ファミール

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ファミール (Famil[1]) は、かつてセブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン&アイ・フードシステムズが運営していたファミリーレストランチェーンの店舗ブランド[1][2][3]。また2007年8月31日まで存在し、レストラン「ファミール」などを運営していた株式会社ファミール社名でもある[2][3]

なお本項では、企業については株式会社ファミール店舗ブランドについてはレストラン「ファミール」と表記して区別する。またイトーヨーカ堂については、企業は「イトーヨーカ堂」、店舗は「イトーヨーカドー」と表記して区別する。

ファミール公式ウェブサイトドメイン名は「www.famil.jp」であった[1]

歴史[編集]

創業[編集]

株式会社ファミールは、イトーヨーカ堂グループ(現:セブン&アイホールディングス)の外食部門の一つとして、1972年11月21日[要出典]株式会社ヨークフードサービスとして設立された[2][3]。同年にはレストラン「ファミール」1号店をイトーヨーカドー五香店(千葉県松戸市)へ出店した[2][3][4]

また、同時期の1973年には株式会社デニーズジャパンを設立[2][3]、翌1974年にはレストラン「デニーズ」1号店をイトーヨーカドー上大岡店内(神奈川県横浜市港南区)に開店した[2][3]

続いて1975年にはイトーヨーカ堂とソントン食品工業業務提携によりヨーク物産株式会社を設立[2][3]、翌1976年ファーストフード店「ポッポ」1号店をイトーヨーカドーせんげん台店(埼玉県越谷市)に開店している[2][3]。ヨーク物産株式会社はその後、1988年にイトーヨーカ堂の100%子会社となった[2]

レストラン「ファミール」は、「ポッポ」と同様に主にイトーヨーカドーの店舗内に出店していたが、ポッポがフードコートへ出店しているのに対し、レストラン「ファミール」は独立した店舗スペースを有する店舗として、ファーストフード業態とファミリーレストラン業態で差別化を図っており、かつては「ポッポ」とレストラン「ファミール」が両方出店するイトーヨーカドーの店舗も多数存在した。またレストラン「ファミール」では、定番メニューハンバーグスパゲティなどの洋食に加えて天ぷら蕎麦などの和食・和膳メニューを充実させ、イトーヨーカドーの客層に合わせるとともに、レストラン「デニーズ」との差別化を図っていた[4]

1979年にはイトーヨーカ堂から同社社員食堂の運営受託を開始しケータリング事業へ進出[2][3]1981年には株式会社ファミールへ商号変更した[2][3]1985年にはイトーヨーカ堂社外の外部ケータリング事業も開始して業容を拡大した[2][3]またイトーヨーカドー店内のフードコート運営も行っていた。[要出典]

デニーズとの競合[編集]

1980年代には、イトーヨーカドーの出店拡大に伴い出店地域を増やすとともに、レストラン「ファミール」の郊外型ロードサイド店舗も出店開始した[5][6]

しかし1984年には、デニーズジャパンアメリカ合衆国デニーズ社からパテント商標を買い取り、独自メニューの展開を開始した。これにより日本の顧客の嗜好に合わせ、従来のレストラン「デニーズ」では少なかった和食や日本風洋食のメニューを増やした。そのため首都圏の同一商圏内で、従来は和洋食メニューの棲み分けを行っていたレストラン「デニーズ」と「ファミール」の郊外型店舗が競合することとなった。

レストラン「ファミール」は郊外型ロードサイド店舗を含め、最盛期の1990年代には日本全国に約180店舗を展開した[4][7]、しかしバブル崩壊後はファミリーレストラン業界も業績不振となったことから、株式会社ファミールは郊外型ロードサイド店舗から撤退し、本業のイトーヨーカドー内店舗およびコントラクトフード事業へ回帰する事業戦略を発表。1994年にデニーズジャパンへ郊外型店舗を譲渡してレストラン「デニーズ」へ業態転換[5][6]した。

新業態・サービスの模索[編集]

1994年からは新業態の取り組みを開始し、同年にはラーメン店「芝のらーめん屋さん」を開業し、2001年にはイタリア料理店「パスタランテ」を開業した。2003年には食べ放題レストランの人気を受け、ビュッフェ形式の「ファミールダイニング」を開業するなど、消費者ニーズに合わせた新業態の展開を試みた。

また既存のレストラン「ファミール」でも、ドリンクバーやデザートバーなどを一部店舗で導入開始し、地域の需要や競合店の状況に合わせて順次導入するなどして、イトーヨーカドーの集客に頼る運営から脱却し、レストラン「ファミール」へのリピーターを増やすべく店舗のブラッシュアップを図っていた。

セブン&アイ・フードシステムズへの統合[編集]

2005年にはセブン&アイ・ホールディングスが設立され、持株会社制に移行する[2][3]。2年後の2007年1月10日にはセブン&アイ・ホールディングスの外食部門を担う企業として株式会社セブン&アイ・フードシステムズが設立された[2][3]

2007年3月、セブン&アイ・フードシステムズは、株式会社デニーズジャパン、株式会社ファミール、ヨーク物産株式会社の3社を完全子会社[2]。同年9月1日には上記3社を吸収合併[2]、レストラン「ファミール」は「デニーズ」とともにセブン&アイ・フードシステムズが運営する店舗となった[2]。会社統合後も「ファミール」の名称は店舗ブランドとして継続使用された。

全店閉店まで[編集]

