空母打撃群

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空母打撃群(くうぼだげきぐん、Carrier Strike Group、CVSGあるいはCSG)とは、アメリカ海軍の戦闘部隊のひとつ。2006年以前は空母戦闘群(くうぼせんとうぐん、Carrier Battle Group、CVBG)と呼ばれていた。通常、1隻の航空母艦とその艦上機、複数の護衛艦(CG, DDG, DD, FFG, SSN)、補給艦によって構成される。

概要[編集]

空母打撃群(CVSG)は、第二次世界大戦以来、幾多の実戦を経験しつつ、「制海」および「陸上への力の投射」というアメリカ海軍の二大任務を遂行し続けてきた、作戦/戦術レベルの軍事システムである。

通常、空母打撃群は少将によって指揮される。アメリカ海軍の少将には“Rear Admiral (lower half)”(RDML/1つ星)と“Rear Admiral (upper half)”(RADM/2つ星)の二階級があるが、通常2つ星少将が指揮を執ることはまれであり、2つ星少将が空母打撃群の指揮を執っているケースは、1つ星少将として司令官を務めている間に2つ星少将へ昇任し、次の任務・ポストに補職されるまでの間務める、という場合がほとんどである。

アメリカ海軍では、航空母艦の艦長(司令官)を務める資格を有するのは飛行士(Naval Aviator)出身者か航空士官(Naval Flight Officer,NFO[1])出身者に法律上制限されているが[2]、空母打撃群の司令官についてはそのような制限はなく、飛行士・航空士官出身者だけでなく水上艦乗組士官、場合によっては潜水艦乗組士官もこれを務めることができる[3][4]

空母打撃群を構成する艦艇の総乗組員数は7,000人以上になる。1隻の航空母艦を中核に、5~10隻の護衛艦(水上戦闘艦、潜水艦)、1~2隻の補給艦から構成されており、空母は数十機の航空団艦上戦闘機艦上攻撃機早期警戒機電子戦機艦上哨戒機輸送機)、護衛艦は合計で300発以上におよぶ各種ミサイル(艦隊防空個艦防空艦対地艦対艦巡航対潜弾道弾迎撃)とLAMPSヘリコプターを搭載し、その火力のおよぶ限りの空間を制圧・支配できる。

また、航空母艦の艦上に設置された打撃群司令部指揮所(TFCC)には、ワシントンD.C.国家軍事指揮センター(NMCC)および直属の統合軍司令部 (UCC) との直通回線や、各種偵察・観測衛星からの通報回線が設置されるとともに、指揮下の全部隊についての情報が集中的に総合されており、指揮統制・情報活動のかなめとなる。

編成[編集]

空母打撃群(旧 空母戦闘群)は、1隻の航空母艦(正規空母原子力空母)と複数の護衛艦艇、潜水艦と補給艦で編成される。その編成は、その時代の技術と要求される任務に応じて変化してきた。

湾岸戦争[編集]

1991年当時、ニミッツ級原子力空母は5隻就役していたが、ローテーションの関係で参加したのはCVN-71 セオドア・ルーズベルト1隻で、残りはCVA-41 ミッドウェイCVA-60 サラトガCVA-61 レンジャーCVA-66 アメリカCVA-67 ジョン・F・ケネディと就役後30年経った古い通常動力空母ばかりが集まったが大型空母で艦載機の数も多かったため問題ではなかった。

イラク戦争[編集]

CVA-63 キティホークCVA-64 コンステレーション、CVN-71 セオドア・ルーズベルト、CVN-72 エイブラハム・リンカーン、CVN-75 ハリー・S・トルーマンの6隻が参加。

イラク戦争時の空母戦闘群の航空攻撃力は、湾岸戦争時の3倍と評価されている。具体的には、湾岸戦争時には、1日に攻撃可能な攻撃目標数が200個であったのに対し、12年後の 2003年ではこれが600個にまで増えた。これは空母に搭載可能な戦闘攻撃機の機数が増え、また搭載する兵器の高性能化によって、ほぼ100%の攻撃達成が可能になったためである。

また、イージスシステム搭載のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の配備が進み、防空能力が湾岸戦争時より高まったことから、護衛艦艇は12隻から9隻に減っている。

