向精神薬
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向精神薬(こうせいしんやく、英:Psychoactive drug)とは、広義には、中枢神経系に作用し、生物の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称。
日本においては、麻薬及び向精神薬取締法で個別に指定された物質を狭義に指す。
歴史
- 1952年 : フランスの精神科医ジャン・ドレー (Jean Delay) とピエール・ドニカー (Pierre Deniker) がクロルプロマジンの統合失調症に対する治療効果を初めて正しく評価し、精神病に対する薬物療法の時代が幕を開けた
- 1957年 : ベルギーの薬理学者パウル・ヤンセン (Paul Janssen) がクロルプロマジンより優れた抗精神病薬ハロペリドールを開発
- 1957年 : スイスの精神科医ローラント・クーンによってイミプラミンが、精神賦活作用を有することが見いだされ、うつ病の薬物療法への道が開かれた[1]
- 1984年 : 非定型抗精神病薬のリスペリドンが開発される
- 2007年 : 日本にてリタリンの不適切処方問題が表面化。うつ病がリタリンの適応症から外される。翌年に流通規制制度を設ける
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種類
向精神薬は精神科で用いられるような精神安定剤から、手術における麻酔で用いられるものまで様々なものの総称である。
- 精神安定剤(tranquilizers)
- 抗うつ薬(antidepressant)
- うつ病や強迫性障害、社交不安障害の治療に用いられるもので、主要な作用は、セロトニンが少なくなっている状態に対してセロトニンを再利用する作用をもたらすことである。第1世代・第2世代の抗うつ薬である三環系抗うつ薬、第2世代の四環系抗うつ薬、第3世代の選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)、第4世代のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRI) がある。新しいモノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) であるRIMA (Reversible inhibitors of monoamine oxidase type-A) という新薬もある (日本国内では未認可)。
- 抗躁薬(antimanic drugs)
- 気分が高まった躁状態を改善するための治療薬である。
- 中枢神経刺激薬
- メチルフェニデートやアンフェタミンのように、突然強い眠気を催すナルコレプシーや注意欠陥・多動性障害 (ADHD) の治療薬として処方される。メチルフェニデートやアンフェタミンは、ドーパミンの受容体に結合する。
- 睡眠導入剤
- 不眠症に対し、睡眠を誘導する治療薬として用いられる。 ベンゾジアゼピン系が多い。
- 鎮静催眠薬
- バルビタールなど、強い催眠作用のある薬物で、睡眠薬として用いられた。
- 抗ヒスタミン薬
以上のうち、主に抗不安薬、中枢神経刺激薬、鎮静催眠薬の一部が麻薬及び向精神薬取締法で向精神薬に指定されている。
法律
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本においては以下の通りに法的に管理されている。
法規
向精神薬
医療用に指定された向精神薬は「麻薬及び向精神薬取締法施行令」によって医療上の有益性・濫用の危険を考慮し以下のように等級されている。
- 第一種向精神薬
- 第二種向精神薬
- 第三種向精神薬(第一種・第二種以外の向精神薬)
- アルプラゾラム(ソラナックス® コンスタン®)
- エスタゾラム(ユーロジン®)
- ゾルピデム(マイスリー®)
- オキサゾラム(セレナール®)
- クアゼパム(ドラール® ベノシール® ダルメート®)
- クロキサゾラム(セパゾン®)
- クロチアゼパム(リーゼ®)
- クロナゼパム(リボトリール® ランドセン®)
- クロバザム(マイスタン®)
- ジアゼパム(セルシン® ホリゾン® ダイアップ® ソナコン®)
- クロルジアゼポキシド(コントール® バランス®)
- トリアゾラム(ハルシオン®)
- ニトラゼパム(ベンザリン® ネルボン®)
- ニメタゼパム(エリミン®)
- ブロチゾラム(レンドルミン®)
- ブロマゼパム(レキソタン® セニラン®)
- ミダゾラム(ドルミカム®)
- メタゼパム(レスミット®)
- ロラゼパム(ワイパックス®)
いずれも麻薬及び向精神薬取締法により、調剤・検査目的以外での製造や、輸出入はすることができない。例外として、医師の処方がある場合や、個人利用目的として1か月分の分量である場合は、携帯して出入国ができる。ただし、フルニトラゼパムは、たとえ個人利用目的でもアメリカおよびカナダへ持ち込むことは一切禁止されている。特にアメリカでは麻薬指定を受けているため、所持していると逮捕される可能性もあるので注意が必要である[2]。どの薬剤においても、海外旅行中は、英文による医師の診断書を携行しているのが望ましい。(不法所持でなく、処方されたものだということを証明するため。)
なお、以下は上記と同類の薬剤ではあるが向精神薬に指定されていない。したがって一般的な薬と同様に、自己使用目的の場合に限り、少量ならば個人輸入が可能である。
ただし、上記の薬物も外国では日本の向精神薬のように扱われることが多いため、無駄なトラブルを避けるためにも、海外旅行時には医師の診断書(英文)の携帯をするのが望ましい。
麻薬
覚醒剤
脚注
関連
参考文献
- 融道男 『向精神薬マニュアル第3版』(2008/09) 医学書院 ISBN 4260005995