テラフォーミング

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4段階で描いた火星のテラフォーミングの想像図

テラフォーミング: terraforming)とは、人為的に惑星の環境を変化させ、人類の住める星に改造すること[1]。「地球化」、「惑星改造」、「惑星地球化計画」とも言われる。

アメリカSF作家ジャック・ウィリアムスンCollision Orbitコリジョン・オービットシリーズで用いた造語語源であるとされる[2]

科学的見地から見たテラフォーミング[編集]

SFの世界では一般的なアイデアであるが、現実の科学においても、テラフォーミングに関する研究や試算が発表されている[3]

1961年天文学者カール・セーガンが金星の環境改造に関する論文『惑星金星』[4]サイエンス誌に発表した事をきっかけに、世界中の研究者が研究開始した。1976年には、「planetary ecosynthesisプラネタリー・エコシンセサイズ」との題目でテラフォーミングをテーマとしたNASAによるシンポジウムも開催されている[5]1991年にはネイチャー誌に、NASAクリストファー・マッケイらによる火星のテラフォーミング計画に関する論文が掲載された[6]

テラフォーミングの研究はすなわち地球環境の研究でもあり、地球の環境破壊の修復にテラフォーミングの技術を応用する事も考えられている(詳細は地球工学を参照)。

火星のテラフォーミング[編集]

火星の一日(自転周期)は地球と同じくほぼ24時間であり[7]赤道傾斜角が25度と地球の角度と近いため四季も存在する[8]。これらから、火星は最も地球に近い惑星であるとされる[9]

太陽との距離がより大きい火星を地球のような惑星に作り変えるためには、希薄な大気をある程度厚くして気温を上昇させることが重要な条件となる[10]

具体的な方法としては、以下のようなものが提案されている。

現在、火星の地下には永久凍土として水が埋もれているという説が有力であり[14] 、これが溶けてができれば、ができ、が降りも流れ、地球とよく似た惑星となりうる。

金星のテラフォーミング[編集]

テラフォーミングされた金星の想像図

金星のテラフォーミングでは、火星の場合とは逆に、500度にもなる気温[15]を何らかの方法で下げる必要がある。金星の気温は濃厚な二酸化炭素による温室効果と、地球より強力な太陽光が主な理由である[16]。そのため、以下のような方法が考えられている。

  • 大気圏上層部に微生物藻類を繁殖させ、光合成により二酸化炭素濃度を下げる(同時に酸素濃度も適度な濃度に上げられる)[17]
  • 宇宙に巨大な日傘を建造し、太陽光の一部を遮蔽する[18]
  • 数百kmの巨大な天体を衝突させ、大気を重力圏外に飛ばす[17](ただし、一回の衝突で失われる大気は全体の一部で、再び重力に捉えられるものもある)

その他のテラフォーミング[編集]

テラフォーミングされた月の想像図

その他のテラフォーミング可能な候補としては、以下の様な例がある。

  • - 月は他の候補に比べて地球からの距離が比較的近く、人類が着陸に成功している唯一の地球以外の天体であることから、有力な候補の一つとなっている[19]月の植民構想はNASAなども推進している[20][21]
  • 木星の衛星エウロパ - 液体の水が存在する[22]ことから候補とされるが[23]、エウロパは木星の放射線帯の中心に位置しており[24]人類の生存は難しい。

パラテラフォーミング[編集]

「ワールドハウス」として知られるコンセプトとして、「パラテラフォーミング(パラは「擬似的」の意味)」という惑星上に人間の住める巨大な囲いを建設し、それを徐々に拡大することでついには惑星の大部分を取り囲むように成長させるというものがある。囲いは、一定の間隔で建てられたタワーとケーブル、透明な屋根からなり、その表面は高度1km以上に達し、内部は呼吸のできる大気で満たされる。提案者のリチャード・テイラーは、ワールドハウスは1960年代以降に知られている科学技術で建設可能だと主張している。[17]

関連するドキュメンタリー作品[編集]

