白血病
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白血病(はっけつびょう、英名:Leukemia)は簡単には「血液のがん」といわれ、遺伝子変異をおこした造血細胞(白血病細胞)の一群が、骨髄で自律的に増殖して正常な造血を阻害し、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出てくる疾患。大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の四つに分けられる。
目次 |
[編集] 概要
日本血液学会では
『白血病は遺伝子変異の結果、増殖や生存において優位性を獲得した造血細胞が骨髄で自律的に増殖するクローン性の疾患群である。白血病は分化能を失った幼若細胞が増加する急性白血病と、分化・成熟を伴いほぼ正常な形態を有する細胞が増殖する慢性白血病に分けられる。また分化の方向により骨髄性とリンパ性に大別される』
—-引用、日本血液学会、日本リンパ網内系学会編集, 『造血器腫瘍取扱い規約』金原出版、2010年、p.2
としている。白血病は病的な血液細胞(白血病細胞)が骨髄で自律的、つまりコントロールされることなく無秩序に増加する疾患である。骨髄は血液細胞を生み出す場であるので骨髄での白血病細胞の増加によって正常な造血細胞が圧迫されて血液 (末梢血)に影響し、あるいは骨髄から血液中にあふれ出た白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤 (侵入)して障害することもある。白血病患者の血液中では白血病細胞あるいは病的な白血球を含めると白血球総数は著明に増加することも、あるいは減少することもある。しかし、正常な白血球は減少し血小板や赤血球も多くの場合減少する[註 1]。
白血病はがんのなかでは比較的少ないがんであるが[註 2]、多くの悪性腫瘍(癌、肉腫)は高齢者が罹患し青年層では少ないのに対し、白血病は乳児から高齢者まで広く発症する為、小児から青年層に限ればがんの中で比較的多いがんである[1]。造血の場である骨髄で造血の元になっている細胞が変異したことによって起きるのが白血病であり、癌や肉腫のように固形の腫瘍を形成しないため、胃癌や大腸癌などのように外科手術の適応ではないが、そのかわり抗がん剤などの化学療法には極めてよく反応する疾患である[2][註 3]。以前は治療が困難であったため、不治の病とのイメージを持たれてきた。しかし、1980年代以降、化学療法や末梢血造血幹細胞移植療法 (peripheral blood stem cell transplantation; PBSCT)、骨髄移植 (bone marrow transplantation; BMT) や臍帯血移植の進歩にともない、治療成績は改善されつつある[3]。白血病は不治の病のイメージが強く、かつての結核に代わって若年層での病死因の高い割合を占めることから、フィクションでは癌と並びしばしば使用される[4]。
一般的に用いられる表現で、白血病を「血液の癌」と呼ぶが、この命名は誤りである。漢字で「癌」というのは「上皮組織の悪性腫瘍」をさし、上皮組織でなく結合組織である血液や血球には使えない。ただし、「血液のがん」という表記は正解である。平仮名の「がん」は、「癌」や「肉腫」、血液悪性腫瘍も含めた広義的な意味でつかわれているからである[5]。
悪性リンパ腫や骨髄異形成症候群といった類縁疾患は通常、白血病には含まれないが、悪性リンパ腫とリンパ性白血病の細胞は本質的には同一であるとされ、骨髄異形成症候群にも前白血病状態と位置付けられ進行して白血病化するものもあり[註 4]、これら類縁疾患と白血病の境目は曖昧な面もある。
また、一口に白血病と言っても、大きくは急性骨髄性白血病 (AML)、急性リンパ性白血病 (ALL)、慢性骨髄性白血病 (CML)、慢性リンパ性白血病 (CLL) の四つに分けられ、それぞれは様相の異なった白血病である。 急性白血病では増加している白血病細胞(芽球)は幼若な血液細胞に形態は似てはいるが[註 5]、正常な分化・成熟能を失い異なったものとなる[6]。慢性白血病では1系統以上[註 6]の血液細胞が異常な増殖をするが、白血病細胞は分化能を失っておらず、幼若な芽球から成熟した細胞まで広範な細胞増殖を見せる[7]。急性白血病細胞は血液細胞の幼若細胞に似た形態を取り[6]、多くの急性白血病では出現している白血病細胞に発現している特徴が白血球系幼若細胞に現れている特徴と共通点が多い細胞であるが[8]、多くはないが赤血球系統[9]や血小板系統[註 7][10]の幼若細胞の特徴が発現した白血病細胞が現れるものもあり、それらも白血病である[11][12]。
[編集] 症状
白血病の症状は急性白血病と慢性白血病では大きく違う。
急性白血病の症状としては、骨髄で白血病細胞が増加するために正常な造血が阻害されて正常な血液細胞が減少し、白血球減少に伴い細菌などの感染症(発熱)、赤血球減少(貧血)に伴う症状(倦怠感、動悸、めまい)、血小板減少に伴う易出血症状(歯肉出血、鼻出血、皮下出血など)がよく見られ、ほかにも白血病細胞の浸潤による歯肉の腫脹や時には(特にAML-M3では)大規模な出血もありえる[註 8][13][14] 。 さらに白血病が進行し、各臓器への白血病細胞の浸潤があると、各臓器が傷害あるいは腫張し圧迫されてさまざまな症状がありうる。腫瘍熱、骨痛、歯肉腫脹、肝脾腫、リンパ節腫脹、皮膚病変などや、白血病細胞が中枢神経に浸潤すると頭痛や意識障害などの様々な神経症状も起こりうる[13][14]。ただし、これらの諸症状は白血病に特有の症状ではなく、これらの症状を示す疾患は多い。故に症状だけで白血病を推定することは困難である。
慢性骨髄性白血病では罹患後しばらくは慢性期と呼ばれる状態が続き、特に症状が現れず健康診断などで白血球数の異常が指摘されて始めて受診することも多く、慢性期で自覚症状が現れる場合は脾腫による腹部膨満や微熱、倦怠感の場合が多い[15][16]。ただし、慢性骨髄性白血病の自然経過では数年の後必ず、移行期と呼ばれる芽球増加の中間段階を経て急性転化を起こす。急性期では芽球が著増し急性白血病と同様の状態になる[15]。
慢性リンパ性白血病では一般に進行がゆっくりで無症状のことも多く、やはり健康診断で白血球増加を指摘されて受診することが多いが、しかし80%の患者ではリンパ節の腫脹があり(痛みは無いことが多い)他人からリンパ節腫脹を指摘されて受診することもある。リンパ節の腫れ以外に自覚症状がある場合には倦怠感、脾腫による腹部膨満[17][18][19]や寝汗、発熱、皮膚病変[20]などが見られる。慢性リンパ性白血病の低リスク群では無症状のまま何もしなくとも天寿を全うすることもあるが、病期が進行してくると貧血や血小板減少が進み、細菌や真菌などの日和見感染症や自己免疫疾患を伴うこともある[17][19]。
[編集] 検査
白血病の検査では血液検査と骨髄検査が主になる。白血病の本体は骨髄にあり、白血病の状態を正確に把握するには骨髄検査が不可欠であるが骨髄検査は患者にとって負担の多い検査であり、患者への負担が少なく頻繁に行える血液検査も重要になる。
血液検査(末梢血)で芽球を認めれば白血病の可能性は高い。また、末梢血で芽球が認められなくとも、白血球が著増していたり、あるいは赤血球と血小板が著しく減少し非血液疾患の可能性が見つからなければ、骨髄検査が必要になる(白血病では白血球は、著増していることもあれば正常あるいは減少していることもある。10万を超えるような場合以外は白血球数だけでは白血病かどうかはわからない)。骨髄で芽球の割合が著増していたり、極端な過形成[註 9]あればやはり白血病の可能性は非常に高い。骨髄細胞の精査で病型を確定する[21]。
急性白血病細胞のすべてと慢性白血病細胞の多くは白血球の幼若な細胞と類似した形態を取るため、芽球あるいは芽球様細胞と呼ばれる。血液細胞は大きくは、白血球、赤血球、血小板の3種の分けられるが、3種のなかで白血病細胞(芽球)は白血球の幼若球に形態的には類似し、赤血球や血小板と違って有核であるので、正常な白血球ではないが自動血球計数器で分析する血液検査の血液分画(血液細胞の分類とカウント)の中では白血球の区分に入れられる(高性能な検査機や検査技師が行う目視検査では血液細胞の種類ごとに細かく分類ができる)[22]。
急性白血病の血液検査ではヘモグロビンや血小板数は低下していることが多く、芽球が認められることが多い。芽球を含めた白血球総数は著明に増加していることが多いが、なかには正常あるいは減少していることもある[23]。 急性白血病の骨髄では芽球の増加を認め、AMLで20%以上、ALLで25%以上になる[23]。慢性骨髄性白血病では、血液、骨髄の両方で芽球から成熟した細胞まで白血球の著明な増加があり血小板も増加していることが多く、慢性リンパ性白血病では成熟したリンパ球が著明に増加する[24]。
急性白血病細胞は分化能を失い幼若な形態(芽球)のまま数を増やすので、骨髄は一様な細胞で埋め尽くされる。慢性白血病では細胞は分化能を失わずに、しかし正常なコントロールを失って自律的な過剰な増殖を行うので正常な骨髄に比べて各成熟段階の白血球系細胞の割合が顕著に高くなる(過形成)。骨髄検査では各細胞を細かく分けてカウントし、とくに芽球の割合と形態が重要になる。赤芽球は通常では芽球には含まれないが、赤白血病 (AML-M6) では白血病細胞の半数程度は赤芽球と同様の表面抗原を発現するため、赤白血病を疑われたときのみ、芽球に赤芽球を含める[25]。
[編集] 疫学
1997年の日本の統計では全白血病の発症率は年間に男性で10万人あたり7人[27]、女性で10万人あたり4.8人[27]、合計で年間に人口10万人あたり約6人程度と見られている。そのうち急性白血病が10万人あたり4人程度[註 10][28]、急性白血病では大人で80%子供で20%が急性骨髄性白血病 (AML)、大人で20%子供で80%が急性リンパ性白血病 (ALL)で全体としては2/3が急性骨髄性白血病、1/3が急性リンパ性白血病といわれている[27][28]。つまりALLでは小児が多く、AMLでは大多数が成人で発症年齢中央値が60歳である[28]。慢性骨髄性白血病の発症率は10万人あたり1-1.5人程度、慢性リンパ性白血病は白血病全体の1-3%程度で少ないと見られている[29]。しかし日本では少ない慢性リンパ性白血病は欧米では全白血病の20-30%を占めている[30]。また、小児全体では白血病の発症率は年間10万人あたり3人程度[註 11]とされるが、小児では慢性白血病は少なく5%程度で、小児の急性白血病の80%はリンパ性であり、男児にやや多い[31]など、白血病の発症率は民族や年齢、性別によってその内容は大きく異なる。
