クリス・デービス (内野手)

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クリス・デービス
Chris Davis
ボルチモア・オリオールズでの現役時代
(2015年4月15日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 テキサス州ロングビュー
生年月日 (1986-03-17) 1986年3月17日(38歳)
身長
体重
6' 4" =約193 cm
255 lb =約115.7 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 一塁手三塁手
プロ入り 2006年 MLBドラフト5巡目
初出場 2008年6月26日
最終出場 2020年9月28日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

クリストファー・リン・デービスChristopher Lyn Davis, 1986年3月17日 - )は、アメリカ合衆国テキサス州ロングビュー出身の元プロ野球選手一塁手)。右投左打。愛称はクラッシュCrush[1]

経歴[編集]

プロ入り前[編集]

2004年MLBドラフトニューヨーク・ヤンキースから50巡目で指名されたが、契約には至らなかった。

2005年MLBドラフトロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムから35巡目で指名を受けたが、契約には至らなかった。

プロ入りとレンジャーズ時代[編集]

2006年MLBドラフト5巡目(全体148位)でテキサス・レンジャーズに入団[2]

2007年にA+級ベーカーズフィールド・ブレイズとAA級フリスコ・ラフライダーズで150三振ながら打率.297、36本塁打、118打点を記録。オフに「ベースボール・アメリカ」誌からレンジャーズでエルビス・アンドラスに次ぐ2位、全体では65位の有望株に選ばれた[3]

2008年6月26日のヒューストン・アストロズ戦でメジャーデビュー。シーズン終了までに80試合に出場して打率.285、17本塁打、55打点、OPS.880の成績だった。

テキサス・レンジャーズでの現役時代(2009年)

2009年はMLB史上最速の219打数目でシーズン100三振に到達[4]。最終的に113試合に出場し21本塁打を放った。

2010年は、ジャスティン・スモークミッチ・モアランドらの台頭などにより、出番は減少した。

2011年はAAA級ラウンドロック・エクスプレスで48試合に出場し、打率.368、24本塁打という成績を残した。

オリオールズ時代[編集]

2011年7月30日に上原浩治とのトレードで、トミー・ハンターと共にボルチモア・オリオールズへ移籍した[5]

2012年5月6日のボストン・レッドソックス戦では延長戦が長引いたことで両チーム共に控え投手がいなくなったため、レッドソックスは外野手のダーネル・マクドナルド、オリオールズは短大時代にリリーフ投手の経験があるデービスが緊急登板。92mphの速球やチェンジアップを駆使し、強打者のエイドリアン・ゴンザレスジャロッド・サルタラマッキアから三振を奪うなど2イニングを無失点に抑え、野手でありながら初登板で初勝利を記録した[6][7]。スコアは9-6。

2013年は、開幕から好調で前半戦だけで37本塁打を記録した。また、オールスターゲームにも最多投票で選出された。[8]本人の希望とロビンソン・カノの指名もあり本塁打競争にも出場した。結局53本塁打、138打点でアメリカン・リーグの本塁打王、打点王の二冠のタイトルを獲得した。同一シーズンでの40二塁打・50本塁打達成はベーブ・ルースアルバート・ベル以来史上3人目の快挙だった[9]

2014年1月17日にオリオールズと1035万ドルの1年契約に合意した[10][11]。9月12日に薬物検査の際、アンフェタミンに陽性反応を示したため、25試合の出場停止処分を受けた[12]。この出場停止処分がありながら規定打席に到達したが、打率.196(規定打席到達者としてリーグワースト[13])、26本塁打、72打点と打撃3部門で前年から大きく数字を落とした。

2015年8月10日の対シアトル・マリナーズ戦でセンター後方に30号本塁打を打ち込み、2シーズンぶりに30本塁打に到達した[14]。その後も本塁打を量産し、10月4日のレギュラーシーズン最終戦では2本塁打を記録[15]。この2本で47本塁打とし、2位のネルソン・クルーズマリナーズ)との差を3本に伸ばして、自身2度目となるア・リーグ本塁打王のタイトルを獲得した。また、これは2015年のMLBでは最多の本数でもあったにもかかわらず本塁打を5本もキャッチされた。一方で、前回本塁打王を獲得した2013年と同様、三振の数も本塁打と比例して増大し、史上5人目の200三振となるメジャーワーストの208三振を喫した。同年にFA資格を得たため、11月2日にFAとなった[16]

2016年1月21日にオリオールズと7年総額1億6100万ドルで契約を結んだ[17]。本塁打王になった翌年は不振になるという前回のジンクス同様、この年もシーズン通じて打率が上がらずに、最終打率は.221に留まった。また、マーク・レイノルズ以来となる2年連続200超かつ自己ワーストを更新する、アメリカンリーグ歴代2位、MLB歴代ワースト3位[18]の219三振を喫した。本塁打こそ38本放ったものの、打点も100に届かなかった。

