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「くるみ割り人形」の版間の差分

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| 名称 = くるみ割り人形
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| 説明 = 『くるみ割り人形』第1幕より
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{{External media
『'''くるみ割り人形'''』(くるみわりにんぎょう、[[ロシア語|露]](原題): ''{{lang|ru|Щелкунчик}}'', {{lang-fr-short|''Casse Noisette''}}, {{lang-en-short|''The Nutcracker''}})は、[[E.T.A.ホフマン]]の1816年の童話『[[くるみ割り人形とねずみの王様]]』を原作にした、[[ピョートル・チャイコフスキー]]の作曲した[[バレエ音楽]]([[作品番号]]71)、およびそれを使用した2幕3場の[[バレエ]]作品である。
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| topic = '''バレエ『くるみ割り人形』全幕'''
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=xtLoaMfinbU バレエ『くるみ割り人形』(全幕)]<br />([[マリインスキー・バレエ]]出演、{{仮リンク|ワシリー・ワイノーネン|label=V・ワイノーネン|en|Vasili Vainonen}}改訂振付、[[ヴァレリー・ゲルギエフ|V・ゲルギエフ]]指揮、[[マリインスキー劇場管弦楽団]]演奏)<br />
EuroArts公式YouTubeより
}}


『'''くるみ割り人形'''』(くるみわりにんぎょう、{{lang-ru-short|''Щелкунчик''}}, {{lang-fr-short|''Casse-Noisette''}}, {{lang-en-short|''The Nutcracker''}})は、[[ピョートル・チャイコフスキー]]が作曲した[[バレエ音楽]]([[作品番号|作品]]71)、およびそれを用いた[[バレエ]]作品である{{Sfn|音楽之友社|1993|p=100}}。チャイコフスキーが手掛けた最後のバレエ音楽であり、1892年に[[サンクトペテルブルク]]の[[マリインスキー劇場]]で初演された{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}。
チャイコフスキーの三大バレエの一つであり、初演から100年以上を経て数多くの改訂版が作られている。ちなみに[[くるみ割り#くるみ割り人形|くるみ割り人形]]とは、元々[[くるみ割り#くるみ割り人形|人形の形をしたくるみを割る道具]]のことである<ref>[http://www.cal-ny.com/ 小さなミュージアム]</ref>。


本作は、[[クリスマス・イヴ]]に[[くるみ割り#くるみ割り人形|くるみ割り人形]]を贈られた少女が、人形と共に夢の世界を旅するという物語である。原作は、[[ドイツ]]の[[E.T.A.ホフマン]]による[[童話]]『[[くるみ割り人形とねずみの王様]]』を、[[アレクサンドル・デュマ・ペール]]が[[フランス語]]に翻案した『[[ヘーゼルナッツ|はしばみ]]割り物語』である{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}{{Sfn|平林正司|1998|p=3}}。
== 概要 ==
[[File:Olga Preobrajnskaya Legat -Nutcracker 1.JPG|thumb|right|280px|ロシア帝室バレエの[[オリガ・プレオブラジェンスカヤ|O・プレオブラジェンスカヤ]](ドラジェの精)と[[パーヴェル・ゲルト]](王子)。1900年頃。]]
チャイコフスキー作曲・[[マリウス・プティパ|プティパ]]振付で成功を収めた 『[[眠れる森の美女 (チャイコフスキー)|眠れる森の美女]]』([[1890年]])の次作として、[[マリンスキー劇場|マリインスキー劇場]]の支配人であったイワン・フセヴォロシスキーは[[ドイツ]]の[[E.T.A.ホフマン]]の童話 『[[くるみ割り人形とねずみの王様]]』 を原作とするバレエを構想し、再度チャイコフスキーに作曲を依頼した。


[[クリスマス]]にちなんだ作品であることから、毎年クリスマス・シーズンには世界中で盛んに上演される{{Sfn|平林正司|1998|p=9}}。[[バレエ#クラシック・バレエ|クラシック・バレエ]]を代表する作品の一つであり、同じくチャイコフスキーが作曲した『[[白鳥の湖]]』『[[眠れる森の美女 (チャイコフスキー)|眠れる森の美女]]』と共に「3大バレエ」とも呼ばれている{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1999|p=34}}。
直接に参照したのはホフマンの原作ではなく[[アレクサンドル・デュマ・ペール|デュマ]]によるフランス語版の小説<ref>Beaumont, Cyril W., ''Complete Book of Ballets,'' 1949, Putnam, p.633. [[:File:Dumas - Histoire d’un casse-noisette, 1844.djvu|"Histoire d’un casse-noisette" (1844).]] がこれに当たる。</ref>とされており、これらの筋立てをバレエでは大幅に簡略化している。[[マリウス・プティパ]]が台本を手掛け、振付も担当する予定であった。しかしプティパはリハーサル直前に病に倒れてしまい、振付は後輩の[[レフ・イワーノフ]]に委ねられることになった。プティパとフセヴォロシスキーの要求の板挟みになったイワーノフは苦心惨憺して完成させ、初演は[[1892年]][[12月18日]](<small>[[ユリウス暦]]では6日</small>)、[[サンクトペテルブルク]]の[[マリインスキー劇場]]にて行われた。


==上演史==
観客の反応はまずまずであったものの、主題が弱いと考えられたことなどから大成功とまでは言えず、ポピュラーな作品となるまでにはやや時間を要したという<ref>''ibid.,'' p.634</ref>。
===創作の経緯===
[[File:Vzevolozhsky's costume sketch for Nutcracker.jpg|thumb|150px|{{仮リンク|イワン・フセヴォロシスキー|label=I・フセヴォロジスキー|en|Ivan Vsevolozhsky}}による初演の衣装デザイン]]
1890年1月、[[サンクトペテルブルク]]の[[マリインスキー劇場]]で、チャイコフスキー作曲によるバレエ『[[眠れる森の美女 (チャイコフスキー)|眠れる森の美女]]』が上演され、成功を収めた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}。これに満足した劇場支配人の{{仮リンク|イワン・フセヴォロシスキー|en|Ivan Vsevolozhsky}}は、同年2月頃に早速チャイコフスキーに次回作を依頼し、[[オペラ]]とバレエを2本立てで上演したいと提案した{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}{{Sfn|森田稔|1999|pp=213-215}}。この上演形式は当時の[[パリ国立オペラ|パリ・オペラ座]]に倣ったもので、オペラを公演の中心とし、その後に余興のような位置づけでバレエを上演するというものであった{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}{{Sfn|森田稔|1999|pp=219-220}}。1890年の末に最終的な話し合いが行われ、オペラの演目は、チャイコフスキー自身の提案により『[[イオランタ]]』に決まった{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}{{Sfn|小松佑子|2017|p=364}}。バレエの題材はフセヴォロシスキーが選び、[[E.T.A.ホフマン]]の童話 『[[くるみ割り人形とねずみの王様]]』 を[[アレクサンドル・デュマ・ペール]]が翻案した『[[ヘーゼルナッツ|はしばみ]]割り物語』を原作とすることになった{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}。バレエの台本は、マリインスキー劇場のバレエマスターである[[マリウス・プティパ]]が手掛けた<ref name="台本" group="注釈" />{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}。


チャイコフスキーはこのバレエの題材をあまり気に入っていなかったが、[[振付師|振付家]]のプティパから最初の指示書きを受け取り、1891年2月には作曲に着手した{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=53}}{{Sfn|森田稔|1999|pp=215-217}}。チャイコフスキーは外国での演奏旅行の合間に作曲を進めたが、1891年4月にはフセヴォロジスキー宛ての手紙で、作曲が難航しており、締切を延期してほしい旨を訴えている{{Sfn|森田稔|1999|p=217}}。それでも同年6月頃には下書きを完成させ、翌1892年3月頃に[[管弦楽]]配置を仕上げた{{Sfn|森田稔|1999|pp=218,222}}。
初演が大成功と呼べるものでなかったことから、定番となる演出・振付がなく、21世紀に入った現在も新演出・新振付が作成されている。主な演出・振付については[[:en:List of productions of The Nutcracker]]参照。


本作の振付は、当初プティパが担当する予定だったが、1892年の夏に稽古が始まった頃から病に倒れてしまい、部下である副バレエ・マスターの[[レフ・イワノフ]]が代行することとなった{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}。プティパがイワノフに引き継ぐ前にどこまで振付を完成させていたのかは明らかになっていないが、初演時のポスターには、台本はプティパ、振付はイワノフと記載されている{{Sfn|森田稔|1999|pp=229-230}}。
現在では大きく分けると、1幕の主役であるクララと2幕の主役である金平糖の精を同じダンサーが踊る演出と、クララは子供が演じ金平糖の精は大人が踊る演出の2パターンある。後者では1幕にそのバレエ団のトップダンサーである[[プリンシパル]]は登場せず、プリンシパルが踊るのは2幕の後半の[[パ・ド・ドゥ]]のみと登場時間の短い演出になる。


===初演===
細かく見ると、次のバリエーションがある<ref>チャイコフスキーの前作『[[白鳥の湖]]』『[[眠れる森の美女 (チャイコフスキー)|眠れる森の美女]]』が成功して、このバレエ版を作曲したが、初演は不評に終わる。台本が悪すぎたのが原因の一つだった。ホフマンのお伽話を元にアレクサンドル・デュマ・ペールが描いた童話がロシアで広く知られていて、これを脚色してバレエの台本が書かれたが、前半は物語はおもしろいが踊りが地味、後半は踊りは美しいが物語が展開しない、しかも結末があいまいで、上演されなくなった。チャイコフスキーはバレエの初演より先に演奏会用の組曲版を作っていてオーケストラの演奏会用の新作を依頼されたが忙しくて、下書きがほぼ終わっていたバレエ用の曲から8曲を選び、先に完成させた。チャイコフスキー自らが指揮をした組曲版が大成功し、8曲中7曲がアンコール演奏された。組曲版の成功からバレエ版もロシアで復活して、世界に広まった。しかし、一度バレエ版が途絶えていたことから原典版=決定版がなくなり、解釈が自由になったためである([[日本放送協会|NHK]][[NHK教育テレビジョン|Eテレ]][[ららら♪クラシック]]「バレエを救った音楽の力 チャイコフスキーの“花のワルツ”」[[2015年]]12月19日放送)。</ref>。
[[File:Nutcracker -Scene from Act I -Sergei Legat as Nutcracker, Stanislava Stanislavovna Belinskaya as Clara, & Unidentified as a Gingerbread Soldier -1892.jpg|thumb|right|220px|初演版第1幕。左から、くるみ割り人形、フリッツ、クララ。]]
* 主人公の名前 – マリー クララ マーシャ
[[File:Nutcracker1892.jpg|thumb|right|220px|初演版第2幕。金平糖の精(V・ニキーティナ)と王子([[パーヴェル・ゲルト|P・ゲルト]])]]
* 連れて行かれる先 – おとぎの国 お菓子の国
[[1892年]]12月18日([[ユリウス暦|ロシア旧暦]]12月6日)、[[マリインスキー劇場]]において、オペラ『イオランタ』と共に、バレエ『くるみ割り人形』が初演された{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}。初日の主要キャストは、[[金平糖]]の精([[ドラジェ]]の精)がアントニエッタ・デルエラ、コクルーシュ王子(オルジャ王子)が[[パーヴェル・ゲルト]]であった<ref name="ドラジェ" group="注釈" />{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}{{Sfn|平林正司|1998|p=3}}。クララ役のスタニスラワ・ベリンスカヤと、くるみ割り人形役の{{仮リンク|セルゲイ・レガート|en|Sergei Legat}}はいずれも舞踊学校の生徒で、べリンスカヤは当時12歳であった{{Sfn|平林正司|1998|p=3}}{{Sfn|森田稔|1999|p=226}}。
* 踊りの見せ場 – 主人公が踊る 金平糖が踊る


