野手選択

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野手選択(やしゅせんたく)とは、野球の記録上の用語である。野選(やせん)と略す。英語ではFielder's choice(略記: FC)といい、日本野球機構の公認野球規則ではフィールダースチョイスで、またフィルダースチョイスとも言う。

概要[編集]

野手選択に関しては公認野球規則「本規則における用語の定義」(28)で定義されている。

  1. フェアゴロを扱った野手が、打者走者を一塁でアウトにする代わりに、前を走る走者をアウトにしようとして、他の塁に送球する行為
  2. 安打を打った打者が、野手が前を走る走者をアウトにしようとして他の塁へ送球する間に、余分に進塁した場合
  3. 走者が、盗塁失策(エラー)によらずに、自分以外の走者をアウトにしようとして野手が他の塁へ送球する間に、余分に進塁した場合
  4. 盗塁に対して守備側が無関心のために何も守備を行わないために、走者が進塁した場合

1.は野手の行為そのものを指す。2.~4.の場合は、打者走者または走者の進塁を、記録上の用語として「野手選択による進塁」という。4.については、日本では長らくこの規則を適用せず盗塁を記録してきたが、2008年1月10日プロアマ合同の日本野球規則委員会で、プロに限り米国韓国台湾などと同様、公認野球規則に従って野手選択とすることを決め、1月28日に正式発表された。同年4月2日東北楽天ゴールデンイーグルス千葉ロッテマリーンズ2回戦の9回表一死、4点差の場面で竹原直隆が二塁進塁をしたときに盗塁が記録されなかったのが、初適用となった(盗塁の項目も参照)。

一般的な用法[編集]

前述した公認野球規則における野手選択の定義とは別に、1.のケースで走者をアウトにできなかった場合の打撃結果を指して「野手選択」と表現することがある(後述)。1.の行為で走者をアウトにすれば「送球アウト」や「フォースアウト」、2.や3.の場合は「送球間の進塁」や「内野ゴロの間の進塁」、4.の場合は「守備側の無関心」などと呼ぶ場合が多い。

具体例[編集]

1.の例[編集]

走者一塁で、打者は三塁前にゴロを打ち、三塁手は一塁走者を二塁でフォースアウトにしようと思い二塁に送球した。この場合、一塁走者をフォースアウトにできたかどうかに関わらず、三塁手の二塁への送球は野手選択である。加えて、

(1) 二塁がアウトになった場合、三塁手には補殺、打者には三塁ゴロが記録される。打者走者の出塁は野手選択による進塁である。
(2) 三塁手は正確な送球を行ったものの一塁走者をアウトにできず、かつ二塁に送球せず一塁に送球していればアウトにできていたと記録員が判断した場合も、打者には三塁ゴロが記録される。打者走者の出塁は野手選択による進塁である。
(3) 三塁手は正確な送球を行ったものの一塁走者をアウトにできず、かつ二塁に送球せず一塁に送球していてもアウトにはできていなかったと記録員が判断した場合は、打者には三塁安打が記録される。
(4) 三塁手の送球が悪送球となった場合で、三塁手が正確に送球していれば一塁走者をアウトにできていたと記録員が判断した場合は、三塁手には失策、打者には三塁ゴロが記録される。一塁走者の進塁は失策による進塁、打者走者の出塁は野手選択による出塁である。ただし、三塁手の送球が正確であっても一塁走者をアウトにはできなかったと判断された場合は失策は記録されず、打者には一塁に送球されていればアウトの場合は三塁ゴロ((2)と同じ)が、アウトでない場合は三塁安打((3)と同じ)が記録される。

