9mm拳銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
9mm拳銃
JGSDF 9mm Pistol 20120422.JPG
陸上自衛隊第6師団50周年記念行事にて展示された9mm拳銃
概要
種類 自動式拳銃
製造国 日本の旗 日本
設計・製造 ミネベアミツミライセンス生産
性能
口径 9mm
銃身長 112mm
ライフリング 6条右回り
使用弾薬 9x19mmパラベラム弾
装弾数 9発
作動方式 ショートリコイル
コンベンショナルダブルアクション
全長 206mm
重量 830g
発射速度 40発/分
銃口初速 345m/s
有効射程 約30-50m
テンプレートを表示

9mm拳銃(9ミリけんじゅう)は、1982年自衛隊が制式採用した自動式拳銃。海外ではP9とも呼ばれる。

概要[編集]

自衛隊創設期よりアメリカ軍から供与・貸与されていた11.4mm拳銃の後継として、1982年に採用された自動式拳銃である。スイスSIG社および当時傘下だったドイツザウエル&ゾーン社が開発したSIG SAUER P220を、新中央工業(現ミネベアミツミ)がライセンス生産し、調達されている。

生産はプレス加工を多用し、一丁あたりの価格は約10万円[1]陸上自衛隊向けの調達が再開された平成22年度予算では一丁あたり約20万円となっており[2]、平成24年度予算では一丁あたり約22万円となっている。

採用経緯[編集]

11.4mm拳銃
前史
自衛隊は当初、アメリカ軍より供与されたM1911を「11.4mm拳銃」として採用していた[3]。しかし、11.4mm拳銃は日本人には大きく不向きであり、使用する.45ACP弾の反動も大きすぎる[4]として、防衛庁第二次世界大戦前より国産拳銃の開発を行ってきた新中央工業に、新型拳銃の開発を依頼した[3]。そして、1958年に完成したのがニューナンブM57Aであった[3]
しかし、アメリカ軍が依然としてM1911を使用し続けていたこと、それに伴う弾薬の共用性の問題、および政治的判断から戦後初の国産軍用拳銃の採用は見送られた[3]

新型拳銃の採用
1980年代に入り、アメリカ軍は長く運用してきたM1911に代わり、新たに新型拳銃を採用する計画を発表した[3][注 1]。これを受け、陸上自衛隊でも新型拳銃を採用することが決定した[3]。そのトライアルには新中央工業のM57A1、西ドイツ(当時)のSIG SAUER P220ベルギーFN ブローニング・ハイパワーなどが参加し、1979年から1980年までテストが行われた[3]
その結果、P220の採用が決定して1982年1月に部隊使用の承認を受け、1982年より部隊配備を開始した[3]

特徴[編集]

SIG SAUER P220(初期型)
9mm拳銃とスライドのデザインが異なっている
スライドストップさせた9mm拳銃(陸上自衛隊
スライド部分に「NMB SHIN CHUO LICENCE SIG-SAUER」と刻印されている
マガジンは装填されていない

P220の特徴についてはSIG SAUER P220を参照。また、専門用語の解説については銃の部品拳銃の項目を参照のこと

自衛隊が採用したP220は、前方が角張って後部の滑り止めの溝が幅広となったプレス製スライドの中期型である。他には、マガジンキャッチはレバー式となっている[5]

使用弾薬は9mm普通弾と呼ばれ、これは9x19mmパラベラム弾と同様の弾薬である。

ライセンス元であるP220が、アメリカへの輸出を考慮して.45ACP弾を使用可能なサイズで本体やマガジンが設計されているため、口径9mmで弾薬が一列に装填されるシングルカラムマガジンを用いる拳銃としてはグリップの前後長が大きい。.45ACP弾より全長の短い9mmパラベラム用のマガジンは、後部にU字型のインサートが溶接されている。

命中精度は50mの射程においても依託射撃で90%、立射で70%以上の命中率を出した[1]

スライドには「9mm拳銃」の文字、シリアルナンバー、各自衛隊ごとのマークが刻印されており、これは自衛隊武器マークとも呼ばれる(Wはweaponの頭文字)。

陸上自衛隊向けの調達は終了し、海上・航空自衛隊向けの調達のみが継続されていたが、2010年度予算から陸上自衛隊向けの調達が再開された。

海外の拳銃との比較
日本の旗9mm拳銃 チェコの旗Cz75 スイスの旗ドイツの旗P226 イタリアの旗M9 ベルギーの旗BHP 日本の旗M57A1 アメリカ合衆国の旗M1911
画像 JGSDF 9mm Pistol 20120422.JPG Cz75.jpg SIG Sauer P226 neu.jpg M9-pistolet.jpg 新中央工業(ミネベア) ニューナンブM57A1拳銃.jpg M1911A1.png
使用弾薬 9x19mm .45ACP
装弾数 9+1発 15+1発 13+1発 8+1発 7+1発
銃身 112mm 120mm 112mm 125mm 118mm 117mm 127mm
全長 206mm 206mm 196mm 217mm 200mm 197mm 210mm
重量 830g 1,000g 964g 970g 810g 950g 1,105g
(弾薬含む)
作動方式 反動利用
シングルアクションおよびダブルアクション
反動利用
シングルアクション