  • 大型航空母艦(正規空母・原子力空母) ×1
    • キティホーク級
    • ニミッツ級
  • ミサイル巡洋艦 ×2
    • タイコンデロガ級
  • ミサイル駆逐艦 ×1
  • 駆逐艦 ×1
    • スプルーアンス級
  • ミサイルフリゲート ×1
    • オリバー・ハザード・ペリー級
  • 攻撃型潜水艦(原子力潜水艦) ×1
    • ロサンゼルス級
  • 補給艦(戦闘支援艦) ×1

現在[編集]

2006年から空母戦闘群空母打撃群に呼称が変更される。また、以前からの計画により9隻編成から6隻編成に変更になる。6隻編成に移行した背景には、スプルーアンス級駆逐艦(31隻)の退役完了、オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートの退役の進行(51隻から30隻に)、その一方でより高性能のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦が増勢したことによって、艦艇数は減少しても防空能力は更に高まったからである。

また、中核となる航空母艦は、2009年に通常動力のCVA-63 キティホーク、2012年にCVN-65 エンタープライズが退役し、CVN-68 ニミッツからCVN-77 ジョージ・H・W・ブッシュを含めて10隻すべてが原子力動力のニミッツ級となる。

  • 大型航空母艦(原子力空母) ×1
    • ニミッツ級
  • ミサイル巡洋艦 ×1
    • タイコンデロガ級
  • ミサイル駆逐艦 ×2
    • アーレイ・バーク級
  • 攻撃型潜水艦(原子力潜水艦) ×1
    • ロサンゼルス級
  • 補給艦(戦闘支援艦) ×1
    • サプライ級

総乗員数 7,033人

今後[編集]

ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦の後継として2004年から就役が始まったバージニア級攻撃型原子力潜水艦とCVN-65 エンタープライズ・ニミッツ級原子力空母、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦、スプルーアンス級駆逐艦の後継としてジェラルド・R・フォード級原子力空母CG(X)ズムウォルト級ミサイル駆逐艦の配備が計画されていたが、予算の縮小・開発費の高騰などの理由でCG(X)は計画中止、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は建造数が削減され配備の目処が立たなくなったので当面は大きな変化はない模様。

  • 大型航空母艦(原子力空母) ×1
    • ニミッツ級
    • ジェラルド・R・フォード級
  • ミサイル巡洋艦 ×1
    • タイコンデロガ級
  • ミサイル駆逐艦 ×2
    • アーレイ・バーク級
  • 攻撃型潜水艦(原子力潜水艦) ×1
    • ロサンゼルス級
    • バージニア級

航空団[編集]

任務と能力[編集]

空母打撃群は、下記のような特性を有する。

  1. 対地火力投射
  2. 広域戦闘空間支配+縦深防御
  3. 情報収集、総合および処理
  4. 残存性
  5. 機動力
  6. 戦闘継続能力

対地火力投射[編集]

空母打撃群の対地火力投射(シー・ストライク)能力は、航空母艦搭載の攻撃機による航空攻撃能力と、護衛艦(ミサイル巡洋艦, ミサイル駆逐艦, 原子力潜水艦)搭載のトマホーク武器システム (TWS) による対地巡航ミサイル攻撃能力によって構成されている。

有人機による航空攻撃[編集]

武装満載のF/A-18E

艦上攻撃機は、操縦士自らが即応判断能力を有していることから、情勢変化に即座に対応でき、また、大量の火力を投射することが出来る。その一方、航空機本体だけでなく、これを運用するための莫大な航空設備が必要であり、また、多数の人員(操縦士)を前線に配置することから、敵の反撃による人的損害のリスクが高いという特性を有する。

アメリカ海軍は、大戦中より各種の艦上攻撃機を運用してきたが、現在では、艦上戦闘機と統合したF/A-18およびその発展型としてのF/A-18E/Fといった戦闘攻撃機によって、その任務は肩代わりされている。また、対地攻撃任務の際に、敵の地対空迎撃部隊に対処するため、EA-6電子戦機が配備されてきたが、現在、その後継としてのEA-18Gの配備が進められている。

現在、空母艦上には40機前後のF/A-18C/D、あるいは発展型のF/A-18E/F戦闘攻撃機が配備されて、艦上攻撃機の主力となっている。同機は、最大で8トンにおよぶ武装を搭載でき、最長で5,000 kmにも及ぶ航続距離を有する。これらの攻撃機は、下記のような武装を搭載できる。

巡航ミサイルによる航空攻撃[編集]

