遠征打撃群

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遠征打撃群(Expeditionary Strike Group, ESG)は、アメリカ海軍の戦闘部隊の1つ。通常、揚陸艦3隻と水上戦闘艦3隻、潜水艦1隻、および揚陸艦上の海兵隊遠征隊により編制される。

キアサージ遠征打撃群

概要[編集]

遠征打撃群(ESG)は、地上戦対応の海兵隊と、海空戦対応の海軍部隊を統合することで多任務対応能力を獲得するという、新しいアプローチによる任務群レベルの軍事システムである。

通常、遠征打撃群は少将(1つ星)によって指揮され[1]アメリカ海兵隊の要員を含めると総員は5,500人以上になる。1隻の強襲揚陸艦を中核に、ドック型揚陸艦および輸送揚陸艦、そして4隻の護衛艦(ミサイル巡洋艦を中核として水上戦闘艦3隻、潜水艦1隻)から構成されており、揚陸艦は海兵隊遠征隊 (MEU; 約2,200名)および十数機の攻撃機回転翼機V/STOL機)、護衛艦は合計で300発以上に及ぶ各種ミサイル(艦対空ミサイル対地/対艦巡航ミサイル対潜ミサイル弾道弾迎撃ミサイル)とLAMPSヘリコプターを搭載し、その火力の及ぶ限りの空間を制圧・支配できる。

また、強襲揚陸艦の艦上に設置された打撃群司令部指揮所(TFCC)には、ワシントンD.C.国家軍事指揮センター (NMCC)および直属の統合軍司令部 (UCC) との直通回線や、各種偵察・観測衛星からの通報回線が設置されると共に、指揮下の全部隊についての情報が集中的に総合されており、指揮統制・情報活動の要となる。

編成[編集]

ESGは、従来の両用即応グループ(ARG)に水上戦闘群(SAG)および潜水艦を加えた編制となっている。その標準的な編制は下記の通りである。

役割と所属数 艦級 C4I 主要武器システム 艦載機 艦載艇 海兵隊
強襲揚陸艦×1
(LHDまたはLHA)
タラワ級 GCCS + GCCS-M + ITAWDS SSDS Mk 2 (ACDS + Mk 57 NSSMS + Mk 31 RAM GMWS + Mk 15 CIWS), Mk 38 MGS 20機以上
(AV-8B, CH-53, CH-46, UH-1N, AH-1W/Zなど)
LCAC-1級×1 1,900名
ワスプ級 LCAC-1級×3
ドック型揚陸艦×1
(LSD)
ホイッドビー・アイランド級 GCCS-M ACDS + SSDS Mk 1 (Mk 31 RAM GMWS + Mk 15 CIWS), Mk 38 MGS LCAC-1級×4 500名
ハーパーズ・フェリー級 LCAC-1級×2
ドック型輸送揚陸艦×1
(LPD)
サン・アントニオ級 SSDS Mk 2 (ACDS + Mk 31 RAM GMWS + Mk 15 CIWS), Mk 38 MGS 2機 (CH-46) 700名
LPD-7級 ACDS + SSDS Mk 1 (Mk 15 CIWS), Mk 38 MGS LCAC-1級×1 900名
防空中枢艦×1
CG
タイコンデロガ級 GCCS-M + NTDS Mk 37 TWS, Mk 7 AWS, AN/SQQ-89, Mk 41 VLS (122セル), Mk 45 5インチ砲, Mk 32 SVTT LAMPS Mk III
(SH-60×2)
防空艦×1
DDG
アーレイ・バーク級 Mk 37 TWS, Mk 7 AWS, SQQ-89, Mk 41 VLS (90/96セル), Mk 34 GWS, Mk 32 SVTT
水上戦闘艦×1
(DDGまたはFFG
オリバー・ハザード・ペリー級 GCCS-M + NTDS (簡易型) SQQ-89, Mk 15 CIWS,
Mk 75 3インチ砲, Mk 32 SVTT
アーレイ・バーク級 GCCS-M + NTDS Mk 37 TWS, Mk 7 AWS, SQQ-89,
Mk 41 VLS (90/96セル), Mk 34 GWS, Mk 32 SVTT
攻撃型潜水艦×1
SSN
ロサンゼルス級 GCCS-M + BSY-1 + BQQ-5E Mk 36 TWS, 各種魚雷機雷
(Mk 48 ADCAP, Mk 60 CAPTORなど)
シーウルフ級 GCCS-M + BSY-2 + BQQ-5E
バージニア級