[編集] 歴史と白血病の名の由来
[編集] 歴史
19世紀半ば、ドイツの病理学者Virchow(ウィルヒョウ)が巨大な脾腫を伴い、血液が白色がかって死亡した(今で言う慢性骨髄性白血病)患者を調べて報告したのが白血病の血液疾患としての最初の認知であるが、Virchowの報告ののち、白血病は経過が比較的ゆっくりなものを慢性白血病、早いものを急性白血病と分類され(現在の分類法とはちがう)、1930年代には細胞科学的手法によってリンパ性と骨髄性に分類されるようになった。しかしVirchowの報告からほぼ100年にわたって、白血病には有効な治療法は無く、急性白血病で数週から数ヶ月、慢性白血病でも数ヶ月から数年で死亡する死の病であった。第二次世界大戦後に登場した抗がん剤6-MPが白血病に適用され始めたが、抗がん剤の種類も知見も少なく、血小板輸血や抗生物質も乏しかった1960年代までは死の病である状況は変わらなかった。1960年代からは抗がん剤の種類・知見も増加して抗がん剤Ara-cとダウノルビシンの多剤併用療法が開発され、抗生物質も様々登場し、少しずつ白血病に立ち向かえるようになっていった。1960年代後半からは抗がん剤Ara-cとダウノルビシンなどアントラサイクリン系抗がん剤の多剤併用療法の使用法の発展[註 12]によって白血病が治癒する例が増え始め[32]、同時に抗生物質の充実、1970年代から始まった血小板輸血などの支持療法の進歩もあり[33]、急性白血病患者の70-80%は一旦は白血病細胞が見られなくなるようになったが、しかし、多剤併用療法のみでは再発は少なくなく、最終的には多剤併用療法のみでの治癒率は30-40%程度で頭打ちになっている[34][35]。その後1970年代から研究の始まった造血幹細胞移植が1990年代から本格的に適用され始め[36]、化学療法だけでは長期生存は難しい難治例でも造血幹細胞移植で2-6割の患者は長期生存が期待できるようになった[37]。 また急性前骨髄球性白血病 (AML-M3) で画期的な治療法である分化誘導療法の発見、2001年には慢性骨髄性白血病 (CML) の分子標的薬グリベックの登場など、AML-M3やCML、予後が良い小児ALLなどでは大半の患者が救われるようになってきている[33]。
[編集] 血の色と白血病の名の由来
白血病は、前述したウイルヒョウが見た死亡患者の血液が白っぽくなっていたので、ギリシャ語の白い (λευκό) と血 (αίμα) をラテン文字へ換字した (leukos) と (haima) から由来するleukemia(白血病)と名づけたといわれる。ウイルヒョウが見た患者では極端に白血球が増加し血液が白っぽくなっていたと考えられるが、実際に血液が真っ白になることはなく、白血病細胞が極端に増えた例で通常は濃い赤色である血液が赤から灰白赤色になるだけで、ほとんどの白血病患者では血液の色は赤いままである[6][38][39]。血液の赤色は赤血球の色であるが、赤血球が完全に無くなる前に人は死亡するので血液が完全に真っ白になるまで生存することは出来ない。
白血病によって貧血が強くなると血の色が薄くはなる。また同様に、赤白血病(FAB分類M6)でも必ずしも血がピンクになる訳ではない。一方、家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症では血の中に中性脂肪が溜まり血が乳白色となるが[40]、これは白血病とは呼ばない。
ちなみに健康人の血液を遠心分離すると下層には濃い赤色の赤血球、上層には黄色みかかった透明の血漿に分離するが、中間にはやや灰色がかった白い薄い層が現れる。白い層をなす血液細胞をギリシャ語由来の(白い)を意味するleukoと細胞をあらわすcyteをあわせてLeukocyte:白血球と名付けられた[41]。白血球の一つ一つは実際には無色半透明だが多く集まると光を乱反射して白く見える。白血病患者のほとんどでは白血球あるいは白血球同様に無色半透明な芽球が増加しているので血液を遠心分離すると中間の白い層の厚みは増加している。白い層の増加の程度が甚だしいと血液の色も変化する[42]。
[編集] 原因
骨髄で極めて若い造血細胞の遺伝子に1つ以上の遺伝子異常が後天的に起きて白血病幹細胞が発生し、それが増殖して骨髄を占拠するようになると発症するものと考えられている。白血病幹細胞が発生してすぐに白血病の症状が出るわけではない。1個の白血病幹細胞はゆっくりと、しかし自律的に増加して(コントロールを受けない)白血病細胞を生み出していき、その白血病細胞は不死化(細胞寿命の延長)しているので、やがて骨髄を白血病細胞が占拠し満ちあふれる。骨髄を白血病細胞に占拠され正常な造血細胞が締め出されて正常な造血が阻害され、また骨髄に収まりきれず血液中にあふれ出た白血病細胞が各臓器に浸潤して白血病の諸症状が起きる[43][44]。
白血病を含む「がん」は細胞の増殖・分化・生存に関わる重要な制御遺伝子に何らかの (染色体の転座、重複、部分あるいは全体の欠失、染色体上の遺伝子の点状変異など)異常が起こり、がん遺伝子の発現とがん抑制遺伝子の異常・抑制などいくつかの段階を踏んでがん化すると考えられている。一般にがんは一段階の遺伝子異常だけでは起こらず何段階かの遺伝子異常が積み重なってがん化するため若い人では少なく、異常が積み重なる時間を十分に経た高齢者で多い。(ただし、白血病は乳児・小児や若い人にもおき、一段階の遺伝子異常でおこる白血病もあるので一概なことは言えない。)遺伝子に変化が起きるおきる原因としては活性酸素、ウイルス、放射線、化学物質などが考えられる[45]。
細かく分類すると数十種類に及ぶ白血病では判明している遺伝子異常の数は多いが、すべての白血病に共通する遺伝子異常は見つかってなく、多数ある白血病の病型のうち慢性骨髄性白血病や急性前骨髄球性白血病などいくつかの白血病では主となる遺伝子異常は判明しているが、大半の白血病では多くの遺伝子異常は見つかっていても共通で決定的な原因となる遺伝子異常は明らかでない。がんをおこす遺伝子異状は染色体に活性酸素、ウイルス、放射線、化学物質などによってたまたまミスコピーが発生し、そのミスコピーが何らかの原因で修復されず、また遺伝子異常の起きた造血細胞が自ら死ぬこと (アポトーシス)も免疫系に排除されることもなんらかの理由で免れたことで現れる[46]。
遺伝子異常がおきる原因として放射線被曝、ベンゼンやトルエン、抗がん剤など一部の化学物質などは発症のリスクファクターとされているが、しかし成人T細胞白血病を例外とすると白血病の99%はウイルス、放射線、化学物質などとの因果関係は不明である[47]。白血病は親から子への遺伝もしないし、後述する成人T細胞白血病をわずかな例外とすれば移ることも無い[48]。ほとんどの白血病はウイルスなどの病原体によるものではないが、例外的に2種類だけウイルスが関わっているものがある。ひとつは日本で同定された成人T細胞白血病で、レトロウイルスのひとつ HTLV-I の感染が原因であることが明らかになっている[49]。もう一つは急性リンパ性白血病バーキット型(FAB分類ALL L3)のなかでアフリカなどのマラリア感染地域に多い風土病型といわれるタイプでEBウイルスとの関連が指摘されている[註 13][50]。
[編集] 分類
白血病における急性、慢性は一般的に用いる意味とは違っている。腫瘍細胞が分化能を失ったものを急性白血病、分化能を保っているものを慢性白血病と呼ぶ。
また、腫瘍の起源となった細胞が骨髄系の細胞かリンパ球系の細胞かによって骨髄性白血病、リンパ性白血病に分類する。このことから主として以下の4種類に分類される。
- 急性骨髄性白血病 (acute myelogenous leukemia; AML)
- 細胞の形態・性質を重視するFAB分類ではM0からM7までの8タイプに分けられさらにいくつかの細分類がある。FAB分類は2011年現在も有用な分類ではあるが、遺伝子変異に関する知見など新しい知見によってWHOによって新分類が策定されている。
- 特異的染色体相互転座を有する急性骨髄性白血病
- 染色体8;21転座を有する急性骨髄性白血病(または融合遺伝子AML1/CBF-α/ETOを有する)FAB分類の8;21転座を有するM2
- 急性前骨髄球性白血病(染色体15;17転座または融合遺伝子PML/RARαを有する)FAB分類のM3
- 骨髄中異常好酸球増多を伴う急性骨髄性白血病(染色体16番逆位または16;16転座または融合遺伝子CBFβ/MYH 11を有する)FAB分類のM4Eo
- 染色体11q23異常を有する急性骨髄性白血病:FAB分類の11q23異常を有するM5。
- 多血球系異形成を伴う急性骨髄性白血病
- 骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病
- 多血系異形成を伴う初発の急性骨髄性白血病
- 治療に関連した急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群
- 上記以外の急性骨髄性白血病[51]
- 各白血病はさらに細かく細分されるが、慢性骨髄性白血病だけはほぼ単一の疾患概念となっている(原因となる染色体異常がフィラデルフィア染色体以外にはない)。フィラデルフィア染色体のない非定型慢性骨髄性白血病は別の疾患群に分類されている。
- 急性リンパ性白血病 (acute lymphoid leukemia; ALL)
- FAB分類ではL1-L3までの分類になっていたが、現在ではALLに関してはFAB分類は有用ではない。近年、ALLとリンパ芽球性リンパ腫は本質的には同じ疾患で、同じ細胞が主に骨髄で増殖すればALL、増殖の場が主にリンパ節ならリンパ腫であり、同じ疾患の別の側面を見ているだけだとしてWHO分類ではALLは急性白血病とは別にしてリンパ芽球性リンパ腫とともにリンパ系悪性腫瘍として括っている[52]。しかしながら、症候的(症状や検査所見)ではリンパ腫とALLは相違があり、むしろAMLとともに急性白血病として括ったほうが臨床的にはなじみやすい[53]。WHOのALLに含まれる急性リンパ性白血病は以下である[52]