トマホーク武器システム(TWS)は、敵の反撃による損害のリスク無しに精密火力投射を行なうことが出来るが、即応性に劣り、また火力の大量投射には不向きである。空母打撃群においては、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦およびアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦がMk 37 TWSを、またロサンゼルス級原子力潜水艦がMk 36 TWSを装備している。

打撃群全体での火力量は、その他の兵装の搭載量によって左右される。水上戦闘艦搭載のMk 41VLSのセル数は、打撃群全体で302~306セルであるが、多くの場合、このうち100~150セル程度がトマホークに割かれている。その射程は、通常単弾頭(1,000ポンド)のTLAM-Cで1,650 km、子弾運搬弾頭のTLAM-Dで1,250km、タクティカル・トマホークで3,000kmである。

艦砲による対地射撃[編集]

空母打撃群の水上戦闘艦は、Mk 45 5インチ砲を装備しており、これにより、沿岸地域の敵に対して攻撃を行なうことができる。

艦砲射撃は、前記の二者に対して、投射できる火力量は大きく劣り、また、射程が短いことから、敵の反撃による損害のリスクが大きくなる上、制圧可能範囲も小さくなるというデメリットがある。しかし一方で、所要のコストが前記の二者よりもはるかに廉く、また、持続的な火力発揮が可能であるというメリットもあることから、沿岸に敵対艦火力が存在せず、またTWSや艦載機を投入しない(あるいはできない)などの限定的な状況においては、依然として有力な選択肢である。

広域戦闘空間支配+縦深防御[編集]

空母打撃群は、航空母艦の艦載機、および護衛のミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、ミサイルフリゲート、攻撃型潜水艦を展開することにより、その火力のおよぶ限りの海空空間を支配し、また、自らに向かってくる脅威から身を守ることができる。

航空戦闘[編集]

F-14とF/A-18E(2005年)

空母打撃群が有する最有力の対空戦闘システムは、航空母艦より運用される艦上戦闘機および空中早期警戒機、そして艦隊のC4Iシステムによる複合システムである。また、護衛のミサイル艦は艦隊防空ミサイル・システムを備えているほか、それ以外の艦も、短距離射程の個艦防空ミサイルや近接防空火器(CIWS)などにより、最低限以上の防空能力を備えている。

打撃群の索敵可能範囲を増大させ、また、必要に応じて指揮統制を助けるため、現在、航空母艦には5機のE-2C早期警戒機が配置されている。これらは、必要に応じて遠隔地に進出し、前進配置センサーとして機能する。基本的には、その探知データは戦術データ・リンクによって航空母艦、あるいは防空中枢艦の指揮所に伝えられ、ここで処理されることとなるが、近年では、ある程度の指揮機能も有するようになっている。

空母艦上には40機前後のF/A-18C/D、あるいは発展型のF/A-18E/F戦闘攻撃機が配備されて、艦上戦闘機の主力となっている。同機は、中距離および短距離の撃ち放し式空対空ミサイルとM61 20mmバルカン砲を搭載して、最大でマッハ1.8の速度を発揮でき、最長で5,000 kmにも及ぶ航続距離を有するほか、空中給油能力も備える。また、自機装備のAPG-65 (あるいはAPG-79)レーダーのほか、戦術データ・リンクにより脅威情報を受信することができる。

艦対空ミサイルを連続発射するアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

一方、空母打撃群を構成する水上戦闘艦のうち、防空を任務とするのがミサイル艦(ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、ミサイル・フリゲート)である。これらは、1950年代後半より順次実用化されたタロステリアターターの3種の艦隊防空ミサイル・システムを搭載し、これによって防空任務を行なっていた。

しかし、1980年代より、これらよりはるかに先進的なイージスシステム (Mk 7 AWS)の艦隊配備が開始され、現在、空母打撃群に配備されたミサイル艦の全てがイージス艦となっている。[5]現在の空母打撃群の一般的な編制では、防空中枢艦としてのタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦と、これに指揮されるアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、合計3隻が含まれていることが多い。また、航空母艦自身は、改良型個艦防空ミサイル・システム(IPDMS)Mk 31 RAMシステム、Mk 15 CIWSといった自衛防空火力を装備している。これらは、現在、SSDS Mk 2によって統合された戦闘システムとして再構築されつつある。