運用[編集]

自衛隊での9mm拳銃での射撃訓練は、指揮官クラスで年30発、機甲科などでは年12発程度とされる[6]。また、携行の際は薬室に装填状態でハンマーとファイヤリングピンを接触させ、引き金にストッパーを入れるなど、安全対策がなされている[6]。このハンマーを戻す際にデコッキングレバーを使わず、ハンマーを指で押さえたまま引き金を引いてゆっくり戻す方法を用いると、ファイヤリングピンブロッキングシステムが外れるため、携行時に外部からハンマーに衝撃を受けると暴発する恐れがあり危険である。デコッキングレバーを用いてハンマーを戻すのが正しい方法である。

携行[編集]

観閲式において9mm拳銃を携行する部隊幕僚(1等陸尉

銃を収納するホルスターは皮製のもの(警務隊は黒色)が使用されていたが、イラク派遣からはサファリランド社の「サファリランド 6004」[7]とブラックホーク社の「オメガIVもしくはVI」の2種類のレッグホルスターの配備が開始されている。私物も多く使用されており、ブラックホーク社製のSERPA(セルパ)などが確認されている。また、脱落防止や敵に奪われることを防ぐためにブラックホーク社製ランヤードを取り付けている姿も確認されている。

予備弾入れはマガジンが2つ入るタイプを1個もしくは2個、弾帯防弾チョッキ2型に装着して携帯する。一般部隊用は迷彩が施されているが、警務隊は黒皮仕様を使用している。ホルスターと同じく私物も多く使用されている。

陸上自衛隊[編集]

陸上自衛隊において拳銃幹部自衛官[注 2]戦車車長(幹部または陸曹)、84mm無反動砲(A/B)手、01式軽対戦車誘導弾手、79式対舟艇対戦車誘導弾および87式対戦車誘導弾の操作手たる陸曹、警務官などが装備するが、2000年代に入ってからは、市街地戦闘訓練や海外派遣時に一般の隊員も拳銃を装備するようになった。中央即応連隊では大半の隊員が装備しているが、員数分配備されていないのが現状である。

9mm拳銃以外にも、H&K USP特殊作戦群[8]、特殊拳銃(ザウエル&ゾーン社製、機種・使用部隊不明)[9]、大口径拳銃(機種・使用部隊不明)[10]などが採用されている。

海上自衛隊[編集]

はつゆき型護衛艦しらゆき」内の12.7mm重機関銃M2用武器庫
中央に9mm拳銃が展示されている

幹部自衛官護衛艦付き立入検査隊陸警隊警務官などが装備する。

特別警備隊ではSIG SAUER P226を使用していることが公開訓練で確認されている。

航空自衛隊[編集]

幹部自衛官基地警備隊、基地防空隊、警務官などが装備する。

使用弾[編集]

使用する弾薬9x19mmパラベラム弾自衛隊での名称は9mm普通弾)であり、軍用であるため、ハーグ陸戦条約に準拠したフルメタルジャケット弾となる。弾頭先端は平たい形状になっている。普通弾以外に空包やフランジブル弾も採用されている。

登場作品[編集]

自衛隊と共に各メディアに登場している。

映画・テレビドラマ[編集]

ULTRAMAN
自衛隊の特殊機関「BCST」の隊員が使用する。
ガメラ2 レギオン襲来
主人公の渡良瀬二佐ソルジャーレギオンとの戦闘時に使用。9mmパラベラム弾弾倉1つ分、計9発を至近距離から撃ち込んで射殺する。
戦国自衛隊1549
戦国時代タイムスリップした陸上自衛隊第三特別実験中隊ロメオ隊双方の装備として登場。指揮官クラスの隊員のほか、斎藤道三もロメオ隊から借りて使用する。
戦国自衛隊・関ヶ原の戦い
戦国時代にタイムスリップした自衛隊の装備の1つとして登場。主人公の伊庭三尉を中心に、指揮官や偵察用オートバイ隊員、医療班員が使用する。使用される発火式プロップガンは、銃身が後退せず薬莢の排莢もされないものであった。
図書館戦争
図書特殊部隊の装備として登場。主人公たちが携行する。
亡国のイージス
某国工作員に協力して反乱を起こした、架空のイージス護衛艦いそかぜ」の幹部自衛官たちが使用する。撮影は実際の護衛艦や被服なども海上自衛隊の協力があったが、拳銃については武器のため、発火式のプロップガンが使われた。
ぼくらの勇気 未満都市
柴崎がT幕原型に感染させようとするタケルに突きつける。

