ラッキーゾーン

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阪神甲子園球場(1985年に上空から撮影)。左中間、右中間にラッキーゾーンが設けられている部分が見える。

ラッキーゾーンは、野球場本塁打を出やすくするために意図的に外野フィールドの内側に施した柵と、その柵から本来のフェンスの間の空間のこと。

和製英語(=日本独自の通称)であり、英語に相当する単語はない。

本項ではこの逆の目的で設置された後楽園球場のアンラッキーネットについても記述する。

定義[編集]

本来の外野の柵とは別に、外野フィールドが広すぎる、ホームランをたくさん出るようにしたい等といった理由で意図的に本来のフィールドから狭めるためにフィールド内に新たに仮柵を設置した場合に、ラッキーゾーンと呼ばれる。そのため、通常の野球場を少年野球、あるいはソフトボールの試合などに使用する際にも同様の柵が設けられるが、これは一般にラッキーゾーンとは呼ばれない。

柵の外はプレイングフィールド外として扱われ、打者が打ったフェアの打球が地面に着くことなくラッキーゾーンに飛び込めば、本塁打となる。外野フィールド内側の柵は本来仮柵であるために撤去しやすいように金網であることが多いが、藤井寺球場ではコンクリート製だった。ホームランの量産を意図したものではあったがコンクリート製だったため、ラッキーゾーンに含めるか否かは意見が分かれている。ラッキーゾーン内に投球ブルペンが設置されることが多い。

ラッキーゾーンの歴史[編集]

日本におけるラッキーゾーンの第1号は阪神甲子園球場である。柵越え本塁打が注目されるようになってから、球場での本塁打率が悪かったことを危惧した管理者の阪神電気鉄道が、1947年の5月26日に外野の両翼から左・右中間付近にいたる付近に金網を設けて[1]本塁打を出やすくしようと試みた。設置当初ラッキーゾーンの柵には「LUCKY」と書かれていた。この甲子園のラッキーゾーンは形を変えながら1991年シーズンまで存続し、シーズン終了後の12月5日に撤去している[1]。現在、フェンスは甲子園に距離的に最も近い高校と言われている兵庫県立西宮今津高等学校の中庭に記念碑として立っているほか、阪神甲子園球場内の甲子園歴史館にもフェンスの一部がラッキーゾーン設置時の両翼だった91mのプレートをつけた状態のままで展示されている。

それ以後、鳴海球場阪急西宮球場明治神宮野球場西京極球場倉吉市営野球場にそれぞれ設置された。しかし、選手の体格向上やバットやボールの品質改良によってホームランの本数が増加し、夏季オリンピック実施競技に野球が加えられた1980年代以後、各地に国際競技規格に適合ないしはそれに準ずる球場が新規建設されたり、改修でも外野の拡張が実施されるようになったため、ラッキーゾーンそのものの存在価値もなくなり、現在はラッキーゾーン内にナイター設備(照明灯の支柱)があるため撤去が困難とされる倉吉を除く各球場でラッキーゾーンが外されている(鳴海は1958年で球場そのものが閉鎖、神宮は1967年にラッキーゾーンがなくてもグラウンドが同規模程度になるようスタンドが改修されているが、2008年に再拡張された)。

なお、日本女子プロ野球機構では、2012年から西京極(わかさスタジアム)での開催に限り、両翼90mの箇所にラッキーゾーン(仮設ネット)を設置した[2]

2010年以降のラッキーゾーンに相当する外野スタンド新設[編集]

2013年には日本製紙クリネックススタジアム宮城に本塁打を増やすため「Eウィング」という外野スタンドがフィールド内に増築された。球団では増設した座席について「ラッキーゾーンのような」という説明がされており、正式にラッキーゾーンと呼ばれているわけではない。従来のスタンドの前に特別席を常設するという国内では今までにない形式となっている。このEウィングにより、12球団本拠地最長だった101.5mの両翼が100.1mとなり、左右中間が1mほど縮まる形となった。2.8m - 4.1mあったフェンスも2.5mに統一された。座席数は90席で、総工費4億円[3]

2015年には福岡 ヤフオク!ドームに「ホームランテラス」という外野スタンドがフィールド内に新設された。ホームランテラスによりフェアゾーンの面積は東京ドームとほぼ同じとなり、12球団本拠地で1番の高さを誇っていた5.84mの外野フェンスも東京ドームと同等の4.20mまで引き下げられた[4]。また、センター付近やポール際などスタンドを設置できない部分(公認野球規則により両翼・中堅はこれ以上縮められない)には従来のフェンスにホームランテラスから連なる形で金網を貼り付け、同じく4.20mの高さにあるオレンジのラインを越えた部分に当たればホームランとする措置を取っている[5]。球団からの発表にはラッキーゾーンという言及は無いが、改修に関する多くの報道ではラッキーゾーンと呼んでいた[6][7]。命名後はホームランテラスの名称を使用するのがほとんどである[注 1]。座席の命名権はANA山九が取得[8]。座席数は約340席、総工費3億円。常設ではなく撤去が可能で、撤去と設置をそれぞれ24時間で行える[9]