これらの各機・艦が受信した情報は、戦術データ・リンクを介して、各艦CIC装備のGCCS-M (旧JOTS)、そしてそれぞれの戦術情報処理装置 (ACDS, Aegis C&D)に入力される。これにより、空母打撃群全体が一体となった戦闘が可能となっているほか、将来的には共同交戦能力も導入される。

対潜・対水上戦闘[編集]

ディッピングソナーを吊下するSH-60F CV-HELO

長く、アメリカ海軍は、航空母艦に固定翼の対潜哨戒機を配備してきた。しかし現在、S-3の退役完了により、艦上哨戒機は消滅しており、航空対潜戦力は完全に哨戒ヘリコプターによって占められている。哨戒ヘリコプターには、護衛艦に搭載されて、ソノブイにより外周の広範囲を捜索するLAMPSヘリコプターと、空母より発進し、吊下ソナーによりCVSG付近を捜索するCV-HELO (艦上対潜ヘリコプター)とがある。

現在、空母打撃群に加わっている全ての護衛艦が統合対潜システム(水上艦はAN/SQQ-89、潜水艦はAN/BQQ-5)を備え、また、DDG-51級の後期建造艦(Flight IIA)を除く全ての艦が曳航ソナー(TACTASS, STASS)を備えることにより、遠距離で潜水艦脅威を邀撃することができる。このうち、水上艦装備のSQQ-89はLAMPS Mk IIIと連携しているほか、これらの統合対潜システムは、対空戦システムと同様にJOTS (GCCS-M)に連接されており、より円滑に打撃群全体で対潜作戦を展開できるようになっている。

ヘリコプターより降下する海軍特殊部隊員

一方、CVSGが有する対水上火力としては、艦上攻撃機、水上戦闘艦[6]、潜水艦から運用されるハープーン対艦ミサイルがある。これは最大で200km程度と比較的短射程であるので、水上艦装備のものについては、基本的には自衛火力として使用される。一方、潜水艦と攻撃機装備のものについては、プラットフォームそのものが秘匿性と機動性を有することから、十分に攻撃的火力としての運用が可能である。また、攻撃機は誘導/非誘導の爆弾や対地ミサイル、潜水艦は誘導/非誘導魚雷をも装備しており、対空・対潜戦闘力に欠ける敵に対しては、これらも十分に対水上火力として期待しうるものである。一時期、上述したTLAM対地巡航ミサイルの対艦型TASM(射程460 km)の艦隊配備もなされていたが、長射程の艦対艦火力をもてあましたことから、比較的早期に退役している。

また、海上治安活動時においては、CVSGは、各護衛艦のLAMPSヘリコプターに加え、航空母艦搭載の哨戒ヘリコプターおよび多用途・補給支援ヘリコプター、戦闘救難ヘリコプターにより、立ち入り検査隊(VBSSチーム)を展開することができる。これにより、CVSGは、より効率的に海上治安活動を実施することができる。

情報収集、総合および処理[編集]

空母打撃群(CVSG)の内外に展開された情報システム。OPSとINTELの2系列があり、それぞれ、空母艦上の群司令部(TFCC)および空母インテリジェンス・センター(CVIC)を中核としてシステム構築されている。

空母打撃群においては、航空母艦搭載の早期警戒機および対潜哨戒機、CVSG構成各艦装備のセンサーによる卓越した情報収集能力のほか、空母が備える旗艦機能およびSIGINTシステム、衛星通信および戦術データ・リンク・システムによって、打撃群外部からの情報もが、空母艦上のTFCCに総合され、処理される。

ジェリー・O・タトルが創案したコペルニクスC4Iコンセプトは、全ての情報を洋上部隊指揮官に集中し、その意思決定を助けることを主眼としていた。これを最大規模で体現したのが、空母打撃群のTFCCである。空母打撃群TFCCにおいては、作戦階梯(NMCCおよびUCC司令部間)で使用されるGCCSと、戦術階梯(艦隊内)で使用されるGCCS-M (旧JOTS) の両方が設置されており、空母TFCCには作戦階梯と戦術階梯の双方の情報が集中することになる。

残存性[編集]

多数艦の分散配備および個艦防御システムによる残存性。通常、CVSG (CVBG)の各艦は数海里の距離を取って行動し、一度の核攻撃による全滅を避けている。

また、構成各艦は、それぞれ直接の脅威に対処できる最低限以上の能力を備えており、容易に戦闘能力を喪失するリスクを抑えている。

戦闘継続能力[編集]