「Strike」という言葉が表しているように、従来のARGが揚陸艦と揚陸部隊からなる揚陸戦部隊だったのに対し、ミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、ミサイルフリゲート又は2隻目のミサイル駆逐艦、及びロサンゼルス級、シーウルフ級、バージニア級といった攻撃型原子力潜水艦という複数の水上・水中戦闘艦が組み込まれ、これらが提供する372発~384発という多数の搭載ミサイルによって対地攻撃能力と対空・対水上・対潜水艦迎撃能力が強化されている。これにより、ESGは、陸海空の全域にその戦力を発揮できるようになり、空母打撃群に並ぶ地歩を得るに至った。

任務と能力[編集]

ESGは従来、多様な揚陸艦によって臨機応変に編成されていたが、アメリカ海軍は21世紀初頭の現在、大型揚陸艦3隻とイージス艦3隻、原子力潜水艦1隻による編成への一本化を進めている。

ESGは、護衛艦搭載のトマホーク武器システム(TWS)および揚陸艦搭載の攻撃機による対地精密集中攻撃能力、海兵遠征隊(MEU)による広域戦闘空間支配能力、護衛艦搭載の戦闘システムおよび揚陸艦搭載攻撃機による縦深防御能力を達成した。その要件は、おおむね下記のようなものである。

  1. 対地火力投射
  2. 広域戦闘空間支配+縦深防御
  3. 情報収集、総合および処理
  4. 残存性
  5. 機動力
  6. 戦闘継続能力

対地火力投射[編集]

遠征打撃群の対地火力投射能力は、揚陸艦搭載の攻撃機(回転翼機、V/STOL機)による航空攻撃能力と、護衛艦(ミサイル巡洋艦, ミサイル駆逐艦, 原子力潜水艦)搭載のトマホーク武器システム (TWS) による対地巡航ミサイル攻撃能力、そして海兵遠征隊(MEU)の地対地射撃能力によって構成されている。

有人機による航空攻撃[編集]

強襲揚陸艦上のAV-8B攻撃機

攻撃機は、操縦士自らが即応判断能力を有していることから、情勢変化に即座に対応できる。また、特に攻撃ヘリコプターは、地上部隊に近接した敵部隊への攻撃も行うことができ、固定翼攻撃機やTWSよりもはるかにきめ細かな火力支援を提供することができる。

その一方、航空機本体だけでなく、これを運用するための莫大な航空設備が必要であり、また、多数の人員(操縦士)を前線に配置することから、敵の反撃による人的損害のリスクが高いという特性を有する。特に、ESGの攻撃機は、いずれもヘリコプターまたはV/STOL機であり、比較的低速であることから、通常の艦上攻撃機よりも脆弱である。従って、十分な防空能力を有する敵に対して投入されるべきではない。また、これらの機体の兵装搭載量は比較的少ないことから、航空攻撃の大きなメリットの1つである「瞬間的大火力発揮」は期待しえない。

巡航ミサイルによる航空攻撃[編集]

トマホーク武器システム(TWS)は、敵の反撃による損害のリスク無しに精密火力投射を行うことができる。また、ミサイル本体は小型ゆえに被探知性が低く、また、事前に飛翔経路を入力することにより、敵の対空砲火を回避することができる。従って、開戦初日における敵の重要施設に対する精密集中攻撃に適しており、ESGの航空戦力における「槍の穂先」としての役割を有する。その一方、敵が十分な対空火力システムを有していた場合には比較的容易に撃墜されてしまう上、即応性に劣り、また火力の大量投射には不向きである。遠征打撃群においては、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦およびアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦がMk 37 TWSを、またロサンゼルス級原子力潜水艦がMk 36 TWSを装備している。

打撃群全体での火力量は、その他の兵装の搭載量によって左右される。水上戦闘艦搭載のMk 41 VLSのセル数は、打撃群全体で302~306セルであるが、多くの場合、このうち100~150セル程度がトマホークに割かれている。その射程は、通常単弾頭(1000ポンド)のTLAM-Cで1,650 km、子弾運搬弾頭のTLAM-Dで1,250km、タクティカル・トマホークで3,000kmである。