セブン&アイ・フードシステムズへの統合によりグループ内での外食部門再編が開始され、また同時期にイトーヨーカドーの不採算店舗撤退が進んだこともあり、レストラン「ファミール」の閉店が続き[4]、2007年の統合時の116店舗から[5][6]2018年6月までに31店舗にまで激減し[5]、約4分の3の店舗が消滅したことになる[5]

それに伴い、2017年からは閉店したレストラン「ファミール」の跡地に、サイゼリヤ居抜き出店する形での転換が増加した[5][6]。2017年4月から2018年4月までに閉店した9店舗[注釈 1]はいずれもサイゼリヤへ転換している。さらに翌2018年5月には郡山店(福島県郡山市)、木場店(東京都江東区)が閉店し、同年6月時点で営業していたのは31店舗となった[5]

2019年には新潟県秋田県などで閉店が相次ぎ[4]、同年3月には株式会社ファミールの本社所在地でイトーヨーカ堂の本拠地でもある東京都で最後の店舗となった武蔵境店(武蔵野市、イトーヨーカドー武蔵境店東館4階[8][6]が閉店[4][6]。同年6月末には神奈川県川崎市の店舗も閉店した[4]。これにより、同年7月以降に営業継続していたのは、北海道(3店)、青森県(2店)[注釈 2]埼玉県(2店)[注釈 3]神奈川県(1店)[注釈 4]静岡県(1店)[注釈 5]愛知県(1店)[注釈 6]の計10店舗となった[4]

その後も閉店ラッシュは続き、同年8月30日時点で営業していたのは、北海道(2店)[注釈 7]、青森県(2店)[注釈 8]、埼玉県(1店)[注釈 9]、愛知県(1店)[注釈 10]の6店舗となった。

同年の閉店ラッシュの理由について、6月のJ-CASTの取材に対し、セブン&アイ・フードシステムズは「イトーヨーカ堂の閉店と、顧客ニーズを捉えきれず利用者が減少したことが主な原因」であると述べた[4]。さらに「2019年以降の新規出店の予定はない」旨を明言した[4]

2019年9月30日をもって、レストラン「ファミール」は全店閉店した[6][7]

年表[編集]

  • 1972年
    • 11月21日 - 株式会社ヨークフードサービスとして設立[2][3](イトーヨーカ堂100%出資)。
    • レストラン「ファミール」1号店をイトーヨーカドー五香店内に出店[2][3]
  • 1979年 - ヨークフードサービスがイトーヨーカ堂の社員食堂業務を受託、、ケータリング事業に進出[2][3]
  • 1981年 - 株式会社ファミールへ商号変更[2][3]
  • 1985年 - イトーヨーカ堂グループ外のケータリング事業に進出[2][3]
  • 2005年 - セブン&アイ・ホールディングスが設立、持株会社制へ移行[2][3]
  • 2007年
  • 2019年9月30日 - レストラン「ファミール」が全店閉店[6][7]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 八王子店(東京都八王子市、春日部店(埼玉県春日部市)、武蔵小杉店(神奈川県川崎市中原区グランツリー武蔵小杉内)、横浜別所店(神奈川県横浜市南区)、亀有駅前店(東京都葛飾区)、長野店(長野県長野市)、福島店(福島県福島市)、津田沼店(千葉県習志野市)、小岩店(東京都江戸川区[5]
  2. ^ 青森店(青森市)、弘前店(弘前市[7]
  3. ^ 上福岡東店(上福岡市[6]、錦町店(蕨市[7]
  4. ^ 立場店(横浜市泉区[6]
  5. ^ 三島店(三島市[6]
  6. ^ 尾張旭店(尾張旭市[7]
  7. ^ 福住店(札幌市豊平区)、函館店(函館市[7]
  8. ^ 青森店(青森市)、弘前店(弘前市[7]
  9. ^ 錦町店(蕨市[7]。イトーヨーカドー錦町店自体も2020年5月31日をもって閉店[9]
  10. ^ 尾張旭店(尾張旭市[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c ファミール -イトーヨーカドー内にあるコーヒーショップ&ファミリーレストランです[リンク切れ]
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 沿革|会社情報 セブン&アイ・フードシステムズ、2023年3月11日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s イトーヨーカ堂社史『変化対応―あくなき創造への挑戦 1920-2006』株式会社イトーヨーカ堂 編・発行、2007年2月28日。
  4. ^ a b c d e f g h i j 30年前は全国180店舗も イトーヨーカドーのレストラン「ファミール」激減 J-CASTニューストレンド、2019年06月24日、2023年3月11日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h ファミール、2018年中に閉店続く-ヨーカドーでお馴染み、サイゼリヤへの転換相次ぐ 都市商業研究所、2018年6月20日、2023年3月11日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k ファミール、2019年9月30日までに全店閉店-イトーヨーカドーのレストラン 都市商業研究所、2019年8月29日、2023年3月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j [ イトーヨーカドー内のファミレス「ファミール」、2019年9月末に全店閉店 1990年代には約180店舗も] ねとらぼITmedia、2019年8月30日、2023年3月11日閲覧。
  8. ^ 【閉店】ファミール 武蔵境店 食べログ、2023年3月11日閲覧。
  9. ^ イトーヨーカドー錦町店、2020年5月31日閉店-「リリイベの聖地」新星堂も閉店に 都市商業研究所、2020年4月15日、2023年3月11日閲覧。

参考文献[編集]

  • イトーヨーカ堂社史『変化対応―あくなき創造への挑戦 1920-2006』イトーヨーカ堂編・発行、2007年2月28日。

外部リンク[編集]