骨髄異形成症候群

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骨髄異形成症候群のデータ
ICD-10 D461〜464、D469
統計
世界の患者数
日本の患者数 3,000
(2002年)
関連学会
日本 日本血液学会
世界 アメリカ血液学会
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骨髄異形成症候群による白血球の偽ペルゲル核異常が見られる

骨髄異形成症候群(こつずいいけいせいしょうこうぐん、myelodysplastic syndromes; MDS)とは骨髄機能の異常によって前白血病状態となり、造血障害を起こす症候群

病態[編集]

骨髄に造血幹細胞の前腫瘍細胞である異型クローンが生じ、正常幹細胞を凌駕して増殖する結果として正常の造血が抑制される。また異型クローンから造られる血球細胞は異常細胞なので末梢血に出る前に分解されるが、この様な無駄な造血を無効造血と言う。形成される血球は形態も異常で寿命も短い。

白血病との関係[編集]

MDSの異常クローンはアポトーシスが亢進している。異常クローンが骨髄を占拠する結果として骨髄は過形成になるが、アポトーシスが亢進しているので血球減少をおこす。この状態で異常クローンの遺伝子にさらに傷がつくとアポトーシス耐性を獲得するクローンができる。この場合急性骨髄性白血病になる。このメカニズムがあるが故に、MDSを前白血病状態と呼ぶ者もいる。

分類[編集]

5q-症候群による異常な巨核球

2000年WHOによって確立された新WHO分類が最も一般的である。同時に作成されたMDS 2000は新WHO分類に含まれるので、新WHO分類でのみ考慮すれば充分となる。

不応性貧血(RA)
芽球が末梢血で1%未満、骨髄で5%未満であり、環状鉄芽球を持たないもの。白血病化は約10%である。
鉄芽球性不応性貧血(RARS)
環状鉄芽球が全赤芽球の15%以上を占めるもの。環状鉄芽球とはミトコンドリアに鉄が沈着し、プロシャ青染色で鉄顆粒が核に沿って核周の1/3以上に環状に配列したものである。
多血球系異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)
RAのうち、明瞭な形態学的異形成が10%以上に多血球にわたって見られるもの。白血病化は15〜20%である。
多血球異形成を伴う鉄芽球性不応性貧血(RCMD-RS)
RARSのうち、明瞭な形態学的異形成が10%以上に多血球にわたって見られるもの。白血病化や生存期間はRCMDとほぼ同じである。
芽球増加型不応性貧血(RAEB)
骨髄で芽球が5%を超えるか末梢血で1%を超えるもの。
タイプI
RAEBのうち骨髄中の芽球が5〜9%であるもの。20〜30%の確率で白血病化する。
タイプII
RAEBのうち骨髄中の芽球が10〜19%であるもの。タイプIより白血病化しやすい。
5q-症候群
染色体異常として5q-を有するタイプ。不応性貧血に類似するが、巨核球が小型で単核であるという特徴がある。最も白血病になりにくい。
分類不能型骨髄異形成症候群
上記のいずれにも属さないもの。顆粒球系にのみ異形成が見られるものなど。

原因[編集]

有機溶剤化学物質放射線などが考えられている。抗癌剤投与による発症も問題となっている。

骨髄異形成症候群の約半数で染色体異常が見られることと、先天性染色体異常によるファンコーニ貧血の患者が高頻度で骨髄異形成症候群を発症することから、遺伝子変異が何らかの形で関わっていると考えられている。

疫学[編集]

男女比は1.5〜1.7と男性に多い。発症は40代から次第に増加し、高齢者に多い疾患であるため、先進国では平均年齢の増加に伴い患者数が増加傾向にある。

症状[編集]

発症時の症状は乏しい。無症状かあるいは赤血球の産生が低下して慢性の貧血を来たす。貧血の型は一定せず、大球性から小球性までとりえる。白血球減少が高度な例で感染症の合併、血小板減少が高度な例で出血傾向が見られるものの、血液検査で白血球減少、血小板減少、汎血球減少が偶然発見されることも多い。