2019年には千葉ロッテマリーンズ本拠地であるZOZOマリンスタジアムに「ホームランラグーン」という名称の観客席が新設された。座席数は302席。これにより既存フェンスより最大で4m前にせり出すことになり、ホームランの増産が期待される[10]。同球場では同時に、外野席フェンスの高さを低くし(2.3mから約1.1m)、ファウルゾーンに「ダグアウトボックス」「サブマリン・シート」というグラウンドレベルの観客席を増設するなどの改修が行われた[11]パークファクターの推移からはホームランの増加など打者有利の球場に変化しつつあるといえる。総工費はファウルゾーンに2箇所設置されたシートも含めて約4億円[12]

ラッキーゾーン新設の賛否[編集]

2018年に甲子園球場のラッキーゾーン復活構想が話題になったが、岡田彰布は「ラッキーゾーンをつくるより本当の強打者を作ることが先だ」「阪神の現状の打線力をそのままあてはめれば、相手球団の打線の恩恵になることの方が予測される」と反対の意向を示した[13]

同じくセ・リーグで本塁打数に悩むバンテリンドームナゴヤでも「ホームランテラス待望論」が出ており検討されていたが、2021年9月、コロナ禍で新たに投資は難しいとして導入は見送られた[14]。ナゴヤドームの件に関しては里崎智也も「打者の質の低下に合わせて本塁打のハードルを下げたら余計打者のレベルが下がる」「世界で戦える強打者が減ってくる」「球場を狭くするよりもどうやったら本塁打になるかをコーチが指導して選手が練習した方が良い」と反対意見を示した[15]。しかしながら2022年にも中日立浪和義監督が導入を熱望するなど賛否が分かれている[16]

ラッキーゾーンの現存する球場[編集]

かつてラッキーゾーンが設置されていた球場[編集]

現存する球場[編集]

  • 阪神甲子園球場 - 1947年設置、1949年から常設となる。1976年に改装。1992年に撤去
  • 明治神宮野球場(神宮球場) - 1962年設置、1965年常設化。1967年撤去
  • 西京極球場 - 1987年撤去

すでに閉鎖された球場[編集]

  • 鳴海球場 - 1958年球場そのものが閉鎖。
  • 阪急西宮球場 - 両翼は101mから91.4mに短縮。1960年頃設置、1991年撤去。球場は2002年に閉鎖され、すでに解体されている。
  • 藤井寺球場 - 両翼は約98mから92mへ短縮。球場は2004年に閉鎖され、すでに解体されている。

アンラッキーネット[編集]

後楽園球場では、1953年より1957年まで外野ポール付近に「アンラッキーネット」を設置していた。

これはフェンウェイ・パークグリーン・モンスターなどと同様に、球場の狭さ(当時の後楽園球場は両翼が78mしかないためでホームランが出やすかった)をカバーして本塁打を出にくくする(プロ野球が2リーグ制となった1950年には両リーグで1500本以上の本塁打が飛び交った)意味で設置され、ラッキーゾーンとは逆の設置目的のものである。

後楽園のアンラッキーネットは、1957年のシーズンオフにフィールドを拡張し、フェンスそのものを高くする改装工事に伴い、翌1958年長嶋茂雄入団時までに撤去されている(1960年には両リーグの合計本塁打数が1000本以上に回復し、1968年以降は1500本以上となった)。

1980年代には外野席のラバーフェンスの上に金網が設置されフェンスの高さは大幅に引き上げられたが、アンラッキーネットと異なりこちらの金網は「観客の乱入防止」が目的であり、打球が地面に付くことなく金網部に当たれば本塁打と認定されていた。

メジャーリーグの球場[編集]

外野のフェンスとスタンドの間に位置するコメリカ・パークのブルペン(2008年)

過去のメジャーリーグベースボールの野球場においては、変形かつ広大な外野フィールドを持つ球場が大半であったために、ラッキーゾーンに相当するフェンスの位置変更は頻繁に行われていた。いくつかの例を挙げるならば、旧ヤンキースタジアムの左中間は改修のたびに縮小され、その場所にブルペンや記念館が建築されており、クリーブランド・スタジアムでは開場から閉鎖までの60年間にセンターまでの距離が20m以上も短縮された。