2017年は故障による1か月の欠場があり、打撃3部門で前年よりも成績を落とした。

2018年は開幕から成績が低迷し、7月頃にはロブ・ディアー(1991年)とダン・アグラ(2013年)が保持していた歴代最低の年間打率.179を更新するのではないかと言われるようになった[19]。9月5日には記録更新を回避できる打率.180まで持ち直していたものの[20]、そこから37打数1安打、20三振と不振を極め[20]、シーズン残り4試合となった時点で監督のバック・ショーウォルターは今季これ以上デービスを起用しないと発表した[20]。結局、規定打席到達者としてのMLB史上最低年間打率を更新する.168でシーズンを終えた[21][注 1]

2019年4月13日、シーズン初の安打を記録した[25]。前年9月14日以来となる安打で[25]、その間デービスは54打数、62打席にわたって無安打を続けていた[25]。これにより、従来の野手のメジャーリーグ最長記録であるエウヘニオ・ベレス英語版の46打数連続無安打[26]トニー・バナザードの57打席連続無安打[26]の両方を更新した[注 2]

2020年COVID-19の影響で全60試合に短縮される。怪我と打撃不振の影響で16試合の出場に留まり、打率.115、1打点、本塁打はMLB昇格後初めて0本に終わった。

2021年はオープン戦で2打席立っただけで、開幕から故障者リスト入りする。5月19日に左股関節の手術を行い、シーズンの復帰が絶望的と報じられた[28]。8月11日には度重なる故障や腰の手術により現役引退を表明した[29]

選手としての特徴[編集]

2011年まではマイナーリーグベースボールのAAA級ではトップクラスの成績を記録するが、MLBに昇格すると結果を出せない典型的な「AAAA級選手」であった。選球眼に欠け、低出塁率三振の多さという致命的な欠点を解消できずにいた[30]。しかし、2012年からMLBに定着して33本塁打を放ち、2013年には本塁打王と打点王を獲得した。

詳細情報[編集]

年度別打撃成績[編集]

















































O
P
S
2008 TEX 80 317 295 51 84 23 2 17 162 55 1 2 0 1 20 1 1 88 5 .285 .331 .549 .880
2009 113 419 391 48 93 15 1 21 173 59 0 0 0 2 24 2 2 150 6 .238 .284 .442 .726
2010 45 136 120 7 23 9 0 1 35 4 3 0 0 1 15 3 0 40 3 .192 .279 .292 .571
2011 28 81 76 9 19 3 0 3 31 6 0 0 0 0 5 0 0 24 2 .250 .296 .408 .704
BAL 31 129 123 16 34 9 0 2 49 13 1 0 0 0 6 1 0 39 2 .276 .310 .398 .708
'11計 59 210 199 25 53 12 0 5 80 19 1 0 0 0 11 1 0 63 4 .266 .305 .402 .707
2012 139 562 515 75 139 20 0 33 258 85 2 3 0 3 37 6 7 169 8 .270 .326 .501 .827
2013 160 673 584 103 167 42 1 53 370 138 4 1 0 7 72 12 10 199 4 .286 .370 .634 1.004
2014 127 525 450 65 88 16 0 26 182 72 2 1 1 5 60 9 9 173 2 .196 .300 .404 .704
2015 160 670 573 100 150 31 0 47 322 117 2 3 0 5 84 6 8 208 6 .262 .361 .562 .923
2016 157 665 566 99 125 21 0 38 260 84 1 0 0 3 88 3 8 219 6 .221 .332 .459 .792
2017 128 524 456 65 98 15 1 26 193 61 1 1 0 4 61 4 3 195 7 .215 .309 .423 .732
2018 128 522 470 40 79 12 0 16 139 49 2 0 0 4 41 2 7 192 5 .168 .243 .296 .539
2019 105 352 307 26 55 9 0 12 100 36 0 0 0 3 39 1 3 139 6 .179 .276 .326 .601
2020 16 55 52 3 6 3 0 0 9 1 0 0 0 0 3 0 0 17 0 .115 .164 .173 .337
MLB:13年 1417 5630 4978 707 1160 228 5 295 2283 780 19 11 1 38 555 50 58 1852 62 .233 .315 .459 .774
  • 2020年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別投手成績[編集]





















































W
H
I
P
2012 BAL 1 0 0 0 0 1 0 0 0 1.000 8 2.0 2 0 1 0 0 2 0 0 0 0 0.00 1.50
2019 1 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 5 1.0 2 1 0 0 0 1 0 0 1 1 9.00 2.00
MLB:2年 2 0 0 0 0 1 0 0 0 1.000 13 3.0 4 1 1 0 0 3 0 0 1 1 3.00 1.67
  • 2020年度シーズン終了時

年度別守備成績[編集]



一塁(1B) 三塁(3B) 左翼(LF) 右翼(RF)
















