この公演は、観客には好評であったものの、新聞評では不評であった{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}。批判を受けた点は、第一に、主演バレリーナが演じる金平糖の精が第2幕になるまで登場せず、見せ場が少なかったことである{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}。また、物語上の欠点としては、クララがお菓子の国へ行ったところで幕が下りてしまうので、その後クララがどうなるのかわからず、観客の納得のいく形で話が完結していないという点も批判された{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}{{Sfn|森田稔|1999|pp=230-231}}。
== あらすじ ==


『くるみ割り人形』は、1893年1月までの間に『イオランタ』と共に11回上演され、その後も何度か上演されたが、1895年10月から1900年4月までの約4年半の間はマリインスキー劇場のレパートリーから外されていた{{Sfn|森田稔|1999|pp=231-232}}。1900年4月に久々に再演され、1909年にも{{仮リンク|ニコライ・セルゲエフ|en|Nicholas Sergeyev}}による改訂版が上演されたが、この時は初演版の演出に大きな変更が加えられることはなかった{{Sfn|森田稔|1999|pp=231-232}}。
=== 第1幕 ===
[[ファイル:nutcracker set designs.jpg|thumb|280px|コンスタンチン・イワノフによる初演の舞台装置スケッチ(第2幕)]]
[[ファイル:Vsevolozhskys design for Nutcracker.jpg|thumb|280px|劇場支配人イワン・フセヴォロシスキーによる初演の衣装スケッチ。第2幕“ジゴーニュ小母さんと子供たち”]]


===改訂演出===
とある王国にて、王子が誕生する。しかし、その場にいた人間がねずみの女王を踏み殺してしまったために王子は呪われ、くるみ割り人形になってしまう。
前述のとおり、『くるみ割り人形』は初演時から台本の不備が指摘されており、主演ダンサーの見せ場が少ないことや、物語の帰結が曖昧であることが批判されていた{{Sfn|森田稔|1999|pp=230-231}}。このような台本の欠点を補うべく、後年の改訂演出では様々な試みが行われた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=54}}。以下、いくつかの改訂演出とその特徴を挙げる(括弧内は初演年および初演バレエ団)<ref name="演出一覧" group="注釈" />。
==== 第1場 ====
クリスマス・イブの夜、ドイツのシュタールバウム家の大広間ではパーティーが行われている。少女クララはドロッセルマイヤー老人からくるみ割り人形をプレゼントされる。ところが、取り合いになり弟のフリッツが壊してしまったので、ドロッセルマイヤー老人が修理する。


*'''{{仮リンク|アレクサンドル・ゴルスキー|label=A・ゴルスキー|en|Alexander Alexeyevich Gorsky}}版([[1919年]]、[[ボリショイ劇場#ボリショイ・バレエ|ボリショイ・バレエ]])'''ボリショイ劇場で本作を初演するにあたり、バレエマスターであるゴルスキーが改訂を行った{{Sfn|森田稔|1999|pp=233-234}}。ゴルスキーは[[スタニスラフスキー]]の影響の下、演劇性を重視したバレエを志向していた{{Sfn|森田稔|1999|pp=233-234}}。本作では、物語を原作小説に近づけるため、金平糖の精とコクルーシュ王子の役を削除し、結末を、クララとくるみ割り人形が王位に就くというものに変更した{{Sfn|森田稔|1999|pp=233-234}}。この演出は定着しなかったが、後世の改訂版に一定の影響を与えた{{Sfn|森田稔|1999|p=234}}。
客も帰りみんなが寝静まってから、クララは人形のベッドに寝かせたくるみ割り人形を見に来る。ちょうど時計の針が12時を打つ。すると、クララの体は人形ほどの大きさになる(舞台ではクリスマスツリーが大きくなることで表現される)。そこに、はつかねずみの王様が指揮する、はつかねずみの大群が押し寄せる。くるみ割り人形の指揮する兵隊人形たちがはつかねずみ達に対し、最後はくるみ割り人形とはつかねずみの王様の[[一騎討ち]]となり、くるみ割り人形あわやというところで、クララがスリッパをつかみねずみの王様に投げつけ、はつかねずみたちは退散する。倒れたくるみ割り人形が起きあがってみると、凛々しい王子になっていた。王子はクララをお礼に雪の国とお菓子の国に招待し、2人は旅立つ。


*'''[[ヴァシリー・ワイノーネン|V・ワイノーネン]]版([[1934年]]、[[マリインスキー・バレエ|GATOB]]<ref name="帝室劇場" group="注釈" />)'''イワノフ版を初演したマリインスキー劇場では、{{仮リンク|フョードル・ロプホーフ|en|Fyodor Lopukhov}}による2度の改訂を経て、1934年にワイノーネンによる新版が発表された{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=57}}。この版は3幕構成で、主人公の名前はマーシャである<ref name="マーシャ" group="注釈" />{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=57}}。演出上の特徴は、マーシャを大人のダンサーが演じたことであり、最終幕ではマーシャがくるみ割り人形の王子と[[パ・ド・ドゥ]]を踊る{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=43}}。この改変によって、幼い少女が夢の中で大人の女性へと成長を遂げるという明確なテーマが作品にもたらされた{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=57}}{{Sfn|赤尾雄人|2010|pp=64-66}}。主人公の少女を大人のダンサーが踊る演出は、ワイノーネン版以降、『くるみ割り人形』の標準的な演出の一つとして定着している{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=57}}。
==== 第2場 ====
雪が舞う松林に2人がさしかかる(雪片の踊り - 雪の精たちの[[コール・ド・バレエ]])


[[File:Sugar Plum Fairy.jpg|thumb|right|180px|[[英国ロイヤル・バレエ団]]の[[ピーター・ライト (振付家)|P・ライト]]版。金平糖の精([[吉田都]])と王子({{仮リンク|スティーヴン・マックレー|label=S・マックレー|en|Steven McRae}})。]]
=== 第2幕 ===
*'''[[ピーター・ライト (振付家)|P・ライト]]版([[1984年]]、[[英国ロイヤル・バレエ団]])'''この版は、物語に原作小説の設定を取り入れているのが特徴で、くるみ割り人形の正体はドロッセルマイヤーの甥とされている{{Sfn|西原朋未|2019}}。ドロッセルマイヤーは甥にかけられた呪いを解くために少女クララにくるみ割り人形を託し、クララの活躍によって甥は人間の姿に戻る{{Sfn|西原朋未|2019}}{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=59}}。またこの演出では、バレエ史家の監修の下、イワノフによる原振付を可能な限り再現している{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=59}}。なお、クララと金平糖の精、くるみ割り人形とお菓子の国の王子は、イワノフ版と同じく、それぞれ別々のダンサーが演じる。この版は現在に至るまで、英国ロイヤル・バレエ団のレパートリーとして定着している{{Sfn|西原朋未|2019}}{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=59}}。
お菓子の国の魔法の城に到着した王子は女王[[ドラジェ]]の精(日本では「こんぺい糖の精」と訳されてきた)にクララを紹介する。お菓子の精たちによる歓迎の宴が繰り広げられる。劇末はクララがクリスマスツリーの足下で夢から起きる演出と、そのままお菓子の国にて終わる演出がある。


*'''P・ライト新版(1990年・[[バーミンガム・ロイヤル・バレエ団]]{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=59}})'''ライトが1990年に発表した新演出は、1984年版と大きく異なる。クララは[[バレリーナ]]を目指す15歳の少女という設定で、[[魔法使い|魔術師]]のドロッセルマイヤーが創り出した不思議な世界へ連れていかれる{{Sfn|平林正司|1998|pp=219-220}}{{Sfn|岸夕夏|2020}}。クララはその世界で、憧れのバレリーナである金平糖の精に変身し、王子の姿となったくるみ割り人形とパ・ド・ドゥを踊る{{Sfn|平林正司|1998|p=219}}。この演出では、クララと金平糖の精は別々のダンサーが演じる{{Sfn|岸夕夏|2020}}{{Sfn|平林正司|1998|p=219}}。
== 楽器編成 ==

この他に著名な演出としては、[[ジョージ・バランシン]]版(1954年、[[ニューヨーク・シティ・バレエ団]])、[[ユーリー・グリゴローヴィチ]]版(1966年、ボリショイ・バレエ)、[[ルドルフ・ヌレエフ]]版(1967年、{{仮リンク|スウェーデン王立バレエ団|en|Royal Swedish Ballet}})などがある{{Sfn|渡辺真弓|2014|p=52}}。

また、初演版から踏襲されてきた物語設定を大きく変更し、現代的に再解釈した演出もある。バレリーナに憧れる少女が夢の中でバレエの舞台裏を垣間見るという設定の[[ジョン・ノイマイヤー]]版(1971年)、[[孤児院]]を舞台にした[[マシュー・ボーン]]版(1992年)、振付家自身の少年時代を題材とした[[自伝]]的作品である[[モーリス・ベジャール]]版(1998年)などが挙げられる{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=45}}{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=56-57}}。

==物語==
===原作===
バレエ『くるみ割り人形』の原作は、[[アレクサンドル・デュマ・ペール]]による[[童話]]『[[ヘーゼルナッツ|はしばみ]]割り物語』({{lang-fr-short|''Histoire d’un casse-noisette''}}、1844年)である<ref name="出版年" group="注釈" />{{Sfn|平林正司|1998|pp=3-6}}。この童話は、[[ドイツ]]の[[E.T.A.ホフマン]]による『[[くるみ割り人形とねずみの王様]]』({{lang-de-short|''Nußknacker und Mausekönig''}}、1816年)を、デュマが[[フランス語]]に翻案した作品であり、あらすじは以下の通りである<ref name="はしばみ" group="注釈" />{{Sfn|平林正司|1998|pp=3-6}}{{Sfn|アレクサンドル・デュマ|1991|pp=5-190}}。