このように、最終的にアウトを取ることができたかどうかに関係なく、三塁手の二塁への送球は野手選択である。

しかし、一般にメディアで「野手選択(フィルダースチョイス)」と呼称されるのは上記の(2)のような「安打や失策によらずに打者も走者も塁に生きたケース」のみである。日本では、打者の打撃の結果守備側がアウトを取れなかった場合などに、記録員の判断に基づき、打者の出塁について安打(H)・失策(E)・野手選択(Fc)のいずれか(場合によっては複数)が野球場スコアボードに表示される。このとき、「Fc」の表示になるのは(2)のようなケースのみである。そのため、(2)のようなケースのみを指して「野手選択による出塁」と表現されることが多い。(2)のようなケースで、打者の打撃成績としてテレビや新聞、雑誌等で「野選」、「三塁野選」などの表記がとられることも多いが、実際の打撃成績の記録として「野手選択」という成績があるわけではない(打者には打数と凡退が記録される)。

なお、打者が犠牲バントを試みていた場合、(2)のケースでは三塁ゴロではなく犠打が記録される(打数は増えない)。この場合、メディアでは「記録は犠打と三塁手の野手選択」、「犠打野選」などと表現されることが多い。(4)のケースは正確に送球されていれば一塁走者がアウトになっているため犠打は記録されない。

投手の自責点[編集]

野手選択により余分な出塁・進塁を許して失点した場合、それが明確な野手の判断ミスであったとしても、投手自責点となる(エラーと異なり除外対象とはならない)。

1死一塁から打者は内野ゴロを打ち、内野手は一塁ならアウトにできたが二塁に送球しオールセーフとなった。次打者を三振に抑えたものの次々打者に本塁打を打たれたような場合、投手の自責点は3点である(エラーでオールセーフになったような場合は投手の自責点は0点である)。

サヨナラ時の野手選択[編集]

安打ではなく、野手選択によって出塁した打者には内野ゴロが記録されるが、例外として最終回または延長戦裏の無死または一死、同点で三塁に走者が居る場面で、本塁に突入した走者に対して本塁送球を試みたものの、走者が生還しサヨナラゲームとなるケースがある。野手は本塁にしか送球の選択肢がなかったとされ、たとえ送球のタイミングが明らかに間に合わなかったとしても、打者には安打が記録される。ただし、本塁をアウトにできたのに、野手の悪送球や捕手が球をこぼしたことで生還を許した場合は守備側に失策が記録され、記録は内野ゴロとなる。

2.、3.の例[編集]

走者一・二塁で、打者は中堅手の前に落ちる安打を打った。二塁走者は三塁を回って本塁へ向かい、これを見た中堅手は本塁で二塁走者をアウトにできると思い、捕手へ送球した。この返球を見て、一塁走者は三塁まで、打者走者は二塁まで進むことができた。本塁への返球がなければ一塁走者は二塁どまり、打者走者は一塁どまりであったと記録員が判断した場合、本塁で二塁走者がアウトになったかどうかに関係なく、一塁走者と打者走者の進塁は記録上は野手選択による進塁であり、打者の打撃記録は単打である。

4.の例[編集]

守備側のチームが大きくリードしている展開で走者一・三塁のとき、一塁手は一塁ベースを大きく離れた位置を守り、一塁走者も大きめのリードを取った。投手は牽制することもなく投球し、一塁走者は当然のように二塁へ進み、捕手も二塁へ送球しなかった。

なお、「守備側の無関心」は、そのときのイニング、得点差その他の状況により守備側が走者の進塁にこだわらない戦術的動機があったか、あるいは走者に盗塁が記録されるのを強く拒もうとしていなかったかなどを総合的に考慮して公式記録員が判断する。例えば、走者一・三塁のとき、一塁走者が二塁を奪おうとした場合に、捕手が送球しなかった、といった場合、送球の間に三塁走者が本塁へ突入することを恐れたことが理由であると判断されれば、野手選択ではなく盗塁が記録される。しかし、守備側が大差でリードしている最終回二死などといった状況で同様のケースが生じた場合、三塁走者の本塁への突入を恐れていたとは言えないと判断されれば、盗塁は記録されず野手選択となる。また、「守備側が走者への無関心を貫くことによって、塁上の走者に盗塁が記録されることを阻み、守備側チームの選手の通算盗塁記録や最多盗塁のタイトルを守ろうとしている」と考えられるときも、守備側は「走者に盗塁が記録されるのを強く拒もうとしている」と判断してよい。(公認野球規則10.07(g)【原注】)