- 前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(これは遺伝子異常によってさらに細分される)
- 前駆T細胞急性リンパ芽球性白血病 ( 〃 )
- バーキット白血病
- 慢性リンパ性白血病 (chronic lymphoid leukemia; CLL)
- 慢性リンパ性白血病の分類に関してはかなり難しい。慢性リンパ性白血病には広義の慢性リンパ性白血病と狭義の慢性リンパ性白血病の定義があるが、狭義の慢性リンパ性白血病の細胞の増殖が末梢血・骨髄で主に行われる場合はCLLだが、同じ細胞が主にリンパ節で増殖するならば小リンパ球性リンパ腫とされ、狭義の慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫は本質的には同一の疾患の異なる側面を見せているに過ぎないとされる。また、リンパ腫の白血化とリンパ性白血病も非常に良く似ている[54][55]。WHO分類ではリンパ性白血病とリンパ腫の区別は取り払い、[54]とくにリンパ腫との境目があいまいな成熟傾向をもつリンパ系白血病はWHO分類ではリンパ増殖性疾患として括っている[56]。
- 慢性リンパ性白血病は広義(FAB分類)にはB細胞性(狭義の慢性リンパ性白血病、前リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病、リンパ腫の白血病化、形質細胞白血病)とT細胞性(T細胞顆粒リンパ球性白血病、前リンパ性白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、セザリー症候群)などを含んでいる[57]。
- 狭義の慢性リンパ性白血病は小型のCD5+の表面抗原を持つ成熟Bリンパ球が末梢血と骨髄で自律的に増殖するリンパ性腫瘍とされている。[54]。
| FAB分類とWHO分類、症候学的分類[58] | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| FAB分類 | WHO分類 | 症候学的分類 | ||||||
| 白血病 | 急性骨髄性白血病 | 急性骨髄性白血病 | 急性白血病 | |||||
| 慢性骨髄性白血病 | 骨髄増殖性疾患 | 慢性骨髄性白血病 | 骨髄増殖性疾患 | 慢性骨髄性白血病 | ||||
| 急性リンパ性白血病 | リンパ系腫瘍 | T前駆細胞腫瘍またはB前駆細胞腫瘍 | 急性白血病 | |||||
| 慢性リンパ性白血病 | 慢性リンパ性白血病 | リンパ増殖性疾患 | ||||||
| 類縁疾患 | 悪性リンパ腫 | 悪性リンパ腫 | リンパ系腫瘍/リンパ増殖性疾患 | |||||
| 骨髄異形成症候群(芽球割合20%以上-30%以下) | 急性骨髄性白血病 | 骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病 | ||||||
| 骨髄異形成症候群(芽球割合20%以下) | 骨髄異形成症候群 | 骨髄異形成症候群 | ||||||
これらはさらに生物学的な性質から細分される。
ただし、これら患者数の多い上記4つ以外にも極めて稀な急性混合性白血病や、類縁疾患と白血病の境にあり厳密には他の疾患グループに入れられている白血病(非定型慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病や慢性骨髄単球性白血病、慢性好酸球性白血病、若年性骨髄単球性白血病、慢性好塩基球性白血病、肥満細胞性白血病、他、)など[註 15]もあり、それらを含めると白血病の種類はきわめて多い。
[編集] 治療法
現在の白血病の治療の基本は化学療法(抗がん剤)である。 白血病の治療では骨髄移植が知られているが、骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植療法は過酷な治療であり治療そのものが死亡原因になる治療関連死も少なくはない。また寛解に入っていない非寛解期に移植をしても失敗する可能性は高い。その為に白血病の診断がついてもいきなり移植に入ることは無く、まずは抗がん剤による治療になり、その後は経過や予後不良因子によって移植の検討がされる[註 16]。
※寛解とは白血病細胞が減少し症状がなくなった状態、完全寛解とは白血病細胞が見つからなくなった状態である。完全寛解には顕微鏡観察で白血病細胞が見つからない血液学的寛解と顕微鏡観察より鋭敏な分子学的捜索で白血病細胞が見つからなくなった分子学的完全寛解がある。症状が出てAMLと診断された時点では患者の体内には1012個(一兆個)もの白血病細胞があるが、血液学的完全寛解では109個(10億個)以下、分子学的完全寛解では106個(100万個)以下になる。血液細胞の数は骨髄内の有核細胞だけでも数千億個はあるので100万個の白血病細胞といえど容易に見つかるものではない[59]。
白血病細胞を免疫不全マウス(実験用に特別に作られた免疫の無いハツカネズミ)に移植する実験[註 17]ではたった1個の白血病細胞が白血病を引き起すことが証明されている[60]。実際にはたった1個で白血病を引き起こせる細胞は白血病幹細胞であるが[61]、病的細胞を1個でも残すと再発の可能性は否定できないので急性白血病の治療では白血病細胞をすべて殺す(total cell kill)必要があると考えられている[60]。ただし、慢性白血病を中心に治癒を望まずに疾病を押さえつけていくことで生命予後とQOL(Quality of Life)の改善をはかっていく方法も多い。
治療の結果、もっとも鋭敏な検査法でも白血病細胞が見つからない完全寛解になっても白血病が再発することがあるのは、骨髄の奥深くニッチ環境で休眠状態の白血病幹細胞が抗がん剤に耐えて生き延びるためである。再発した白血病細胞は抗がん剤治療をくぐり抜けてきた細胞であるため非常に治療抵抗性が強く通常量の抗がん剤療法、放射線とも効きにくいため命を落とす確率が高く、そのため再発した白血病あるいは経験的に最初から化学療法の抵抗性を持ち再発が予想されるタイプの白血病では、もっとも強力な治療である骨髄移植や臍帯血移植などの造血幹細胞移植が適用となることが多い[62][63][64][65]。
造血幹細胞移植では、致死量をはるかに超えた大量の抗がん剤と放射線[註 18]によって白血病幹細胞を含めて病的細胞を一気に根こそぎ死滅させることを目指す(前処置という)。しかし、この強力な治療によって正常な造血細胞も死滅するので患者は造血能力を完全に失い、そのままでは患者は確実に死亡する。そのためにHLA型の一致した健康人の正常な造血幹細胞を移植して健康な造血システムを再建してやる必要がある[66][67][68]。
しかしこの方法(白血病細胞の全滅を目指して致死量をはるかに超えた超大量の抗がん剤や放射線を使う通常移植の前処置)はあまりにも強力な治療のため、体力の乏しい患者や高齢者は治療に耐えられない。そのためミニ移植という手段もある。ミニ移植では前処置の抗がん剤投与や放射線治療はあまり強力にはしない。その為に白血病幹細胞は一部は生き残る可能性は高いが、移植した正常な造血による免疫とドナーリンパ球輸注によるドナー由来リンパ球の免疫によって残った白血病幹細胞が根絶されることを期待する。ただし、ミニ移植でもかなり強力な治療には違いないので、すべての患者が適応になるわけではない[69][70]。
[編集] 急性骨髄性白血病の治療
現在の急性白血病の基本の治療法はtotal cell kill (TCL) と言って、最初に抗がん剤を使用して膨大な白血病細胞を減らして骨髄に正常な造血細胞が増殖できるスペースを与え(初回寛解導入療法)、その後の休薬期間に空いた骨髄で正常な造血細胞が増えるのを待ってから、さらに間歇的に抗がん剤を使用すること(地固めおよび強化療法・維持療法)を繰り返して最終的に白血病細胞の根絶を目指す治療を基本とする。
急性骨髄性白血病では寛解導入剤として アントラサイクリン(ダウノルビシン)あるいは イダルビシン 3日間 と シタラビン(キロサイド)7日間の併用療法が一般的である(急性前骨髄球性白血病 (AML-M3) は例外である、AML-M3については後に記す)。これでほとんどの患者では寛解にもっていける。しかし、血液学的に白血病細胞が見られなくなっても白血病の大本である白血病幹細胞は隠れて存在し、そのままでは再発するので、隠れた白血病幹細胞の根絶を目指す地固め療法を行う。地固め療法は アントラサイクリン, シタラビンに加え, エトポシドやビンカアルカロイドを加えた併用化学療法, あるいはシタラビン大量療法を行う。完全寛解の状態が5年続けば再発の可能性は低く治癒とみなしてよいとされているが、治癒を得るには、血液学的完全寛解では不十分であり、寛解後療法(地固め療法)と呼ばれる化学療法を継続して分子学的完全寛解まで到達することが必要である。[71][72][51]。
急性白血病では、急性前骨髄球性白血病 (AML-M3) のみ治療法はまったく異なりオールトランスレチノイン酸 (ATRA) による分化誘導療法と抗がん剤の併用療法が用いられる。オールトランスレチノイン酸を与えると、分化障害を持っていた急性前骨髄球性白血病細胞はATRAによって強制的に分化・誘導させられ、継続的に白血病を維持する能力を失ってしまうのである。この薬剤の登場により, M3はAMLのなかで最も予後良好な群となった。[註 19]。ATRA治療後に急性前骨髄球性白血病(AML-M3)が再発してしまった場合には、機序は違うが、やはり細胞を分化誘導とアポトーシスに招く亜ヒ酸が著効することが知られている[73][74][75]。
[編集] 急性リンパ性白血病の治療
急性リンパ性白血病では白血病細胞はプレゾニゾロンに良く反応し数を減らし、またAMLに比べて使用できる薬剤は多いが、治療の基本的な考え方は急性骨髄性白血病と同じである。
急性リンパ性白血病の寛解導入(初回の治療)ではビンクリスチン(VCR 商品名オンコビン)とプレゾニゾロン(プレドニン)及びアントラサイクリン系抗がん剤の組み合わせを基本とし、それにシクロホスファミド(エンドキサン)やL-アスパラキナーゼ(ロイナーゼ)などを加えることもある。どのプロトコール(薬剤の組み合わせや各薬剤の投薬量・投薬スケジュール)が良いかは一概には言えず、標準治療は存在しない[76](上にあげた薬剤でプレゾニゾロンは抗がん剤ではない。ステロイドである)。
