ナルコレプシー

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ナルコレプシー
分類及び外部参照情報
ICD-10 G47.4
ICD-9 347
OMIM 161400
DiseasesDB 8801
eMedicine neuro/522
MeSH D009290

ナルコレプシー(narcolepsy)とは、日中において場所や状況を選ばず起きる強い眠気の発作を主な症状とする脳疾患睡眠障害)である。

目次

[編集] 概要

笑い喜び怒りなどの感情が誘因となる情動脱力発作(カタプレキシー)を伴う患者も多いが、その症状が無い患者もいる[1]。通常であればノンレム期を経た後で発生するレム睡眠が入眠直後に発生する、入眠時レム睡眠期(SOREMP)が出現するため、入眠時に金縛り幻覚幻聴の症状が発生する。更に夜間はレム睡眠とノンレム睡眠の切り替わりで中途覚醒を起こすため、目は覚めても体を動かそうとする脳の一部が眠っているために金縛りを体験することになる。入眠後から起床時までは、そのような状況のため概して睡眠が浅くなりやすくなり、夢を見る回数が増える。ほとんどが悪夢で、現実とリアルな夢の境目が分からずにうなされる場合が多い。

ナルコレプシーは、睡眠障害の研究・治療が行われていく課程で、イギリス人医師トーマス・ウィリス(Thomas Willis)によって最初の報告がされ[2]1880年にフランスの医師ジャン=バティスト=エドゥアール・ジェリノー(Jean-Baptiste-Édouard Gélineau)によって名付けられた。直訳としては「Narco=眠り」「Lepsie=発作」を意味するため、「眠り発作」となる[3]。日本では周囲から見た患者の様子から「居眠り病」「過眠症」とも呼ばれる事があるが、他の傾眠傾向の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群など)を一括りに扱うそのような病名は適切ではない。このように一般への知名度が極めて低いうえ、専門医が少ないため、罹患者に対する正しい診断・治療が受けにくいことや、まわりの人間からの理解が得られないなど、罹患者には精神的にも大きな負担がかかっているのが現状である。

発症期は主に15歳前後が多いが、本病気の症状特性上、病気であること自体に患者本人が気付く場合が少ないため、発症から確定診断までの平均期間が約15年と極めて長期になっている。そのため、日本ナルコレプシー協会は、社会的認知度向上に向けて2009年より全国の各中学校・各高等学校にむけて『ナルコレプシーとは』とのパンフレットを配布しはじめた。現在確定診断を受けた患者数は日本国内においておよそ2000人前後(2009年12月現在)であるが、決して珍しい病気ではなく、日本では600人に1人程度(0.16% - 0.18%)[4]は罹患していると想定されている。

また、治療を行っていない状態で、機械や自動車の運転中などに発作が起きると重大な事故の原因となりうるため、早期に適切な治療下のもと、日常生活を送るのに支障をきたすことがないように通院することが望まれる。

[編集] 原因

ナルコレプシーの病因としてオレキシンという物質の欠乏との関連が注目されている。オレキシンは視床下部から分泌される神経伝達物質で、1998年に桜井武(現・金沢大学大学院医学系研究科教授)と柳沢正史(テキサス大学サウスウェスタン医学センター教授)らのグループによって発見された[5]。オレキシン遺伝子を破壊したマウスにはナルコレプシー症状が現れることが明らかになっている[6]。また、任意のヒトのナルコレプシー患者においても視床下部のオレキシンを作る神経細胞が消滅していることが明らかにされている[7]。90%以上の患者で髄液中のオレキシンが検出されないことも報告されている。さらに、オレキシン神経細胞を破壊し人為的にナルコレプシーを引き起こしたマウス[8]に、オレキシン遺伝子を導入したり、脳内にオレキシンを投与することでナルコレプシー症状が改善されることも明らかにされた[9]