[[File:Aleksander Dumas - Historja Dziadka do Orzechów str 147 2.jpg|thumb|right|200px|『はしばみ割り物語』の挿絵({{仮リンク|ベルタル|en|Bertall}}画)]]
舞台はドイツの[[ニュルンベルク]]。7歳半の少女マリーは、クリスマス・プレゼントに[[くるみ割り#くるみ割り人形|くるみ割り人形]]をもらうが、兄のフリッツが人形の顎を壊してしまう。マリーはくるみ割り人形を優しく看病する。その夜、マリーの部屋に[[ネズミ]]の大群が現われ、人形たちと戦争を始める。マリーはくるみ割り人形に加勢するが、怪我をして気を失ってしまう。翌朝ベッドで目覚めたマリーは、昨晩の出来事を家族に話すが信じてもらえない。

そんなマリーに対し、伯父のドロッセルマイヤーは『堅いくるみとピルリパータ王女の物語』を話して聞かせる。美しい王女ピルリパータは、ネズミの呪いで醜い姿に変えられてしまった。王に呪いを解くよう命じられた職人ドロッセルマイヤーは、甥のナタニエルが割った堅いくるみを王女に食べさせ、王女を元の姿に戻すことに成功するが、代わりにナタニエルが醜い姿になってしまう。ナタニエルの呪いが解けるのは、彼がネズミの王様を倒した上で、美しい女性から愛されたときだけである。この話を聞いたマリーは、あのくるみ割り人形こそがナタニエルなのだと確信する。

その後、マリーの部屋に再びネズミが現れるようになる。するとくるみ割り人形は、自分に剣を授けてほしいとマリーに頼み、その剣でネズミの王様を倒す。くるみ割り人形は、自分が治める[[おもちゃ]]の国にマリーを招待する。2人は[[氷砂糖]]の野原やクリスマスの森、[[オレンジエード]]の川などを通り過ぎて[[ケーキ]]の宮殿へと辿り着き、くるみ割り人形の妹である王女たちの歓待を受けるが、それはマリーの見た夢にすぎなかった。現実の世界に戻ってしばらく経ったある時、マリーはくるみ割り人形に「あなたを心から愛している」と話しかける。その途端マリーは気を失い、目覚めると、ドロッセルマイヤーが甥の少年を連れてきていた。少年はマリーに対し、自分はナタニエルであり、マリーのおかげで呪いが解けたのだと告げて求婚する。2人は再びお菓子でできた国へと向かい、結婚式を挙げたのだった。

===主な登場人物===
{| style="float:right;"
|-
|[[File:Nut BrettPruitt 16 002 (31008991920).jpg|right|thumb|220px|ドロッセルマイヤー(左)から人形をもらうクララ(中央)]]
|[[File:Nussknacker.jpg|right|thumb|60px|[[くるみ割り#くるみ割り人形|くるみ割り人形]]]]
|}
*クララ(またはマーシャ、マリー{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=43}})- 主人公の少女。
*ドロッセルマイヤー - クララの名付け親。
*[[くるみ割り#くるみ割り人形|くるみ割り人形]] - ドロッセルマイヤーがクララに贈った人形。
*[[金平糖]]の精(または[[ドラジェ]]の精、[[シュガープラム]]の精<ref name="ドラジェ" group="注釈" />) - お菓子の国の女王。

===あらすじ===
演出によって物語の展開に相違があるが、あらすじは概ね次のような内容である{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=56-57}}{{Sfn|長野由紀|2003|p=199}}{{Sfn|長野由紀|2020|pp=28-29}}。
====第1幕第1場====
[[File:Nut BrettPruitt 16 006 (31378155355).jpg|right|thumb|220px|第1幕第1場 ねずみと兵隊人形の戦い]]
主人公クララのいるシュタールバウム家では、友人たちを招いて[[クリスマス・イヴ]]のパーティーが開かれている。招待客の中には、クララの名付け親のドロッセルマイヤーもいる。ドロッセルマイヤーは、子供たちに[[手品]]や[[人形芝居]]を見せて驚かせた後、不格好なくるみ割り人形を取り出す。クララはなぜかその人形が気に入り、ドロッセルマイヤーに頼んでプレゼントしてもらう。クララの弟(兄)のフリッツが人形を横取りして壊してしまうが、ドロッセルマイヤーが修理してくれる。やがてパーティーはお開きとなり、客たちは家路につく。

真夜中、くるみ割り人形のことが気になったクララは、人形が置かれている大広間の[[クリスマスツリー]]の元へと降りていく。その時、時計が12時を打ち、クララの体がみるみる縮んでいく(舞台ではクリスマスツリーが大きくなることで表現される)。そこへねずみの大群が押し寄せ、くるみ割り人形の指揮する兵隊人形たちと戦争を始める。戦いはくるみ割り人形とねずみの王様の[[一騎討ち]]となり、くるみ割り人形は窮地に陥るが、クララがとっさに投げつけた[[スリッパ]]がねずみの王様に命中する。その隙にくるみ割り人形はねずみの王様を倒し、ねずみ軍は退散する。クララは倒れたくるみ割り人形を心配するが、起き上がったくるみ割り人形は、凛々しい王子の姿に変わっていた。
====第1幕第2場====
[[File:Nut BrettPruitt 16 012 (30570752723).jpg|right|thumb|220px|第1幕第2場 雪片の[[コール・ド・バレエ|群舞]]]]
くるみ割り人形は自分を救ってくれたクララに感謝し、お礼に[[お菓子]]の国へと招待する。2人は[[雪]]が舞う森を抜けて、お菓子の国へと向かう。
====第2幕====
[[File:ESMD The Nutcracker 2011 grand pas de deux.jpg|right|thumb|220px|第2幕 [[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|グラン・パ・ド・ドゥ]]]]
お菓子の国に到着した2人は、女王である[[金平糖]]の精に迎えられる。クララを歓迎するため、[[チョコレート]]、[[コーヒー]]、[[茶|お茶]]、[[キャンディ]]などのお菓子の精たちが次々と踊りを繰り広げ、最後は金平糖の精と王子が[[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|グラン・パ・ド・ドゥ]]を披露する<ref name="王子" group="注釈" />。しかし、楽しい夢はやがて終わりを迎える。朝が訪れ、自分の家で目を覚ましたクララは、傍らのくるみ割り人形を優しく抱きしめるのだった。

===演出による違い===
『くるみ割り人形』の演出は、クララと金平糖の精の扱いによって、概ね2系統に分けることができる{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=56-57}}。一つは、クララを子役が演じ、金平糖の精を大人のダンサーが踊るもの(イワノフ版など)であり、上述のあらすじはこのケースである{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=56-57}}。もう一つは、クララを大人のダンサーが演じるもの(ワイノーネン版など)であり、この場合、第2幕のグラン・パ・ド・ドゥは、金平糖の精に姿を変えたクララと、くるみ割り人形の王子によって踊られる{{Sfn|ダンスマガジン編集部|1998|p=43}}{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=56-57}}{{Sfn|長野由紀|2003|pp=199-200}}。前者の変形として、クララと金平糖の精を別々の大人のダンサーが演じる場合(ライト版など)もある{{Sfn|西原朋未|2019}}{{Sfn|岸夕夏|2020}}{{Sfn|ダンスマガジン|2008|pp=56-57}}。

==楽曲==
===楽器編成===
楽器編成は以下の通りである{{Sfn|音楽之友社|1993|p=100}}。
{{管弦楽編成
{{管弦楽編成
|フルート=3(第2・第3奏者[[ピッコロ]]持ち替え)
|フルート=3(第2・第3奏者[[ピッコロ]]持ち替え)
86行目: 135行目:
舞台上におもちゃのトランペット、太鼓、シンバル他打楽器数種、24名の児童合唱(または女声合唱)。
舞台上におもちゃのトランペット、太鼓、シンバル他打楽器数種、24名の児童合唱(または女声合唱)。


===作品構成===
== 全タイトル(バレエ音楽) ==
{| style="float:right;"
|-
|[[ファイル:Nussknacker.jpg|thumb|90px|くるみ割り人形の実物。1幕ではこの姿で登場する]]
|[[ファイル:Snowdance.jpg|thumb|215px|第1幕 雪片のワルツ]]
|}
{{External media
{{External media
| width = 310px
| width = 310px
| topic = 全曲を試聴する
| topic = '''『くるみ割り人形』全曲(演奏会形式)'''
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=xtLoaMfinbU Tchaikovsky - The Nutcracker, Ballet in two acts] - [[ヴァレリーゲルギエフ]]指揮[[マリインスキ劇場管弦楽団]]による演奏。EuroArts([[レコードレーベル]]公式YouTube。
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=tk5Uturacx8 『くるみ割り人形』(全曲)]<br />([[ヤニック・ネゼ=セガン|Yネゼ=セガン]]指揮[[ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団]]による演奏)<br />
[[オランダ公共放送]]公式YouTubeより
| audio2 = [https://www.youtube.com/watch?v=tk5Uturacx8 Tchaikovsky:The Nutcracker]《演奏会形式》 - [[ヤニック・ネゼ=セガン]]指揮[[ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団]]による演奏。[[オランダ公共放送|AVROTROS Klassiek]]公式YouTube。
}}
}}