艦砲による艦対地射撃[編集]

遠征打撃群の水上戦闘艦は、Mk 45 5インチ砲を装備しており、これにより、沿岸地域の敵に対して攻撃を行うことができる。

艦砲射撃は、上2者に対して、投射できる火力量は大きく劣り、また、射程が短いことから、敵の反撃による損害のリスクが大きくなる上、制圧可能範囲も小さくなるというデメリットがある。しかし一方で、所要のコストが前2者よりもはるかに廉く、また、持続的な火力発揮が可能であるというメリットもあることから、沿岸に敵対艦火力が存在せず、またTWSや艦載機を投入しない(あるいはできない)などの限定的な状況においては、依然として有力な選択肢である。

海兵隊による地対地射撃[編集]

第13 MEUの155mm榴弾砲、射撃シーン。

海兵遠征隊は、その編制に155mm榴弾砲および中/軽迫撃砲を有している。これらは通常、海兵遠征隊に対して直接支援射撃を提供するために使用される。ただし、これらの火砲は、ヘリコプターまたは上陸用舟艇により輸送する必要上、いずれも牽引式であり、通常の陸軍部隊で広く使用されている自走砲よりも陣地転換速度に劣り、敵の対砲兵射撃に対して脆弱である。また、迫撃砲については、対砲兵レーダーにより弾道を探知される危険性から、その脆弱性はより大きい。

また、海兵遠征隊は、これらの間接照準火力のほかに、対戦車ミサイル自動擲弾銃汎用/軽機関銃擲弾筒小銃などの直接照準火力、そして海兵隊員による近接戦闘能力を有している。これらの火力は、上述の各システムに比べて小さく、また、多数の人員を敵に近接して配備することから人的損害のリスクが大きくなるが、市街戦や治安維持任務などの大火力発揮が困難な環境においては、ESGが有する最も有力な能力となる。

舟艇より上陸する第13 MEUの海兵隊員。

これらの海兵隊遠征隊は、揚陸艦搭載の輸送ヘリコプター、あるいは上陸用舟艇によって地上に展開する。現在の揚陸艦は、いずれも1隻または2隻のLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇を搭載しているが、これらは、戦車1両などの重装備を揚陸することができる。また、長らく輸送ヘリコプターの主力として君臨してきたCH-46 シーナイト は退役しつつあり、これよりも飛行性能に優れたティルトローター機であるV-22 オスプレイの就役が開始されている。なお、重輸送ヘリコプターとしては、CH-53 シースタリオンが引き続き使用される。

広域戦闘空間支配+縦深防御[編集]

遠征打撃群は、強襲揚陸艦の艦載機、および護衛のミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、ミサイル・フリゲート、攻撃型潜水艦を展開することにより、その火力の及ぶ限りの海空空間を支配し、また、自らに向かってくる脅威から身を守ることができる。

航空戦闘[編集]

艦対空ミサイルを連続発射するアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦

遠征打撃群が搭載する航空戦力は、通常、対地火力投射に重点を置いている。しかし、それらの攻撃機のうち、V/STOL機であるAV-8B ハリアーII攻撃機については、最低限の対空戦闘能力を備えている。これらの能力は、基本的には自機防御に限定されたものであるが、フォークランド紛争において見られたように、敵の航空攻撃能力が限定された状況においては、十分な対空戦闘能力として期待しうるものである。AV-8は亜音速(降下時のみ超音速)の機体であるが、敏捷性に優れており、また、AV-8B+と呼ばれる機体は、中距離空対空ミサイルの運用が可能である。ESGが搭載するAV-8は、通常の編制においては6機程度であるが、必要に応じて20機近くにまで増強することができる。

なお、将来的には、AV-8は、新型のF-35B ライトニングIIによって代替される予定である。これは、超音速性とステルス性を備えており、これにより、ESGの航空戦闘能力は飛躍的に増強されることとなる。ただし、F-35の開発計画はやや難航している。

一方、遠征打撃群のうち、護衛のミサイル艦は艦隊防空ミサイル・システムを備えているほか、それ以外の艦も、短距離射程の個艦防空ミサイルや近接防空火器(CIWS)などにより、最低限以上の防空能力を備えている。