[編集] 症状

睡眠発作
日中、突然に耐え難い眠気に襲われるという発作。
情動脱力発作(カタプレキシー
笑い、喜び、あるいは自尊心がくすぐられるなど感情が昂ぶった際、突然に抗重力筋が脱力するという発作。全身にわたり、倒れてしまう発作のほか、膝の力が抜けてしまう、呂律がまわらなくなる、などの部分発作もある。
入眠時幻覚
睡眠発作により睡眠に陥った際、及び夜間の入眠時に現実感の強い幻覚を見ることがある。これは統合失調症などで見られる真性幻覚とは異なり入眠直後にレム睡眠状態になるために非常に現実感を伴った夢をみている状態であると考えられている。寝入り際に幽霊を見たといった類の心霊現象を訴えることがあるが、これも入眠時幻覚によって見ることができる。
睡眠麻痺
いわゆる金縛りと呼ばれる症状。開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができない状態。

以上の4症状は4大症状と呼ばれる。うち、下の3つはREM睡眠と密接に関連しており、REM関連症状と呼ばれることがある。

自動症
眠った感覚がないにもかかわらず、直前に行った行為の記憶がない状態。逆に言えば無意識に寝てしまい、寝ながら行為を続けている状態。
中途覚醒、熟睡困難
夜間就寝中に頻回に目が覚めたり、幻覚や睡眠麻痺があること、また、睡眠構築の乱れもあるため熟睡が困難である。

[編集] 治療

中枢神経刺激薬を使用することで眠気を抑制することができ、メチルフェニデートモダフィニルペモリンが主に使用されている。また、三環系抗うつ薬やSSRI、SNRIの服用により情動脱力発作や睡眠麻痺の頻度を低減させることが期待できる。4-Hydroxybutylate(GHB)も治療に使われることがあった。上述のオレキシンがナルコレプシーなどの睡眠障害に対する新規治療薬開発につながることが期待される。現在の主流は、モダフィニル(モディオダール)という副作用の少ないナルコレプシー専用の治療薬が国内で承認され最大30日分まで[10]処方が可能である。一錠100mgの有効成分を含み、症状の重症度に応じて1~3錠までが医師により決められる。即効性があり、朝食後に一回飲むだけで約8時間効果が持続するが、血中濃度の低下が早いため毎日服用する必要がある。また新薬のため薬価が高い。

[編集] 昼間に眠くなるその他の病気

[編集] その他

[編集] ナルコレプシーを患っている著名人

  • 作家の色川武大(阿佐田哲也)はナルコレプシーに罹患しており、その体験を元にした作品なども発表している。また、友人である作家の山口瞳の随筆でも色川のナルコレプシーに関する記述が散見される。なお、色川武大がナルコレプシーに悩まされるようになるのは、アウトローの世界から足を洗った後である。
  • 作家の中島らもは晩年、ナルコレプシーを発症。持病の躁鬱病とアルコール・薬物の乱用を繰り返す中で、時間概念の喪失、運動障害、躁鬱病の躁状態がもたらす万能感から支離滅裂の言動が度々見られた。ナルコレプシーによる症状と、アルコール依存症の症状、薬物依存による症状が入り交じって出ていたので、どの程度のナルコプレシーの影響かははっきりとは分からない。入院治療である程度体調は回復。薬物はやめたものの飲酒は続けていた。

[編集] 脚注

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  1. ^ 睡眠障害国際分類(ICSD)の診断基準上は、情動脱力発作が見られない場合でも、日中の過度の眠気に加えて、反復睡眠潜時検査でSOREMP(入眠時レム睡眠期)が2回以上かオレキシン低値の場合にはナルコレプシーと診断される。
  2. ^ ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎 本多裕 悠飛社 ISBN 9784860300180 p54
  3. ^ ナルコレプシーの研究―知られざる睡眠障害の謎 本多裕 悠飛社 ISBN 9784860300180 p56
  4. ^ 睡眠障害 - ナルコレプシー”. 2010年5月5日閲覧。
  5. ^ Sakurai et al. (1998) Cell 92: 573-585
  6. ^ Chemelli et al., (1999) Cell 98: 437-451
  7. ^ Peyron et al., (2000) Nature Med 6: 991-997
  8. ^ Hara et al., (2001) Neuron 30:345-354
  9. ^ Mieda et al., (2004) PNAS 101: 4649-4654
  10. ^ 平成22年4月1日より適用。新旧対照条文 ◎療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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