アコーディオン

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アコーディオン(accordion)は中央の蛇腹を左右に広げたり縮めたりして演奏する動作が特徴的な、小型のオルガン族・フリーリード(自由簧)楽器・鍵盤楽器蛇腹楽器である。日本語では手風琴(てふうきん)という。

ピアノ・アコーディオン
アコーディオン


アコーディオンの構造[編集]

ボタン・アコーディオン

両手で抱えるようにして保持する。右手側は主に主旋律を担当し、ピアノと同様の鍵盤もしくはボタンが並べられる。左手側には主にベース音和音を奏でるボタンが多数配置されている。右手側が8~50鍵ほど、左手側が最大で120個ほどのボタンがあり、ボタンと空気弁を繋げるためにシャフトが張り巡らされた内部構造は大変複雑である。重量は2~15キログラム程度。

鍵盤やボタンを押すと、シャフトでつながった対応する空気弁が開くようになっている。蛇ばらをふいごとして伸縮することで送られた空気が、開かれた弁を通りリードを通り抜けるときに振動させ音を鳴らす。フリーリードというどちらの面からの通気でも音を発するリード(一端を固定した金属の板)を用いるため、吹くときと吸うときのどちらでも音を鳴らすことができる。同時に複数の音を鳴らすのが容易であり、一台で主旋律と伴奏をこなすこともできる。構造としてはオルガンやハーモニカによく似ているが、一人で持ち運べるサイズで取り扱いやすく、屋外での演奏にも適している。ハーモニカのように息を必要としないので、弾き語りもできる。

上記のフリーリードについて補足説明しておくと、フリーリードの1枚のリードは一方からの通気でしか発音しないため、通常アコーディオンの場合は蛇腹を押したときにも引いたときにも発音するように一つのリード枠に表裏2枚のリードがセットされている。押し引きで違うリードが発音するため、押し引き同音の出るクロマチックタイプの楽器と押し引きで違う音の出るダイアトニックタイプの楽器がある。

日本では小学校などの一般的な音楽教育の現場でも採用されており馴染みは深い。小学校などで用いられているのは、左手のボタンが無い簡略化した(ベースレス)ピアノ式アコーディオンである(楽器ごとにアルト、ソプラノ、テナー、バスと分担化されており、器楽合奏や鼓笛パレードで組み合わせて用いられる場合が多い)。しかしピアノやギターに比べるとその普及度は低く、楽器も安価なものは少ない。

ピアノ・アコーディオンなどの左手のボタン配置は「ストラデラ・ベース・システム」(The Stradella Bass System)を用いる。これは通常次の6列から構成される。2列目のボタンはファンダメンタル・ベース(the Fundamental Bass)と呼ばれ5度音階に従って並べられている。一列目のボタンはカウンター・ベース(the Counter Bass)と呼ばれ、2列目より3分の1高い関係になっている。メジャーコードは3列目に配置され、4列目はマイナーコードで構成される。5列目はセブンスコードを格納し、最後の6列目はディミニッシュ・セブンスコードを持つ。

次はアスキーアートによるボタンの配置図である。

... C    G    D    A   E   B   F#  C#  G#  D#  A#   F    C    ...
 ... Ab   Eb   Bb   F   C   G   D   A   E   B   F#   C#   G#   ...
  ... ab   eb   bb   f   c   g   d   a   e   b   f#   c#   g#   ...
   ... abm  ebm  Bbm  fm  cm  gm  dm  am  em  bm  f#m  c#m  g#m  ...
    ... ab7  eb7  Bb7  f7  c7  g7  d7  a7  e7  b7  f#7  c#7  g#7  ...
     ... abd7 ebd7 Bbd7 fd7 cd7 gd7 dd7 ad7 ed7 bd7 f#d7 c#d7 g#d7 ...

値段やサイズ、楽器の系統にも因るが、まったく無い列があったり、レイアウトが多少変更されていることがある。ほとんどのロシア式の配置は、ディミニッシュ・セブンス・コードの列はボタンひとつ分移動され、ディミニッシュ・セブンス・Cコードは図のディミニッシュ・セブンス・Fコードの位置にあり、人差し指が届きやすいようになっている。