ESGに配備されるミサイル艦は、いずれもイージス艦である。[2]現在の遠征打撃群の一般的な編制では、防空中枢艦としてのタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦が1隻と、これに指揮されるアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦が少なくとも1隻含まれている。また、揚陸艦も、改良型個艦防空ミサイル・システム(IPDMS)Mk 31 RAMシステム、Mk 15 CIWSといった自衛防空火力を装備している。これらは、現在、SSDS Mk 2によって統合された戦闘システムとして再構築されつつある。

これらの各機・艦が受信した情報は、戦術データ・リンクを介して、各艦CIC装備のGCCS-M (旧JOTS)、そしてそれぞれの戦術情報処理装置 (ACDS, Aegis C&D)に入力される。これにより、打撃群全体が一体となった戦闘が可能となっているほか、将来的には共同交戦能力も導入される。

対潜・対水上戦闘[編集]

ロサンゼルス級原子力潜水艦

多くの場合、揚陸艦の搭載機には対潜哨戒機が含まれず、対潜戦を展開するのは、護衛艦およびその搭載機、そして潜水艦となる。ただし、強襲揚陸艦は、必要に応じてLAMPSを搭載するほか、強襲揚陸艦艦上のTFCC (群司令部指揮所) は、対潜戦闘においても指揮統制を担当する。

現在、遠征打撃群に加わっている全ての護衛艦が統合対潜システム(水上艦はAN/SQQ-89、潜水艦はAN/BQQ-5)を備え、また、DDG-51級の後期建造艦(Flight IIA)を除く全ての艦が曳航ソナー(TACTASS, STASS)を備えることにより、遠距離で潜水艦脅威を邀撃することができる。このうち、水上艦装備のSQQ-89はLAMPS Mk IIIと連携しているほか、これらの統合対潜システムは、対空戦システムと同様にJOTS (GCCS-M)に連接されており、より円滑に打撃群全体で対潜作戦を展開できるようになっている。

艦上戦闘訓練中の海兵隊員

一方、ESGが有する対水上火力としては、AV-8B攻撃機、水上戦闘艦、潜水艦から運用されるハープーン対艦ミサイルがある[3]。これは最大で200km程度と比較的短射程であるので、水上艦装備のものについては、基本的には自衛火力として使用される。一方、潜水艦と攻撃機装備のものについては、プラットフォームそのものが秘匿性と機動性を有することから、十分に攻撃的火力としての運用が可能である。また、攻撃機は誘導/非誘導の爆弾や対地ミサイル、潜水艦は誘導/非誘導魚雷をも装備しており、対空・対潜戦闘力に欠ける敵に対しては、これらも十分に対水上火力として期待しうるものである。

また、海上治安活動時においては、ESGは、各護衛艦のLAMPSヘリコプターおよび各艦の立ち入り検査隊(VBSSチーム)に加え、揚陸艦に乗艦する海兵隊員および輸送ヘリコプターを使用することができる。これにより、ESGは、より効率的に海上治安活動を実施することができる。

対地戦闘[編集]

アフガニスタンで作戦中の第22 MEU所属 海兵隊員

地上戦闘において、戦闘空間を占領・支配できるという特性は、ESGの特長の第一のものである。任務群規模でこの特性を保持した軍事システムは他に存在せず、これが、ESGがCVSGに並ぶ地歩を確保するにいたった最大の理由である。

ESGは、揚陸艦に乗艦した海兵遠征隊(MEU)を有しており、これを任意の場所に輸送・揚陸させることができる。MEUは、1個歩兵大隊を基幹とした歩・砲・工・飛の諸兵科混成部隊であり、編制のなかに後方支援部隊(戦闘補給支援グループ; MSSG)を有することから、ある程度の期間は独立して戦闘を展開することができる。また、MEUは、独自の飛行隊および砲兵部隊、またESG護衛艦の艦砲およびTWSによる火力支援を受けることができる。

なお、MEUは独自の特殊部隊を有し、またMEU自体にも特殊作戦能力があることから、MOOTW任務への対応も可能となっている。

情報収集、総合および処理[編集]