また、ドジャースロサンゼルスに移転した当初に使用したロサンゼルス・メモリアル・コロシアムは本来陸上競技場だったので、フィールドがレフト側に極端に狭く、ライト側は逆に極端に広すぎた。そのため野球開催時には仮設フェンスを設置していた。本塁から左翼ポールまで約76.2mの長さしか取れなかったため、レフト側のフェンスは高さが40フィート(約12.2m)もあった。

エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイムは2018年にフェンスに黄色のラインを引き、ラインより上に当たれば本塁打とする措置を取った。これにより実質フェンスの高さが5.5mから2.4mへ大幅に引き下げられた。

KBOリーグの球場[編集]

大韓民国韓国プロ野球ではソウル特別市にある蚕室総合運動場野球場で、LGツインズが主管試合を開催する場合に限り、球場の広さからホームランが出にくいとして、センターを中心に左中間・右中間を4mほど狭めた脱着ネット式のラッキーゾーンを2009年2010年に設置していた(2011年からはラッキーゾーンは設置しなくなった。また、同じ球場を使っている斗山ベアーズはラッキーゾーンを元から設置していない)。

脚注[編集]

注釈
  1. ^ 例外的にYahoo!JAPANの運営する「スポーツナビ」の一球速報・テキスト速報ではEウィング、ホームランテラスなどの新設外野スタンドは全て「ラッキーゾーン」表記で統一している。
出典
  1. ^ a b タイガースヒストリー”. 阪神球団公式サイト. 2015年2月7日閲覧。
  2. ^ 日本女子プロ野球リーグ2012 前期日程・ルール発表”. 日本女子プロ野球機構 (2012年3月12日). 2015年2月7日閲覧。
  3. ^ “Kスタ改修 サイズ縮小も「投手にも打者にもフェアな球場になる」”. スポーツニッポン. (2012年12月19日). http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2012/12/19/kiji/K20121219004805160.html 
  4. ^ 2015年ヤフオクドームに、新しいシートが続々登場!”. 福岡ソフトバンクホークス (2014年12月26日). 2015年2月7日閲覧。
  5. ^ HAWKS_officialのツイート(571832371307147265)
  6. ^ “ヤフオクD、ラッキーゾーンで東京D化”. デイリースポーツ. (2014年12月24日). http://www.daily.co.jp/baseball/2014/12/24/0007607586.shtml 2015年2月7日閲覧。 
  7. ^ “福岡ヤフオクDにラッキーゾーン新設《イメージ図付き》”. 西日本新聞朝刊. (2014年12月24日). http://www.nishinippon.co.jp/hawks/article/135459 2015年2月7日閲覧。 
  8. ^ 【ソフトB】全日空、山九が「ホームランテラス」命名権” (2015年2月18日). 2015年3月1日閲覧。
  9. ^ “ヤフオクドーム、HRテラスに潜入した”. 西日本スポーツ. (2015年2月14日). http://www.nishinippon.co.jp/hawks/article/145512 2015年4月3日閲覧。 
  10. ^ ZOZOマリンに続いて甲子園も?ホームラン席新設にファン歓迎もピッチャーは悲鳴?”. リアルライブ (2018年9月12日). 2019年1月8日閲覧。
  11. ^ 2019 ZOZOマリンスタジアム改修のお知らせ”. 千葉ロッテマリーンズ (2018年9月3日). 2019年1月8日閲覧。
  12. ^ “マリン746席増設へ 千葉ロッテ、改修に4億円”. 千葉日報. (2018年9月4日). https://www.chibanippo.co.jp/sports/lotte/528565 2022年10月3日閲覧。 
  13. ^ ベースボール・マガジン社『週刊ベースボール』2018年10月1日号 pp.36-37.
  14. ^ “ドラ党に“悲報” バンテリンドーム「ホームランテラス」導入見送りへ”. 東スポWeb. (2021年9月13日). https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/86077 2022年3月16日閲覧。 
  15. ^ 【DH制度について物申す】柔能く剛を制すが、剛の方が勢いが増してる!それがパ・リーグの強さになってるんじゃないかな? Satozaki Channel 2019/11/01 (2022年7月18日閲覧)
  16. ^ “【中日】立浪監督が熱望のホームランテラス導入に関して球場関係者「今のところ予定ありません」マ”. 日刊スポーツ. (2022年9月15日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202209150000431.html 2022年10月3日閲覧。 
  17. ^ 新設外野フェンス【Eウィング】完成!|東北楽天ゴールデンイーグルス” (日本語). 楽天イーグルス オフィシャルサイト. 2021年6月22日閲覧。