寛解導入後に行われる地固め療法も様々なプロトコールがあるが、寛解導入とは組み合わせを変えるのが基本となる。なるべく多種類の薬剤を使用したり、シタラビン(キロサイド)大量療法などがある[76]。
小児ALLでは化学療法だけで長期生存する確率が高いので第一寛解期で移植を検討することは少ないが、しかし、成人のALLでは再発率が高いのでAMLに比べると第一寛解期での移植を検討することは多い[77]。移植を行わない場合はその後も数年の維持療法(主に経口抗がん剤)を続け再発の可能性を下げる[76]。
[編集] 慢性骨髄性白血病の治療
慢性骨髄性白血病については従来はインターフェロンが一部には有効ではあったが、インターフェロンが効かない場合は移植治療以外には、単に延命を計るだけの治療しかなかった。しかし、2001年分子標的薬グリベックの登場で様相が一変した。グリベックは慢性骨髄性白血病は遺伝子変異によって作られた異常なBcr-Abl融合タンパク(自己リン酸化して常に活性化しシグナル伝達を行う基質をリン酸化し、それはさらに下流の細胞の分裂を促す細胞内シグナル伝達系を活性化させていく酵素(チロシンキナーゼ)でこのため、白血病細胞は自律的に増殖する[78])が異常な細胞分裂を促すシグナルを伝達をするのを阻害する薬で、活動している慢性骨髄性白血病細胞にのみに的を絞って攻撃し、正常な細胞は攻撃しないので副作用の少ない画期的な抗がん剤である。慢性骨髄性白血病のBcr-Abl遺伝子変異にも様々なサブタイプ(変異体)があり、中にはグリベックが効かないBcr-Abl変異体もがあるが、同様な分子標的薬が次々に開発され、Bcr-AblタンパクT315I変異体という治療抵抗性の強いサブタイプの1つを除いては慢性期のCMLはほぼ押さえ込むことができるようになっている(ただし、分子標的薬は休眠している白血病幹細胞には届かないため、病気を抑えることはできても、治癒は必ずしも望めない。また付加的な遺伝子異常がおきてしまい急性期に移行した場合には分子標的薬も有効とも限らず移植医療が適用になることが多い)[79][80][81][64]。
[編集] 慢性リンパ性白血病の治療
狭義の慢性リンパ性白血病は進行が緩慢で無治療でも天寿を全うすることが出来る患者も少なくなく病期によって治療手段が違い、リンパ球の増加のみで症状がなく安定している場合は治療によって生命予後が改善されるとは限らない[82]。そのため状態がリンパ球の増加のみであるならば無治療で経過観察を行い、病期が進み、リンパ節腫大や脾肝腫、貧血、血小板減少などがあらわれてくると治療の対象になる[83]。近年では狭義の慢性リンパ性白血病には進行のゆっくりで無治療でよい群と進行が早く治療の必要な群の2群があることが判明しつつあり、遺伝子研究が進んでいる[84]。National Cancer Insititute-sponcered Working Groupのガイドラインによれば(1)6ヶ月以内に10%以上の体重減少、強い倦怠感、盗汗、発熱などの症状(2)貧血や血小板減少(3)著しい脾腫、リンパ節腫大(4)リンパ球数が2ヶ月の間に50%あるいは6ヶ月で2倍の増加、以上の(1)-(4)のどれかが認められた場合に治療を開始するとされている[85]。治療は以前にはシクロフォスファミドが使われていたが、現在ではフルダラビン単剤、もしくはフルダラビンとシクロフォスファミドの併用が標準であり、リツキシマブの併用も有効性が認められている[83][86]。ただし、治癒は望めず治療の目的は病勢のコントロールと生存期間の延長を図ることである[86]。
[編集] 将来の治療
従来の治療法は白血病細胞をすべて殺す、押えつけることを念頭においていたが、白血病幹細胞の研究の進歩及び急性前骨髄性白血病での分化誘導療法の開発によって、治療の考え方が根本的に変わろうとしている。急性前骨髄性白血病での分化誘導療法では白血病幹細胞を含めて白血病細胞を強制的に分化させてしまう方法である。殺すのではなく、白血病細胞特有の性質を取り去ってしまおうとするのである[79]。
現在は白血病幹細胞の研究が進み、白血病細胞の中で、わずかな白血病幹細胞のみが無限の増殖能をもち、末端の白血病細胞は有限の増殖しか出来ないことがわかってきている。したがって白血病幹細胞さえ取り除くことさえ出来れば、末端の白血病細胞は残しても白血病はやがて治癒するものと考えられるようになっている。ただし、現在の技術では末端の白血病細胞よりも白血病幹細胞を取り除くほうが難しいが、将来的には、今のtotal cell kill療法に代わって、白血病幹細胞に的を絞った治療法の開発が本命になっていくと考えられている[79][87]。
[編集] 白血病幹細胞
急性白血病は自己複製能力を持つ造血幹細胞の遺伝子が変化し、正常な分化能の喪失と不死化(細胞寿命の延長)を得るか、前駆細胞に同様の遺伝子異常+自己複製能の再獲得があって発生する白血病幹細胞を基にすると考えられている。
血液細胞の大本である造血幹細胞は極めて少数で、それ故に貴重でありその多くは造血幹細胞ニッチで支持細胞に守られながら休眠している。造血幹細胞は造血の必要なときに目覚めさせられ、二つに分裂し、一つは元の幹細胞と同じ細胞であり(自己複製)再び眠りに付くが、もう一つは分化の道をたどり始めて前駆細胞となり(分化の道をたどり始めた細胞は自己複製能力は無くなる)盛んに分裂して数を増やしながら分化・成熟して極めてたくさんの血液細胞を生み出していく。急性白血病においても幹細胞と末端の細胞の関係は同様であると考えられている。正常な造血幹細胞もしくは前駆細胞の遺伝子に変化が起こり、細胞の分化能に異状が起き、また末端の細胞に不死化(細胞寿命の延長)をもたらすものが白血病幹細胞である。正常な造血幹細胞はニッチの構成細胞や造血因子のコントロール下にあり自律的な増殖はしないが、白血病幹細胞は造血因子の有無に関係なく増殖(自律的増殖)する。ニッチにおいて正常な造血幹細胞はほとんどが休眠期(細胞周期のG0期)にあるが、白血病幹細胞においては(休眠期に入っている細胞も少なくないが)正常な造血幹細胞に比べて細胞分裂の活動期に入っている細胞の割合は高いと考えられている[63][64]。
ヒトの白血病細胞を免疫不全マウスに移植する実験では、ほとんどの白血病細胞はマウスに白血病を引き起こすことは出来ないが、白血病細胞の中でごく少数のCD34+CD38-細胞の一部はマウスにヒトの白血病を引き起こすことができることがわかっている。発現している抗原がCD34-またはCD38+の白血病細胞では細胞は有限の増殖しか出来ないが、CD34+CD38-細胞[註 20]の一部では長期に渡って白血病細胞を供給し続ける。この長期に渡って白血病状態を維持することのできる少数のCD34+CD38-白血病細胞の一部がすべての白血病細胞の大本である白血病幹細胞であると考えられている[註 21] [88]。 少数の正常な造血幹細胞が自分自身を保持しながら、極めてたくさんの血液細胞を生み出すのと同じに、白血病幹細胞も自分自身を保持しながら、極めてたくさんの白血病細胞を生み出していくのである。ただし、白血病幹細胞から生みだされた細胞は決して正常な血液細胞になることは出来ずに増殖し、正常な造血を阻害するのである。急性白血病のなかには正常な造血前駆細胞が遺伝子異常とともに自己複製能を再獲得して白血病幹細胞が発生するものもあると考えられている[87][88][89]。最新の知見では急性白血病の幹細胞はむしろ、そのほとんどは造血前駆細胞が遺伝子変異(分化障害と細胞寿命の亢進・自己複製能の再獲得)を起こしたものと考えられている[90]。
正常な造血細胞に遺伝子変異がおこり急性白血病幹細胞は発生するがその遺伝子変異は1段階ではなく、増殖・生存能の亢進をもたらす遺伝子変異と細胞の分化障害をおこす遺伝子変異など複数の段階にわたる遺伝子異常が重なって発症すると考えられている。細胞の増殖・生存能が亢進する変異はクラスⅠ変異と呼ばれ、細胞の増殖や生存に関わるシグナル伝達の活性化-増殖亢進、細胞寿命の亢進などが起き、これが前面に立つと骨髄増殖性腫瘍様の自律的増殖能を亢進する。クラスⅡ変異とされる分化障害が先行すると骨髄異形成症候群様の細胞形態の異状が起き、急性白血病ではこのクラスⅠ・クラスⅡの変異の少なくとも2段階の遺伝子変異が必要である。 このクラスⅠ変異、クラスⅡ変異の遺伝子異常の種類はそれぞれ多様で、なおかつ複数の変異が重複することもあり、さらに付加的な遺伝子異常もあり、白血病にきわめて多数のサブタイプがありそれぞれ性質が異なっているのも、遺伝子変異の多様性の為である[91][92][93]。
慢性白血病でも造血幹細胞に遺伝子異常が置き、正常なコントロールを脱して異常な増殖をするが、慢性白血病では細胞の分化能は失われておらず成熟した多数の細胞を生み出す。慢性白血病幹細胞が生み出す血液細胞は一見正常な細胞と同様に見えるが、やはり細かく見ると正常な細胞とは必ずしも同じではない。
慢性骨髄性白血病 (CML) において、マウスの正常な造血幹細胞にCMLの原因となる「がん遺伝子」BCR-ABL融合遺伝子を導入するとマウスはCMLを発症する。しかし、造血幹細胞から分化が進み、盛んな増殖能は持つが自己複製能は失った造血細胞にBCR-ABL融合遺伝子を導入してもマウスはCMLを発症しないこともわかっている。がん遺伝子BCR-ABL融合遺伝子は細胞の増殖能力の自律的亢進に関わるが、細胞の自己複製能を発現するものではないことがわかる[94][註 22]。また、慢性骨髄性白血病が付加的な遺伝子異常をおこし急性転化した場合、2/3の患者では急性骨髄性白血病、1/3の患者では急性リンパ性白血病とどちらの系列にも進むことがあることからも、慢性骨髄性白血病の最初の遺伝子変異(BCR-ABL融合遺伝子)が幹細胞レベルで起こっていることがわかる[95]。CML幹細胞も造血幹細胞と同じくニッチ環境にあり、その多くは細胞活動が停止した休眠期(細胞周期G0期)にあると考えられている。イマチニブなどのBcr-Ablタンパクを標的にした分子標的薬は休眠している細胞には届かないと考えられている[96]。
[編集] 白血病細胞の分裂・増殖速度
