景気循環
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景気循環(けいきじゅんかん)とは、経済全体の活動水準である景気において、循環的に見られる変動のことである。
景気循環局面の分割については、一循環を拡張局面と後退局面の2局面に分ける考え方と、回復、好況、後退、不況の4局面に分割する考え方がある。2局面分割の場合には、景気拡大の最高点が山で後退局面の最悪時点が谷であり、谷から谷までが1循環とされる。4局面分割では正常な水準から出発して、好況、後退、不況、回復の各局面を経て、再び正常な水準に戻るまでを1循環とすることが多い。
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[編集] 景気循環の種類
[編集] キチンの波
約40ヶ月の比較的短い周期の循環。短期波動とも呼ばれる。アメリカの経済学者ジョセフ・A・キチンが1923年の論文でその存在を主張したため、「キチンの波」と呼ばれる。主に企業の在庫変動に起因すると見られる。
在庫循環は長く景気循環の基礎であったが、1990年代アメリカの長期好況の中でこの循環は次第に不明瞭になっていった。一時は、景気循環が消滅したとまで言われたが、実際には設備投資の循環などを軸に景気循環は全く衰えていなかった。しかし、21世紀に入って在庫循環が次第に不明瞭になっていることは明らかになっている。グローバル化やIT革命(サプライチェーン・マネジメントの進展→在庫調整の短期化)が要因として挙げられている。
右図は1999年第一四半期から2005年第三四半期までの、日本における在庫循環である。横軸が鉱工業生産指数の前年比変動率、縦軸が在庫指数の前年比変動率である。青線が循環の一周期である。赤線は次の周期の途中である。青線は1999年第一四半期から、2002年第二四半期まで14四半期(3年半:42ヶ月)である。
図の説明と循環(青線)の展開について述べる。
図の説明
在庫循環の図は右が生産の増加過程、左が生産の減少過程である。そして、上が在庫の増加過程、下が在庫の減少過程である。これにより生産と在庫の組み合わせが四つできる。
- 生産増在庫増
- 生産が増加し出荷を上回るために在庫が増加する状態で景気拡張の末期である。
- 生産減在庫増
- 生産過剰が調整され生産減少が始まるが、依然出荷を上回るため在庫は増加する。景気後退の初期である。
- 生産減在庫減
- 生産が減少し出荷を下回るため、在庫が減少する。景気後退の末期である。
- 生産増在庫減
- 出荷が回復し在庫水準がさらに低下したために生産が回復するが、出荷を下回るために在庫が減少する。景気拡張の初期である。
このように、生産が出荷に遅行する傾向があるため、在庫循環は左回りになる。
循環(青線)の展開
- 1999.1Q-1999.2Q 生産減在庫減
1999年始めは、1998年における世界的な経済変調と日本の危機的な経済状況を抜け出し、景気後退の最終段階にあった。 - 1999.3Q-2000.3Q 生産増在庫減
1999年後半から2000年の間は世界的なITブームの絶頂期にあり日本の生産は回復基調に乗った。 - 2000.4Q-2001.1Q 生産増在庫増
2000年秋にはITブームが失速し、在庫が積みあがった。 - 2001.2Q-2001.3Q 生産減在庫増
在庫調整で生産は減少に転換した。 - 2001.4Q-2002.2Q 生産減在庫減
生産はさらに減少し、出荷の低下を上回ったため在庫は減少に転じた。日本の景気は最も厳しい時期にさしかかった。 - 2002.3Q~(赤線) 生産増
生産は緩やかな回復を続ける。
[編集] ジュグラーの波
約10年の周期の循環。中期波動とも呼ばれる。フランスの経済学者J・クレメンス・ジュグラーが1860年の著書の中でその存在を主張したため、「ジュグラーの波」と呼ばれる。企業の設備投資に起因すると見られる。
[編集] クズネッツの波
約20年の周期の循環。アメリカの経済学者サイモン・クズネッツが1930年にその存在を主張したことから、「クズネッツの波」と呼ばれる。約20年という周期は、住宅や商工業施設の建て替えまでの期間に相当することから、建設需要に起因するサイクルと考えられている。子が親になるまでの期間に近いことから人口の変化に起因するとする説もある。
[編集] コンドラチェフの波