全曲の演奏時間は約1時間25分(第1幕約45分、第2幕約40分)である。録音や演奏会などでは[[組曲]]や抜粋で演奏されることもある。以下、[[楽譜|譜面]]に明記された各曲のフランス語名称<ref>"The Nutcracker, Complete Ballet in Full Score", Dover Publications, 2004 ISBN 0-486-43836-8 による。</ref>の日本語訳と、【 】内に音盤などで慣例的に用いられている名称、[ ]内に説明を記す。
全曲の演奏時間は約1時間25分(第1幕約45分、第2幕約40分)である{{Sfn|音楽之友社|1993|p=100}}。以下、[[楽譜|譜面]]に明記された各曲のフランス語名称<ref>"The Nutcracker, Complete Ballet in Full Score", Dover Publications, 2004 ISBN 0-486-43836-8 による。</ref>の日本語訳と、【 】内に音盤などで慣例的に用いられている名称、[ ]内に説明を記す。
* '''序曲''' (Ouverture)
* 序曲 (Ouverture)
* '''第1幕'''
* '''第1幕'''
** 第1曲 '''情景''' (Scène) 【クリスマスツリー】
** 第1曲 情景 (Scène) 【クリスマスツリー】
** 第2曲 '''行進曲''' (Marche)
** 第2曲 行進曲 (Marche)
** 第3曲 '''子供たちの小ギャロップと両親の登場''' (Petit galop des enfants et entrée des parents)
** 第3曲 子供たちの小[[ギャロップ (ダンス)|ギャロップ]]と両親の登場 (Petit galop des enfants et entrée des parents)
** 第4曲 '''踊りの情景''' (Scène dansante) 【ドロッセルマイヤーの贈り物】(Distribution des cadeaux)
** 第4曲 踊りの情景 (Scène dansante) 【ドロッセルマイヤーの贈り物】(Distribution des cadeaux)
** 第5曲 '''情景と祖父の踊り''' (Scène et danse du grand-père)
** 第5曲 情景と祖父の踊り (Scène et danse du grand-père)
** 第6曲 '''情景''' (Scène) 【招待客の帰宅、そして夜】(Départ des invités - Nuit)
** 第6曲 情景 (Scène) 【招待客の帰宅、そして夜】(Départ des invités - Nuit)
** 第7曲 '''情景''' (Scène) 【くるみ割り人形とねずみの王様の戦い】(La Bataille)
** 第7曲 情景 (Scène) 【くるみ割り人形とねずみの王様の戦い】(La Bataille)
** 第8曲 '''情景''' (Scène) 【松林の踊り】(Une forêt de sapins en hiver)
** 第8曲 情景 (Scène) 【松林の踊り】(Une forêt de sapins en hiver)
** 第9曲 '''雪片のワルツ''' (Valse des flocons de neige)
** 第9曲 雪片の[[ワルツ]] (Valse des flocons de neige)
* '''第2幕'''
* '''第2幕'''
** 第10曲 '''情景''' (Scène) 【お菓子の国の魔法の城】(Le Palais enchanté du Royaume des Délices)
** 第10曲 情景 (Scène) 【お菓子の国の魔法の城】(Le Palais enchanté du Royaume des Délices)
** 第11曲 '''情景''' (Scène) 【クララと王子の登場】(L'Arrivée de Casse-noisette et de Clara)
** 第11曲 情景 (Scène) 【クララと王子の登場】(L'Arrivée de Casse-noisette et de Clara)
** 第12曲 '''[[ディヴェルティスマン]]''' (Divertissement) [登場人物たちの踊り]
** 第12曲 ディヴェルティスマン (Divertissement) [登場人物たちの踊り]
**# '''チョコレート''' (Le Chocolat - Danse espagnole) 【スペインの踊り】 [[[ボレロ (ダンス・音楽)|ボレロ]]]
**# チョコレート (Le Chocolat - Danse espagnole) 【スペインの踊り】 [[[ボレロ (ダンス・音楽)|ボレロ]]]
**# '''コーヒー''' (Le Café - Danse arabe) 【アラビアの踊り】 [[[コモード]]]
**# コーヒー (Le Café - Danse arabe) 【アラビアの踊り】
**# '''お茶''' (Le Thé - Danse chinoise) 【中国の踊り】
**# お茶 (Le Thé - Danse chinoise) 【中国の踊り】
**# '''トレパック''' (Trépak - Danse russe) 【ロシアの踊り】
**# トレパック (Trépak - Danse russe) 【ロシアの踊り】
**# '''葦笛'''<ref>ロシア語の名称は {{lang|ru|Танецъ пастушковъ}} (若い牧人たちの踊り、フランス語ではDanse des bergers)。''ibid'', p.353</ref> (Les Mirlitons) 【フランスの踊り】
**# 葦笛 (Les Mirlitons) 【フランスの踊り】
**# '''ジゴーニュ小母さんと道化たち''' (La Mère Gigogne et les Polichinelles)
**# ジゴーニュ小母さんと道化たち (La Mère Gigogne et les Polichinelles)
** 第13曲 '''花のワルツ''' (Valse des fleurs)
** 第13曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
** 第14曲 '''[[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|パ・ド・ドゥ]]''' (Pas de deux) 【金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ】
** 第14曲 [[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|パ・ド・ドゥ]] (Pas de deux) 【金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ】
**# 【アダージュ】
**# 【アダージュ】
**# ヴァリアシオン I (Var. I)[[[タランテラ]]]
**# [[ヴァリアシオン (バレエ)|ヴァリアシオン]] I (Var. I)[[[タランテラ]]]
**# ヴァリアシオン II ドラジェ(日本では金平糖の精の踊り (Var.II Danse de la Fée-Dragée)
**# ヴァリアシオン II 金平糖の精の踊り (Var.II Danse de la Fée-Dragée)
**# [[コーダ (音楽)|コーダ]] (Coda)
**# [[コーダ (音楽)|コーダ]] (Coda)
** 第15曲 '''終幕のワルツとアポテオーズ''' (Valse finale et apothéose)
** 第15曲 終幕のワルツとアポテオーズ (Valse finale et apothéose)


===演奏会用組曲===
== バレエ組曲「くるみ割り人形」 ==
{{External media
{{External media
| width = 310px
| width = 310px
| topic = 組曲版(作品71a)の全曲を試聴す
| topic = '''組曲『くみ割り人形』'''
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=PaokCj9Mzpg Tchaikovsky Nutcracker Suite] - コンラート・ファン・アルフェン(Conrad van Alphen)指揮シンフォニア・ロッテルダム(Sinfonia Rotterdam)による演奏。指揮者自身の公式YouTube
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=PaokCj9Mzpg 組曲『くるみ割り人形』(全曲)] - C・ファン・アルフェン指揮、[[ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団]]による演奏。指揮者自身の公式YouTubeより
| audio2 = [https://www.youtube.com/watch?v=-JTHrn4XlMM 第8曲 花のワルツ] - Giovanni Pacor指揮、中央ヨーロッパ管弦楽団による演奏。中央ヨーロッパ管弦楽団公式YouTubeより
| audio3 = [https://www.youtube.com/watch?v=hlPn9RSxbVM 第8曲 花のワルツ] - Giulio Marazia指揮Orchestra Filarmonica Campanaによる演奏。Orchestra Filarmonica Campana公式YouTubeより
}}
}}
{{試聴
{{試聴
|filename = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 1- Miniature Overture.ogg
|header = 組曲『くるみ割り人形』作品71aから
|title = 第1曲 小序曲
|filename = Dance of the Sugar Plum Fairies (ISRC USUAN1100270).oga
|title = 第3曲 金平糖の精の踊り
|description =
|description =
|filename2 = Pyotr Ilyich Tchaikovsky Valzer dei fiori.ogg
|filename2 = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 2- March.ogg
|title2 = 第8 花のワルツ
|title2 = 第2曲 行進
|description2 =
|description2 =
|filename3 = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 3- Dance Of The Sugar Plum Fairies.ogg
|type = music
|title3 = 第3曲 金平糖の精の踊り
|description3 =
|filename4 =Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 4- Trepak- Russian Dance.ogg
|title4 = 第4曲 ロシアの踊り(トレパック)
|description4 =
|filename5 = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 5- Arab Dance.ogg
|title5 = 第5曲 アラビアの踊り
|description5 =
|filename6 = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 6- Chinese Dance.ogg
|title6 = 第6曲 中国の踊り
|description6 =
|filename7 = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 7- Dance Of The Mirlitons.ogg
|title7 = 第7曲 葦笛の踊り
|description7 =
|filename8 = Peter Ilyich Tchaikovsky- Nutcracker Suite- 8- Waltz Of The Flowers.ogg
|title8 = 第8曲 花のワルツ
|description8 =
}}
}}
バレエ[[組曲]]『くるみ割り人形』([[作品番号|作品]]71a)は、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である{{Sfn|音楽之友社|1993|p=102}}。1892年3月、『くるみ割り人形』の作曲中であったチャイコフスキーの元に演奏会の依頼が来た{{Sfn|音楽之友社|1993|p=102}}。あいにく手元に新作がなく、また作曲する暇もなかったため、急遽作曲中の『くるみ割り人形』から8曲を抜き出して演奏会用組曲とした{{Sfn|音楽之友社|1993|p=102}}。この組曲は、バレエの初演に先立ち、[[1892年]]3月19日([[ユリウス暦|ロシア旧暦]]3月31日)に初演されて好評を得た{{Sfn|音楽之友社|1993|p=102}}。以下は慣例名による。
{{External media

