1977年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月4日に開幕した。アメリカンリーグの第9回リーグチャンピオンシップシリーズ(9th American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、翌5日から9日にかけて計5試合が開催された。その結果、ニューヨーク・ヤンキース(東地区)がカンザスシティ・ロイヤルズ(西地区)を3勝2敗で下し、2年連続31回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
レギュラーシーズンで100勝以上を挙げた球団どうしがリーグ優勝決定戦で対戦するのは、前年のナショナルリーグに次いで2年連続3度目[注 2][1]。この年のレギュラーシーズンでは両球団は10試合対戦し、5勝5敗の五分だった[2]。両球団がリーグ優勝決定戦で対戦するのは2年連続2度目で、最終第5戦までもつれ込んだ末にヤンキースが9回に決勝点を挙げてロイヤルズを下す、という結果も前年と同じである[3]。また、1勝2敗と追い詰められたあとに敵地で連勝して逆転でシリーズを制したのは、今回のヤンキースがリーグ優勝決定戦史上初めてだった[4]。このあとヤンキースは、ワールドシリーズでもナショナルリーグ王者ロサンゼルス・ドジャースを4勝2敗で下し、15年ぶり21度目の優勝を成し遂げた。
試合結果[編集]
1977年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月5日に開幕し、5日間で5試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
|
10月05日(水) |
第1戦 |
カンザスシティ・ロイヤルズ |
7-2 |
ニューヨーク・ヤンキース |
ヤンキー・スタジアム |
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10月06日(木) |
第2戦 |
カンザスシティ・ロイヤルズ |
2-6 |
ニューヨーク・ヤンキース
|
10月07日(金) |
第3戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
2-6 |
カンザスシティ・ロイヤルズ |
ロイヤルズ・スタジアム
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10月08日(土) |
第4戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
6-4 |
カンザスシティ・ロイヤルズ
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10月09日(日) |
第4戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
5-3 |
カンザスシティ・ロイヤルズ
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優勝:ニューヨーク・ヤンキース(3勝2敗 / 2年連続31度目)
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第1戦 10月5日[編集]
ロイヤルズは、初回表に2番ハル・マクレーの2点本塁打で先制し、2回表にも二死一・二塁から1番フレディ・パテックの適時二塁打で2点を加える。ヤンキースはこの回終了をもって先発投手ドン・ガレットを諦め、3回表からディック・ティドローを登板させた。しかしロイヤルズは、この回も6番ジョン・メイベリーの2点本塁打で6-0に突き放した。その裏ヤンキースも3番サーマン・マンソンの本塁打で2点を返すが、反撃はこれのみに終わる。ロイヤルズの先発投手ポール・スプリットオフは、9回裏の先頭打者クリス・チャンブリスに四球を与えたところでダグ・バードにマウンドを譲ったものの、8.0イニング2失点で勝利投手となった。
第2戦 10月6日[編集]
3回表、ロイヤルズは無死一・三塁から1番フレディ・パテックの犠牲フライで1点を先制した。しかしその後、一塁走者フランク・ホワイトの盗塁失敗もあり、1点のみでイニングを終える。ヤンキースは5回裏、6番クリフ・ジョンソンのソロ本塁打で同点に追いつき、さらに二死二塁から9番バッキー・デントの適時打で勝ち越す。その裏、ロイヤルズは一死一・二塁から3番ジョージ・ブレットが三塁方向へゴロを放った。三塁手グレイグ・ネトルズはこれを捕球するとまず二塁に送球して、一塁走者ハル・マクレーを封殺する。しかしマクレーは併殺でのイニング終了を阻止するため、二塁を踏んでから二塁手ウィリー・ランドルフに向かって倒れ込むようなスライディングを行い、ランドルフに一塁送球をさせないことに成功、その間に二塁走者パテックを生還させて2-2の同点とした。
6回裏、二死一塁となったところでロイヤルズが先発投手アンディ・ハスラーに代え、マーク・リッテルを投入する。ヤンキースは、5番ルー・ピネラが左前打で一・三塁と好機を広げると、次打者ジョンソンが適時二塁打を放ち1点を勝ち越す。なおも二・三塁で、リッテルは7番クリス・チャンブリスを敬遠し、8番ランドルフとの勝負を選ぶ。ランドルフは三ゴロに打ち取られたはずが、三塁手ブレットの失策により2走者が生還し、ヤンキースがリードを3点に広げた。ヤンキースの先発投手ロン・ギドリーは2失点で完投勝利を挙げた。
第3戦 10月7日[編集]
ヤンキー・スタジアムでの前2試合に続き、ロイヤルズ・スタジアムへ舞台を移したこの試合でも、先制したのはロイヤルズだった。2回裏に一死一・二塁から1番フレディ・パテックの左前打でまず1点を先行し、3回裏には無死一・三塁から4番アル・コーウェンズの一ゴロで2点目を挙げる。ヤンキースは5回表に7番ルー・ピネラの適時二塁打で1点を返したが、その裏ロイヤルズは一死三塁から4番コーウェンズの三ゴロで2点差に戻した。6回裏には二死二・三塁と再び好機を作って、ヤンキースの先発投手マイク・トーレスを降板に追い込み、代わって登板したスパーキー・ライルから代打エイモス・オーティスが二塁打で2走者を還した。ロイヤルズは先発投手デニス・レナードが2失点で完投勝利を挙げ、シリーズ突破へ王手をかけた。
第4戦 10月8日[編集]