約50年の周期の循環。長期波動とも呼ばれる。ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張されたことから、「コンドラチェフの波」と呼ばれる。この名前を付けたのはシュンペーターで、その要因として技術革新を挙げた。第1波の1780~1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波の1840~1890年代は鉄道建設、1890年代以降の第3波は電気、化学、自動車の発達によると考えた。この循環の要因として、戦争の存在を挙げる説もある。
[編集] 景気循環論
景気循環論は、内生的景気循環論と外生的景気循環論とに区別することができる。
前者は、市場経済は均衡状態から乖離する傾向をもつとし、景気の循環を説明する際、労働や設備の不足、景気の過熱を懸念した投資意欲の減退などの景気を反転させる要因を仮定する。
後者は、定常的であるはずの市場経済に景気循環が生じるのは、予想外の技術革新、天候の変化、石油危機などの外性的な要因に基づくとする。
[編集] 景気循環の影響
[編集] 賃金
一般にインフレや景気と賃金がスライドする労働者(会社員など)に比べ、賃金硬直性の強い労働者(公務員など)は、好景気時は相対的に貧しくなる。一方、景気の悪い時期においては、公務員などは会社員などと比べると賃金が下がりづらい為、相対的に豊かになる。
[編集] 雇用
一般的に、景気が良くなっているときは企業は人を増やそうとして企業などに雇われる雇用者は増加する。一方、景気が悪くなっているときは企業はコスト削減のために人件費を減らそうとして雇用を抑制、または雇用者を解雇する。なお、雇用関係の指標は景気に対して遅行する場合が多い。詳しくは失業を参照。
[編集] 金融機関
不況になると、企業の資金需要は減退し、貸出金の増加テンポが鈍くなり、やがて減少に転じる。不景気が長期化すると不良債権が増えて貸倒引当金を積み増すため、利益が圧迫される。好景気になると、企業は、金融機関から資金を借りてでも資金調達し、生産設備等の設備投資にあるいは運転資金に充てようとするため、資金需要が旺盛となり、金融機関の貸出金残高も増加する。やがて業績不振の企業が立ち直ると共に不良債権が減り引当金が必要なくなり、これを取り崩すため、利益が増大する。
同様に、個人についても好況が続くと、将来的にも雇用不安が少なくなり、賃金が確保できる予想が成り立ち、地価や住宅価格の上昇が予想されることから、今のうちに住宅ローンを借りてでも、住宅を手に入れようとする人が増えるので、住宅ローンの取り扱いがふえて、金融機関のローン残高も増える。特に、景気の上昇が鮮明になり、ローン金利の上昇が見込まれるときには駆け込み的に申し込みが増える。個人についても、住宅ローン金利の変動については敏感になっている。
金利についても、景気循環とともに変動するがこれについては、当該項目を参照のこと。
[編集] 政府・自治体
好景気になると税収が増え財政収支が改善する。不景気になると、失業手当や公共投資が必要になる一方で税収が減少し財政収支が悪化する。
[編集] 景気の表現の仕方
景気には、四局面の内で、谷や山が著しくなる場合などがあり、いろいろな表現のされ方をする。
[編集] ユーフォリア
陶酔的熱狂という意味で、設備投資や資産投機が盛り上がる理想的な状態。物価上昇率と失業率が共に低下する。資産高騰の反動が起きるリスクもあるが、状況の最中においては「理想的」に見える。1980年代前半の世界経済は、オイルショック後の原油価格低下の中でインフレなき高成長を達成した。
[編集] 恐慌
設備投資後退に端を発する深刻な不景気。資産価格の低下などを招き、金融危機を併発するとより事態は深刻化する。物価が低落し、失業率も10%を超えるなどして不況感が蔓延する。デフレスパイラルが発生する場合もある。19世紀においては定期的に起きていた。
記録に残る中で史上最も深刻だった恐慌は世界恐慌である。その後、第二次世界大戦後は管理された経済政策が普及し、発生の頻度は低下した。しかし、1990年代以後、ユーロダラーの動きに合わせて新興諸国で金融危機と恐慌のような状況が併発している。
[編集] ソフトパッチ
2004年後半の世界経済における一時的調整で使われた言葉。景気後退までに至らず停滞状態で調整が完了する。緩やかな成長鈍化の状態。
[編集] スタグフレーション
物価上昇と、景気後退が併存する状態。詳細はスタグフレーションにて。
[編集] ジョブレスリカバリー
景気が回復し始めてもなかなか雇用が回復しない状況。1990年代初めのアメリカ経済の状況がこう呼ばれた。
[編集] ジョブロスリカバリー