CVN-76 ロナルド・レーガンの兵器格納庫内部

空母打撃群は、編成内に補給艦を有しており、ある程度の期間は独立しての作戦行動が可能である。また、現有の航空母艦はいずれも原子力推進であり、自艦用燃料を搭載する必要が無いことから、艦載機用の燃料・弾薬をより多く搭載できるようになっている。

なお、一般的な編成においては、CVSG所属の水上戦闘艦のMk 41 VLSセル数は302~308におよぶ。

機動力[編集]

移動可能であるという艦船の特性に基づく機動力。上記の要件を備えた戦闘システムが数十ノットで移動し、任意の場所に展開可能であるということは、CVSG (CVBG)の最大の特長である。

運用構想[編集]

有事には複数のCSGが同時に派遣され、海兵隊空軍陸軍との統合作戦においては、統合任務部隊(Combined Task Force, CTF)が組まれる。大きな戦争では連合軍や同盟軍の中核艦隊として混成多国籍任務部隊が組まれることもある。

アメリカ海軍は目標の1つとして、30日以内に6個CSG、90日以内にさらに2個CSGを投入できる6+2体制の確立を目指している。長年に渡り12個CSG を保有してきたが、現在は空母が減ったため11個CSGとなっている。しかし、原子炉技術の向上に伴い、燃料棒の交換等ドック入りしての長期整備の頻度が減少することが期待されるので、むしろ今後は実稼動出来る部隊数は増えることが予想される。近年では空母同様に護衛艦艇や原子力潜水艦の数が削減される傾向にある。通常は6ヶ月間 の訓練航海が多い。

陸上攻撃時の作戦行動[編集]

通常攻撃時

  • 第1段階: 敵国近海域・沿岸の制海権と制空権の確保
  • 第2段階: 内陸部への航空機・巡航ミサイルによる攻撃(シーストライクと呼ばれる)

特殊作戦時

大きな作戦時には戦闘補給部隊(CLF)、海上事前集積部隊(MPF)、遠征打撃群(ESG)との連携が重要となる。

  • CLF(Combat Logistics Force)大型艦隊補給艦部隊。
  • MPF(Maritime Prepositioning Ship)海兵遠征旅団
17,000人分の装備と30日分の作戦に必要な物資を積載する事前集積船隊。
海軍・海兵隊の両用作戦部隊を発展させたもので、強襲揚陸艦を中心にドック型揚陸艦・輸送揚陸艦、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、ミサイル・フリゲート、攻撃型原子力潜水艦などで構成される。空母打撃群の補完的な任務も可能。

空母打撃群への脅威[編集]

上記の要件を備え、対地・対空・対潜・対水上に十分の火力を備えたCVSG(CVBG)は、非常に手強い相手である。洋上においてこれらを攻撃することはきわめて難しい。特に、艦上戦闘機がジェット化し、艦上に空中早期警戒機が登場した1970年代以降、これは、アメリカを仮想敵とする国家にとって大きな問題となった。

ソ連における解答[編集]

この問題に対し、ソ連が最初に出した解答が、「爆撃機ASM(空対艦ミサイル)ECM (電子攻撃)」と「潜水艦+USM(水中発射対艦ミサイル)」の複合システムであった。航空システムとしては、射程400km、超音速を発揮できるKh-22 (AS-4 キッチン) 空対艦ミサイルと、その発射母機として、やはり超音速を発揮できるTu-22M(バックファイア)爆撃機、そして電子攻撃用に改造されたTu-16 (バジャー) 電子戦機が開発され、1970年代前半より配備されはじめた。また、海中システムとしては、P-50 (SS-N-9 サイレン) 対艦ミサイルが開発され、チャーリー型原子力潜水艦などに搭載された。1970年、1975年に行なったオケアン演習において、これらの複合システムは、その威力を遺憾なく発揮することとなった。とくに、オケアン70演習においては、90秒以内に100発もの対艦ミサイルを集中して着弾させる飽和攻撃が実演され、西側諸国を驚嘆させた。

