KAMAKURA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。ROE100 (会話 | 投稿記録) による 2021年11月4日 (木) 20:32個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (見出し追加など)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

KAMAKURA
サザンオールスターズスタジオ・アルバム
リリース
録音 1985年3月 - 8月
VICTOR STUDIO
FREEDOM STUDIO in Tokyo
ジャンル ロック[1]
ジャズ[1]
レゲエ[1]
ハードロック[1]
電子音楽[2][3]
実験音楽[2][3]
AOR[3]
時間
レーベル タイシタレーベル
プロデュース サザンオールスターズ
高垣健
藤井丈司
チャート最高順位
  • 週間1位(7週連続、オリコン[4]
  • 1985年度年間4位(オリコン)
サザンオールスターズ アルバム 年表
人気者で行こう
1984年
KAMAKURA
(1985年)
バラッド2 '83〜'86
(1987年)
『KAMAKURA』収録のシングル
  1. Bye Bye My Love (U are the one)
    リリース: 1985年5月29日
  2. メロディ (Melody)
    リリース: 1985年8月21日
テンプレートを表示

KAMAKURA』(カマクラ)は、サザンオールスターズの8枚目のオリジナル・アルバム1985年9月14日にCD・レコード・カセットテープで発売。発売元はタイシタレーベル

ジャケット表記や一部メディアなどは、『kamakura』として表記されている[4][5]

同年10月21日には 「KAMAKURA-BOX」として、1998年5月22日2008年12月3日にはCDとして再発売されている。また、2014年12月17日からはダウンロード配信、2019年12月20日からはストリーミング配信が開始されている[6][7]

背景・制作

グループ初の2枚組のオリジナル・アルバム。総レコーディング時間は1,800時間を費やしている[2]。現在のDTMの前史を創ったフェアライトCMIを全面的に導入しており、当時としては高音質かつ複雑なアレンジが実現されている。

2枚組になったことについては、当初は普通に1枚のアルバムを作る予定だったものの、制作していくうちに桑田が作る曲が増えてきてしまい、それらの楽曲をすべて収録したいという意向で2枚組としてリリースすることとなり、このアルバムの制作でサザンとしてできる事を当時の時点ですべてやりつくしてしまったというエンジニア・マニュピレーター側の見解と[8][3] 、本作のコンセプトがそもそも2枚組であり、メンバーの構想として2枚組として出す考えが何となくあったという桑田や識者による見解が存在している[2][9]

タイトルは鎌倉を撮影で一泊した際に浮かんだものであることが語られている[9]

音楽性

音楽的には、当時出始めたサンプラーやデジタル・シンセサイザードラムマシンなどが多く使用されている。これら電子楽器プログラミングの担当として、YMOのアシスタントを務めた藤井丈司が参加している[2]

プロモーション

「国民待望の2枚組」という触れ込みで発売され、CMには明石家さんまが出演した。さんまは、サザンの楽曲「メロディ (Melody)」を口パクで歌っており、そのCMを見た人のほとんどが「メロディ (Melody)」をさんまの歌だと思っていた、という逸話は有名であり[10]、さんまの持ちネタの1つでもある。さんまの出演のきっかけは大阪の業界人が集まる飲み屋に桑田やさんまが足を運んでおり、この場で桑田とさんまは交流を深めるようになった。その後に本作の宣伝用CMを作る際に桑田はさんまに出演を頼み、さんまも承諾したという[11]。また、さんまはこの後サザン活動休止中の企画盤『バラッド2 '83〜'86』のCMにも出演した。本作のCMは、2004年DVDベストヒットUSAS (Ultra Southern All Stars)』に収録されている。

リリース

前述の通りレコーディングが長引いたことにより、発売が当初の予定より半年ほど延びたことが語られている[3]

本作の発売後ステッカー1986年度カレンダーなどとセットになった『KAMAKURA-BOX』も発売されている。

1998年の再発盤の初回限定盤は、オリジナルLP復刻ジャケット(いわゆる紙ジャケット)仕様で、当時テレビ朝日アナウンサーの辻よしなりによるライナーノーツが封入されている。

本作発表以降、バンド活動は休止状態となり、桑田や松田弘が参加したKUWATA BANDなど、各メンバーはソロ活動に移行する。

再発売

批評・チャート成績

音楽プロデューサー小室哲哉は本作に衝撃を受けたことを公言しており、「けっこうハイテクで、テクノロジーを駆使したアルバム。ちゃんとしたセールスの中で、セールスを考えた中での実験だったと思うから、いいバランスだと思ったんですよ。こういうことやれるのはサザンしかいないなと思ってたし、マーケットを考えてもね。だからすごい羨ましかった。」と評価している[12]