遠征打撃群においては、ESG構成各艦装備のセンサーによる卓越した情報収集能力のほか、強襲揚陸艦が備える旗艦機能およびSIGINTシステム、衛星通信および戦術データ・リンク・システムによって、打撃群外部からの情報もが、強襲揚陸艦艦上のTFCCに総合され、処理される。

ジェリー・O・タトルが創案したコペルニクスC4Iコンセプトは、全ての情報を洋上部隊指揮官に集中し、その意思決定を助けることを主眼としていた。これを最大規模で体現したのが、空母打撃群のTFCCであるが、遠征打撃群TFCCは、空母搭載機による情報が欠けている以外は、ほぼこれに準じた能力を有している。TFCCにおいては、作戦階梯(NMCCおよびUCC司令部間)で使用されるGCCSと、戦術階梯(艦隊内)で使用されるGCCS-M (旧JOTS) の両方が設置されており、ここに全階梯の作戦情報が集中することになる。また、TFCCには、イージスシステムに匹敵する戦術情報処理・表示システムであるACDS (Advanced Combat Direction System)も設置されており、これにより、指揮下の全部隊と戦術情報を共有し、適切な指揮を行うことが出来る。

残存性[編集]

多数艦の分散配備および個艦防御システムによる残存性。通常、ESGの各艦は数海里の距離を取って行動し、一度の核攻撃による全滅を避けている。また、構成各艦は、それぞれ直接の脅威に対処できる最低限以上の能力を備えており、容易に戦闘能力を喪失するリスクを抑えている。

戦闘継続能力[編集]

揚陸艦は、通常、乗艦している海兵遠征隊が数日間の戦闘を継続できるだけの補給物資を搭載している。ただし、空母打撃群と異なり、編成内に補給艦を有していないことから、ESG単独での戦闘継続能力は、CVSGに比べるとやや劣っている[4]。なお、一般的な編成においては、ESG所属の水上戦闘艦のMk 41 VLSセル数は302~308に及ぶ。

機動力[編集]

移動可能であるという艦船の特性に基づく機動力。上記の要件を備えた、陸海空の統合戦闘システムが数十ノットで移動し、任意の場所に展開可能であるということは、ESGの最大の特長である。

この特性により、ESGは、予期しない場所で発生した事態に対して、アメリカ合衆国が速やかに介入することを可能とした。陸海空の全ての兵種を有した任務部隊規模の介入部隊を即時に投入できるという特長は、政治指導者に対して、より多彩な選択肢を提供している。

アメリカ海軍と海兵隊ではESGを有事に際して即応出来る体制にしており、30~60日以内に6個ESGをMEUを搭載した状態で戦域に到着できるとされていて、別に90日以内に2個ESGを追加派遣が可能とされている。こういった事から、即応性が高く攻守にバランスが取れたESGは、空母打撃群(CSG)より使い勝手が良い部隊編成であるとされる[5]

脚注[編集]

  1. ^ 遠征打撃群の司令官は、中核を担うのが海軍部隊であるため、多くの場合海軍少将(1つ星)(Rear Admiral (lower half)、RDML)が就任することが多いが、海兵隊准将(Brigadier General)も司令官に就任することがある。2003年に新設された第3遠征打撃群(ESG-3、ベロー・ウッド遠征打撃群)の司令官に就任したジョゼフ・V・メディナ准将は、海兵隊の将官として初めて遠征打撃群の司令官に就任したことで知られる。なお、現在の遠征打撃群の司令官は全員が海軍少将である。
  2. ^ 簡易型ターター・システムを搭載したオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートがまだ艦隊に残っているが、これらは現在、順次に艦隊防空ミサイルの運用を中止し、対潜・対水上哨戒専任艦となっている。
  3. ^ アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦Flight IIAのみはこれを搭載しない。また、アメリカ海軍は、1997年より潜水艦へのサブ・ハープーンの搭載を中止しており、2009年6月現在航海中のアメリカ軍潜水艦は、いずれも、対艦ミサイルを搭載していないことになる。
  4. ^ 必要に応じて、ESGには補給艦が編入され、戦闘継続能力を強化できる。
  5. ^ 河津幸英(2007年)による。

出典[編集]

  • 河津幸英著 「21世紀のアメリカ海軍」 アリアドネ企画 2007年9月15日第一刷発行 ISBN 978-4-384-03176-8
  • 大熊康之『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年

関連項目[編集]