マッチ売りの少女
マッチ売りの少女(マッチうりのしょうじょ 丁: Den lille Pige med Svovlstikkerne)は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの創作童話の一つ。
概要[編集]
アンデルセンは、マッチを持つ少女の後姿を描いた木版画から着想を得てこの作品を書いた。これは、絵を材料に童話を書くように編集者から依頼された際に見せられた3枚の絵のうちの1枚であり、貧困のうちに亡くなった母を思い出したのだとされている[1][2]。母をモデルにしたとも、貧しい者を見捨てる当時のデンマーク社会への批判ともいわれている[3]。
尚、彼の母が少女時代にマッチを売っていた、という説があるが、母アネ・マリー・アナスダター(Anne Marie Andersdatter)は1775年生まれ(諸説あり)、1833年死去[4]であり、マッチが発明されたのは1827年、母が52歳のときである[5]ため、この説は誤りである[3]。
1848年、『新童話集Ⅱ-2』に収録されたのが初出[6]。
アメリカの絵本では、主人公の少女は死ぬ直前に心優しい金持ちに助けられるという結末に改変されている場合がある[1][2]。
ストーリー[編集]
年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、寒空の下でマッチを売っていた。マッチが売れなければ父親に叱られるので、すべてを売り切るまでは家には帰れない。しかし、街ゆく人々は、年の瀬の慌ただしさから少女には目もくれず、目の前を通り過ぎていくばかりだった。
夜も更け、少女は少しでも暖まろうとマッチに火を付けた。マッチの炎と共に、暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が一つ一つと現れ、炎が消えると同時に幻影も消えるという不思議な体験をした。
天を向くと流れ星が流れ、少女は可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言ったことを思いだした。次のマッチをすると、その祖母の幻影が現れた。マッチの炎が消えると祖母も消えてしまうことを恐れた少女は、慌てて持っていたマッチ全てに火を付けた。祖母の姿は明るい光に包まれ、少女を優しく抱きしめながら天国へと昇っていった。
新しい年の朝、少女はマッチの燃えかすを抱えて幸せそうに微笑みながら死んでいた。しかし、この少女がマッチの火で祖母に会い、天国へのぼったことは誰一人知る由はなかった。
小説以外のメディア[編集]
オペラ・声楽曲[編集]
- ヘルムート・ラッヘンマン作曲:オペラ『マッチ売りの少女』
- 1997年に初演された。台本には、本作のほかにレオナルド・ダ・ヴィンチ[9]と、ドイツ赤軍の創設者の一人グドルン・エンスリン[10]のテキストが用いられている。楽器に笙を用いる[11]。
- 2007年に作曲された。バッハの『マタイ受難曲』『ヨハネ受難曲』を下敷きとしながら、ラング独特のポストミニマル・ミュージック的かつ強烈な音響で作曲されている[12]。2008年にピュリッツァー賞を受賞した[13]。
実写映画[編集]
- The Little Match Seller 監督:ジェイムズ・ウィリアムソン(1902年 イギリス)[14]
アニメ[編集]
日本において少なくとも5回アニメ化されている。東宝チャンピオンまつりのバージョンについては独立節を設ける。
- アンデルセン物語版:1971年12月26日放送(第52話〈最終回〉)少女にアンナと名前がつけられている。アンナに友人の男の子がいたり、人々がアンナを探したり、父親がアンナの死(この時、アンナの友人に怒りをぶつけられる)に号泣するなどの設定が加えている。
- 東映まんがまつり版:1975年12月20日公開
- まんが世界昔ばなし版:1976年12月23日放送(第24話)
- 雪の女王 (NHKアニメ)版:2005年10月2日放送(第19話)少女にマリアと名前がつけられている。両親はすでに亡くなっており、親代わりの親方もいない。また、熊のぬいぐるみを持っているが、19話の終盤で失う。ゲルダが地元の修道院に相談してマリアに救いの手を差し伸べようとしたが、一足違いで家主に追い出され、原作通りの結末になった。
- サンリオの世界名作劇場では「ハローキティのマッチ売りの少女」としても作られている。こちらも両親はすでに亡くなっており、変わりに親方が親代わりになっている。また、人々が少女(キティ)の死に気付いていない。
