マーズ・エクスプレス

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マーズ・エクスプレス
Mars Express
マーズ・エクスプレス
所属 欧州宇宙機関 (ESA)
公式ページ ESA - Mars Express
国際標識番号 2003-022A
カタログ番号 27816
状態 運用中
目的 火星の探査
観測対象 火星
打上げ場所 バイコヌール宇宙基地
打上げ機 ソユーズFGロケット
打上げ日時 2003年6月2日
23時45分(現地時間
軌道投入日 2003年12月25日
物理的特長
質量 1123kg(推進剤含む)
発生電力 太陽電池 460W(火星軌道上)
軌道要素
周回対象 火星
近点高度 (hp) 298km
遠点高度 (ha) 10,107km
離心率 (e) 0.943
軌道傾斜角 (i) 86.3度
軌道周期 (P) 7.5時間
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マーズ・エクスプレス(Mars Express)は、2003年6月2日17時45分 (UTC) に欧州宇宙機関 (ESA) が打ち上げた火星探査機である。ESAとしては初の惑星探査ミッションとなった。

火星到着[編集]

マーズ・エクスプレスが写したダニエルソン・クレーター英語版

バイコヌール宇宙基地からソユーズFG/フレガートロケットで打ち上げられ火星軌道への遷移軌道に投入し、2003年12月25日に大接近数ヶ月後の火星に到着した。軌道上から火星の大気や地下構造の調査を行うほか、着陸船「ビーグル2」を降下させ、地表の調査と、過去および現在の生命の兆候の調査を予定していた。

火星軌道への到着に先立ち12月19日にビーグル2の放出に成功した。マーズ・エクスプレス・オービター(親機)は火星に接近した12月25日3時47分(欧州中央時)に主エンジンを37分間動作させ、火星を周回する軌道に乗ることに成功した。マーズ・エクスプレス・オービターの機体設計は、コスト削減のためESAの金星探査機ビーナス・エクスプレスにも使われた。マーズ・エクスプレス・オービターは、現在も火星探査を継続中である。

ビーグル2の降下失敗[編集]

展開に失敗したビーグル2号(モデル)

ビーグル2(チャールズ・ダーウィンが乗り組んで世界一周航海を行ったビーグル号にちなんで命名された)は質量 60 kgのカプセルで、12月20日に火星へのコースに投入され、クリスマスの日に赤道地帯のイシディス平原に着地する予定だった。この着陸船は、着陸・操縦用エンジンを持たない。大気圏再突入時の熱を熱シールドで切り抜けた後、パラシュートを開いて減速し、3個のエアバッグで着地時の衝撃を和らげる方法を採用している。

ビーグル2は本体の火星軌道投入と同じころ火星表面への降下を行ったが、着陸推定時刻の3時間後にアメリカ航空宇宙局 (NASA) の2001マーズ・オデッセイ観測機を経由して通信を行われる予定だった通信ができなかった。

このため、再度通信を試みるとともに、イギリスジョドレルバンク天文台電波望遠鏡によりビーコンの検出を試みた。しかし、12月26日から12月27日にかけて直径 76 mのアンテナ(Lovell電波望遠鏡)を使用したが、検出はできなかった。

一方、マーズ・エクスプレスの本体は12月30日に火星軌道の軌道傾斜角を変更し、極軌道に乗ることに成功した。新軌道ではビーグル2の近くを通過することができるため、検出を期待して信号受信に再度取り組んだが、通信には成功しなかった。ESAは2004年2月11日にビーグル2の喪失と失敗を宣言した。

2015年1月、NASAのマーズ・リコネッサンス・オービター (MRO) が撮影した高解像度画像からビーグル2を発見したとの報告が発表された。それによればビーグル2は太陽電池パネルの一部展開(4枚のうち2-3枚)まで成功しており、突入・降下・着陸シーケンスまで正常に機能していたことが分かった。しかし、太陽電池パネルが完全に展開しなければアンテナが使えず通信できない設計であった[1]

画像[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]