しかしこの時期、アメリカは既に、ソ連の対艦ミサイル戦力の充実への対抗策を講じつつあった。実際、1957年の時点で、アメリカ海軍はJHU/APLに対し、ソ連の空対艦ミサイルに対する防空システムの策定を要求している。これによって策定されたタイフォン・システムは頓挫したものの、1974年には暫定策としてのターター-D・システムが実用化され、そして翌1975年には次世代防空システムであるイージス・システムが海上試験に入っている。また、空母艦上においても、1971年からは新型の空中早期警戒機であるE-2Cが、そして1973年からは長射程空対空ミサイルと高性能火器管制装置搭載のF-14戦闘機が配備されはじめており、CVBGの防空能力は飛躍的に向上しつつあった。

これに対抗して、ソ連が新たに出した解答が、「宇宙ISRシステム+洋上・海中プラットフォーム+長射程対艦ミサイル」であった。ソ連は、900 kmにも及ぶ射程を備えたP-700グラニト(SS-N-19 シップレック)を火力として、これの性能を十全に発揮するための宇宙偵察システムとしてレゲンダを配備[7]した。そのプラットフォームとしては、キーロフ級ミサイル巡洋艦オスカー型原子力潜水艦STOBAR空母「アドミラル・クズネツォフ」が配備された。

これは、アメリカ海軍にとって重大な脅威となった。特に、汎空間的に構築されたC4Iシステムは、当時はまだ艦隊レベルでのC4Iシステム(海軍戦術情報システムなど)しか保有していなかったアメリカ海軍にとって大きな衝撃であり、現在のGCCS-MやIBSに帰結することになるTADIXSOTCIXSCUDIXSと言った宇宙C4ISRシステムの開発・配備が急がれることとなった。

中国における解答[編集]

一方、1990年代より、アメリカ海軍CVBGに対する脅威として顕在化してきたのが中国人民解放軍海軍である。

台湾海峡での有事台湾有事)に備えたアメリカ海軍の干渉を排除したい中華人民共和国接近阻止・領域拒否能力を高めるべく海軍力の増強を進めている。潜水艦とその魚雷や、駆逐艦、フリゲート、それらから発射される対艦ミサイルはその表れである。ただし、2009年現在で中国海軍が配備している対艦ミサイルは、YJ-8シリーズSS-N-22など、比較的強力ではあっても、いずれも比較的短射程のものであり、20年以上前にソ連が配備していた上記のような複合システムには比肩すべくもないものである。

アメリカ合衆国議会調査局の報告では、中国は弾道ミサイルで空母を攻撃することを考えているとしている。最大30ノット以上で海上を動く空母に命中させるべく、短距離弾道ミサイルGPS中間誘導装置やレーダーによる終末誘導装置を備えさせようとしているとのことである。

脚注[編集]

  1. ^ Aviatorと異なり操縦資格を持たない。レーダー迎撃士官(Radar Intercept Officer,RIO)や兵装システム士官(Weapon Systems Officer、WSO)などはこのNFOに該当する。
  2. ^ 10 USC § 5942 - AVIATION COMMANDS: ELIGIBILITY 本条の(a)項に、この航空母艦艦長の就任資格についての規定がある。
  3. ^ 2013年2月19日現在、アメリカ海軍のホームページで公開されている情報によれば、現在空母打撃群の司令官を務めている9人の将官のうち、飛行士出身者が5名、NFO出身者が1名、水上艦乗組員出身者が3名となっている。
  4. ^ 近時では、スコット・ヴァンバスカーク中将(現・海軍人事局長、前・第7艦隊司令官)が潜水艦乗組員出身者として第9空母打撃群司令官を務めた例がある。
  5. ^ 簡易型ターター・システムを搭載したオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートがまだ艦隊に残っているが、これらは現在、順次に艦隊防空ミサイルの運用を中止し、対潜・対水上哨戒専任艦となっている。
  6. ^ アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦Flight IIAのみはこれを搭載しない。
  7. ^ 厳密には、レゲンダは当初は海洋偵察システムとして開発されたものが、途中よりP-700の側的任務を追加されたものである。

出典[編集]

  • 世界の傑作に別冊 世界の空母 坂本明
  • 軍事研究 2006年2月号 米海軍・海兵隊の改革4 シー・ベース新世代原子力空母CVN-21 軍事情報研究会
  • 軍事研究 2006年11月号 イージス艦と空母戦闘群 浜田一穂
  • 軍事研究 2007年6月号 検証:原子力艦艇の核燃料交換の実態
  • 軍事研究 2007年8月号 別冊『21世紀の原子力空母』
  • ミリタリー選書11 世界の空母 柿谷哲也
  • 大熊康之『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年

関連項目[編集]