| width = 310px
| topic = 組曲版(作品71a)第8曲<br />花のワルツ(Valse des fleurs)のみ
| audio1 = [https://www.youtube.com/watch?v=-JTHrn4XlMM Pëtr Il'ič Čajkovskij (1840- 1893) Schiaccianoci, Valzer dei fiori] - Giovanni Pacor指揮中央ヨーロッパ管弦楽団による演奏。中央ヨーロッパ管弦楽団(Mitteleuropa Orchestra)公式YouTube。
| audio2 = [https://www.youtube.com/watch?v=hlPn9RSxbVM Tchaikovsky:Flowers Walzer] - Giulio Marazia指揮Orchestra Filarmonica Campanaによる演奏。Orchestra Filarmonica Campana公式YouTube。
}}
バレエ[[組曲]]「くるみ割り人形」作品71aは、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である。「くるみ割り人形」作曲中のチャイコフスキーはこの頃、自作を指揮する演奏会を企画していたが、あいにく手元に新作がなく、また作曲する暇もなかったため、急遽作曲中の「くるみ割り人形」から8曲を抜き出して演奏会用組曲とした。バレエの初演に先立ち、[[1892年]][[3月19日]]初演された。組曲版の演奏時間は約23分。作曲家自身のセレクトということもあり、「[[白鳥の湖]]」「眠れる森の美女」の組曲<ref>どちらも『組曲版』の楽譜が出版されているが、前者は作曲家の意志が反映されているか不明であり、後者は[[アレクサンドル・ジロティ]]が作曲者に提案して決めたものとされる。</ref>と異なって、この構成は大抵の演奏において不変である。以下は慣例名による。
;第1曲 小序曲 (Ouverture miniature)
;第1曲 小序曲 (Ouverture miniature)
: Allegro giusto、変ロ長調、4分の2拍子(複合2部形式。展開部を欠くソナタ形式とも取れる)。この小序曲のみ編成から低弦、つまり[[チェロ]]と[[コントラバス]]が除かれ、[[Tacet]]を指示されている。このバレエ全体のかわいらしい曲想を感じさせる。おとぎ話のような主題が[[ヴァイオリン]]により提示される。これらは[[クラリネット]]、[[フルート]]などに引き継がれ、次第に大編成化する。すると一転して[[オーボエ]]による叫びがあり、メロディックで優雅な第2主題(ヘ長調)が提示される。この後、第1主題・第2主題(変ロ長調で再現)はそのまま反復される。
: Allegro giusto、変ロ長調、4分の2拍子(複合2部形式。展開部を欠くソナタ形式とも取れる)。この小序曲のみ編成から低弦、つまり[[チェロ]]と[[コントラバス]]が除かれ、[[Tacet|タセット]]を指示されている。このバレエ全体のかわいらしい曲想を感じさせる。おとぎ話のような主題が[[ヴァイオリン]]により提示される。これらは[[クラリネット]]、[[フルート]]などに引き継がれ、次第に大編成化する。すると一転して[[オーボエ]]による叫びがあり、メロディックで優雅な第2主題(ヘ長調)が提示される。この後、第1主題・第2主題(変ロ長調で再現)はそのまま反復される。
;性格舞曲 (Danses caractéristiques)
;性格舞曲 (Danses caractéristiques)
;第2曲 行進曲 (Marche)
;第2曲 行進曲 (Marche)
: Tempo di marcia viva、ト長調、4分の4拍子([[ロンド形式]])。A-B-A-C-A-B-Aの形を取る。
: Tempo di marcia viva、ト長調、4分の4拍子([[ロンド形式]])。A-B-A-C-A-B-Aの形を取る。
;第3曲 金平糖の精の踊り (Danse de la Fée Dragée)
;第3曲 金平糖の精の踊り (Danse de la Fée Dragée)
: Andante non troppo、ホ短調、4分の2拍子(複合三部形式)。タイトルの原題は「'''[[ドラジェ]]の精の踊り'''」だが、日本ではドラジェは一般的でなかったためにこの邦題が定着して現在に至っている。同様に英語圏ではクリスマスのキャンディーである「[[シュガープラム]]の精の踊り(Dance of the Sugar Plum Fairy)」となっている。当時、発明されたばかりであった[[チェレスタ]]を起用した最初の作品として広く知られる。当初、このパートは天使の声と喩えられた珍しい楽器[[アルモニカ]](または別種の「ガラス製木琴」)のために書かれており、後に旅先でチェレスタと出会ってから楽器指定変えたことが明らかなっている。なお、チャイコフスキーは初演まで、チェレスタを使用することを公言しなかった。チャイコフスキーはパリから楽器を取り寄せる際、モスクワ業者に送った手紙の中に「他の作曲家、特に[[ニコライ・リムスキー=コルサコフ|リムスキー・コルサコフ]]と[[アレクサンドル・グラズノフ|グラズノフ]]に知られないように」とう趣旨のことを書いており、先に使われるのを防ぐ目的があったようである。
: Andante non troppo、ホ短調、4分の2拍子(複合三部形式)。当時、発明されたばかりであった[[チェレスタ]]を起用した最初の作品として広く知られる。当初、このパートは天使の声と喩えられた珍しい楽器[[アルモニカ]](または別種の「ガラス製木琴」)のために書かれていた{{要出典|date=2021年5月|}}。しかし、後に旅先の[[パリ]]でチェレスタを見つけ、この楽器を使うことに決めた{{Sfn|音楽之友社|1993|p=101}}。なお、チャイコフスキーはパリからチェレスタを取り寄せる際、楽譜出版社[[ユルゲンソン (出版社)|ユルゲンソン]]に送った手紙「他の作曲家、特に[[ニコライ・リムスキー=コルサコフ|リムスキー・コルサコフ]]と[[アレクサンドル・グラズノフ|グラズノフ]]に知られないように」とう趣旨のことを書いており、作曲家に先越されたくないという思いがあったようである{{Sfn|音楽之友社|1993|pp=100-101}}{{Sfn|小松佑子|2017|pp=384-385}}
;第4曲 ロシアの踊り'''(トレパック) (Danse russe (Trepak))
;第4曲 ロシアの踊り(トレパック) (Danse russe (Trepak))
: Tempo di Trepak, Molto vivace、ト長調、4分の2拍子(複合三部形式)。
: Tempo di Trepak, Molto vivace、ト長調、4分の2拍子(複合三部形式)。
;第5曲 アラビアの踊り (Danse arabe)
;第5曲 アラビアの踊り (Danse arabe)
: Allegretto、ト短調、8分の3拍子([[変奏曲]]形式)。この曲のベースになった曲は[[グルジア]]民謡の子守唄である。
: Allegretto、ト短調、8分の3拍子([[変奏曲]]形式)。この曲のベースになった曲は[[グルジア]]民謡の[[子守唄]]である{{Sfn|音楽之友社|1993|p=109}}
;第6曲 中国の踊り (Danse chinoise)
;第6曲 中国の踊り (Danse chinoise)
: Allegro Moderato、変ロ長調、4分の4拍子(小三部形式)。
: Allegro Moderato、変ロ長調、4分の4拍子(小三部形式)。
167行目: 225行目:
: Moderato Assai、ニ長調、4分の2拍子(小ロンド形式)。A-B-A-C-Aの形を取る。おもちゃの笛「[[楽器分類学#歌奏太鼓|ミルリトン]]」が踊る。
: Moderato Assai、ニ長調、4分の2拍子(小ロンド形式)。A-B-A-C-Aの形を取る。おもちゃの笛「[[楽器分類学#歌奏太鼓|ミルリトン]]」が踊る。
;第8曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
;第8曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
: Tempo di Valse、ニ長調、4分の3拍子(複合三部形式)。クラク音楽の全体の中でも非常にポピュラーな曲であり単独で演奏されることも多い。序奏には[[ハープ]]が効果的に用いられる。[[ハープ]]の[[カデンツァ]]ののちに、[[ホルン]]により[[主題]]が提示される。続く[[ワルツ]]は弦による有名な旋律であるさら[[ウィン]]風の旋律が[[フルート]]に、情熱的旋律が[[ヴィオラ]]・[[チェロ]]に提示される。前者2つは結尾部でまめられ大交響楽的な[[クライマックス]]を迎える。
: Tempo di Valse、ニ長調、4分の3拍子(複合三部形式)。序奏は、[[オーボエ]]、[[クラリネト]][[ファゴット]]、そして[[ハープ]]が効果的に用いられハープの[[カデンツァ]]ののちに、[[ホルン]]により[[主題]]が提示される{{Sfn|小倉重夫|1989|p=238}}。続く[[ワルツ]]の主題は弦楽部と管楽部の掛け合いによって反復され{{Sfn|小倉重夫|1989|pp=238-239}}中間部はオボエと[[フルート]]の新た主題現れ、さらに[[ヴィオラ]]・[[チェロ]]による主題が提示された後、再び第一主題へ戻り終結す{{Sfn|小倉重夫|1989|p=239}}


== 受容 ==
==受容==
本作はバレエとして演じられているが、それ以外のジャルでも演目として取りげられることがある。雑誌『[[ニューズウィーク]]』では2016年12月に二つのバレエの他に[[ヒップホップ]]と[[ブレイクダンス]]を合わせたもの、そしてつの[[バーレスク]]を紹介している<ref>スタブ・ジブ「Life/style 『くるみ割り人形』の冬が来た!」『NewsWeek日本語版』50号(通巻1527号)[[CCCメディアハウス]]、2016年12月27日、58-59頁。</ref>。
本作はバレエ以外の[[ダス]]として演されることがある。2016年12月、雑誌『[[ニューズウィーク]]』では、2つのバレエの他に[[ヒップホップ]]と[[ブレイクダンス]]を合わせたもの、そして3つの[[バーレスク]]を紹介している<ref>スタブ・ジブ「Life/style 『くるみ割り人形』の冬が来た!」『NewsWeek日本語版』50号(通巻1527号)[[CCCメディアハウス]]、2016年12月27日、58-59頁。</ref>。


== 脚注 ==
==脚注==
===注釈===
{{Reflist|group="注釈"|refs=
<ref name="台本" group="注釈">『くるみ割り人形』の台本作者は一般にプティパとされているが、本作について検討した平林正司は、台本作者はフセヴォロジスキーか、少なくとも台本には彼の意向が反映していると考えるべきである、と述べている。ただし、バレエの台本は複数人で合作する場合が多かったことから、フセヴォロジスキーが唯一の作者であるとまでは断定できないとしている(平林正司 1998, p.126)。</ref>
<ref name="ドラジェ" group="注釈">「[[金平糖]]の精」は、原語では「[[ドラジェ]]の精」である。金平糖とドラジェは違う菓子だが、日本では「金平糖」の訳語が定着している(森田稔 1999, p.226)。また、英語圏では「[[シュガープラム]]の精」とも呼ばれる({{Cite web|url=https://www.roh.org.uk/tickets-and-events/the-nutcracker-by-peter-wright-details |title=The Nutcracker |publisher=[[ロイヤル・バレエ団|英国ロイヤル・バレエ団]] |accessdate=2021-05-03}}、{{Cite web|url=https://www.nycballet.com/discover/ballet-repertory/george-balanchines-the-nutcracker |title=The Nutcracker |publisher=[[ニューヨーク・シティ・バレエ団]] |accessdate=2021-05-03}})。</ref>
<ref name="演出一覧" group="注釈">『くるみ割り人形』の演出の変遷については、英語版記事({{仮リンク|『くるみ割り人形』の演出一覧|en|List of productions of The Nutcracker}})に詳しい。</ref>
<ref name="帝室劇場" group="注釈">マリインスキー劇場は、1917年の[[ロシア革命]]後は「国立マリインスキー劇場」と呼ばれ、さらにその後「国立アカデミー・オペラ及びバレエ劇場(略称GATOB)」と改称された(デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル 2010, p.140)。</ref>
<ref name="マーシャ" group="注釈">主人公の名前は、1929年のロプホーフ版でクララからマーシャに変更されており、ワイノーネン版もこの設定を踏襲している(渡辺真弓 2014, p.57)。</ref>
<ref name="出版年" group="注釈">出版年については、1845年という説もある(平林正司 1998, p.6)。</ref>
<ref name="はしばみ" group="注釈">ホフマンの原題にある「くるみ割り(Nußknacker)」という語は、デュマの翻案では「はしばみ割り(casse-noisette)」と訳された。これは、ドイツ語のNußknackerが[[クルミ]]や[[ヘーゼルナッツ|ハシバミ]]などの[[種実類|堅果]]を割る道具全般を指すのに対し、フランス語の同義語には「casse-noix(くるみ割り)」と「casse-noisette(はしばみ割り。くるみ割りよりもやや小型の道具を指す)」の2つがあり、デュマが後者の訳語を採用したためである(平林正司 1998, pp.4-5)。ただし、以下に記す『はしばみ割り物語』のあらすじでは、出典とした邦訳書(小倉重夫訳)がcasse-noisetteを「くるみ割り」と訳出していることから、それに従った記載とする。</ref>
<ref name="王子" group="注釈">グラン・パ・ド・ドゥは、初演版では金平糖の精とコクルーシュ王子が踊ったが、改訂演出では、金平糖の精とくるみ割り人形の王子が踊り、コクルーシュ王子の役は削除されることが多い(小倉重夫 1989, p.239)。</ref>
}}

