ヴィクラマーディティヤ (空母)
| 艦歴 | ||
|---|---|---|
| 起工 | 1978年12月26日 | |
| 進水 | 1982年3月31日(バクー)、2008年12月8日(ヴィクラマーディティヤ) | |
| 取得 | 2005年3月10日、ロシアより購入 | |
| 就役 | 2012~2013年見込み | |
| 性能諸元 | ||
| 排水量 | 満載 45,000トン | |
| 全長 | 273.1m (水線長242.8m) | |
| 全幅 | 53.0m (水線幅32.7m) | |
| 吃水 | 10.2m | |
| 機関 | 蒸気タービン(180,000hp) | 4基 |
| ボイラー | 8缶 | |
| 4枚プロペラ・スクリュー推進 | 4軸 | |
| 速力 | 最大32ノット | |
| 燃料 | 7,000トン、航空機用1,500トン | |
| 航続距離 | 18ノットで7,000海里 | |
| 電力 | ディーゼル発電機(1,500kw) | 6基 |
| 航海日数 | 30日 | |
| 乗員 | 1612名(内士官383名)、航空要員430名、司令部要員50名 | |
| 兵装 | カシュタン(CADS-N-1)CIWS | 3基 |
| レーダー | MR-700 ポドベレゾヴィク 3次元レーダー | 1基 |
| MR-760 フレガートMA 3次元レーダー | 1基 | |
| ガゾン 航空機管制用レーダー | 1基 | |
| 搭載機 | MiG-29K | 16機 |
| Ka-31 | 6機 | |
ヴィクラマーディティヤ (サンスクリット: विक्रमादित्य;IAST: INS Vikramāditya) は、インド海軍の航空母艦である。ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・ゴルシコフを取得し、改装した艦である。
艦名は、シヴァが降臨したとされる伝説上の皇子の名であり、グプタ朝を始めとするインドの諸王が号した尊称に由来する。ヴィクラマディティア、ヴィクラマディチャと表記されることもある。
目次 |
[編集] 概要
元来船体前部甲板上に搭載していたP-500艦対艦ミサイル他兵装を全て撤去、全通甲板を設け、その先端に勾配14.3度のスキージャンプ甲板を追加したのが外見上の大きな変更点である。
また、後部甲板にアレスティング・ワイヤーを追加、着艦誘導灯も搭載され、固定翼機(CTOL機)の運用も可能なSTOBAR方式の空母となった。また艦尾及び両舷が若干延長される等飛行甲板も拡張され、搭載機の大型化に対応しエレベーターも強化されているようである。
艦固有の兵装は近接防御用にカシュタンを艦橋上・船体後部両舷に各1基、合計3基を搭載するに留まる見通しである。
レーダー及びソナーについて、アドミラル・ゴルシコフ時代外観上の特徴の一つであった艦橋壁面に固定装備の大型フェイズド・アレイ・レーダー、マルス・パッサート(Mars-Passat)他レーダー、MGK-355 ポリノム(Polinom)ソナーシステムを構成するオリオン(Olion)艦首バウ・ソナー及びプラチナ(Platina)可変深度ソナーは撤去された。 レーダーは、新たに艦橋上に対空捜索用として大型の3次元レーダー、MR-700ポドベレゾヴィクとMR-760フレガートMA 3次元レーダーが搭載される。MR-700ポドベレゾヴィクは、ロシア海軍の大型対潜艦「ケルチ」で試験的に搭載していたが、実用型は「ヴィクラマーディティヤ」が初の搭載となる。 ソナーは装備しないものと見られている。
蒸気タービン機関は同一だが、蒸気発生用ボイラーは、燃料として軽油を使用できる新型のKVG-ZD(KVG-2M-GM)に換装される(従来のボイラーは、重油専用であった)。