オリコンによる本作の累計売上枚数は95.3万枚を記録している[13]

受賞歴

収録曲

  • シングル収録曲は各シングルで説明しているため、ここでは説明を省略する。
  • オリジナル・アナログ盤ではDisc1、2ともに6曲目からがB面となっていた。

Disc 1

  1. Computer Children (6'12)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司
    富士通テレホン CMソング
    歌詞カードには「“Computer Children”は、スクラッチ、不規則なリズムなどの各種のEffect、処理が行われています。未体験のサザン・サウンドをお楽しみください。」との説明書きがある[14]
    歌詞の内容は当時テレビゲームコンピュータばかりを弄り外で遊ぶことが少なくなった子供たちへの揶揄になっている[2]
  2. 真昼の情景 (このせまい野原いっぱい) (3'30)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司 & 大谷幸
    アフリカ色の強いアレンジである[14]
  3. 古戦場で濡れん坊は昭和のHero (4'09)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ)
    4分の7拍子の楽曲。歌詞には鎌倉極楽寺が登場している[15]
  4. 愛する女性ひととのすれ違い (4'01)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
    恋愛における心の”ゆらぎ”が描かれたポップな曲調のバラード[16]
  5. 死体置場でロマンスを (3'59)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
    サスペンス的な歌詞になっており、桑田自身、赤川次郎などのサスペンス小説などに影響を受けたと述べている[17]
    歌詞の一部が台本のト書きのような書き方になっている[2]
  6. 欲しくて欲しくてたまらない (4'31)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
    スウィング・ジャズ風の楽曲[18]
  7. Happy Birthday (4'42)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
    自身としては初の誕生日をテーマにした楽曲[1]
    アレンジ面ではスクリッティ・ポリッティの影響があるとされる[3]
  8. メロディ (Melody) (5'05)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ)
    23枚目シングル。
    本作のCMにも使われ、明石家さんまが口パクでこの歌を口ずさんだ。
  9. 吉田拓郎の唄 (4'14)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司/管編曲:新田一郎
    制作当時『吉田拓郎 ONE LAST NIGHT IN つま恋』をもって引退と囁かれていた吉田拓郎を名指してのメッセージソング[1][16]。内容は桑田が吉田の音楽性に影響を受けた事に触れ、そして決別するものになっている。歌詞の中には「唄えぬお前に誰が酔う」「一人男が死ぬ」「フォークソングのカス」といった過激なフレーズも並んでいる。ちなみに、この曲の仮タイトルは『死ね吉田拓郎』だったとされる[19]
    当の吉田は1988年に引退を撤回し活躍の幅を広げていった[19]
    2003年の『流石(SASが)だ真夏ツアー!』では当時肺がんの手術を受け療養していた吉田を励ます目的で歌唱され、「酔いどれ姿もいかしてた そんな男がいる」「今でもあなたの歌声が 胸を熱くさせる」など原曲とは逆に吉田を称えるフレーズが並んでいる[20]
    この曲の発表後も桑田と吉田の交流は続き、桑田がそのエピソードを語ったり[21]、吉田が桑田及びサザンの才能や影響力を称えるといった良好な関係が続いている[22]
    スージー鈴木はこの曲を『桑田お得意の「先輩ミュージシャンへのおせっかいシリーズ」の最高傑作』と評している[23]
  10. 鎌倉物語 (3'55)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ/弦編曲:大谷幸)
    原由子メインボーカル曲。
    歌詞は鎌倉付近の情景が情緒豊かに歌われ、タイトル通り、鎌倉の地名や名所が歌詞に登場している。
    原は産休中であったため、レコーディングの際は自宅にマイクを立てて録ったというエピソードがある[2]