症状が出るまでに進行した白血病では短時間で末梢血の白血球や芽球の数が増加することが多く、白血病細胞は増殖が速い印象がある。しかし実際には白血病細胞は、正常な造血細胞に比べ細胞分裂(増殖)が早いわけではなく、むしろかなり遅い。正常な造血細胞と比べ慢性白血病細胞の分裂には2-4倍の時間がかかり、名に反して急性白血病細胞ではさらに細胞分裂には時間がかかるのである。 しかし、正常な造血細胞の細胞分裂の開始はコントロールを受け、造血細胞が増殖を始めても細胞はやがて分化・成熟して末梢血に移り役割を果たして寿命を迎え、また、過剰に作られた細胞はコントロールを受けてアポトーシスを迎えるので、健康人の正常な血液細胞は一定の数を保つのだが、白血病細胞はコントロールを受け付けることなく無際限に増殖し、また白血病細胞は不死化(細胞寿命の延長)しているので最終的には正常な細胞を圧倒して増殖する[註 23][97][98][99]。
このようにして白血病細胞は正常な造血細胞を圧倒して骨髄を占拠し、さらには血液(末梢血)にもあふれ出てくる段階(通常、自覚症状が明らかに現れるところまでくると)になると骨髄での白血病細胞の数はすでに膨大なものになっているので、細胞1個の分裂時間は長くとも、末梢血内では短時間の内にみるみる白血病細胞の数が増えていくようになる。健康人の末梢血内の白血球総数は80-300億個程度であるが、AMLでは自覚症状が現れ診断が付く頃には骨髄内の白血病細胞は1kg、数にして1012個(一兆個)にもなるので、その10%が末梢血にあふれ出ただけでも、正常な末梢血内の白血球数から考えるとそれは尋常な量ではない[100]。
[編集] 各論
[編集] 小児白血病
[編集] 小児白血病の疫学
小児の白血病は欧米では年間小児10万人あたり4人[101]、アジアではやや少なく日本では年間10万人に3人程度発症する[102]。日本の小児科では年間700-800人ほどの小児が白血病を発症し小児科で治療を受けている[註 24][101]。小児白血病の発症率は成人全体の発症率の半分程度であるが男児にやや多い(男女比は=1.35)のは成人と同じである。小児白血病で特徴的なのは慢性白血病が少なく5%程度、ほとんどが急性白血病であり、その80%は急性リンパ性白血病(ALL)である。成人では急性骨髄性白血病(AML)が多いので成人と小児ではではリンパ性:骨髄性の割合が逆転している。小児の白血病ではAMLは年齢を問わず発症しているが、ALLでは2-3才の男子に発症が多い[103]。
[編集] 小児白血病の特徴
小児の急性リンパ性白血病は60-80%が治癒し、小児白血病全体では成人の白血病より予後が良いとされているが、1歳未満の乳児と10才以上の年長児ではあまり予後は良くない。白血病の原因となっている遺伝子変異の種類は多いが、年齢によってよく見られる遺伝子変異の種類は異なり、2-9歳の小児では予後の良いタイプの遺伝子変異が多く、1歳未満の乳児を除くと年齢が低いほど予後が良いタイプの白血病の割合が多くなる傾向にある[103]。ただし、小児白血病は予後が良いものが多いといっても重篤な疾患であることにかわりは無い。 小児の急性リンパ性白血病の染色体・遺伝子異常では高2倍体(染色体が50本以上に増加したもの)が20-25%、TEL-AML1融合遺伝子が15-20%に見られ、この2つの染色体・遺伝子異常による白血病は予後が良い。逆に予後の悪い染色体・遺伝子異常 (BCR-ABL融合遺伝子、MLL-AF4融合遺伝子)は5%であり、中間群は5割弱である。小児の急性骨髄性白血病では大半は予後中間群であり40-60%が長期生存・治癒している[103]。人数的に小児白血病の大半を占める2-4歳児の白血病には予後の良いタイプのALL (高2倍体あるいはTEL-AML1融合遺伝子)が多いが、全体の中では少数である年長児の白血病では予後の良いタイプのALLの割合は少なくなり、10歳以上の白血病はハイリスク白血病と見なされる (ただし成人のALLより悪いということではない)[104]。なかには、2-4歳児の白血病でも予後不良なタイプの白血病もあるので予後不良因子の見極めは重要である。1歳未満の乳児の白血病は小児白血病の5-10%であり、MLL-AF4融合遺伝子のあるALLが約半数に見られ、MLL-AF4融合遺伝子のあるALLは極めて性質が悪く移植医療が強く推奨されている[103]。
[編集] 小児白血病の治療
小児のALLの治療では寛解導入療法・聖域療法・強化療法・維持療法の4相の治療を行う。寛解導入療法ではプレゾニゾロンとビングリスチン(商品名オンコビン)の2剤で寛解を目指す。ALLでは中枢神経に白血病細胞が浸潤することが多く、中枢神経白血病の予防あるいは治療の為にメトトレキサートの髄注や大量投与、場合によっては頭蓋放射線照射などが行われる。残存している白血病細胞の根絶を目指す強化療法では多剤投与やシタラビン (キロサイド)大量投与などを行い、万が一生き残っる可能性のある白血病細胞を押えるために6-MPとメトトレキサートの内服を1-2年ほど続ける。予後の悪いタイプや万が一再発してしまったときは移植医療を検討する[103]。小児では体が小さいので細胞数の少ない臍帯血や小柄な女性の骨髄でも移植に十分な造血幹細胞が得られるので成人に比べるとドナーは得やすい。小児のAMLの治療はALLほど成績はよくないが寛解導入はシタラビン (キロサイド)とアントラサイクリン系抗がん剤を用い、強化療法・維持療法で完全寛解を目指す。AMLでは中枢神経白血病は少ないので予防的な抗がん剤の髄注を行うことは少ない[103]。尚、上にあげた薬剤はプレゾニゾロン以外は抗がん剤である。
[編集] ダウン症小児白血病
ダウン症の小児では種々の血液異常が起きることが多いことが知られているが、白血病も非ダウン症児の15倍の発症率を示す。ダウン症の新生児では一時的に白血病に似た状態を呈することが多い。そのほとんどは数ヶ月で自然治癒するが、一部のダウン症児は急性巨核芽球性白血病 (AML-M7)を発症する。非ダウン児に比べると三歳未満のダウン症の小児では急性巨核芽球性白血病 (AML-M7)になることは特異的に多い。3歳以降のダウン小児では発症率も傾向も非ダウン症小児と同じになる[105]。
[編集] 高齢者の白血病
子供や若者も発症する白血病だが、やはり高齢者の方が発症率は高い。60歳の白血病発症率は年間10万人あたり5人だが、80歳では年間10万人あたり17人の発症率になる[106]。若年者では骨髄異形成症候群 (MDS)から移行した白血病は10%未満だが高齢者では24-56%と高い。骨髄異形成症候群 (MDS)から移行した白血病は予後が悪い[107]。また、MDSの既往のない高齢者の白血病では若年者の白血病に比べて予後良好因子の白血病は少なく予後不良因子を持つものが多く[106]、尚且つ、高齢者では体力や回復力が衰えておりあまり強力な治療は出来ないことが多く治療は困難で、未だに高齢者に向けた標準的治療はない。55歳以上の高齢者では移植は出来ないが(ミニ移植は適応になる)60歳以下あるいは60-64歳程度の比較的体力があると見られる患者では一般的な標準治療が選択されることが多く、逆に抗がん剤の強度を増した治療なども試みられていて効果があったとする報告も見られる。しかしそれ以上の年齢の白血病患者では抗がん剤の効果が少ないことが多く、逆に早期の治療関連死は増える。体力のない高齢者では治療関連死が多いため、強い抗がん剤では減薬して強度を低くし、あるいはハイドレアのような弱い抗がん剤による治療、または支持療法が行われることも多いが、いずれにしても高齢者の白血病では長期生存率は高くはない[108]。しかし近年では強度を弱めた前処置による造血幹細胞移植が普及し知見が積み重なったことで従来は適応でなかった高齢者も移植の対象になりだしている[109]。
[編集] 二次性 (治療関連)白血病
各種の癌や血液腫瘍の治療で抗がん剤や放射線治療を行った数年後に白血病や骨髄異形成症候群を発症する可能性が高くなることが知られている。治療関連白血病 (抗がん剤や放射線によってもたらされた白血病)は急性骨髄性白血病がほとんどでありtAMLという。治療関連の骨髄異形成症候群はtMDSというがMDSは前白血病状態とも位置づけられtMDSはtAMLに移行することが多く、tAML/tMDSと括られることもある。非ホジキンリンパ腫を抗がん剤で治療した後10年間でtAML/tMDSを発症する患者は5-8%ほどと見られ、抗がん剤の量や期間、あるいは放射線治療の有無はtAML/tMDS発症の重要な因子である(当然、多いほど、期間が長いほど危険である)。tAML/tMDSは自然発生したAMLやMDSに比べ治療の成績が良くなく、予後不良であることが知られている。tAMLは化学治療で寛解に持っていっても早期に再発することが多く、造血幹細胞移植を積極的に検討する必要があるが、移植の成績も自然発生したAMLに比べると良くは無い。抗がん剤もアルキル化薬によって引き起こされた白血病の場合は薬剤の投与から白血病発症までの期間は5-7年程度と長く、MDSの段階を経て急性骨髄性白血病になることが多く、予後は極めて悪い。同じ抗がん剤でもトポイソメラーゼⅡ阻害薬のよって引き起こされる白血病は薬剤の投与から白血病を発症するまでの期間は2-3年でアルキル化薬による白血病よりは予後がまだしも良いが、やはり難治である。また治療関連のCMLやALLもtAMLほど多くは無いが報告されている。治療関連のCMLはtAMLほどには性質は悪くは無いとされている[110]。
[編集] 例外的な白血病
[編集] 成人T細胞白血病
詳細は「成人T細胞白血病」を参照
ほとんどの白血病はウイルスが原因ではなく移ることも無いが、成人T細胞白血病は極めて例外的な白血病である。
