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暴投

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

野球における暴投(ぼうとう)とは、捕手普通の守備行為によって止めたり処理することができないほど高すぎ、低すぎまたは横に逸れるなどした投手の正規な投球のこと[1]。および、このことが原因で走者を進塁させた場合に付される守備記録(ただし、数値は投手成績の中で記述される)[2]ワイルドピッチとも呼ぶ。

野手の送球が逸れたものを「暴投」ということがあるが、この場合、正しくは「悪送球」である。

ルール

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暴投は、投手による正規な投球のみに適用される。したがって投手によるものであっても、各塁への牽制球や、走者が本塁への盗塁を敢行した際における軸足を投手板から外した状態からの本塁への送球は、投球とはみなされない(ボークを参照)。

第3ストライクが暴投となり、振り逃げなどで打者が一塁に生きたときは三振と暴投の両方が記録される(この場合は理論上、1イニングで4つ以上の三振を取る事も出来る)。

走者が投球前に盗塁を試みていた場合は、暴投は記録されず走者の盗塁のみが記録される。ただし、投球が逸れて捕手が捕球できなかったために余計に進塁した場合には盗塁と暴投の両方が記録される[3]

ワンバウンド球などにより捕手が捕れなかった例で、走者が進塁しようとしたがこれを捕手の送球によりアウトにした場合には暴投は記録されない。この際、複数の走者がいて、他の走者が進塁した場合には野手選択による進塁が記録される[4]

投球が捕球可能なコースにありながら捕手が処理できずに走者の進塁を許した場合は捕逸(パスボール)とされ、暴投とは区別される[5]。ただし、投球が捕手に達する前に、ホームプレートもしくはその前の地面に当たった場合には(ワンバウンド)、その後のボールの行方が捕手の守備可能な範囲であったとしても捕逸ではなく暴投が記録される[6]

暴投による走者の進塁は、投手の自責点の要素となる(捕逸はならない)。暴投と捕逸の区別は、ガイドラインとなるいくつかのルールはあるが、微妙な例においての最終的判断は公式記録員が行う。

投手および捕手は、他の野手に比べてボールを扱う機会が多いことから、正規の投球時に生じた暴投および捕逸はどちらもミスプレイであるが、失策とは区別される[7]

日本プロ野球

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通算記録

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順位 選手名 暴投
1 村田兆治 148
2 石井一久 115
3 新垣渚 101
4 涌井秀章 85
5 前田幸長 84
6 工藤公康 81
7 川口和久 79
8 槙原寛己 75
9 星野伸之 74
伊良部秀輝
  • 記録は2022年シーズン終了時点[8]

シーズン記録

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順位 選手名 所属球団 暴投 記録年 備考
1 新垣渚 福岡ソフトバンクホークス 25 2007年 パ・リーグ記録
2 石井一久 ヤクルトスワローズ 20 1998年 セ・リーグ記録
3 村田兆治 ロッテオリオンズ 17 1990年
酒井弘樹 近鉄バファローズ 1996年
5 野茂英雄 近鉄バファローズ 15 1991年
新垣渚 福岡ソフトバンクホークス 2008年
越智大祐 読売ジャイアンツ セ・リーグ右投手記録
8 亀田忠 イーグルス 14 1939年 1リーグ記録
菊矢吉男 ライオン軍
及川宣士 大洋ホエールズ 1965年
渡辺久信 西武ライオンズ 1994年
石井一久 ヤクルトスワローズ 2001年
  • 記録は2022年シーズン終了時点[9]

1試合記録

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選手名 所属球団 暴投 記録日 対戦チーム
新垣渚 福岡ソフトバンクホークス 5 2008年8月20日 埼玉西武ライオンズ

1イニング記録

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  • 3 - 記録多数

メジャーリーグベースボール

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通算記録

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  • 記録は2022年シーズン終了時点[10]

シーズン記録

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順位 選手名 所属球団 暴投 記録年
1 マーク・ボールドウィン コロンバス・ソロンズ 83 1889年
2 トニー・マレーン トレド・ブルーストッキングス 63 1884年
ビル・ステマイヤー ボストン・ビーンイーターズ 1886年
4 マイク・モリソン クリーブランド・ブルース 62 1887年
5 マット・キルロイ ボルチモア・オリオールズ 61 1886年
6 エド・スワード フィラデルフィア・アスレチックス 58 1887年
7 ジャージー・バクリー キーストーンズクイックステップスカウボーイズ 56 1884年
ガス・ウェイイング フィラデルフィア・アスレチックス 1888年
9 エド・スワード 54
10 トニー・マレーン シンシナティ・レッドストッキングス 53 1886年
記録は2022年シーズン終了時点[11]
2リーグ制後
順位 選手名 所属球団 暴投 記録年 備考
1 レッド・エイムズ ニューヨーク・ジャイアンツ 30 1905年
2 トニー・クロニンガー アトランタ・ブレーブス 27 1966年
3 ラリー・チェニー シカゴ・カブス 26 1914年
フアン・グーズマン トロント・ブルージェイズ 1993年 ア・リーグ記録
5 A.J.バーネット ニューヨーク・ヤンキース 25 2011年
6 ジャック・モリス デトロイト・タイガース 24 1987年
7 クリスティ・マシューソン ニューヨーク・ジャイアンツ 23 1901年
ティム・リアリー ニューヨーク・ヤンキース 1990年
マット・クレメント サンディエゴ・パドレス 2000年
10 ジャック・ハミルトン フィラデルフィア・フィリーズ 22 1962年
トニー・クロニンガー ミルウォーキー・ブレーブス 1965年
ボビー・ウィット テキサス・レンジャーズ 1986年
マイク・ムーア オークランド・アスレチックス 1992年
ギャレット・リチャーズ ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム 2014年
記録は2022年シーズン終了時点[11]
  • 左投手記録はデニー・レマスター(ミルウォーキー・ブレーブス、1964年)の20暴投[12]

1試合記録

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選手名 所属球団 暴投 記録日 対戦相手
J.R.リチャード ヒューストン・アストロズ 6 1979年4月10日 ロサンゼルス・ドジャース
フィル・ニークロ アトランタ・ブレーブス 1979年8月4日 ヒューストン・アストロズ
ビル・ガリクソン モントリオール・エクスポズ 1982年4月10日 フィラデルフィア・フィリーズ
  • 1901年以降

脚注

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  1. ^ 公認野球規則 本規則における用語の定義 82 WILD PITCH「ワイルドピッチ」(暴投)
  2. ^ 公認野球規則 9.13(a)
  3. ^ 公認野球規則 9.07(a)
  4. ^ 公認野球規則 9.13【原注】
  5. ^ 公認野球規則 9.13(b)
  6. ^ 公認野球規則 9.13(a)(1)
  7. ^ 公認野球規則 9.12(d)(5), 9.12(f)
  8. ^ NPB 通算記録 - NPB.jp 日本野球機構
  9. ^ NPB シーズン記録 - NPB.jp 日本野球機構
  10. ^ Career Leaders & Records for Wild Pitches” (英語). Baseball-Reference.com. 2018年10月16日閲覧。
  11. ^ a b https://www.baseball-reference.com/leaders/WP_season.shtml
  12. ^ 19世紀を含めると上記のマット・キルロイ

関連項目

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