アコーディオンはボタンの数と種類によって次のように分類される。

  • 「12ベース」アコーディオン:FからDまでとかBbからGまでとかのファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコードを持つ。さらにここからマイナーコードを省略した8ベースもある(おもちゃレベルのものだが)
  • 「24ベース」はAbからAまでで、ファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコードを持つ。
  • 「32ベース」はEbからEまでで、ファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコード、セブンスコードを持つ。
  • 「48ベース」はEbからEまでで、6つの列すべてを持つ。
  • 「72ベース」はDbからF#までで、6つの列すべてを持つ。
  • 「80ベース」はCbからG#までで、ディミニッシュ以外のすべてを持つ。
  • 「96ベース」は80ベースと同様だが、6つすべての列を持つ。
  • 「120ベース」はAbb(i.e. low G)からA#まで - 20行 - 6つすべての列を持つ。

アコーディオンの歴史[編集]

最初のフリーリード楽器は中国であるが、これは息で空気を送り込むようになっている。この笙のようなフリーリードによる発声の仕組みを、18世紀ヨーロッパからの旅行者が中国から持ち帰ったものと思われる。最初のアコーディオンは1822年ドイツのフリードリッヒ・ブッシュマン(Friedrich Buschmann)によって発明され、「ハンド・エリオーネ」と呼ばれた。近代的な10ボタンアコーディオンは1829年オーストリアのシリル・デミアン(Cyrillus Damian)が考案したもので、全音階(メジャースケールの7音)を持ち、単一のキーのみで演奏された。「アコーディオン」とはこのデミアンによる命名であり、「和音」を意味する「accord」に「器」を意味するギリシャ語の接尾語を組み合わせたものである。これらのアコーディオンは現在も演奏されており、ケージャン・アコーディオン(Cajun accordions)、メロディオン(melodeons)、ワン・ロウ(one-row)、ダイアトニック・アコーディオン(diatonic accordions)など多くの呼び方がある。

ロシア式アコーディオンru|en)のバヤンロシア語版英語版は、本来全く独自の鍵盤配列を持った民族楽器の一つで1907年にピョートル・ステリゴフПётр Егорович Стерлигов)によって開発された。後に、イタリア式クロマティック・アコーディオンを参照して、西洋伝統音楽に耐える構造に徹底的に作り変えられた。バヤンは右手のボタン配列が通常のアコーディオンと若干異なる。音の違いはほとんどないが、微妙なレヴェルでは違うと見られる。Bayanakko社[1]は右の8フィートのリードを二種から三種に増やし、重さは16.5kgを越え音栓数は31に及ぶモデルを生産している。これだけの重さに耐えなおかつ余裕で使いこなすロシア人の体力がよく解る楽器の歴史が見える。現在も、発祥時のピリオドモデルと改良されたモダンモデル、どちらも生産されている。

アコーディオンの外見は時代とともに変化しており、この楽器を見慣れた人なら、外形を見ただけでその楽器の製作年代をある程度推定することができる。鍵盤式アコーディオンの場合、20世紀前半までは、鍵盤部の両脇がライアーのようにふくらみ、ボディも角ばったアール・デコ調のデザインが好まれた(写真)。20世紀後半以降は、装飾を減らし、ボディの角に丸みを持たせたタイプが普及している。こうした外観の変化は、自動車のデザインの変遷と似ている面がある。今日でも、中古楽器市場や骨董市場では、古いデザインのヴィンテージ・アコーディオンもかなり出回っている。

かつてオーケストラの中に入る鍵盤楽器といえばピアノチェレスタオルガン、ときてハーモニウムが入るのが定石でシェーンベルクベルクマーラーペンデレツキシュレーカーなどがハーモニウムを用いていたが、20世紀にアコーディオン科が設立されると同時に楽器と奏者の性能が上がってくる。その変わり目は、大体1970年代末である。そのせいもあってハーモニウムは追い出され、現在はアコーディオンはピアノと同じ割合で室内オーケストラ或いは大オーケストラの定番にされている。武満徹ベアート・フラーグバイドゥーリナはオーケストラ曲でアコーディオンまたはバヤンを用い、高い音響効果をあげている。

アコーディオンの種類[編集]

アコーディオンはその成り立ちや形状、音域などからおおまかに6つに分類される。

ダイアトニック・アコーディオン[編集]

明治時代の本の「手風琴(アツコルジヲン)」の図。各ボタンの「押」「引」それぞれの音階を工尺譜で書いてある。明治・大正期の日本でアコーディオンと言えば、おおむね、このような小型のダイアトニック・アコーディオンを指した。

ダイアトニック・アコーディオンはもっとも初期に開発されたシンプルなアコーディオンである。ダイアトニック(diatonic)とは「全音階」を意味し、単一のキーのみが演奏でき、ピアノの黒鍵にあたる半音は出せない(半音を出すためのアクシデンタル・キーを追加したタイプもある)。蛇腹(じゃばら)を伸ばすときと縮めるときで違う音がでる「押引異音式」になっている。ピアノ・アコーディオンなどに比べると構造が単純で軽量である。右手は主旋律を演奏し、左手は2~3のベース音とトニックとデミナントのシンプルな和音を演奏する。ダイアトニックの項目も参照。

