

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放射線障害とは、生物体が放射線被曝することにより発生する身体的障害の総称である。

目次

[編集] 概要

放射線は、その電離・励起能力によって生体細胞内のDNAを損傷させる。軽度のDNA損傷は修復されるが、修復が不可能である場合にはDNAが損傷したまま分裂するか、もしくは細胞死を起こす。これらの影響が蓄積・拡大して身体機能を低下させるようになったものが放射線障害である。

被曝によるDNA損傷が発生し、それが修復されることなく固定された場合、細胞の活動が異常化し、がん白血病を引き起こす場合がある。これは自然放射線レベルの少量の被曝でも発生する可能性がある。

また、多量の放射線に被曝し、特定の器官において多数の細胞が死滅した場合には、その器官の機能が損なわれ、生物体に身体障害を引き起こす。

[編集] 確率的影響

主にDNA損傷が固定化したことで発生する影響である。被曝者本人に発現するがん白血病のほかに、遺伝子の異常によって子孫に遺伝障害が現れることもある。少量の被曝でも発生する可能性があり、被曝した線量が多くなるほど発生する確率が高くなる。被曝線量が障害の発生確率に関係するため、確率的影響と呼ばれる。

※現在のところ確率的影響が医療被ばくなど、50mSv以下の極低量の被ばくでも被ばく量と確率的影響の発生確率が比例するという証拠は無い(むしろ動物実験からは否定的である)が、充分な安全確保を考え、低量でも比例関係が成り立つと仮定し(LNT仮説)安全基準が設けられている。(下記 低量放射線をめぐる議論)

[編集] 確定的影響

主に細胞死によって生体器官の機能が損なわれて生じる影響である。ごく少量の被曝では影響が現れず、一定のしきい線量を超えて被曝すると影響が発現する。細胞死による機能低下によりほぼ確実に身体機能が損なわれるため、確率的影響に対比して確定的影響と呼ばれる。

以下に挙げるものが人体についての代表的な確定的影響である。

[編集] 体内器官の障害

細胞の放射線感受性は、活発に分裂している細胞ほど高くなり、造血器などの細胞再生系が最も影響を受けやすくなる。

1Gy(グレイ)以上被曝すると、一部の人に悪心、嘔吐、全身倦怠などの二日酔いに似た放射線宿酔という症状が現れる。

1.5Gy以上の被曝では、最も感受性の高い造血細胞が影響を受け、白血球血小板の供給が途絶える。これにより出血が増加すると共に免疫力が低下し、重症の場合は30-60日程度で死亡する。

5Gy以上被曝すると、小腸内の幹細胞が死滅し、吸収細胞の供給が途絶する。このため吸収力低下による下痢や、細菌感染が発生し、重症の場合は20日以内に死亡する。

15Gy以上の非常に高い線量の被曝では、中枢神経に影響が現れ、意識障害、ショック症状を伴うようになる。中枢神経への影響の発現は早く、ほとんどの被曝者が5日以内に死亡する。

[編集] 皮膚の障害

皮膚は上皮基底細胞の感受性が高く、3Gy以上で脱毛や一時的紅斑、7-8Gyで水泡形成、10Gy以上で潰瘍がみられる。

[編集] 目の障害

目の水晶体も細胞分裂が盛んで感受性が高い。2-5Gyの被曝によって混濁が生じ、5-8Gyの被曝で視力障害を伴う白内障となる。

[編集] 胎児の障害

受精卵から胎児の間は非常に感受性が高く、受精直後には0.1Gyの被曝で胚死亡に至る。また発達段階によって奇形、知能障害、発育障害などの障害も発生する。このため、妊娠中の女子については腹部の被曝および放射性物質の摂取による内部被曝についてより厳しい防護基準が適用されている。

[編集] 低線量放射線を巡る議論

これら放射線による生物への影響は動物実験放射線療法を受けた患者の調査、広島長崎原爆被爆者の追跡調査などで研究されているが、線量と症状に必ずしも正の相関が認められているわけではない。しかし、一方では「直線しきい値無し」(LNT)仮説と呼ばれる、どのような線量であっても生体には有害であるという考え方も近年提出されており、その有効性を巡って議論が続いている[1][2]

[編集] 外部リンク

原子力百科事典ATOMICA-放射線の身体的影響

[編集] 出典

  1. ^ 金子正人「疫学研究の現状としきい値問題」(LNT仮説を否定する側の論者の主張)
  2. ^ よくわかる原子力「シンポジウム「低線量放射線影響研究の現状と将来」ーLNT仮説の科学的背景ーに出席して(LNT仮説の否定は政府や原子力産業の主導するプロパガンダだとする側の論者の主張)