現在運用中の「ヴィラート」を代替・更新する予定だが、「ヴィクラマーディティヤ」の引渡遅延に伴い、新たに「ヴィラート」の延命工事が実施されることになった。
[編集] インド売却までの経緯
ソ連海軍のキエフ級航空巡洋艦4番艦「バクー」として建造され、後に改名された「アドミラル・ゴルシコフ」は、1991年頃より行動が不活発となったが、他の同型艦とは異なり状態は比較的良好で、艦齢も若かったので直ちにスクラップとはならず、1990年代中頃には売却の対象として、特にインドに対し売却の提案・交渉が行われるようになった。
1996年からロシア政府はインドと売却交渉を開始した。当初はそのままの状態での売却も検討されたようだが、STOVL機とヘリコプターのみの運用では戦力として不十分と判断された為か、甲板上の兵装は全て撤去、艦首にロシア海軍の「アドミラル・クズネツォフ」同様スキージャンプ勾配を設け、発着艦も同様にSTOBAR方式を採用する、全通甲板を持った所謂「正規空母」への改造が提案されるようになった。
1998年12月には、「艦自体は無償譲渡する代わりに、全通甲板空母への改装費用と搭載機代金を支払う」内容で当時のロシア首相エフゲニー・プリマコフが政府間覚書に署名するまで漕ぎ付けたが、具体的な契約額、特に改造費用を巡り両国の溝は埋まらず、引き続きインド・ロシア間で交渉が断続的に続けられた。
21世紀に入っても交渉は妥結せず、痺れを切らしたロシア海軍高官の「インドが購入を決断しないなら、ロシアが自国海軍用に改造する」なる発言も伝えられたが、インドに対するブラフに過ぎなかった。
一方インドは、並行して西側諸国の協力も得つつ独自に国産空母を建造する計画を立てていたが、計画は大幅に遅れ、当初計画していた「ヴィクラント」の代替はおろか、唯一の現役空母ヴィラートの退役までに就役が間に合わない可能性が極めて濃厚となってしまった。故にインドは、「ストップギャップ」としてゴルシコフを購入せざるを得ない状況となった。
2004年1月、「全通甲板空母への改装費用と搭載機(MiG-29K等)の代金として合計で約15億USドルを支払う」旨の契約が締結され、セヴマシュ・プレドプリヤーチエ(北方機械建造会社、旧第402海軍工廠、セヴェロドヴィンスク市)において改造工事が始まった。
[編集] 引渡遅延と価格の高騰
ロシア兵器輸出公社ロスオボロンエクスポルトは、当初(2002年11月)、ゴルシコフの改装費用を20億ドル、艦載機購入費用を7億ドルと見積もっていた。
「ヴィクラマーディティヤ(旧ゴルシコフ)」をインドに売却するにあたって、自力で近代化改修できるだけの工業力を有していなかったインドと、近代化技術を持ってはいるがその費用を捻出できなかったロシア双方の事情から、
- 船体そのものはインドへ無償供与、ただし改装費用(9億7,400万ドル)はインド側が捻出
- ロシアにおいて改装を行い、その後インドに引き渡す
- 搭載機やその他オプションをロシアから購入する(艦載機の費用は5億2,600万ドル)
という契約が2004年1月に交わされた。
艦上機の選定において、当初インド海軍はシーハリアーの搭載を検討していたが、高温多湿のインド洋において、離着艦の挙動がエンジン推力に左右されるSTOVL機は不安定で危険であると言う運用経験から、最終的にロシアからMiG-29K艦上戦闘機を購入する事を決定したという経緯がある。この時、Su-33とMiG-29Kが検討されたが、サイズが小さくより多く搭載できるMiG-29Kが選定された。
中古艦とは言え改装費用込みで9億ドル(そもそも船体そのものは無償)と言う価格は破格であるが、これは前述の通り艦上機をロシアから購入することを承諾し、さらにTu-22M超音速爆撃機の購入と、アクラ型原子力潜水艦の建造費用を負担しこれをリース導入すると言う条件をインド側が承諾したのが理由だとされている。