景気が回復し始めてもなかなか雇用が回復しないどころか、雇用が減少する状況。2000年代初めのアメリカ経済の状況がこう呼ばれた。
[編集] ソフトランディング
好景気の最終段階において、調整局面へ入る際の減速や下降が緩やかなこと。
[編集] ハードランディング
好景気の最終段階において、調整局面へ入る際の減速や下降が激しいこと。
[編集] 日本の景気の波
- 1945年(昭和20年)~1949年(昭和24年):戦後インフレ
- 1949年(昭和24年)~1950年(昭和25年):安定不況
- 1950年(昭和25年)~1953年(昭和28年):朝鮮特需
- 1953年(昭和28年)~1954年(昭和29年):朝鮮戦争後の不況
- 1955年(昭和30年)~1957年(昭和32年):神武景気
- 1957年(昭和32年)~1958年(昭和33年):なべ底不況
- 1958年(昭和33年)~1961年(昭和36年):岩戸景気
- 1963年(昭和38年)~1964年(昭和39年):オリンピック景気
- 1964年(昭和39年)~1965年(昭和40年):証券不況
- 1966年(昭和41年)~1970年(昭和45年):いざなぎ景気
- 1973年(昭和48年)~1979年(昭和54年):第一次、第二次オイルショック
- 1983年(昭和58年)~1985年(昭和60年):円高不況
- 1986年(昭和61年)~1991年(平成3年):バブル景気
- 1992年(平成4年)~2001年(平成13年):複合不況
- 2002年(平成14年)~2007年(平成19年):いざなみ景気(仮称)
- 2008年(平成20年)~:世界金融不況(仮称)
[編集] 内閣府による景気基準日付と拡大期・後退期の俗称
日本の場合、景気の判断および景気循環(景気基準日付)の判定は、内閣府が発表している景気動向指数(DI)を用いて景気の局面を判断するのが一般的である。景気動向指数には、先行(景気に先行して動く指標)、一致(景気に一致して動く指標)、遅行(景気より遅れて動く指標)の3系列が存在する。
内閣府が発表している日本の景気循環は2局面分割であり、山、谷の時期(景気基準日付)は山や谷を過ぎてからかなりの時間が経過しないと確定しない。このため現時点で景気が拡大局面にあるのか後退局面にあるのかという政府の公式判断は、内閣府が月例経済報告等に関する関係閣僚会議に報告している、月例経済報告による。
| 循環期 | 谷 | 山 | 谷 | 拡大期 | 後退期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1循環 | 1951年6月 | 1951年10月 | 特需景気 | ||
| 第2循環 | 1951年10月 | 1954年1月 | 1954年11月 | 投資景気 | |
| 第3循環 | 1954年11月 | 1957年6月 | 1958年6月 | 神武景気 | なべ底不況 |
| 第4循環 | 1958年6月 | 1961年12月 | 1962年10月 | 岩戸景気 | |
| 第5循環 | 1962年10月 | 1964年10月 | 1965年10月 | オリンピック景気 | 証券不況 |
| 第6循環 | 1965年10月 | 1970年7月 | 1971年12月 | いざなぎ景気 | ニクソン不況 |
| 第7循環 | 1971年12月 | 1973年11月 | 1975年3月 | 列島改造ブーム | 第一次石油危機 |
| 第8循環 | 1975年3月 | 1977年1月 | 1977年10月 | ミニリセッション(円高不況) | |
| 第9循環 | 1977年10月 | 1980年2月 | 1983年2月 | 世界同時不況(第二次石油危機) | |
| 第10循環 | 1983年2月 | 1985年6月 | 1986年11月 | ハイテク景気 | 円高不況 |
| 第11循環 | 1986年11月 | 1991年2月 | 1993年10月 | バブル景気 | 第一次平成不況(複合不況) |
| 第12循環 | 1993年10月 | 1997年5月 | 1999年1月 | カンフル景気 | 第二次平成不況(日本列島総不況) |
| 第13循環 | 1999年1月 | 2000年11月 | 2002年2月 | IT景気 | 第三次平成不況(デフレ不況) |
| 第14循環 | 2002年2月 | 2007年10月 | いざなみ景気 (正式名称未定) |
拡大期・後退期の俗称は代表的なもので他にもある。
[編集] 外部リンク
- 内閣府経済社会総合研究所・統計情報 景気動向指数・景気基準日付

