骨髄バンク
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骨髄バンク(こつずいバンク、Marrow Donor Program)とは、白血病などの血液疾患の治療として造血幹細胞移植(特に「骨髄移植」)が必要な患者のために、血縁関係のない健康な人(非血縁者)から提供される「骨髄液」を患者に斡旋する仕組み及びその業務を担う公的機関のこと。
目次 |
[編集] 概要
骨髄バンクは世界各地に設置されており、特にアメリカ、ドイツ、イギリスなどにおいて活動が活発であると言われている。また、各バンクに登録されているHLA型のデータを集約している「世界骨髄バンクドナー集計システム」(BMDW:Bone Marrow Donors Worldwide)には世界42カ国で57バンクが参加し、各バンクに登録されたHLAデータ(さい帯血バンクのものも含む)の合計は2005年11月16日に1,000万件を突破した(BMDWに参加していない骨髄バンクも4バンク存在する)。日本骨髄バンクを介した移植例は2008年12月3日に1万例に到達した。 日本においては骨髄移植推進財団が主体となり、日本赤十字社(骨髄データセンター)及び各都道府県等(保健所)の協力を得て、1991年12月より日本骨髄バンク(JMDP:Japan Marrow Donor Program)の運営を行っている。本稿においては主にこの日本骨髄バンクについて取り上げる。
[編集] ドナー登録
骨髄液を提供するためにはあらかじめ骨髄バンクに登録することが必要であり、骨髄提供希望者のことを「ドナー」と呼ぶが、このドナー登録は以下のような手順で行われる。
- 「ドナー登録条件」を満たしているか確認する。
- 登録時の年齢は18歳~54歳(提供は20歳~55歳)、体重が男性45kg・女性40kg以上で過度の肥満ではない(BMI=体重kg÷身長m÷身長mが30未満)、最高血圧90~150・最低血圧100以下、輸血経験・貧血・血液疾患経験・感染症はない・投薬していない、など。以上の条件を自らが満たしているか確信できない人は骨髄バンクの受付窓口へ相談し可否を確認する。適合者が発見された時に詳しい健康検査後に提供の可否が決定される。
- ドナー登録について説明したパンフレット「チャンス!」(献血ルーム、病院のほか郵送、骨髄バンクのHPでも入手可能「チャンス(Flash版)」)を読む。
- 最寄の受付場所(全国各地の保健所、献血ルーム、または休日の繁華街などの臨時登録会もある)を選び、電話で登録の予約をする。その後、会場にてビデオなどにより骨髄提供について理解した上で、医師による問診、2ml程度の採血を行う。
なお、登録については骨髄バンクのサイト[1]において詳しく解説されている。
[編集] HLA型 (ヒト白血球抗原型)
登録の際の採血では「HLA型(ヒト白血球抗原型)」を検査するのが主目的である。HLA型とは白血球のいわば血液型に当たるもので、その適合確率は兄弟姉妹間で4分の1、親子間ではまれ(数パーセント以下)であり、非血縁者間だと数百人~数万人に1人しか適合しないと言われている。そのため骨髄移植推進財団では、適合者が見つかりやすくなる水準として30万人のドナー登録者獲得を目指している(2006年6月末現在の登録者数は約25万人)。
注、日本骨髄バンクの有効ドナー登録者が、2008年1月15日に30万人を達成し、2009年5月末には33万8千人になったがすべての移植希望患者にドナーが見つかる状況ではなく、さらなるドナー登録拡大が必要とされている。
[編集] ドナーの選出