アニメ・漫画[編集]

アルドノアゼロ
海竿
機動警察パトレイバー
第1期OVAの第5話にて、自衛隊決起軍が所持する。
ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
「門」の向こうの異世界へ派遣された自衛官たちが携行。栗林二曹がイタリカ防衛戦(テレビ版第6話)で盗賊たち相手に近接戦闘で用いたほか、日本人拉致していたことが発覚した異世界の帝国の第1皇子に対して、伊丹二尉が突きつける。
ジパング
アニメ版にて、主人公の角松二佐がアナンバス上陸時に携行する。
続・戦国自衛隊
戦国時代タイムスリップした自衛隊の装備の1つとして登場。主に幹部クラスの隊員と補給医療班員が使用する。
太陽の黙示録
政府分裂による日本分断以前は自衛隊の装備品だった。日本分断以降は北日本(ノースエリア)自衛隊でのみ引き続き使用。
やわらか戦車
技能テストで兄者が発砲(29話)。ぱーぷる牧場に拉致された鬼塚曹長が所持。発砲はなし(36話)。

小説[編集]

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者
古賀沼美埜里が使用。
自衛隊三国志
三国時代タイムスリップした自衛隊国際連合平和維持活動(PKO)部隊の装備として登場。黄巾賊に対して使用する。
『ゼロの迎撃』
ベンツ CL550で逃走する土台人のコウ・チャンスを足止めするために高城三曹が使用し、左後輪を撃ち抜く。
『日中尖閣戦争』
特殊作戦群の二曹が中国兵に対してダブルタップで使用する。
『日本北朝鮮戦争 自衛隊武装蜂起』
中村二尉が夜間警備中に焼肉店を捜索し、発見した北朝鮮工作員を射殺する際に使用。
『日本北朝鮮戦争 竹島沖大空海戦』
陸上自衛隊敦賀原発防衛部隊と共に食事をしていた船崎三尉と市川一曹が、襲ってきた北朝鮮工作員に対応するため、駐機してあったCH-47から持ち出し、使用する。
ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記
異世界に飛ばされた自衛隊の装備の1つとして登場。幹部自衛官らが携行する。

ゲーム[編集]

SIREN2
一樹守・喜代田章子・永井頼人・三沢岳明・屍人・闇人がシルバースライドモデルを使用。
踊る大捜査線 THE GAME 潜水艦に潜入せよ!

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 最初の計画は1979年。当初はアメリカ空軍のみの計画であったが、後に陸軍海軍海兵隊の四軍での採用計画に拡大する
  2. ^ 普通科後方支援連隊戦車連隊などにおいては中隊長以上の指揮官(ただし、普通科においては教育隊長、後方支援連隊においては衛生隊治療隊長を除く)・連隊長および幕僚などが携行。特科連隊・施設大隊などにおいては大隊長および幕僚以上の役職にある者、飛行隊などの幹部自衛官などが携行。特科連隊や施設大隊の中隊長は小銃を携行する

出典[編集]

  1. ^ a b 「エリートフォーセス 陸上自衛隊編[Part1]」p70 ホビージャパン
  2. ^ 防衛省・自衛隊 予算概要 平成22年度
  3. ^ a b c d e f g h 「エリートフォーセス 陸上自衛隊編[Part1]」p65 ホビージャパン
  4. ^ *『2010陸海空自衛隊最新装備 JSDFニューウェポン・カタログ』 『丸』新春2月特別号別冊付録 潮書房 2010年
  5. ^ 現在、諸外国で市販されているP220には切削加工で作られたスライドが採用され、マガジンキャッチはボタン式になっている
  6. ^ a b 「エリートフォーセス 陸上自衛隊編[Part1]」p68 ホビージャパン
  7. ^ ハイパー道楽 平成22年度 自衛隊記念日 観閲式
  8. ^ 水戸泉メモリー 2004年12月16日
  9. ^ 随意契約に係る情報の公表(物品役務等)
  10. ^ 平成22年度公募契約予定一覧表

関連項目[編集]

外部リンク[編集]