マルチパン
マルチパン(独: Marzipan)またはマジパンは、スペインのトレドやラ・リオハ、ドイツのリューベックやシチリアのパレルモの名物として知られる洋菓子である。砂糖とアーモンドを挽いて練りあわせた、餡のような食感のある菓子で、独特の風味がある。
本来のスペイン語により近い読みは「マサパン (mazapán)」である。ドイツ語では「マルツィパン」という。イタリアでは「マルツァパーネ (marzapane)」または「パスタ・レアーレ (pasta reale)」という。フランス語では「マスパン (massepain)」または「パトダマンド (pâte d’amande)」、英語では「マージパン (marzipan)」、ポルトガル語では「マサパン (maçapão)」という。日本ではドイツ語読みが由来の「マルチパン」と英語読みが由来の「マジパン」の両方が普及しているが、現在のところは後者の方が主流である。
マルチパンの語源はアーモンドを粉砕し砂糖と混合した「maza」という説とアラビア語の「manthában」(mauthaは倉庫)に由来する説の2つがある。[1]
歴史[編集]
マルチパンは中世にアーモンドと砂糖が手に入りやすくなった中東で発明されたようである。10世紀のアッバース朝時代には、アーモンドを挽いてシロップに加えて煮詰め、色々な形に成形した、ロージナージュ・ヤビースという菓子があり、ハルヴァの一種として親しまれていた。ヨーロッパにはトルコ人によって東ヨーロッパ経由でドイツのバルト海沿岸に伝わったルートと、南からアンダルス(イベリア半島)やシチリアに伝わったルートの二つが考えられる。中世ヨーロッパでは、貴族の宴会でマルチパンが食べられていた。
ドイツでは1407年にリューベックが飢饉に陥った際、市参事会がパン職人に、市の倉庫に大量に眠っているアーモンドを使って何か食べるものを作って欲しいと依頼して創らせたのが起源と伝えられている。現在では市庁舎近くのカフェ・ニーダーエッガーがマルチパンの店としてドイツ全土にその名を轟かせている。
シチリアでは、マルトラーナ教会の修道院で、教会を復活祭の折りに訪問した大司教を驚かせるために果物そっくりの形をしたマルチパンが発明されたと言われている。このため、別名をフルッタ・ディ・マルトラーナ(Frutta di Martorana「マルトラーナの果物」)という。
この他、スペインのトレドやポルトガルのアルガルヴェ地方もマルチパンで有名である。
マルチパンの形と文化[編集]
マルチパンはさまざまな形に造形して着色した、一口大のものが一般的である。果物や野菜の形をしたものが多く、そのほかにも動物や人物など、いろいろなものがある。鮮やかに着色されているので、店先では菓子というよりままごと遊びの玩具のように見える。
モーツァルトクーゲルのようなチョコレートやシュトレンの中の詰め物に使ったり、薄く伸ばしてアイシングやクリームの代わりにケーキのデコレーションに使うこともある。ドイツの伝統的なウェディングケーキやクリスマスケーキはこのマルチパンを使ったデコレーションケーキが使われる。スウェーデンのプリンセスケーキも薄く伸ばしたマルチパンで覆われる。
ドイツでは祝い品として使われることも多く、有名なのは紙製の金貨をくわえた豚をかたどった「グリュックシュヴァイン」(Glückschwein、「幸福の豚」)である。オーストリアやドイツの一部地域などでは大晦日にこれを贈りあう習慣がある。
イタリアのシチリアなどでは、復活祭に子羊の形のマルチパンを食べる習慣がある。また、復活祭にシチリアの女性は婚約者にハート型のマルチパンを贈る[2]。
サンタ等のマルチパンがのったビュッシュ・ド・ノエル。
参考文献[編集]
- ^ Mazapan.es.
- ^ Carol Field. Celebrating Italy. Harper Perennial, 1997年。418頁
関連項目[編集]
- ペルシパン:マジパンに使われるアーモンドの代わりに桃や杏の仁(種の中身)を使用した物
- カリソン:フランス・プロヴァンス地方の伝統菓子アーモンド・砂糖・ドライフルーツから成る
- ハルヴァ:穀物、胡麻、野菜、または果物に油脂と砂糖を加えて作られる菓子
- トゥロン:スペインのクリスマス伝統菓子
外部リンク[編集]
ウィキメディア・コモンズには、マルチパンに関するカテゴリがあります。- カフェ・ニーダーエッガー(ドイツ語)
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