===出典===
{{Columns-list|colwidth=16em|
{{Reflist}}
{{Reflist}}
}}

==参考文献==
*{{Cite book |和書 |author=[[赤尾雄人]]|year=2010 |title=これがロシア・バレエだ! |publisher=[[新書館]] |isbn=9784403231193|ref={{SfnRef|赤尾雄人|2010}}}}
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== 関連項目 ==
==関連項目==
{{Commonscat|The Nutcracker}}
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*[[ファンタジア (映画)]] - [[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]が製作した[[アニメーション映画]]。組曲『くるみ割り人形』の一部を使用している。
* [[パ・ド・ドゥ#グラン・パ・ド・ドゥ|グラン・パ・ド・ドゥ]]
*[[くるみ割り人形 (1993年の映画)]] - [[マコーレー・カルキン]]と[[ニューヨーク・シティ・バレエ団]]が出演した[[バレエ映画]]。
* [[マリウス・プティパ]]
*[[プリンセスチュチュ]] - バレエを題材とした[[テレビアニメ]]。[[劇伴]]に『くるみ割り人形』の楽曲を使用している。
* 『[[イオランタ]]』 - チャイコフスキーの歌劇。[[マリインスキー劇場]]支配人[[イヴァン・フシェヴォロジスキー]]の求めにより、チャイコフスキーはこのオペラと『くるみ割り人形』とを同時上演するために作曲した。


== 外部リンク ==
==外部リンク==
* バレエ音楽『くるみ割り人形』作品71
* バレエ音楽『くるみ割り人形』作品71
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2021年5月24日 (月) 09:52時点における版

くるみ割り人形
Щелкунчик
『くるみ割り人形』第1幕より
イワノフ版
構成 2幕3場[1]
振付 L・イワノフ
作曲 P・チャイコフスキー
台本 M・プティパ
美術 K・イワノフ、M・I・ボチャローフ[2][3]
衣装 I・フセヴォロシスキー英語版[3]
初演 1892年12月18日
ロシア旧暦12月6日)
マリインスキー劇場
主な初演者 【金平糖の精】A・デルエラ
【コクルーシュ王子】P・ゲルト
【クララ】S・べリンスカヤ
【くるみ割り人形】S・レガート英語版
ポータル 舞台芸術
ポータル クラシック音楽
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音楽・音声外部リンク
バレエ『くるみ割り人形』全幕

バレエ『くるみ割り人形』(全幕)
マリインスキー・バレエ出演、V・ワイノーネン英語版改訂振付、V・ゲルギエフ指揮、マリインスキー劇場管弦楽団演奏)

EuroArts公式YouTubeより

くるみ割り人形』(くるみわりにんぎょう、: Щелкунчик, : Casse-Noisette, : The Nutcracker)は、ピョートル・チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽作品71)、およびそれを用いたバレエ作品である[4]。チャイコフスキーが手掛けた最後のバレエ音楽であり、1892年にサンクトペテルブルクマリインスキー劇場で初演された[5]

本作は、クリスマス・イヴくるみ割り人形を贈られた少女が、人形と共に夢の世界を旅するという物語である。原作は、ドイツE.T.A.ホフマンによる童話くるみ割り人形とねずみの王様』を、アレクサンドル・デュマ・ペールフランス語に翻案した『はしばみ割り物語』である[5][6]

クリスマスにちなんだ作品であることから、毎年クリスマス・シーズンには世界中で盛んに上演される[7]クラシック・バレエを代表する作品の一つであり、同じくチャイコフスキーが作曲した『白鳥の湖』『眠れる森の美女』と共に「3大バレエ」とも呼ばれている[8]

上演史

創作の経緯

I・フセヴォロジスキー英語版による初演の衣装デザイン

1890年1月、サンクトペテルブルクマリインスキー劇場で、チャイコフスキー作曲によるバレエ『眠れる森の美女』が上演され、成功を収めた[5]。これに満足した劇場支配人のイワン・フセヴォロシスキー英語版は、同年2月頃に早速チャイコフスキーに次回作を依頼し、オペラとバレエを2本立てで上演したいと提案した[5][9]。この上演形式は当時のパリ・オペラ座に倣ったもので、オペラを公演の中心とし、その後に余興のような位置づけでバレエを上演するというものであった[5][10]。1890年の末に最終的な話し合いが行われ、オペラの演目は、チャイコフスキー自身の提案により『イオランタ』に決まった[5][11]。バレエの題材はフセヴォロシスキーが選び、E.T.A.ホフマンの童話 『くるみ割り人形とねずみの王様』 をアレクサンドル・デュマ・ペールが翻案した『はしばみ割り物語』を原作とすることになった[5]。バレエの台本は、マリインスキー劇場のバレエマスターであるマリウス・プティパが手掛けた[注釈 1][5]

チャイコフスキーはこのバレエの題材をあまり気に入っていなかったが、振付家のプティパから最初の指示書きを受け取り、1891年2月には作曲に着手した[5][12]。チャイコフスキーは外国での演奏旅行の合間に作曲を進めたが、1891年4月にはフセヴォロジスキー宛ての手紙で、作曲が難航しており、締切を延期してほしい旨を訴えている[13]。それでも同年6月頃には下書きを完成させ、翌1892年3月頃に管弦楽配置を仕上げた[14]

本作の振付は、当初プティパが担当する予定だったが、1892年の夏に稽古が始まった頃から病に倒れてしまい、部下である副バレエ・マスターのレフ・イワノフが代行することとなった[3]。プティパがイワノフに引き継ぐ前にどこまで振付を完成させていたのかは明らかになっていないが、初演時のポスターには、台本はプティパ、振付はイワノフと記載されている[15]

初演

初演版第1幕。左から、くるみ割り人形、フリッツ、クララ。
初演版第2幕。金平糖の精(V・ニキーティナ)と王子(P・ゲルト

1892年12月18日(ロシア旧暦12月6日)、マリインスキー劇場において、オペラ『イオランタ』と共に、バレエ『くるみ割り人形』が初演された[3]。初日の主要キャストは、金平糖の精(ドラジェの精)がアントニエッタ・デルエラ、コクルーシュ王子(オルジャ王子)がパーヴェル・ゲルトであった[注釈 2][3][6]。クララ役のスタニスラワ・ベリンスカヤと、くるみ割り人形役のセルゲイ・レガート英語版はいずれも舞踊学校の生徒で、べリンスカヤは当時12歳であった[6][16]

この公演は、観客には好評であったものの、新聞評では不評であった[3]。批判を受けた点は、第一に、主演バレリーナが演じる金平糖の精が第2幕になるまで登場せず、見せ場が少なかったことである[3]。また、物語上の欠点としては、クララがお菓子の国へ行ったところで幕が下りてしまうので、その後クララがどうなるのかわからず、観客の納得のいく形で話が完結していないという点も批判された[3][17]

『くるみ割り人形』は、1893年1月までの間に『イオランタ』と共に11回上演され、その後も何度か上演されたが、1895年10月から1900年4月までの約4年半の間はマリインスキー劇場のレパートリーから外されていた[18]。1900年4月に久々に再演され、1909年にもニコライ・セルゲエフ英語版による改訂版が上演されたが、この時は初演版の演出に大きな変更が加えられることはなかった[18]

改訂演出

前述のとおり、『くるみ割り人形』は初演時から台本の不備が指摘されており、主演ダンサーの見せ場が少ないことや、物語の帰結が曖昧であることが批判されていた[17]。このような台本の欠点を補うべく、後年の改訂演出では様々な試みが行われた[3]。以下、いくつかの改訂演出とその特徴を挙げる(括弧内は初演年および初演バレエ団)[注釈 3]

  • A・ゴルスキー英語版版(1919年ボリショイ・バレエボリショイ劇場で本作を初演するにあたり、バレエマスターであるゴルスキーが改訂を行った[19]。ゴルスキーはスタニスラフスキーの影響の下、演劇性を重視したバレエを志向していた[19]。本作では、物語を原作小説に近づけるため、金平糖の精とコクルーシュ王子の役を削除し、結末を、クララとくるみ割り人形が王位に就くというものに変更した[19]。この演出は定着しなかったが、後世の改訂版に一定の影響を与えた[20]
  • V・ワイノーネン版(1934年GATOB[注釈 4]イワノフ版を初演したマリインスキー劇場では、フョードル・ロプホーフ英語版による2度の改訂を経て、1934年にワイノーネンによる新版が発表された[21]。この版は3幕構成で、主人公の名前はマーシャである[注釈 5][21]。演出上の特徴は、マーシャを大人のダンサーが演じたことであり、最終幕ではマーシャがくるみ割り人形の王子とパ・ド・ドゥを踊る[22]。この改変によって、幼い少女が夢の中で大人の女性へと成長を遂げるという明確なテーマが作品にもたらされた[21][23]。主人公の少女を大人のダンサーが踊る演出は、ワイノーネン版以降、『くるみ割り人形』の標準的な演出の一つとして定着している[21]
英国ロイヤル・バレエ団P・ライト版。金平糖の精(吉田都)と王子(S・マックレー英語版)。
  • P・ライト版(1984年英国ロイヤル・バレエ団この版は、物語に原作小説の設定を取り入れているのが特徴で、くるみ割り人形の正体はドロッセルマイヤーの甥とされている[24]。ドロッセルマイヤーは甥にかけられた呪いを解くために少女クララにくるみ割り人形を託し、クララの活躍によって甥は人間の姿に戻る[24][25]。またこの演出では、バレエ史家の監修の下、イワノフによる原振付を可能な限り再現している[25]。なお、クララと金平糖の精、くるみ割り人形とお菓子の国の王子は、イワノフ版と同じく、それぞれ別々のダンサーが演じる。この版は現在に至るまで、英国ロイヤル・バレエ団のレパートリーとして定着している[24][25]
  • P・ライト新版(1990年・バーミンガム・ロイヤル・バレエ団[25]ライトが1990年に発表した新演出は、1984年版と大きく異なる。クララはバレリーナを目指す15歳の少女という設定で、魔術師のドロッセルマイヤーが創り出した不思議な世界へ連れていかれる[26][27]。クララはその世界で、憧れのバレリーナである金平糖の精に変身し、王子の姿となったくるみ割り人形とパ・ド・ドゥを踊る[28]。この演出では、クララと金平糖の精は別々のダンサーが演じる[27][28]

この他に著名な演出としては、ジョージ・バランシン版(1954年、ニューヨーク・シティ・バレエ団)、ユーリー・グリゴローヴィチ版(1966年、ボリショイ・バレエ)、ルドルフ・ヌレエフ版(1967年、スウェーデン王立バレエ団)などがある[29]

また、初演版から踏襲されてきた物語設定を大きく変更し、現代的に再解釈した演出もある。バレリーナに憧れる少女が夢の中でバレエの舞台裏を垣間見るという設定のジョン・ノイマイヤー版(1971年)、孤児院を舞台にしたマシュー・ボーン版(1992年)、振付家自身の少年時代を題材とした自伝的作品であるモーリス・ベジャール版(1998年)などが挙げられる[30][31]