成人T細胞白血病 (Adult T-cell leukemia 略称ATL)はリンパ腫の病型を示すこともあり、成人T細胞白血病/リンパ腫 (Adult T-cell leukemia/lymphoma)とも呼ばれることがある。日本に多く、1977年に日本人によって初めて報告された疾患であり日本でもっとも研究・解析が進んでいる。HTLV-1 (Human T-cell leukemia virus type-1)ウイルスによる白血病で、病型は急性型、慢性型、リンパ腫型、くすぶり型と症状・病態の違う発現をする。HTLV-1ウイルスの感染および成人T細胞白血病の発症は地域差があり、世界ではカリブ海諸国、アフリカ中部大西洋沿岸諸国、及び日本でみられ、特に西南日本、とりわけ南九州と西九州で多い。日本では100万人以上のHTLV-1ウイルス感染者がいるが、HTLV-1ウイルス感染してもほとんどの感染者は一生白血病を発症することはなく、HTLV-1ウイルス感染者のうち一生涯で白血病を発症するのは数%である。日本では100万人以上のキャリア (ウイルス保持者)がいるが、成人T細胞白血病の発症は年間600-700人程度であり、出身別では九州出身者が7割を占める[111]。ATLは日本の本州では年間人口10万人あたり0.2-0.3人と稀な病型だが、九州では人口10万人あたり2-3人で急性骨髄性白血病より若干多く、白血病の病型の中でもっとも多い[112]。 HTLV-1ウイルスの感染ルートは輸血、性交による感染、母乳に限られ、現在では輸血用血液は検査されており、母子感染を別にすればHTLV-1ウイルス感染者が近くにいてもHTLV-1ウイルス感染者と性交さえしなければ移ることはない。性交で感染するため、ウイルス感染率は年齢が上がるほど上昇し、とくに女性の感染率が上昇する。母子感染は人工ミルクに切り替えることで防げる。ウイルス感染から白血病発症まで極めて長い時間(数十年)かかり、そのため乳児のときにウイルスに感染しても成人T細胞白血病を発症するのは成人になってからであり、日本においては成人T細胞白血病患者の平均年齢は61歳である。症状はさまざまであるがリンパ節腫脹、感染症による症状、皮膚病変などが多い。急性型では白血球が増加し平均で56000/μlになり、成人T細胞白血病の白血球は核に深い切れ込みが複数入って花のような核の特徴的な形状になり、花細胞やフラワーセルという。リンパ腫型では末梢血や骨髄での白血球増加は目立たず、リンパ節腫脹を特徴とする。慢性型とくすぶり型では大人しく、緩やかな経過をたどるためにすぐには治療を行わずに経過観察することが多い。急性型とリンパ腫型ではきわめて多種類の抗がん剤とプレドニゾロンを組み合わせる治療が行われる。若い患者 (55歳以下)の患者では骨髄移植などの造血幹細胞移植も検討される[111]。
[編集] ヘアリーセル白血病
ヘアリーセル白血病 (HCL)は分化の進んだBリンパ球性の白血病/リンパ増殖疾患で、その細胞は毛を生やしたような細い突起が多数あるきわめて特徴的な外観をしている。欧米では全白血病の2-3%を占め、それほど珍しい白血病ではないが、アジアやアフリカでは極めて稀な病型である。男性に多く、患者の平均年齢は50-55歳で中年以降に多い。脾腫と汎血球減少が多く見られ、血球が減るだけでなく免疫をつかさどる細胞に異常が多く、通常の感染症だけでなく非定型抗酸菌やカリニ肺炎、真菌症等の免疫不全による日和見感染が多く、感染症が死亡原因で目立つ疾患であるが、悪性度は低く進行がゆっくりで経過観察で良い症例も多い。HCLは位相差顕微鏡で見ると白血病細胞が特異な形態をとるので診断はしやすい。治療はインターフェロンやプリンアナログが著効する。日本ではヘアリーセル白血病は極めて少ないが、日本のヘアリーセル白血病には日本型 (ジャパンバリエーション)というローカルな亜型が存在し、日本のヘアリーセル白血病患者のなかでは日本型が大半を占める。ヘアリーセル白血病日本型は患者の平均年齢が64.9歳と多く、普通のHCLが男性に圧倒的に多いのにくらべ、日本型は女性にやや多く、白血球は増加していることが多い。日本型はインターフェロンの効き目も良くない[113][114]。
[編集] 系統不明な白血病
白血病は細胞の性質によって骨髄性とリンパ性に分けられるが、まれに白血病細胞の細胞系列のはっきりしない白血病(混合性白血病、あるいは急性未分化型白血病などの系統不明な白血病)がある。系統不明な白血病には、骨髄系白血病細胞とリンパ系白血病細胞それぞれの2系統の細胞集団が同時に現れるものと、1つの細胞に骨髄系リンパ系の両方の特徴が現れるもの、白血病細胞に一切の分化傾向が見られない急性未分化型白血病などがある[115]。AMLでもっとも未分化な最未分化型急性骨髄性白血病(AML-M0)でさえ骨髄系細胞の証であるMPOは光学顕微鏡では認められないが電子顕微鏡レベルでは認められ他の手段でも骨髄系と判明するが、急性未分化型白血病の芽球では骨髄系の抗原の証であるMPOが電子顕微鏡レベルでも陰性であり、他の手段でも骨髄系への分化傾向は認められず、なおかつリンパ系の抗原も一切発現していない。白血病細胞の分化が幹細胞に極めて近いところで止まってしまっている細胞であると考えられる。[116]。急性未分化白血病は幹細胞白血病とも呼ばれ、ほとんど幹細胞と同等の性質を持っている。逆に言えば急性未分化白血病以外の白血病(ほとんどすべてになる)の細胞はわずかではあり異常でもあるがいくらかは分化したところで分化が止まった細胞であり、またその分化の方向で細胞の性質もある程度違ってくる。[117]。これら系統不明な白血病は極めて稀であり、分かっていないことが多いが一般に予後不良といわれている[116]。
[編集] 低形成性白血病
白血病は骨髄で白血病細胞 (芽球)が自律的に増加する疾患であるが、きわめて例外的に芽球割合は増加し異形成は見られるが絶対数は減少することもある(低形成性白血病)。低形成性白血病は白血病の定義からすると特異な病型であり極めて稀でもありFAB分類でもWHO分類でもカテゴリーになっていない、しかし、WHO分類では言及されている。骨髄の細胞密度が20%以下で芽球が20%以上かつCD34陽性細胞が明らかであることでこの病型は定義されている。本来白血病とは正反対の疾患である再生不良性貧血に非常に似ているが再生不良性貧血と違って芽球の増加が認められる[118]。
[編集] 白血病と類縁疾患の境
白血病自体、単一の疾患ではなく、その原因遺伝子、病態には様々なものがある。さらに白血病の類縁疾患は数多くあり、その多くでは白血病と類縁疾患の境目は明瞭ではないため、以下に簡単に類縁疾患について記す。
骨髄異形成症候群 (MDS) は、多くでは貧血を伴う造血障害と細胞の異形成を特徴とする血液疾患であるが、MDSの一部では骨髄において芽球が増加していることがある。芽球が増加しているものは前白血病状態と位置づけられ、芽球比率が20%を超えると急性白血病と認知されるようになる。この前白血病状態のMDSの細胞では遺伝子異状によって細胞の分化障害が起こっていて芽球比率の増加が生じているが、これにさらに自律的増殖能力や不死化が加わると二次性の急性骨髄性白血病になると考えられている[119][120][121]。
悪性リンパ腫は白血球の1種リンパ球が悪性腫瘍化してリンパ組織での腫瘍的異状増加をきたす疾患だが、リンパ系白血球が腫瘍化した細胞が骨髄で増加するリンパ系白血病の細胞と悪性リンパ腫の細胞に免疫学的形質や遺伝子異常に本質的な差はないとされている[122][123]。悪性リンパ腫で腫瘍細胞が末梢血中に出現しさらに骨髄に腫瘍細胞が移動してそこで増殖を始めると、白血病の定義を満たしてしまい、白血病と言えてしまうこととなる。悪性リンパ腫と白血病が区別できなくなると非常に困るので、そのような病態を悪性リンパ腫の白血化と呼ぶこととなった。しかし、リンパ球にはリンパ節という増殖を行える器官があるため、非常に病態の解釈が難しい。骨髄でリンパ系の白血病細胞が発生して、白血病となり後にリンパ節に浸潤したのか、リンパ節で細胞に異常がおこりそれが白血化し骨髄浸潤をしたのか区別できなくなるのである[124]。例えば慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫の細胞は本質的に同じものとされ、同じように急性リンパ性白血病である前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫白血病 (B-ALL) と前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫 (B-LBL) の細胞にも本質的な差はない[125][126]。したがって免疫学的形質や遺伝子異常に基ずく分類を重視するWHOではリンパ性白血病とリンパ腫はリンパ系腫瘍としてくくり[122][123][125]、リンパ系腫瘍のなかで腫瘍細胞の増殖の中心が骨髄にあり骨髄での芽球比率が25%以上なら急性リンパ性白血病、25%以下で増殖が主にリンパ節で行われるなら悪性リンパ腫とするに過ぎず、WHOではリンパ系腫瘍はリンパ系白血病と悪性リンパ腫はあえて区別すべきものとはされていない[127][128]。しかしながら症候的にはリンパ系白血病とリンパ腫では明確な差があり、リンパ性白血病と悪性リンパ腫を一括りにすることは臨床的には必ずしも受け入れられているわけではなく、むしろ急性リンパ性白血病は急性骨髄性白血病とともに急性白血病で括ったほうが臨床的にはなじみやすい[53]。
多発性骨髄腫という骨髄でリンパ球系細胞の形質細胞が腫瘍化して増殖するのにもかかられず、臨床症状からリンパ腫とも白血病とも区別されている疾患もある。正常であれば炎症の局所やリンパ節・扁桃・脾臓といったいわゆるリンパ組織に分布するBリンパ球が分化した形質細胞が腫瘍化したものであるが、不思議なことにリンパ組織ではなく骨髄および骨に積極的に浸潤する。リンパ腫という段階が生じているのかも不明である[129]。
また、慢性骨髄性白血病などと同じ骨髄増殖性疾患に属する真性多血症や本態性血小板血症、骨髄線維症も主として増加している血球は白血球以外であるが、その本質は慢性骨髄性白血病などと同じく造血幹細胞レベルでの遺伝子異常による細胞の増殖能の自律的向上であると考えられ、一般的には白血病とはされないこれらも、広義には白血病の類として扱われることもある[130]。
[編集] 原子爆弾と白血病
1978年の鎌田らの研究(Kamada N,et al:Blood 51:843,1978)によると、造血幹細胞に生じた染色体の突然変異(フィラデルフィア染色体またはbcr-abl遺伝子変異)によって1個の慢性骨髄性白血病の幹細胞が発生し、たった一つ発生した白血病幹細胞が6年後には、末梢血での白血球数が1万個/μl(基準値は3500-9000程度)になるまで数を増やす。血液分画では好塩基球が増加し、好中球と、時には好酸球も増加する。白血球数が2万個/μlを超えると芽球も出現して慢性骨髄性白血病の状態が明白になる[131]。
1945年、広島と長崎が原子爆弾に被爆したが、その放射線被曝者では5年後の1950年から10年後の1955年にかけて慢性骨髄性白血病の発生頻度が著明に増加した[132]。被曝した放射線量が0.5Gy[註 25]以上の放射線被曝者では通常の数十倍の慢性骨髄性白血病の発生[註 26]が記録され[133]、原爆の被爆から5-10年後に発症はピークを迎え、その後には発症率は急激に低下し通常レベルになっている[134]。