旧ゴルシコフの改造工事を巡っては、サンクトペテルブルク市のバルチースキィ・ザヴォートとセヴェロドヴィンスク市のセヴマシュが受注を争い、セヴマシュが勝利した。敗れたバルチースキィ・ザヴォートは、新型の軽油焚きボイラーを製造した。しかしセヴマシュは、これまで原子力潜水艦を建造しており、大型水上艦の経験は無かった。
2008年の就役を目指し、セヴマシュで改装工事が開始されたが、インド側は、高度の権限を持つ国防相幹部によって構成される委員会と、艦艇建造及び調達を監査する運営委員会を組織し、セヴマシュ造船所に査察チームを常駐させ、改装工事の進行状況を監視していた。
しかし、2007年4月頃から、本艦の工事遅延の情報が漏れ伝えられるようになった。インド側は、当初、海軍参謀総長スレーシュ・メーフタ大将、モスクワ駐在インド大使カンワル・シバルが、査察チームから「工事は予定通りに進行している」と報告を受けている事を理由に、この情報を否定していたが、2007年11月19日、インド連邦議会下院のシュリ・ウダイ・シン議員に対し、国防相シリ・アキ・アントニーは、書面でヴィクラマーディティヤ改装工事の遅れを認めた。
改装工事が遅れた理由は、ロシア側の報道によると、作業量が当初の見積もりよりも増大した事に有り、具体的には、セヴマシュが改装工事費用を過小評価した事、1990年代の火災事故で艦の一部が痛んでいた事、この他、技術的な問題として、MiG-29Kの離艦を保証する為のスキージャンプ台取付けを含む艦の再装備工事が予想以上に難抗している事が挙げられる(ただし、2008年2月末現在、スキージャンプ台取付け工事は終了している)。
セヴマシュ総代表ニコライ・カリストラトフは「工事費用の見積もりを間違って作業が実行され、これにより10億ルーブル余分に費用が掛かりました。 セヴマシュは、これまで、同じような仕事を行なった経験が無かったのです」と述べている。
2008年2月19日、ロシア日刊紙『コメルサント』は、インド・ロシア間で、当初契約額15億ドルに約10億ドル上乗せする交渉が進行中であり、この問題は解決されつつある、と報じた。『インド・タイムズ』の報道によると、インド側は、航空母艦の為に、もう6~8億ドルを支払う意思がある。
2008年2月後半、改装中の「ヴィクラマーディティヤ」を視察したインド国防相秘書官ビジャイ・シンは「同艦は、2010年中頃までに完成しなくてはならない。その後、同艦は、システムが全て適切に動作する事を保証する為、ロシア海軍の手により、18か月間の広範囲に渡る海上テストを経験するだろう」と発言した。改装終了後、ヴィクラマーディティヤは、30年の寿命を有する。
2008年3月16日、インド海軍参謀総長スレーシュ・メータ大将は、改装中の「ヴィクラマーディティヤ」を視察、改装工事を行なっているセヴマシュの仕事に対し、満足を表明した。
2008年3月26日、『イタル・タス』は、2008年4~5月にセヴマシュ代表がインドを訪れ、「ヴィクラマーディティヤ」改装費用額についての最終合意に達する、と報じた。
2008年2月末の時点で、「ヴィクラマーディティヤ」は、ボイラーの換装、飛行甲板の拡張、艦首スキージャンプ台の設置を終えており、工事はようやく順調なペースに乗りつつあるようである。
2009年7月、インド・ロシア間の交渉により、本件に関する費用は総額約22億ドルで妥結したと報じられた。
2009年8月18日、『イタル・タス』は、インド政府が、1億2,000万ドルの追加支出を認可したと報じた。
2009年11月末現在、ヴィクラマーディティヤの引渡しは行われておらず、計画では2012年とされている[1]。
[編集] 参考文献・注
- アンドレイ・V・ポルトフ 「脚光集めるインドの空母計画 ゴルシコフ改造艦と国産防空艦」『世界の艦船』658号、94-99頁、2006年。
- ^ AFPBB News「ロシアの退役空母、譲渡予定のインドでとんでもない厄介者に」2009年8月3日