物語

原作

バレエ『くるみ割り人形』の原作は、アレクサンドル・デュマ・ペールによる童話はしばみ割り物語』(: Histoire d’un casse-noisette、1844年)である[注釈 6][32]。この童話は、ドイツE.T.A.ホフマンによる『くるみ割り人形とねずみの王様』(: Nußknacker und Mausekönig、1816年)を、デュマがフランス語に翻案した作品であり、あらすじは以下の通りである[注釈 7][32][33]

『はしばみ割り物語』の挿絵(ベルタル画)

舞台はドイツのニュルンベルク。7歳半の少女マリーは、クリスマス・プレゼントにくるみ割り人形をもらうが、兄のフリッツが人形の顎を壊してしまう。マリーはくるみ割り人形を優しく看病する。その夜、マリーの部屋にネズミの大群が現われ、人形たちと戦争を始める。マリーはくるみ割り人形に加勢するが、怪我をして気を失ってしまう。翌朝ベッドで目覚めたマリーは、昨晩の出来事を家族に話すが信じてもらえない。

そんなマリーに対し、伯父のドロッセルマイヤーは『堅いくるみとピルリパータ王女の物語』を話して聞かせる。美しい王女ピルリパータは、ネズミの呪いで醜い姿に変えられてしまった。王に呪いを解くよう命じられた職人ドロッセルマイヤーは、甥のナタニエルが割った堅いくるみを王女に食べさせ、王女を元の姿に戻すことに成功するが、代わりにナタニエルが醜い姿になってしまう。ナタニエルの呪いが解けるのは、彼がネズミの王様を倒した上で、美しい女性から愛されたときだけである。この話を聞いたマリーは、あのくるみ割り人形こそがナタニエルなのだと確信する。

その後、マリーの部屋に再びネズミが現れるようになる。するとくるみ割り人形は、自分に剣を授けてほしいとマリーに頼み、その剣でネズミの王様を倒す。くるみ割り人形は、自分が治めるおもちゃの国にマリーを招待する。2人は氷砂糖の野原やクリスマスの森、オレンジエードの川などを通り過ぎてケーキの宮殿へと辿り着き、くるみ割り人形の妹である王女たちの歓待を受けるが、それはマリーの見た夢にすぎなかった。現実の世界に戻ってしばらく経ったある時、マリーはくるみ割り人形に「あなたを心から愛している」と話しかける。その途端マリーは気を失い、目覚めると、ドロッセルマイヤーが甥の少年を連れてきていた。少年はマリーに対し、自分はナタニエルであり、マリーのおかげで呪いが解けたのだと告げて求婚する。2人は再びお菓子でできた国へと向かい、結婚式を挙げたのだった。

主な登場人物

ドロッセルマイヤー(左)から人形をもらうクララ(中央)
くるみ割り人形

あらすじ

演出によって物語の展開に相違があるが、あらすじは概ね次のような内容である[31][34][35]

第1幕第1場

第1幕第1場 ねずみと兵隊人形の戦い

主人公クララのいるシュタールバウム家では、友人たちを招いてクリスマス・イヴのパーティーが開かれている。招待客の中には、クララの名付け親のドロッセルマイヤーもいる。ドロッセルマイヤーは、子供たちに手品人形芝居を見せて驚かせた後、不格好なくるみ割り人形を取り出す。クララはなぜかその人形が気に入り、ドロッセルマイヤーに頼んでプレゼントしてもらう。クララの弟(兄)のフリッツが人形を横取りして壊してしまうが、ドロッセルマイヤーが修理してくれる。やがてパーティーはお開きとなり、客たちは家路につく。

真夜中、くるみ割り人形のことが気になったクララは、人形が置かれている大広間のクリスマスツリーの元へと降りていく。その時、時計が12時を打ち、クララの体がみるみる縮んでいく(舞台ではクリスマスツリーが大きくなることで表現される)。そこへねずみの大群が押し寄せ、くるみ割り人形の指揮する兵隊人形たちと戦争を始める。戦いはくるみ割り人形とねずみの王様の一騎討ちとなり、くるみ割り人形は窮地に陥るが、クララがとっさに投げつけたスリッパがねずみの王様に命中する。その隙にくるみ割り人形はねずみの王様を倒し、ねずみ軍は退散する。クララは倒れたくるみ割り人形を心配するが、起き上がったくるみ割り人形は、凛々しい王子の姿に変わっていた。

第1幕第2場

第1幕第2場 雪片の群舞

くるみ割り人形は自分を救ってくれたクララに感謝し、お礼にお菓子の国へと招待する。2人はが舞う森を抜けて、お菓子の国へと向かう。

第2幕

第2幕 グラン・パ・ド・ドゥ

お菓子の国に到着した2人は、女王である金平糖の精に迎えられる。クララを歓迎するため、チョコレートコーヒーお茶キャンディなどのお菓子の精たちが次々と踊りを繰り広げ、最後は金平糖の精と王子がグラン・パ・ド・ドゥを披露する[注釈 8]。しかし、楽しい夢はやがて終わりを迎える。朝が訪れ、自分の家で目を覚ましたクララは、傍らのくるみ割り人形を優しく抱きしめるのだった。

演出による違い

『くるみ割り人形』の演出は、クララと金平糖の精の扱いによって、概ね2系統に分けることができる[31]。一つは、クララを子役が演じ、金平糖の精を大人のダンサーが踊るもの(イワノフ版など)であり、上述のあらすじはこのケースである[31]。もう一つは、クララを大人のダンサーが演じるもの(ワイノーネン版など)であり、この場合、第2幕のグラン・パ・ド・ドゥは、金平糖の精に姿を変えたクララと、くるみ割り人形の王子によって踊られる[22][31][36]。前者の変形として、クララと金平糖の精を別々の大人のダンサーが演じる場合(ライト版など)もある[24][27][31]

楽曲

楽器編成

楽器編成は以下の通りである[4]

編成表
木管 金管
Fl. 3(第2・第3奏者ピッコロ持ち替え) Hr. 4 Timp. 1 Vn.1
Ob. 2、コーラングレ Trp. 2 大太鼓小太鼓タンブリンシンバルカスタネットグロッケンシュピールタムタムトライアングル Vn.2
Cl. 2、バス・クラリネット Trb. 3 Va.
Fg. 2 Tub. 1 Vc.
Cb.
その他ハープ2、チェレスタ(またはピアノ

舞台上におもちゃのトランペット、太鼓、シンバル他打楽器数種、24名の児童合唱(または女声合唱)。

作品構成

音楽・音声外部リンク
『くるみ割り人形』全曲(演奏会形式)

『くるみ割り人形』(全曲)
Y・ネゼ=セガン指揮、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団による演奏)

オランダ公共放送公式YouTubeより

全曲の演奏時間は約1時間25分(第1幕約45分、第2幕約40分)である[4]。以下、譜面に明記された各曲のフランス語名称[37]の日本語訳と、【 】内に音盤などで慣例的に用いられている名称、[ ]内に説明を記す。

  • 序曲 (Ouverture)
  • 第1幕
    • 第1曲 情景 (Scène) 【クリスマスツリー】
    • 第2曲 行進曲 (Marche)
    • 第3曲 子供たちの小ギャロップと両親の登場 (Petit galop des enfants et entrée des parents)
    • 第4曲 踊りの情景 (Scène dansante) 【ドロッセルマイヤーの贈り物】(Distribution des cadeaux)
    • 第5曲 情景と祖父の踊り (Scène et danse du grand-père)
    • 第6曲 情景 (Scène) 【招待客の帰宅、そして夜】(Départ des invités - Nuit)
    • 第7曲 情景 (Scène) 【くるみ割り人形とねずみの王様の戦い】(La Bataille)
    • 第8曲 情景 (Scène) 【松林の踊り】(Une forêt de sapins en hiver)
    • 第9曲 雪片のワルツ (Valse des flocons de neige)
  • 第2幕
    • 第10曲 情景 (Scène) 【お菓子の国の魔法の城】(Le Palais enchanté du Royaume des Délices)
    • 第11曲 情景 (Scène) 【クララと王子の登場】(L'Arrivée de Casse-noisette et de Clara)
    • 第12曲 ディヴェルティスマン (Divertissement) [登場人物たちの踊り]
      1. チョコレート (Le Chocolat - Danse espagnole) 【スペインの踊り】 [ボレロ
      2. コーヒー (Le Café - Danse arabe) 【アラビアの踊り】
      3. お茶 (Le Thé - Danse chinoise) 【中国の踊り】
      4. トレパック (Trépak - Danse russe) 【ロシアの踊り】
      5. 葦笛 (Les Mirlitons) 【フランスの踊り】
      6. ジゴーニュ小母さんと道化たち (La Mère Gigogne et les Polichinelles)
    • 第13曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
    • 第14曲 パ・ド・ドゥ (Pas de deux) 【金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ】
      1. 【アダージュ】
      2. ヴァリアシオン I (Var. I)[タランテラ
      3. ヴァリアシオン II 金平糖の精の踊り (Var.II Danse de la Fée-Dragée)
      4. コーダ (Coda)
    • 第15曲 終幕のワルツとアポテオーズ (Valse finale et apothéose)

演奏会用組曲

音楽・音声外部リンク
組曲『くるみ割り人形』
組曲『くるみ割り人形』(全曲) - C・ファン・アルフェン指揮、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。指揮者自身の公式YouTubeより
第8曲 花のワルツ - Giovanni Pacor指揮、中央ヨーロッパ管弦楽団による演奏。中央ヨーロッパ管弦楽団公式YouTubeより
第8曲 花のワルツ - Giulio Marazia指揮Orchestra Filarmonica Campanaによる演奏。Orchestra Filarmonica Campana公式YouTubeより

バレエ組曲『くるみ割り人形』(作品71a)は、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である[38]。1892年3月、『くるみ割り人形』の作曲中であったチャイコフスキーの元に演奏会の依頼が来た[38]。あいにく手元に新作がなく、また作曲する暇もなかったため、急遽作曲中の『くるみ割り人形』から8曲を抜き出して演奏会用組曲とした[38]。この組曲は、バレエの初演に先立ち、1892年3月19日(ロシア旧暦3月31日)に初演されて好評を得た[38]。以下は慣例名による。