放射線影響研究所の調査では、全白血病では原爆被爆後6-8年の間が発症率のピークとされる。放射線影響研究所の詳細なデータは1950年の国勢調査から始まり、それ以前には推計もはいるが被爆2年後から白血病は増え始めていると考えられている。放射線影響研究所が被爆者約5万人を1950年-2000年までの50年間観察したところ、被爆者5万人×50年間の中で204人が白血病で死亡し、それは自然な白血病死亡率とくらべて46%の過剰発生であった。当然、骨髄への被曝線量が多いほど白血病の発症率は高く、1Gy以上の被曝者では約2700人中56人が放射線が原因の白血病で亡くなったと考えられ、0.005-0.1Gyの被曝者約3万人では白血病での死亡は69人、その中で放射線被曝していなくても発症・死亡したであろう自然発生率を勘案して除去した過剰発生は4人とされている。被曝者の白血病はAML,ALL,CMLで顕著であり、CLLは目立たない[註 27][135](放射線被曝量の単位については脚注[註 28]を参照のこと)。
原爆ではないが、医療行為でも強直性脊椎炎患者で脊椎に放射線照射を受けた者、子宮頸癌に対しての放射線治療で骨髄に放射線を浴びた者では数年後に慢性骨髄性白血病の発症率が高くなっていることが報告されている[136]。ただし、これらの放射線被曝量は日常生活ではありえない放射線量であり、これらの放射線が原因と思われる慢性骨髄性白血病は慢性骨髄性白血病患者全体の中では例外と言えるほど少なく、大半の慢性骨髄性白血病の発生原因は不明である[136]。
[編集] 原爆による放射線被曝による白血病とがんの発生の違い
広島・長崎の被爆者の白血病と白血病以外の癌や悪性腫瘍では過剰発生の傾向は異なる。前述のよう放射線影響研究所の調査では白血病では被爆後6-8年後がピークでその後は緩やかに発症率は下がっているが[135]、白血病以外のがんの過剰発生は被爆後10年を経て目立つようになりその後も年々過剰発生は増え2010年現在でも過剰発生の状況は続いている[137][138]。一つの理由として白血病では染色体の転座や逆位などでキメラ遺伝子が形成されて発生するものが多い。癌でも白血病でも一つの遺伝子異常だけではがん化はせず何段階かの遺伝子異常が重なってがん化するが(CMLは例外である)白血病に多いキメラ遺伝子のような大きな遺伝子異常ではがん化に必要なステップは少なく、放射線被曝によって最初の大きな遺伝子異常 (キメラ遺伝子)がおきると白血病発生に必要な残りの遺伝子異常は少なく、遺伝子異常が積み重なるための時間は少ない。しかし、白血病以外のがんでは小さな遺伝子変異が数多く積み重なって発生するものが多いので放射線被曝によって遺伝子異常のFirst hitが生じてもそれに多くの遺伝子異常が積み重なる時間が必要なため、放射線被曝からがん発生まで長い時間が必要になると考えられる[138]。
[編集] 脚注
[編集] 註釈
- ^ 慢性骨髄性白血病では一見正常な白血球や血小板が増加し、慢性リンパ性白血病でも一見正常なリンパ球が増加するが、それらはあくまで正常な血球ではない
- ^ 2005年の国立がん研究センターの統計では、がん全体では、年間10万人あたり500人強罹患するが、白血病全体では年間10万人あたり6人程度でがん全体の1%強に過ぎない-国立がん研究センター・最新がん統計011.7.24閲覧
- ^ ただし、白血病細胞は固まりは作らないが、白血病細胞がリンパ節や歯肉、など各種臓器に浸潤してそこで腫瘤を作ることはある、この腫瘤は白血病の本体ではないので外科的に取り除いても根本治療にはならない
- ^ 骨髄異形成症候群の一部には芽球が増加しているものがあり、WHOの定義では骨髄での芽球比率が19%以下は骨髄異形成症候群であるが、そのまま芽球が増加し20%を超えると急性白血病とみなされる。ただし、19%と20%で症候的に大きな変化があるわけではなく、臨床的には適宜柔軟に対処する。-直江『WHO血液腫瘍分類』p.108
- ^ 幼若細胞に似るため芽球・・血液細胞の赤ちゃんと呼ばれる、ただし、急性白血病の病的赤ちゃん細胞は決して大人にはならず、正常な造血の邪魔をし、悪さをするだけの存在である
- ^ フラデルフィア遺伝子Ph+の慢性骨髄性白血病では好中球、好塩基球の増加は必発であり、血小板も増加していることが多い。-順天堂大学血液内科・慢性白血病の特徴
- ^ FAB分類AML-M6では白血病細胞の半数は赤血球の幼若球である赤芽球に似ていて赤白血病とも呼ばれ、AML-M7では白血病細胞は骨髄系細胞の証であるMPOは発現せず、巨核球系の抗原が発現していて急性巨核芽球性白血病と呼ばれる。- 東田『iMedicine. 5』pp.180-181
- ^ AML-M3急性前骨髄性白血病(APL)では、生命に関わる大規模な出血が多いが、それは単に骨髄で白血病細胞が増えることで血小板数が減るからだけではなく、APL細胞の持つ組織因子によって高度な線溶活性化を伴う播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を起すからである。-金沢大学血液内科・急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII
- ^ 正常な骨髄(腸骨や胸骨の)では、造血細胞と脂肪がそれぞれある程度存在する。骨髄内を造血細胞と脂肪がそれぞれ数割づつ占めるのを正形成という。骨髄内に造血細胞がほとんど無く脂肪ばかりなのを低形成。脂肪がなくて造血細胞がぎっしり詰まっているのを過形成という。低形成骨髄の典型が再生不良性貧血、過形成骨髄の典型が白血病である。
- ^ 世界では急性骨髄性白血病の罹患率は10万人あたり2.5-3人といわれている-出典、宮内『骨髄疾患診断アトラス』p.134- 若い患者もいる白血病といえども高齢者ほど罹患率は高いので高齢人口割合が高くなると白血病の罹患率も高くなる。また、民族によっても罹患率は違い日本人よりも欧米人の方が白血病の罹患率は高い傾向がある。尚、その病気にかかったら罹患、症状が出たら発症で、罹患と発症は異なるものだが、急性白血病の場合は罹患率と発症率には大きな差はない。
- ^ 小児白血病では急性リンパ性白血病(ALL)が多く、小児のALLでは2-3才が発症率のピークとされ、特に男児に多い。2-3才男児のALLが小児白血病の発症率を引き上げているので、他の年齢・性別の小児では白血病はそれほど多い疾患ではない-浅野『三輪血液病学』p.1449-1450
- ^ 2006年現在でもAML-M3以外の急性骨髄性白血病ではAra-c7日間とダウノルビシンなどアントラサイクリン系抗がん剤3日間の寛解導入療法は標準である。-浅野『三輪血液病学』p.1414
- ^ 急性リンパ性白血病バーキット型でも欧米や日本で多い散発型や免疫不全型ではウイルスとの関連は指摘されていない
- ^ 慢性骨髄性白血病ではフィラデルフィア染色体と呼ばれる9番と22番の染色体長腕間の相互転座により、9番上のabl遺伝子が22番上のbcr遺伝子領域へ転座しbcr/abl融合遺伝子が形成される。この転座はt(9;22)(q34;q11)と略して表記する。この翻訳産物であるBCR/ABLタンパクは正常ABLタンパクと違い恒常的に活性化されたチロシンキナーゼである。恒常的に活性化されたBCR/ABLタンパクによって下流の細胞内シグナル伝達も活性化され細胞の自律的増殖をもたらす。このBCR/ABLチロシンキナーゼによる基質チロシンのリン酸化を標的に阻害する物質がイマチニブである。-薄井 紀子「白血病幹細胞を標的とする薬剤開発」
- ^ これらの白血病も「慢性」で「骨髄性」であるが、慢性骨髄性白血病がフィラデルフィア染色体(Ph染色体)陽性と定義されてしまったために、骨髄性でPh染色体陰性の慢性白血病は4つの大分類から外れる
- ^ 寛解に入っていない非寛解期に移植をしても失敗する可能性は高いためにまずは寛解にもっていく必要がある。一旦寛解したのち運悪く再発してしまった後に再度の抗がん剤治療で寛解導入した第2寛解期での移植での5年生存率は58.9%再々発後の第3寛解期での5年生存率は38.6%と早い寛解期での移植の方が5年生存率は高い。なので最初から再発する可能性が高いと予想される高リスク(予後不良)群ではなるべく早い寛解期、状況によっては第一寛解期(最初の寛解で再発はまだしていない)期に移植を推奨されることがある。予後が良いと予想される低リスク(予後良好)群では第一寛解期からの地固め療法でそのまま治癒になる可能性が高く、過酷でリスクの高い移植治療を無理に選択する必要は無い。尚、白血病細胞の治療抵抗性が高く寛解に至らない非寛解期での移植では5年生存率は22.4%と高くは無い-押味『カラーテキスト血液病学』p.321-尚最初から治療抵抗性で寛解に持って行けない難治性のAMLでは移植が唯一長期生存が期待できる方法である。前述では22.4%という数字をあげたが資料によってだいぶ数字は異なり、寛解導入に失敗しても移植によって15-40%の患者は長期生存が可能であるともされる。-豊嶋『造血幹細胞移植』p.169
- ^ 免疫不全マウスではリンパ球が存在しないか不活性なので異物の排除能力が無く、人の造血細胞を移植するとマウスの体内で人の造血細胞が定着し、マウスの体内で人の血液細胞が産出される。もちろん、無菌状態で飼育しないと免疫不全マウスはすぐに感染症で死亡する。-SCIDマウスとヒト疾患モデル
- ^ 施設や状況によって異なるが、標準的な前処置では放射線を2Gy×6回で計12Gyと同時に抗がん剤のシクロホスファミドを120mg/体重1kgあたりを投与、あるいはブスルファン12.8mg/kgとシクロホスファミドを120mg/kgを投与するが-出典、豊嶋『造血幹細胞移植』pp.60-63、放射線6Gyだけでも致死量と言われ-出典がんサポート情報センターブスルファン12.8mg/kgとシクロホスファミドを120mg/kgも致死量をはるかに超えている。放射線量や抗がん剤の量を増やすほど再発の可能性は低くなるが治療関連死は増える。-出典、豊嶋『造血幹細胞移植』pp.60-63