フィクション作品に登場するテラフォーミング[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 金子隆一『テラフォーミング―「異星地球化計画」の夢(1996)』NTT出版 ISBN 4871884740
  2. ^ Science Fiction Citations: terraforming”. 2006年6月16日閲覧。
  3. ^ 橋本博文「テラフォーミング研究のすすめ」、『日本機械学會誌』第101巻第950号、一般社団法人日本機械学会、1998年1月5日NAID 110002438425
  4. ^ Sagan, Carl (1961). “The Planet Venus”. Science. 
  5. ^ Averner& MacElroy, 1976
  6. ^ Christopher McKay『Making Mars habitable』ネイチャー 352巻489号96頁
  7. ^ Lodders, Katharina; Fegley, Bruce (1998). The planetary scientist's companion. Oxford University Press US. p. 190. ISBN 0195116941. 
  8. ^ Williams, David R. (2004年9月1日). “Mars Fact Sheet”. National Space Science Data Center. NASA. 2006年6月24日閲覧。
  9. ^ Read and Lewis 2004, p.16; Kargel 2004, pp. 185–6.
  10. ^ Faure & Mensing 2007, p. 252.
  11. ^ Terraforming - Can we create a habitable planet? — PDF, 1,52Mb
  12. ^ Robert M. Zubrin (Pioneer Astronautics), Christopher P. McKay. エイムズ研究センター (1993?). “Technological Requirements for Terraforming Mars”. 2010年8月27日閲覧。
  13. ^ Peter Ahrens. “The Terraformation of Worlds (PDF)”. Nexial Quest. 2007年10月18日閲覧。
  14. ^ Kostama, V.-P.; Kreslavsky, M. A.; Head, J. W. (June 3, 2006). “Recent high-latitude icy mantle in the northern plains of Mars: Characteristics and ages of emplacement”. Geophysical Research Letters 33: L11201. doi:10.1029/2006GL025946. http://www.agu.org/pubs/crossref/2006/2006GL025946.shtml 2007年8月12日閲覧。.  'Martian high-latitude zones are covered with a smooth, layered ice-rich mantle'.
  15. ^ Williams, David R. (2005年4月15日). “Venus Fact Sheet”. NASA. 2007年10月12日閲覧。
  16. ^ Venus”. Case Western Reserve University (2006年9月14日). 2007年7月16日閲覧。
  17. ^ a b c 竹内薫 (2004). 火星地球化計画―火星探査とテラフォーミングの真実. 実業之日本社. ISBN 978-4408322353. 
  18. ^ Zubrin, Robert (1999). Entering Space: Creating a Spacefaring Civilization. 
  19. ^ Renn, H. W.『Terraforming the Moon: a Viable Step in the Colonization of the Solar System?』34th COSPAR Scientific Assembly
  20. ^ Nozette, S. .; Lichtenberg, C. L.; Spudis, P. .; Bonner, R. .; Ort, W. .; Malaret, E. .; Robinson, M. .; Shoemaker, E. M. (1996). “The Clementine Bistatic Radar Experiment”. Science 274 (5292): 1495–1498. Bibcode 1996Sci...274.1495N. doi:10.1126/science.274.5292.1495. PMID 8929403.  編集
  21. ^ Lunar Prospector finds evidence of ice at Moon's poles, NASA, March 5, 1998
  22. ^ Tritt, Charles S. (2002年). “Possibility of Life on Europa”. Milwaukee School of Engineering. 2007年8月10日閲覧。
  23. ^ Brody, Dave (2005). Terraforming: Human Destiny or Hubris?. Ad Astra (National Space Society). Spring 2005. Accessed 2009–06–09.
  24. ^ ScienceDaily (2001, Mar. 29). Jupiter Radiation Belts Harsher Than Expected.

参考資料[編集]

  • 『最新テラフォーミング 惑星環境工学と人工生態系』(発行:学習研究社・1992年3月1日発行)

外部リンク[編集]