第1曲 小序曲 (Ouverture miniature)
Allegro giusto、変ロ長調、4分の2拍子(複合2部形式。展開部を欠くソナタ形式とも取れる)。この小序曲のみ編成から低弦、つまりチェロコントラバスが除かれ、タセットを指示されている。このバレエ全体のかわいらしい曲想を感じさせる。おとぎ話のような主題がヴァイオリンにより提示される。これらはクラリネットフルートなどに引き継がれ、次第に大編成化する。すると一転してオーボエによる叫びがあり、メロディックで優雅な第2主題(ヘ長調)が提示される。この後、第1主題・第2主題(変ロ長調で再現)はそのまま反復される。
性格舞曲 (Danses caractéristiques)
第2曲 行進曲 (Marche)
Tempo di marcia viva、ト長調、4分の4拍子(ロンド形式)。A-B-A-C-A-B-Aの形を取る。
第3曲 金平糖の精の踊り (Danse de la Fée Dragée)
Andante non troppo、ホ短調、4分の2拍子(複合三部形式)。当時、発明されたばかりであったチェレスタを起用した最初の作品として広く知られる。当初、このパートは天使の声と喩えられた珍しい楽器アルモニカ(または別種の「ガラス製木琴」)のために書かれていた[要出典]。しかし、後に旅先のパリでチェレスタを見つけ、この楽器を使うことに決めた[39]。なお、チャイコフスキーはパリからチェレスタを取り寄せる際、楽譜出版社のユルゲンソンに送った手紙で「他の作曲家、特にリムスキー・コルサコフグラズノフに知られないように」という趣旨のことを書いており、他の作曲家に先を越されたくないという思いがあったようである[40][41]
第4曲 ロシアの踊り(トレパック) (Danse russe (Trepak))
Tempo di Trepak, Molto vivace、ト長調、4分の2拍子(複合三部形式)。
第5曲 アラビアの踊り (Danse arabe)
Allegretto、ト短調、8分の3拍子(変奏曲形式)。この曲のベースになった曲はグルジア民謡の子守唄である[42]
第6曲 中国の踊り (Danse chinoise)
Allegro Moderato、変ロ長調、4分の4拍子(小三部形式)。
第7曲 葦笛の踊り (Danse des mirlitons)
Moderato Assai、ニ長調、4分の2拍子(小ロンド形式)。A-B-A-C-Aの形を取る。おもちゃの笛「ミルリトン」が踊る。
第8曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
Tempo di Valse、ニ長調、4分の3拍子(複合三部形式)。序奏は、オーボエクラリネットファゴット、そしてハープが効果的に用いられ、ハープのカデンツァののちに、ホルンにより主題が提示される[43]。続くワルツの主題は弦楽部と管楽部の掛け合いによって反復される[44]。中間部にはオーボエとフルートの新たな主題が現れ、さらにヴィオラチェロによる主題が提示された後、再び第一主題へと戻り、終結する[45]

受容

本作は、バレエ以外のダンスとしても上演されることがある。2016年12月、雑誌『ニューズウィーク』では、2つのバレエの他にヒップホップブレイクダンスを合わせたもの、そして3つのバーレスクを紹介している[46]

脚注

注釈

  1. ^ 『くるみ割り人形』の台本作者は一般にプティパとされているが、本作について検討した平林正司は、台本作者はフセヴォロジスキーか、少なくとも台本には彼の意向が反映していると考えるべきである、と述べている。ただし、バレエの台本は複数人で合作する場合が多かったことから、フセヴォロジスキーが唯一の作者であるとまでは断定できないとしている(平林正司 1998, p.126)。
  2. ^ a b 金平糖の精」は、原語では「ドラジェの精」である。金平糖とドラジェは違う菓子だが、日本では「金平糖」の訳語が定着している(森田稔 1999, p.226)。また、英語圏では「シュガープラムの精」とも呼ばれる(The Nutcracker”. 英国ロイヤル・バレエ団. 2021年5月3日閲覧。The Nutcracker”. ニューヨーク・シティ・バレエ団. 2021年5月3日閲覧。)。
  3. ^ 『くるみ割り人形』の演出の変遷については、英語版記事(『くるみ割り人形』の演出一覧英語版)に詳しい。
  4. ^ マリインスキー劇場は、1917年のロシア革命後は「国立マリインスキー劇場」と呼ばれ、さらにその後「国立アカデミー・オペラ及びバレエ劇場(略称GATOB)」と改称された(デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル 2010, p.140)。
  5. ^ 主人公の名前は、1929年のロプホーフ版でクララからマーシャに変更されており、ワイノーネン版もこの設定を踏襲している(渡辺真弓 2014, p.57)。
  6. ^ 出版年については、1845年という説もある(平林正司 1998, p.6)。
  7. ^ ホフマンの原題にある「くるみ割り(Nußknacker)」という語は、デュマの翻案では「はしばみ割り(casse-noisette)」と訳された。これは、ドイツ語のNußknackerがクルミハシバミなどの堅果を割る道具全般を指すのに対し、フランス語の同義語には「casse-noix(くるみ割り)」と「casse-noisette(はしばみ割り。くるみ割りよりもやや小型の道具を指す)」の2つがあり、デュマが後者の訳語を採用したためである(平林正司 1998, pp.4-5)。ただし、以下に記す『はしばみ割り物語』のあらすじでは、出典とした邦訳書(小倉重夫訳)がcasse-noisetteを「くるみ割り」と訳出していることから、それに従った記載とする。
  8. ^ グラン・パ・ド・ドゥは、初演版では金平糖の精とコクルーシュ王子が踊ったが、改訂演出では、金平糖の精とくるみ割り人形の王子が踊り、コクルーシュ王子の役は削除されることが多い(小倉重夫 1989, p.239)。

出典

  1. ^ 森田稔 1999, p. 322.
  2. ^ デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル 2010, p. 159.
  3. ^ a b c d e f g h i 渡辺真弓 2014, p. 54.
  4. ^ a b c 音楽之友社 1993, p. 100.
  5. ^ a b c d e f g h i 渡辺真弓 2014, p. 53.
  6. ^ a b c 平林正司 1998, p. 3.
  7. ^ 平林正司 1998, p. 9.
  8. ^ ダンスマガジン編集部 1999, p. 34.
  9. ^ 森田稔 1999, pp. 213–215.
  10. ^ 森田稔 1999, pp. 219–220.
  11. ^ 小松佑子 2017, p. 364.
  12. ^ 森田稔 1999, pp. 215–217.
  13. ^ 森田稔 1999, p. 217.
  14. ^ 森田稔 1999, pp. 218, 222.
  15. ^ 森田稔 1999, pp. 229–230.
  16. ^ 森田稔 1999, p. 226.
  17. ^ a b 森田稔 1999, pp. 230–231.
  18. ^ a b 森田稔 1999, pp. 231–232.
  19. ^ a b c 森田稔 1999, pp. 233–234.
  20. ^ 森田稔 1999, p. 234.
  21. ^ a b c d 渡辺真弓 2014, p. 57.
  22. ^ a b c ダンスマガジン編集部 1998, p. 43.
  23. ^ 赤尾雄人 2010, pp. 64–66.
  24. ^ a b c d 西原朋未 2019.
  25. ^ a b c d 渡辺真弓 2014, p. 59.
  26. ^ 平林正司 1998, pp. 219–220.
  27. ^ a b c 岸夕夏 2020.
  28. ^ a b 平林正司 1998, p. 219.
  29. ^ 渡辺真弓 2014, p. 52.
  30. ^ ダンスマガジン編集部 1998, p. 45.
  31. ^ a b c d e f ダンスマガジン 2008, pp. 56–57.
  32. ^ a b 平林正司 1998, pp. 3–6.
  33. ^ アレクサンドル・デュマ 1991, pp. 5–190.
  34. ^ 長野由紀 2003, p. 199.
  35. ^ 長野由紀 2020, pp. 28–29.
  36. ^ 長野由紀 2003, pp. 199–200.
  37. ^ "The Nutcracker, Complete Ballet in Full Score", Dover Publications, 2004 ISBN 0-486-43836-8 による。
  38. ^ a b c d 音楽之友社 1993, p. 102.
  39. ^ 音楽之友社 1993, p. 101.
  40. ^ 音楽之友社 1993, pp. 100–101.
  41. ^ 小松佑子 2017, pp. 384–385.
  42. ^ 音楽之友社 1993, p. 109.
  43. ^ 小倉重夫 1989, p. 238.
  44. ^ 小倉重夫 1989, pp. 238–239.
  45. ^ 小倉重夫 1989, p. 239.
  46. ^ スタブ・ジブ「Life/style 『くるみ割り人形』の冬が来た!」『NewsWeek日本語版』50号(通巻1527号)CCCメディアハウス、2016年12月27日、58-59頁。

参考文献

  • 赤尾雄人『これがロシア・バレエだ!』新書館、2010年。ISBN 9784403231193 
  • 小倉重夫『チャイコフスキーのバレエ音楽』共同通信社、1989年。ISBN 4764102234 
  • 音楽之友社『作曲家別名曲解説ライブラリー⑧ チャイコフスキー』音楽之友社、1993年。ISBN 4276010489 
  • 岸夕夏 (2020年1月10日). “大役を見事に果たした山田悠未のクララと、ダンスの成熟が滲み出た近藤亜香の金平糖の精、オーストラリア・バレエ団のピーターライト版「くるみ割り人形」”. チャコット. 2021年4月26日閲覧。
  • デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル 著、鈴木晶、赤尾雄人、海野敏、長野由紀 訳『オックスフォード バレエダンス事典』平凡社、2010年。ISBN 9784582125221 
  • 小松佑子『チャイコーフスキイ伝 下巻 アダージョ・ラメント―ソはレクイエムの響き』文芸社、2017年。ISBN 9784286181851 
  • ダンスマガジン『バレエ・パーフェクト・ガイド』新書館、2008年。ISBN 9784403320286 
  • ダンスマガジン編集部『バレエ101物語』新書館、1998年。ISBN 9784403250323 
  • ダンスマガジン編集部『ダンス・ハンドブック』新書館、1999年。ISBN 4403250378 
  • アレクサンドル・デュマ 著、小倉重夫 訳『くるみ割り人形』東京音楽社、1991年。ISBN 4885642051 
  • 長野由紀『バレエの見方』新書館、2003年。ISBN 4403230997 
  • 長野由紀「バレエ名作ガイド くるみ割り人形」『ダンスマガジン』第30巻第10号、新書館、2020年10月1日。 
  • 西原朋未 (2019年1月31日). “フレッシュなキャストに感動~ロイヤルバレエ団渾身の『くるみ割り人形』/英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19”. SPICE. イープラス. 2021年4月7日閲覧。
  • 平林正司『『胡桃割り人形』論 ―至上のバレエ―』三嶺書房、1998年。ISBN 4882941147 
  • 森田稔『永遠の「白鳥の湖」  チャイコフスキーとバレエ音楽』新書館、1999年。ISBN 4403230644 
  • 渡辺真弓『チャイコフスキー三大バレエ 初演から現在に至る上演の変遷』公益財団法人新国立劇場運営財団情報センター、2014年。ISBN 9784907223069 

関連項目

外部リンク