氷山空母
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
氷山空母(ひょうざんくうぼ)とは、氷で巨大な氷山を作り、洋上基地あるいは自力走行が可能な巨大航空母艦として運用する構想のことである。奇想天外兵器の「発明」で知られるイギリスのジェフリー・N・パイクが第二次世界大戦中に考案した。氷山の上面や内部を加工し、その巨大な面積を利用し、陸上機も運用可能とする壮大な構想であり、一部モデル実験なども行われた。最終的に、コスト面を理由に計画は中止された。
目次 |
[編集] 概要
第二次世界大戦中のイギリスでは、Uボートなどによって通商破壊活動を行い大西洋航路を脅かすドイツに対し、輸送支援のための洋上航空基地を必要としていた。
氷山空母はその対策の1つとして構想された。ルイス・マウントバッテンとパイクによってチャーチル首相に提案された計画は全長約600m、全幅100m、排水量200万トンの氷山空母を作ろうとするもので、カナダから切出した28万個の氷塊から作ろうという計画であった。後には強度を増すためにパイクリートとよばれる水と木材パルプを混合した材料に変えられた。これは通常の氷より強度や融点が高い性質を持つ。鉄材で骨組みを作り、装甲にも氷を利用。動力を搭載して単独での航行も可能にする構想も練られた。損傷は海水を凍らせて回復させる事も考えられた。
厚い壁で保護された冷凍機室をつくって、溶けるのを防ぐ構想であった。外部のナセルに取り付けられた26台の電気モータで操船し、18km/hで航行する。40基の4.5インチ動力対空砲などで武装し、150機の双発爆撃機や戦闘機を搭載する予定であった。氷によって作られているので、計画では不沈空母となるはずであった。外観の詳細は不明であるが、一般的な船型となる予定であったようである。
この構想はハバクック計画(Project Habbakuk、資料によってはハボクックと表記される事もある)と命名され、イギリス、アメリカ、カナダの三カ国による共同開発が行われる事になった。計画名は旧約聖書のハバクク書(Habakku)の一節に因んだといわれている。
なお、まだ大西洋横断飛行が達成されていなかった、達成できるかどうかさえわからなかった頃に、大西洋上に人工島を築いて航空路の中継点にしようという構想(というより空想)がかなり流布しており、そこからもヒントを得たと思われる。
7000万ドルの予算と8000人の人員を8ヶ月間にわたって投入し、カナダのアルバータ州のルイス湖やパトリシア湖でパイクリート製の長さ18m、幅9mの試作船を作るなどの実験が行われたが、実用化には更に莫大なコストがかかると予想され、大西洋の戦況が有利に傾いたこともあって、結局1943年に計画は中止された。
その題材上の魅力から小説やゲームなどの創作世界において度々登場する。
[編集] 氷山空母が登場する作品
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。
- 『氷山空母を撃沈せよ!』(伊吹秀明)
- アメリカ海軍がエセックス級航空母艦の大半をキャンセルして建造した2隻の氷山空母が登場する。全長1,700m、排水量860万トンのCVB-35ハボクックと、史実のハバクックに近い大きさのユナイテッド・ステーツである。後者はソロモン諸島近海の戦闘で日本軍に鹵獲され、富嶽と改名されてハボクックと氷山空母同士の一騎打ちを演じる事になる。
- 『荒鷲の大戦』(中里融司)
- 『鋼鉄の咆哮』シリーズ(コーエーのゲーム)
- 『太平洋の嵐』(1987.12.08発売)
- シナリオ集「バンディッツ」(1989.05.11発売)のシナリオ「ハバクック」。
- 氷山空母「ハバクック」を深山改で迎撃するシナリオ。
- 排水量150万t、全長600m、全幅900m、搭載機数250(注:本ゲームでは16進数2桁までしか扱えない)の巨大空母。
- 『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(サンライズ制作のSFロボットアニメ)
- 『くじびき勇者さま10』(2009.06.01発売)(ライトノベル、清水文化著)