登録後、移植希望患者とHLA型が適合すると、ドナー候補者として選ばれたことを知らせる書類が骨髄移植推進財団(日本骨髄バンク)から郵送される。登録者自身の提供意思及び家族の意向・健康状態や骨髄提供へ向けた日程などについてのアンケートを返送後、意志・意向と提供条件が整っていれば、病院でコーディネーターや医師と面談があり、詳しい説明と問診・採血を行う。検査結果に問題がない複数候補の中でもっとも提供者として適していると患者側の主治医が判断したドナー候補が最終的なドナー候補として選ばれる。
最終的なドナー候補者に選ばれると、ドナー候補者本人とその家族が出席した上で最終同意の確認が行われる。この段階まではいつでも提供を取り消すことができるが、最終同意書に同意した後は取り消すことができなくなる。 最終同意書が締結されると、病んだ骨髄細胞をドナーの骨髄細胞に置き換えるためにレシピエント(骨髄を受け取る側の移植受容患者)の骨髄細胞は放射線や薬品で全て破壊されるので、最終同意後にドナーが移植を拒否すると、移植を予定していた患者は生命を保てないためである。
[編集] 提供手術
骨髄は、大量の骨髄があり採取しやすい腸骨(骨盤の一番大きな平たい左右一対の骨である)から採取する。腸骨の背中側のウェストより少し下の部分に、ボールペンの芯の太さ程度の採取針を穿刺して骨髄液を吸引し、全身麻酔下で行われる。採取する骨髄液の量は、患者の体重kgあたり15mlを目標としているが、ドナーの体の負担がない程度に設定される。 骨髄採取によりドナーが貧血に陥らないために、ドナー自身の血液を事前に採取保存しておき、採取当日返血する。 提供のための手術は1~3時間かかり、4日~1週間程度の入院が必要になる(まれではあるが入院期間は手術の予後が不良である場合などには1週間以上に長引く場合もある)。
骨髄採取や麻酔に伴う合併症として、一過性のものとして発熱や吐き気、頭痛、気管チューブを抜いた後ののどの痛みや、尿道カテーテルを入れたことによる尿道の痛み、吐き気、37~38度程度の発熱や血圧低下や不整脈などが報告されている(いずれの場合も時間の経過と共に回復している)。採取部分の痛みは個人差があり1~7日残ったという提供者が多い。針を刺した部分の化膿や出血があることもある。
[編集] ドナーの後遺障害等の危険性と保障
後遺障害の発生は確率的には低いもの様々な問題がある。骨髄提供後に血腫ができたり、知覚障害や痺れ・痛みが残存するなど手術後ドナーに後遺症が残るケースが複数報告されている。また、過去に海外で3件(血縁者間2例、非血縁者間1例)、日本で1件(血縁者間)のドナーの死亡事例が報告されている。ただし日本の1件は骨髄バンクを介さない血縁者間で行われたものであり、日本骨髄バンクが関与した10533件の移植の中に死亡事例は無い(2009年5月末現在)。移植医療全てにいえることであるが、ドナーの協力や家族などの理解が無ければ成り立たない医療であるのでドナーの安全は特に高い水準で守られているが、医療行為である以上リスクを完全には除去し切れていない。
ドナーにはレシピエントの負担により加入する骨髄バンク団体障害保険[1]があり、適用されれば300万円~1億円の補償金あるいは入通院保険が得られる。 日本骨髄バンクが関与した1万件を超える移植の中で、骨髄バンク団体障害保険の適用事例(C型肝炎、神経障害、骨膜損傷、ヘルニア、咽頭肉芽腫、腎炎、骨膜障害等々)は100件ほどあるが、時間の経過とともにほとんどの事例が回復している。
- 日本のドナー死亡例について
- 日本では、骨髄バンクを介さない血縁者間で行われた移植でドナーの死亡事例が一件あるが、原因は腰椎麻酔の合併症によるものである。
- 日本骨髄バンクでは骨髄採取は原則として全身麻酔下でおこなわれるので、腰椎麻酔は原則として行われない。
[編集] ドナー側の負担