- 2006年にディズニーによって短編映画作品として製作されており、同年に発売された『リトル・マーメイド』のDVDに特典映像として収録されている。この作品は第79回アカデミー賞で短編アニメ映画賞の候補になった。
- アニメ・ライトノベル『メルヘン・メドヘン』に登場するアメリカ校のリン・デイヴスが契約している原書として登場。
東宝チャンピオンまつり[編集]
| マッチ売りの少女 | |
|---|---|
| 監督 | 渡辺邦彦(「演出」) |
| 脚本 | 神保まつえ |
| 原作 | ハンス・クリスチャン・アンデルセン |
| 製作 |
原正次 石川茂樹(「企画」) |
| 出演者 |
里見京子 新道乃里子ほか |
| 音楽 | 林光 |
| 撮影 | 平井寛 |
| 製作会社 | 学研映像局 |
| 配給 | 東宝 |
| 公開 |
|
| 上映時間 | 18分 |
| 製作国 |
|
| 言語 | 日本語 |
1971年12月12日公開の『東宝チャンピオンまつり』内で上映。18分。文部省特選[15]。
学研映像局製作による人形アニメーションで、作品は1967年7月に完成したが、公開はかなり遅れた。なお『東宝チャンピオンまつり』で人形アニメが上映されたのは、本作が最後となった。
- スタッフ
- 声の出演
- テレビ放送
脚注[編集]
- ^ a b 浦山明俊 『絵本とは違いすぎる原典アンデルセン童話』 ぶんか社、1999年、201-208頁。ISBN 4-8211-0676-0。
- ^ a b 山室静 『アンデルセンの生涯』 新潮社、2005年、258頁。ISBN 4-10-600173-X。
- ^ a b 須田諭一 『おとなになって読むアンデルセン』 メトロポリタンプレス、2014年、92-95頁。ISBN 978-4-904759-84-4。
- ^ 早野勝巳 『アンデルセンの時代』 東海大学出版会、1991年、25頁。ISBN 4-486-01167-8。
- ^ Edward Irving Carlyle (英語). Dictionary of National Biography (DNB)Band 59. New York City/London: MacMillan & Co, Smith, Elder & Co.. pp. 77-78.
- ^ ヨハネス・ミュレヘーヴェ 『アンデルセンの塩』 大塚絢子訳、新評論、2005年、270-281頁。ISBN 4-7948-0653-1。
- ^ “Den lille pige med svovlstikkerne (Enna, August)”. IMSLP. 2018年12月26日閲覧。
- ^ “Den lille pige med svovlstikkerne; musikalsk eventyr i en akt efter H.C. Andersen af August Enna. Textbearbejdelsen ved Ove Rode.”. HathiTrust's digital library. 2018年12月26日閲覧。
- ^ “ラッヘンマン:歌劇「マッチ売りの少女」”. NAXOS Music Library. ナクソス・ジャパン株式会社. 2018年12月28日閲覧。
- ^ “東京交響楽団第467回定期演奏会 21世紀への挑戦《マッチ売りの少女》”. オペラ情報センター. 昭和音楽大学オペラ研究所. 2019年1月1日閲覧。
- ^ ヘルムート・ラッヘンマン(作曲) (2004年7月7日). ラッヘンマン:マッチ売りの少女 (CD). ユニバーサル ミュージック合同会社.
- ^ David Lang. “little match girl passion (for chorus)”. davidlangmusic.com. 2018年10月4日閲覧。
- ^ “the little match girl passion”. Los Angeles Master Chorale. 2012年5月10日閲覧。
- ^ “The Little Match Seller (1902)”. IMDb. 2018年12月28日閲覧。
- ^ 山部のり子[編集]、赤津さと子[編集]、深沢光太郎[編集] 『アニメチラシ大カタログ:邦画版』 勁文社、2000年、89頁。ISBN 9784766932652。
外部リンク[編集]
- 『マッチ売りの少女』:新字新仮名 - 青空文庫(大久保ゆう訳)
- 『マッチ売りの少女』:新字新仮名 - 青空文庫(結城浩訳)
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