- ^ 急性前骨髄球性白血病 (AML-M3) のオールトランスレチノイン酸治療中にはレチノイン酸症候群と呼ばれる急激な白血球増加とARDS様の呼吸不全が生じることがある、またATRA単剤では耐性を持ちやすい。それらの予防として抗がん剤アントラサイクリンを併用する。不幸にもレチノイン酸症候群が発症してしまった場合は副腎皮質ホルモンを投与する。-阿部『造血器腫瘍アトラス』p.465- なお、ATRA治療中は、絶対にトラネキサム酸を投与してはいけない金沢大学血液内科・急性前骨髄球性白血病 (APL) とDIC:ATRA、アネキシンII。また、ATRA単剤では白血病細胞数が多い症例では寛解を得にくいが、抗がん剤を併用して細胞数を減らしながらATRAを使用すると高い完全寛解率を得ることができる。-大野「急性前骨髄性白血病」
- ^ CDとは細胞の表面に発現している抗原で多数の種類があり、細胞の種類によって発現している抗原は様々であり、抗原にはCD番号を振られている。CD34抗原が発現しCD38抗原は発現していないのがCD34+CD38-細胞であり、正常な造血幹細胞や極めて若い造血細胞もCD34+CD38-細胞であるが、細胞の分化が進むと表面抗原は様々に変化していきCD34+CD38-の発現型は失われる。-阿部『造血器腫瘍アトラス』p.17-42- AML細胞の大部分はCD34+CD38+細胞であり継続的に白血病を維持することは出来ない。白血病幹細胞が含まれるCD34+CD38-細胞は骨髄の有核細胞の中で0.2-1.0%しかなく、白血病幹細胞はさらにその一部である。-松村「急性骨髄性白血病(AML)における白血病幹細胞」
- ^ CD34+CD38-白血病細胞であっても、長期的に白血病状態を維持できるものと、短期的にしか白血病状態を維持出来ないものがある。CD34+CD38-白血病細胞にも階層化があると考えられている。この点は人の正常な幹細胞でも同じで、一生に渡って造血を維持できる造血幹細胞はCD34+CD38-分画にあるが、同じCD34+CD38-分画には有限の造血能力しかない造血細胞もある。-阿部『造血器腫瘍アトラス』pp.17-42
- ^ マウスの造血幹細胞にBCR-ABL融合遺伝子のみ導入するとマウスはCMLを発症するが、分化がある程度進んだマウスの造血前駆細胞にBCR-ABL融合遺伝子のみを導入してもマウスはCMLは発症しない。しかしマウスの造血前駆細胞にBCR-ABL融合遺伝子に加えてHes1遺伝子を同時に導入するとCMLの急性期と同じ状態になる。つまりCMLの特徴を残しながら急性白血病の状態になる。この場合、BCR-ABL融合遺伝子がクラスⅠ変異、Hes1遺伝子がクラスⅡ変異に相当し、さらにHes1遺伝子が細胞の未分化性を付与するものと考えられる。-中原「慢性骨髄性白血病の急性転化におけるHes1の関与」
- ^ ただし、白球病細胞を生み出す大元である白血病幹細胞はゆっくりではあるが自律的に細胞分裂を起こすので、コントロール下にあり大半が細胞の休眠期(G0期)にある正常な造血幹細胞に比べると細胞周期に入っている細胞は多いと考えられている。ただし、白血病幹細胞にも休眠期(G0期)に入っているものは多い。-浅野『三輪血液病学』p.1374
- ^ 15-19歳は小児科ではなく内科に掛かることもある。
- ^ 胸部レントゲン撮影で被曝量は0.3mGy、胸部CT検査の被曝量は10mGyなので-出典、高槻病院・放射線科 0.5Gyという被曝量は胸部レントゲン撮影の千倍以上、胸部CT検査の50回分を一度に受けたのと同等程度になる。
- ^ 慢性骨髄性白血病の通常の発症率は年間10万人あたり1-1.5人程度である。前述
- ^ この白血病の過剰発生数は1950年以前の数字は入っていないので実際には過剰発生はこれより多いと思われる。ただし発症のピークは調査開始後の6-8年後になっているので1945-1950年の数字が入っていても過剰発生のオーダー(桁)は変わらないと考えられる。
- ^ 被曝量を表す単位はGy(グレイ)のほかSv(シーベルト)が用いられる。SvはX線、γ線についてはGyと同じである。Sv=補正係数×Gyとなる。補正係数はX線、ガンマ線、ベータ線は 1、 陽子線は 5、 アルファ線は 20、 中性子線はエネルギーにより 5 から 20 までの値をとる。原爆の直接被爆では中性子線も浴びるので0.1Gyの被曝の影響は0.1Sv=100mSv(ミリシーベルト)よりは大きくなる。胸部CT検査はX線の検査なので胸部CT検査1回での放射線被曝量は10mGy=10mSvになる。
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[編集] 参考文献
書籍
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- 浅野茂隆、池田康夫、内山卓 監修 『三輪血液病学』文光堂、2006年、ISBN 4-8306-1419-6
- 阿部 達生 編集『造血器腫瘍アトラス』改訂第4版、日本医事新報社、2009年、ISBN 978-4-7849-4081-3
- 大野 竜三 編集『よくわかる白血病のすべて』永井書店、2005年、ISBN 4-8159-1736-1
- 小川聡 総編集 『内科学書』Vol.6 改訂第7版、中山書店、2009年、ISBN 978-4-521-73173-5
- 押味和夫 監修『WHO分類第4版による白血病・リンパ系腫瘍の病態学』中外医学社、2009年、ISBN 978-4-498-12525-4
- 押味 和夫 編著『カラーテキスト血液病学』中外医学社、2007年、ISBN 978-4-498-12538-4
- 金倉 譲 監修『血液診療エキスパート 白血病』中外医学社、2009年、ISBN 978-4-498-12554-4
- 木崎 昌弘 編著『白血病・リンパ腫・骨髄腫 : 今日の診断と治療』 第4版、中外医学社、2011年、ISBN 978-4-498-12519-3
- 黒川 清 松澤 佑次 編集主幹『内科学』第二版、2分冊の2、文光堂、2003年、ISBN 4-8306-1289-4
- 杉本恒明、矢崎義雄 総編集 『内科学』第9版、朝倉書店、2007年、ISBN 978-4-254-32230-9
- 鶴尾 隆 編『がんの分子標的治療』南山堂、2008年、ISBN 978-4-525-42041-3
- 寺野 彰 総編集『シンプル内科学』南江堂、2008年、ISBN 978-4-524-22344-2
- 豊嶋 崇徳 編『造血幹細胞移植』医薬ジャーナル社、2009年、ISBN 978-4-7532-2374-9
- 友安 茂 編『血液・造血器』医学評論社、2007年、ISBN 978-4-87211-808-7
- 直江 知樹、他 編『WHO血液腫瘍分類』医薬ジャーナル社、2010年、ISBN 978-4-7532-2426-5
- 直江 知樹、他 編『血液疾患最新の治療. 2011-2013』南江堂、2010年、ISBN 978-4-524-26071-3
- 日本血液学会、日本リンパ網内系学会 編集『造血器腫瘍取扱い規約』金原出版、2010年、ISBN 978-4-307-10139-4
- 東田 俊彦著 『iMedicine. 5』リブロ・サイエンス 、2010年、ISBN 978-4-902496-31-4
- 宮内 潤、泉二 登志子 編『骨髄疾患診断アトラス : 血球形態と骨髄病理』中外医学社、2010年、ISBN 978-4-498-12562-9
- 村川 裕二 総監修『新・病態生理できった内科学(5)血液疾患』第2版、医学教育出版社、2009年、ISBN 978-4-87163-435-9
- Geoffrey M.Cooper,Robert E.Hausman著『クーパー細胞生物学』須藤和夫,他,訳、東京化学同人、2008年、ISBN 978-4-8079-0686-4
論文
- 稲葉 俊哉「放射線がんにおけるエピゲノム制御異常の役割」『広島医学』Vol.63 No.4、広島医学会、2010年、pp.236-240
- 井上 大地、北村 俊雄「骨髄異形成症候群の病態・進展とアポトーシス」『血液内科』Vol.62 No.2、科学評論社、2011年、pp.142-148
- 薄井 紀子「白血病幹細胞を標的とする薬剤開発」『最新医学』Vol.66 No.3、最新医学社、2011年、pp.409-415
- 黒田 純也、山本 未央、谷脇 雅史「慢性骨髄性白血病の細胞死の抑制」『血液内科』Vol.62 No.2、科学評論社、2011年、pp.159-165
- 仲 一仁、平尾 敦「CML幹細胞の制御メカニズム」『Annual Review 血液 2011』、中外医学社、2011年、p.8-14
- 中原 史雄「慢性骨髄性白血病の急性転化におけるHes1の関与」『臨床血液』Vol.52 No.6、日本血液学会、2011年、pp.329-336
- 平尾 敦「白血病幹細胞を標的にした新たな治療法の開発」『臨床血液』Vol.52 No.7、日本血液学会、2011年、pp.484-489
- 松尾 恵太郎 伊藤 秀美「骨髄性白血病の疫学」『日本臨床』Vol.67 No.10、日本臨床社、2009年、pp.1847-1851
- 松村 到、金倉 譲「急性骨髄性白血病(AML)における白血病幹細胞」『癌幹細胞-癌研究のパラダイムシフト』医歯薬出版、2009年、p.5-11
- 宮腰 重三郎「高齢者造血器腫瘍の病態と治療」『血液内科』Vol.62 No.6、科学評論社、2011年、pp.669-175
- 宮崎 泰司「急性骨髄性白血病の分子病態と診断」『血液内科』Vol.62 No.5、科学評論社、2011年、pp.643-648
雑誌
- 大野竜三「急性前骨髄性白血病」『血液フロンティア』Vol.13 No.10、医薬ジャーナル社、2003年
[編集] 関連疾病
[編集] 関連項目
- 悪性腫瘍
- 腫瘍学
- 血液学
- 日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)
- 骨髄移植
- 骨髄バンク
- 日本さい帯血バンクネットワーク
- 特定非営利活動法人 全国骨髄バンク推進連絡協議会
[編集] 外部リンク
- JALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)
- ヒト白血病の再発は、ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因- 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - 2007/10/22 独立行政法人 理化学研究所
- 日本白血病研究基金(認定特定公益信託)