合併症[編集]

白血病化が最も重要な合併症である。高リスク群に分類される型では高率に急性白血病へ移行する。特に急性骨髄性白血病が多い。白血球減少に伴う感染症も重要な合併症の1つである。

鉄過剰症 :骨髄異形成症候群の治療で、輸血を受け鉄が過剰に体に取り込まれることによって発症する。特有の自覚症状は無い、進行すると肝障害や心不全などの臓器障害を引き起こす危険性がある。輸血が40単位を超えた場合発症するリスクが高くなる

検査[編集]

血液検査
末梢血塗沫染色標本検査
造血低下と無効造血により汎血球減少または2血球減少を示す。正球性ないし大球性貧血が見られる。RARSでは例外的に小球性低色素性赤血球が混在する。
骨髄塗沫メイ・ギムザ染色標本検査
原則として正形成もしくは無効造血などによって過形成が見られる。一部低形成が見られるものもある。塗抹標本や骨髄生検で異形成が見られないか観察する。
染色体検査
様々な染色体異常が認められる。
MDS診断用フローサイトメトリー
診断が難しい場合に有用だが、一部の病院でしか行えない。
PNH血球検査
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診断[編集]

汎血球減少が見られた場合、まず骨髄異形成症候群を念頭に置く。次に腫瘍膠原病などを除外し、その上で骨髄塗抹標本で形態異常を確認し診断する。しかし形態異常の確認には検査者の主観が入りやすく、正確性に欠くことがある。これを補うために以下の補助検査が有用である。骨髄穿刺時に染色体検査をし、染色体異常が見られれば確度は高まる。また、一部の病院ではMDS診断用フローサイトメトリー検査が可能であり、骨髄異形成症候群に特徴的な異常が検出されれば診断の正確性があがる。

治療[編集]

軽症例では経過観察となり、基本的に対症療法が中心となる。好中球減少例には顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与を、赤血球減少例にはエリスロポエチン(EPO)の投与を行い、それぞれ極端な減少例には輸血療法で対処としていく。

重症例に対しては根治療法として、造血幹細胞移植を行う。異常クローンを根絶し、正常造血を回復させるのが目的である。現在移植の適応は50〜55歳以下に限られている。

また、薬物治療としては以下が用いられる。

予後[編集]

予後不良である。予後良好の不応性貧血で生存年数は約5年、予後不良のタイプでは1年程度である。骨髄移植実施例での長期生存率は不応性貧血では40〜60%、RAEBでは20〜30%程度である。

歴史[編集]

概念[編集]

このような病態を示す造血障害の存在は古くから知られていたが、骨髄異形成症候群として確立したのは1982年である。この確立に尽力したDr. John M. Bennettらは国際MDS財団を設立し、その後のMDS研究の進歩を推進した。 現在、全世界で200施設あまりが、国内では5施設が、MDSに関する優れた研究・診療施設 (MDS Centers of Excellence) として国際MDS財団に認定されている。 さらに国際MDS財団は、MDS患者に対する有用な情報の提供(現在の治療法の解説、新薬の臨床試験の情報提供、最寄りのMDS Centers of Excellenceの情報提供など)を行うとともに、Global Patient Support Groups(グローバルMDS患者サポートグループ)のスポンサーとして、MDS患者サポートグループの立ち上げと運営を支援している。本邦でも日本MDS患者サポートグループが設立され、MDSの方々に情報提供などの支援を行っている。

分類[編集]

2000年より前にはFAB分類が用いられていた。

その後、1999年から2001年にかけてWHOにて提唱され、WHO分類第3版として出版された分類では、慢性骨髄単球性白血病(CMML)は骨髄異形成/骨髄増殖性疾患 (MDS/MPD)群に分類された。

各国において[編集]

日本[編集]

高齢化に伴い、患者数は増加傾向にある。現在特定疾患に制定されている。

外部リンク[編集]