Disc 2

  1. (3'38)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
    歌詞中の「女人瓜売僕助平(にょにんうりうりぼくすけべい)」は桑田の造語。
  2. Bye Bye My Love (U are the one) (4'45)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & リアル・フィッシュ)
    22枚目シングル。
  3. Brown Cherry (4'08)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司/管編曲:新田一郎)
    日本語英語とのダブル・ミーニングが使われている曲で、歌詞エロティックな表現を用いている[24]
  4. Please! (5'49)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 原田末秋
    アウトロでは、エリック・クラプトンが在籍したバンドクリームの「Sunshine of your love」のイントロがそのまま使われている[1]
  5. 星空のビリー・ホリデイ (3'59)
    (作詞:桑田佳祐/作曲:桑田佳祐、八木正生/編曲:サザンオールスターズ & 八木正生)
    ジャズボーカルの巨匠・ビリー・ホリデイを唄った曲[1]
  6. 最後の日射病 (4'18)
    (作詞・作曲:関口和之/編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
    関口和之のメインボーカル曲。
  7. 夕陽に別れを告げて 〜 メリーゴーランド (4'45)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
    桑田が青春時代を過ごした鎌倉学園高等学校での思い出を唄った曲[1]。メドレー形式の曲だが、「メリーゴーランド」は本アルバムのラスト曲「悲しみはメリーゴーランド」のインストが少し使われているのみである。
  8. 怪物君の空 (5'09)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
    大塚製薬オロナミンC」CMソング。
    重低音やサウンドエフェクトが強調された、ハードロック調の楽曲[1]
  9. Long-haired Lady (3'38)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ/弦管編曲:八木正生)
    多重録音による輪唱が用いられ、ボーカルも低いキーが使われている[2]
  10. 悲しみはメリーゴーランド (2'36)
    (作詞・作曲:桑田佳祐/編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
    桑田出演の三菱鉛筆『EXCEED』CMソング。
    「夕陽に別れを告げて」とのメドレーで挿入されているインスト部分が形になった楽曲。
    歌詞には日本における中国韓国との関係を思わせるフレーズが存在し、スージー鈴木はこのような桑田のいわゆる社会派路線の楽曲を「この時期から一定の比率を占めている」と評している[25]

参加ミュージシャン

脚注

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 『サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019』(2019年)リットーミュージック出版 p119
  2. ^ a b c d e f g h i 『サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019』(2019年)リットーミュージック出版 p37 - 38
  3. ^ a b c d e f 『サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019』(2019年)リットーミュージック出版 p44-46
  4. ^ a b 安室奈美恵の勢い衰えず!ドリカム以来14年8ヶ月ぶりの6週連続首位 オリコン 2017年11月29日閲覧
  5. ^ a b 第27回日本レコード大賞 日本作曲家協会 2020年7月6日閲覧
  6. ^ サザン、全266曲を世界111ヶ国で配信 オリコン 2014年12月17日配信, 2020年6月4日閲覧
  7. ^ サザン関連全972曲 サブスク一斉解禁 メンバーソロ曲も対象に オリコン 2019年12月20日配信, 2019年12月20日閲覧
  8. ^ SWITCH Vol.31 No.8 Southern All Stars [僕らのサザン、みんなのサザン] p48より。
  9. ^ a b 傑作かつ“豊作”だった二枚組の『KAMAKURA』(前編) WHAT's IN? Tokyo 2019年12月7日配信 2020年10月18日閲覧
  10. ^ ベストヒットUSAS (Ultra Southern All Stars)付属のブックレット 「KAMAKURA」テレビCMより
  11. ^ 桑田佳祐、明石家さんまがサザンのCMに出演した経緯を語る マイナビニュース 2018年6月27日閲覧
  12. ^ TK MUSIC CLAMP 1995年5月24日放送分 フジテレビ(ウェブ魚拓使用)。
  13. ^ サザンオールスターズ 売上別TOP10&主な記録 オリコン 2015年1月22日閲覧
  14. ^ a b スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(2017年、新潮新書、P233)
  15. ^ スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(2017年、新潮新書、P234)
  16. ^ a b 傑作かつ“豊作”だった二枚組の『KAMAKURA』(後編)全曲解説付きWHAT's IN? Tokyo 2019年12月14日配信 2020年10月18日閲覧
  17. ^ 桑田佳祐のやさしい夜遊び』2014年12月6日放送分。
  18. ^ スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(2017年、新潮新書、P235)
  19. ^ a b 吉田拓郎の闘病中に桑田佳祐が励ましの唄を歌った伝説ライブパフォーマンスとは?2017年11月17日 エキサイトニュース
  20. ^ 吉田拓郎の闘病中に桑田佳祐が励ましの唄を歌った伝説ライブパフォーマンスとは?2017年11月17日 エキサイトニュース
  21. ^ 桑田佳祐と吉田拓郎との隠された過去。今日までそして明日から。 - Techinsight 2011年3月20日配信 2020年10月18日閲覧
  22. ^ 大衆に寄り添うサザンの真骨頂見せつけた『無観客ライブ』 その圧倒的パフォーマンスは今後のさまざまな方向性示した東京中日スポーツ 2020年7月23日配信 2020年10月18日閲覧
  23. ^ スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(2017年、新潮新書、P236)
  24. ^ スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(2017年、新潮新書、P238 – 239)
  25. ^ スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(2017年、新潮新書、P242)

外部リンク

  • KAMAKURA - SOUTHERN ALL STARS OFFICIAL SITE