骨髄移植が完了するまでに要するドナーの金銭負担は登録の際の登録場所までの交通費のみである。 手術から入退院までの費用もドナーには一切かからないが、提供によって休業しても休業補償はなく、またドナーが入院することによって発生する可能性のある、家族の介護、子どもの保育、家族の交通・食事等のドナー本人以外への費用・労力発生には補助は無い。 また入院の際、ドナー本人にはタオルや歯ブラシやテレビカードなど、簡易的な生活品を購入する名目で5千円ほど支給される。(2009.06.13現在)
登録後、住所を変更した際には変更の連絡する必要がある。(転居先不明などで連絡が取れないと判断された時は登録を取り消される事がある)
[編集] 骨髄バンクへの誤解
骨髄バンクの認識は各種の啓発によって広まっているが、未だに多くの誤解が存在する。 ドナーが骨髄を提供する事に対して多く見られる誤解について記述する。
主な誤解例と解説
- 誤解例1. 骨髄提供には激痛が伴う
解説・前述の通り、提供時には全身麻酔を施すので痛みを自覚する可能性はない。 人により麻酔から醒めた後に腰部、喉、尿道、などの部位が痛む事はあるが、手術した部位に喧伝されているような激しい痛みが起こることはない。
- 誤解例2. 半身不随になる恐れがある
解説・骨髄採取するのは腸骨からである。腸骨に中枢神経は存在しないので半身不随になる事は無い。
- 誤解例3. 骨髄は背中・背骨から取る
解説・骨髄バンクに関するいくつかの誤解は脳脊髄液(髄液)と骨髄液とを混同した事から発生している。 骨髄液は骨盤の腸骨から採取するので背骨(脊椎や腰椎)に針を刺す事は無い。
[編集] 骨髄バンクの課題
現状ではHLA型が適合したドナーが最終同意前に提供を断るケースが少なくない。その原因としては家族の反対や、仕事を休みにくいこと、休業補償がないこと、周囲の理解が得られないこと、後遺症が残存する可能性があることなどが指摘されている。また、家族の介護、子どもの保育、家族の交通・食事等のドナー本人以外への費用や労力負担について補助が無いため提供出来ないこともある。また、ドナーの提供手術は全身麻酔によって行うため、行われる処置が全身麻酔を経験したことのないドナーに関しては予想以上に大がかりに感じられる事も要因のひとつである。
原則的に、ドナーとレシピエントはそれぞれ異なる医療施設を利用する。ドナー側の事前の各種検査および手術は、ドナーの居住地に近い医療施設にて行われる。採取された骨髄液は速やかにレシピエントのもとへと輸送されるが、事故により到着しない恐れもある。
過去に起こった問題事例
- ヘモグロビン濃度が基準を下回るドナーが、チェックミスにより検査をすり抜け、自己血採血を済ませ、さらに、採取直前までいったものの、最終的に採取は中止されたといった事例があった。採取担当医師と骨髄バンクとの連携ミスなど、多くの課題を残した事例であった。
- 骨髄提供手術のための入院の際に、院内感染によってC型肝炎を発症し,職場復帰に数ヶ月を要した事例もあった。[2]
- 2007年3月、ドナー登録者データの登録作業の際に誤って別人のHLA型を入力するミスがあった。
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
- 献血
- さい帯血バンク
- 臓器提供意思表示カード
- 移植 (医療)
- hide - 骨髄バンク運動に積極的に参加、自身も骨髄バンクに登録。
- 井原正巳 - hide同様、自身も骨髄バンクに登録。
- 本田美奈子. - 急性骨髄性白血病のため入院中に難病患者を支援するための活動として“LIVE FOR LIFE”を発案。彼女の逝去後は遺志を継ぐ関係者たちにより運営され、骨髄移植推進財団とパートナーシップを結んでいる。
- ACジャパン - 1993年度 - 2007年度まで骨髄移植推進財団を支援(当時:公共広告機構)。骨髄バンクドナー登録を呼びかける広告を展開。2008年度からは支援が途絶えている。
- スーパーバンド - 骨髄バンク支援ソング「笑顔のゆくえ」。骨髄移植推進財団公認。