この日はヤンキースが先制する。初回表に無死一・三塁から3番サーマン・マンソンの三ゴロで1点を奪い、2回表には二死一塁から9番バッキー・デントと1番ミッキー・リバースの連続適時打で2点を加える。さらに3回表にも無死一・二塁と好機を広げ、ロイヤルズの先発投手ラリー・グラを降板に追い込むと、代わったマーティー・パッティンからも5番ルー・ピネラの適時打で4点目を挙げた。ロイヤルズは3回裏、先頭打者フレディ・パテックの三塁打をきっかけに、次打者フランク・ホワイトの犠牲フライと3番ジョージ・ブレットの適時三塁打で2-4とする。しかしヤンキースも直後の4回表、二死二塁から2番グレイグ・ネトルズの適時打で3点差に突き放した。
4回裏、ロイヤルズは一死一塁から8番パテックの適時二塁打で再び2点差に迫る。ヤンキースは先発投手エド・フィゲロアをここで諦め、2番手にディック・ティドローを送ったが、9番F・ホワイトに適時二塁打を許し、5-4と1点差に詰め寄られた。その後、二死一・二塁で3番ブレットを打席に迎え、ヤンキースはティドローからスパーキー・ライルへ継投した。ライルは前日も2.1イニングを投げており、今回は試合前半からの登板だったが「やるかやられるかの場面。最後まで投げきるつもりで準備はできていた」という[5]。ライルはブレットを左直に打ち取り、同点・逆転の危機を脱した。5回から8回までの4イニングはパッティンとライルがいずれも無失点で終わらせたが、9回表にはヤンキースが一死三塁の好機を作り、4番手投手ダグ・バードから3番マンソンが犠牲フライを放って1点を加えた。ライルは9回裏も三者凡退で締め、5.1イニングのロングリリーフを無失点で終えて勝利投手となった。こうしてシリーズの行方は最終第5戦へもつれ込んだ。
第5戦 10月9日[編集]
ロイヤルズは初回裏、一死一塁から3番ジョージ・ブレットの中越え三塁打で1点を先制する。ブレットが三塁へ滑り込んだ際に三塁手グレイグ・ネトルズと交錯し、このときネトルズが左足で蹴りを入れていたことから、ブレットは起き上がるとネトルズに殴りかかり、両軍ベンチ総出の乱闘に発展した。退場者なしで試合再開後、4番アル・コーウェンズの三ゴロでブレットが生還し、ロイヤルズが1点を追加した。ヤンキースが3回表に3番サーマン・マンソンの適時打で1点を返したが、その裏すぐにロイヤルズも4番コーウェンズの適時打で再びリードを2点に広げた。ヤンキースが一死一塁で先発投手ロン・ギドリーを降板させると、2番手マイク・トーレスは後続を2者連続空振り三振に仕留めた。
その後はロイヤルズの先発投手ポール・スプリットオフとヤンキースのトーレスが互いに相手打線を抑え、3-1のまま7回が終了した。8回表、ヤンキースの先頭打者ウィリー・ランドルフが中前打で出塁し、ロイヤルズはスプリットオフからダグ・バードへ継投した。ヤンキースは一死一・三塁とし、代打レジー・ジャクソンの中前適時打で1点差に迫った。その裏、ロイヤルズが二死一・二塁とすると、ヤンキースは3連投のスパーキー・ライルを投入し、クッキー・ロハスを空振り三振させて危機を凌いだ。
9回表、ロイヤルズは第3戦完投勝利のデニス・レナードを中1日で登板させて逃げ切りを図ったが、無死一・二塁と逆転の走者を塁に出した。左打者の1番ミッキー・リバースに打順がまわり、ロイヤルズは前日の先発投手で左のラリー・グラをマウンドへ送った。だがリバースは中前適時打を放ち、二塁走者ポール・ブレアーが同点のホームを踏んだ。なおも無死一・三塁、ロイヤルズはグラを1打者で見切り、右打者ランドルフに対し右のマーク・リッテルを投入した。ランドルフは犠牲フライで三塁走者ロイ・ホワイトを還し、ヤンキースが試合をひっくり返した。このあとさらに三塁手ブレットの失策でヤンキースは5点目も加えた。9回裏、ライルは3日連続のイニングまたぎながらも無失点で締め、ヤンキースが土壇場の逆転でリーグ連覇を果たした。
- ^ David Barron, "In Astros vs. Red Sox, it’s a matchup of the best and brightest," HoustonChronicle.com, October 12, 2018. 2020年12月26日閲覧。
- ^ "1977 New York Yankees Schedule," Baseball-Reference.com. 2020年12月26日閲覧。
- ^ Murray Crass Special to The New York Times, "Yankees Capture Pennant, Winning Playoff Final, 5‐3," The New York Times, October 10, 1977. 2020年12月26日閲覧。
- ^ Mike Tully, UPI Sports Writer, "Both Steve Garvey and the Los Angeles Dodgers played...," UPI Archives, October 17, 1981. 2021年1月17日閲覧。
- ^ Alfred Santasiere III, "Yankees Magazine: 1977 Revisited / Sparky Lyle remembers the magical season that made him a Cy Young Award winner and, more importantly, a World Series champion," MLB.com, June 21, 2017. 2020年12月26日閲覧。
外部リンク[編集]
ニューヨーク・ヤンキース |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(27回) | |
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ワールドシリーズ敗退(13回) | |
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リーグ優勝(40回) | |
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カンザスシティ・ロイヤルズ |
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永久欠番 | |
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ロイヤルズ球団殿堂 | |
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