クロマティック・アコーディオン[編集]

全音階でしか演奏できないダイアトニック・アコーディオンを改良したもので、ピアノなどと同様に半音階の音も出すことができる。ダイアトニック・アコーディオンが押引異音であるのに対し、クロマティック・アコーディオンは押引同音になっている。1850年ごろにウイーンのフランツ・ワルターによって作られた。クロマティックの項も参照。

コンサーティーナ[編集]

イギリス物理学者チャールズ・ホイートストンが考案したアコーディオンの一種。1833年にデミアンのアコーディオンとは独立に作られた。重量は2キログラム程度とアコーディオンの中でも小型で、六角形の蛇腹をもつ。なお、concertina(英語)の日本語表記はいまだ固定しておらず、「コンサーティナ」「コンサルチーナ」「コンツェルティーナ」その他の表記があるため、ネット検索などのときは要注意である。詳しくは「コンサーティーナ」の項を参照。

バンドネオン[編集]

ドイツハインリヒ・バンドにより発明されたもの。詳しくはバンドネオンを参照。

メロフォン[編集]

外見はギターに似る。右手で蛇腹につながったハンドルを操作して空気を送り、左手で(ギターで言うところの)ネックに備えられたボタンを操作して音高を変えて演奏する。

ピアノ・アコーディオン[編集]

ピアノ・アコーディオンは18世紀ヨーロッパで開発され、現在最も一般的なタイプのアコーディオンである。右手部はピアノの鍵盤と同形状の鍵盤になっており、ピアノよりは鍵盤が小さいがピアノの演奏者でも演奏することができる。ボタン数も多いもので120ほどあり和音にも対応できる。

スタイリッシュ・ハーモニカ[編集]

シュタイリシェ・ハーモニカ(Steirische Harmonika=シュタイアーマルク式ハーモニカ)とも。オーストリアドイツスイススロベニア南チロルなどのアルプス地域を中心に民族音楽やポピュラーミュージックの主力楽器の一つとして現在でも多く使われている、アコーディオンに似た蛇腹楽器で、多くがダイアトニック式のボタンタイプである(一部には鍵盤型の物も存在する)が、メロディが3~5列、ベース、コードが11個前後と比較的多めである(鍵盤型のものは更に多い)。

Vアコーディオン(電子アコーディオン)[編集]

ローランド(株)が2004年に発表。2006年の現行機種としては、ピアノ・アコーディオン・タイプのFR-7、FR-5と、クロマティック(ボタン)アコーディオン・タイプのFR-7bとFR-5bがある。また2006年1月にはアメリカのNAMMショーにて、新機種のFR-3sとFR-3(スピーカー未搭載モデル)を発表、小型軽量化とコストパフォーマンスに優れたエントリーモデルとして2006年6月頃に国内発売を予定。現在はアコーディオン奏者の長坂憲道V-Accordionの第一人者として、全国的に演奏活動を行っている。楽器の位置づけはアコースティックギターに対してエレアコ、またハモンドオルガンB-3等に対してエレクトーン他、各社の電子オルガンの対比に近いニュアンス。世界の代表的なアコーディオン17台分をモデリング搭載しており、簡単なボタン操作でそれらのアコーディオンを持ち替えることもできる。また、左手のベースボタンはスタンダード・ベース(ストラデラ・ベース)から、各種フリー・ベース・システムにも簡単に切り替えることが可能。奏者のスタイルにマッチするよう、細かく設定を作り込み、世界に一台のアコーディオンを作り上げられるシステムである。

代表的なアコーディオンの楽曲[編集]

ソロ[編集]

アンサンブル[編集]

アコーディオン・アコーデオン[編集]

世界の代表的なアコーディオン奏者[編集]

日本の代表的なアコーディオン奏者[編集]

Category:アコーディオン奏者Category:日本のアコーディオン奏者も参照のこと。

  • 吉備英志(Hideshi Kibi)
  • 佐藤芳明
  • 永畑雅人
  • ライオン・メリィ
  • 神出高志
  • 新井武人(アライタケヒト)
  • 小春(チャラン・ポ・ランタン)
  • 都丸智栄 (ザッハトルテ、とまとなべ)
  • 原田忠 (カウリスマキ)
  • 清水貴博(taca)

関連項目[編集]

参考文献[編集]