2008 TEX 51 358 34 1 52 .997 32 31 44 3 5 .962 - -
2009 100 845 47 3 82 .997 11 9 8 2 1 .895 - -
2010 41 269 22 2 27 .993 1 0 1 0 0 1.000 - -
2011 15 87 1 0 11 1.000 9 4 17 3 2 .875 - -
BAL 16 144 8 0 14 1.000 17 10 18 5 3 .848 - -
'11計 31 231 9 0 25 1.000 26 14 35 8 5 .860 - -
2012 38 342 28 4 37 .989 - 11 23 0 1 0 .958 30 59 3 1 0 .984
2013 155 1339 75 6 153 .996 - - -
2014 115 909 52 4 97 .996 21 9 22 4 3 .886 - -
2015 111 882 53 3 77 .997 - - 30 39 2 0 0 1.000
2016 152 1325 62 10 138 .993 - - 3 5 0 0 0 1.000
2017 125 1015 80 7 122 .994 2 0 0 0 0 ---- - -
2018 116 913 67 5 98 .995 - - -
2019 97 671 37 4 86 .994 - - 1 1 0 1 0 .500
2020 15 105 7 3 8 .974 - - -
MLB 1147 9204 573 52 1002 .995 93 63 110 17 14 .911 11 23 0 1 0 .958 64 104 5 2 0 .982
投手守備


投手(P)












2012 BAL 1 0 0 0 0 ----
2019 1 0 0 0 0 ----
MLB 2 0 0 0 0 ----
  • 2020年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

タイトル[編集]

表彰[編集]

記録[編集]

MLB記録
球団記録
  • ボルチモア・オリオールズのシーズン個人最多本塁打: 53(2013年)[31]

背番号[編集]

  • 62(2008年)
  • 19(2008年 - 2021年)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 規定打席到達者ではなく「打撃ランキング対象となる打者(qualified hitter)」のMLB最低年間打率としては、1909年にビル・バーゲンの記録した打率.139がある[22][23]。1909年当時、打撃ランキング対象となるための条件は「規定打席に達すること」ではなく、「所属チームの全試合の60%以上に出場すること」であった[24]
  2. ^ a b 野手に限定せず投手を含めたメジャーリーグの連続無安打記録としては、ボブ・ビュール英語版投手の85打数連続無安打がある[27]

出典[編集]

  1. ^ Orioles Players Weekend nicknames explained MLB.com (英語) (2017年8月24日) 2017年9月5日閲覧
  2. ^ 2006 Draft Picks for Round #5. The Baseball Cube(英語). 2012年1月28日閲覧
  3. ^ Top 100 Prospects: No. 61-80. BaseballAmerica.com(英語). 2012年1月28日閲覧
  4. ^ T.R. Sullivan (2009年6月21日). “Davis on record strikeout pace” (英語). MLB.com. 2016年1月22日閲覧。
  5. ^ T.R. Sullivan (2011年7月30日). “Rangers add Uehara to 'pen for Davis, Hunter” (英語). MLB.com. 2016年1月22日閲覧。
  6. ^ “延長17回で87年ぶり珍事 投手のコマ尽きる 両軍とも野手がマウンドへ”. スポニチアネックス (スポーツニッポン). (2012年5月7日). http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2012/05/07/kiji/K20120507003200830.html 2016年1月22日閲覧。 
  7. ^ Todd Wills (2012年5月8日). “MLB: Chris Davis pitches first game since Navarro College”. Corsicana Daily Sun. 2016年1月22日閲覧。
  8. ^ Paul Casella (2013年7月15日). “With three All-Star starters, O's a formidable presence” (英語). MLB.com. 2016年1月22日閲覧。
  9. ^ オリオールズ デービスが50号 40二塁打と史上3人目の快挙”. スポーツニッポン (2013年9月15日). 2016年11月9日閲覧。
  10. ^ "Orioles agree to terms with Davis, Hunter, Matusz, Norris and Patton" (Press release) (英語). MLB.com (Baltimore Orioles). 17 January 2014. 2023年5月23日閲覧
  11. ^ Andrew Simon (2014年1月17日). “Davis' breakout season nets massive pay raise” (英語). MLB.com. 2016年1月22日閲覧。
  12. ^ “オリオールズのデービスが薬物違反で出場停止 昨季の本塁打王”. スポニチアネックス (スポーツニッポン). (2014年9月13日). http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/09/12/kiji/K20140912008921440.html 2016年1月22日閲覧。 
  13. ^ 検索結果(2014年のアメリカンリーグ打率、規定打席到達者限定、昇順)、FanGraphs、2018年10月2日閲覧。
  14. ^ August 10, 2015 BAL VS SEA - Baseball-Reference.com (英語) . 2015年8月16日閲覧。
  15. ^ October 4, 2015 NYY VS BAL - Baseball-Reference.com (英語) . 2015年10月5日閲覧。
  16. ^ Transactions | orioles.com”. MLB.com. 2015年11月3日閲覧。
  17. ^ Brittany Ghiroli (2016年1月21日). “O's boy! Davis' club-record $161M deal official” (英語). MLB.com. 2016年1月22日閲覧。
  18. ^ Single-Season Leaders & Records for Strikeouts - Baseball-Reference.com (英語) . 2016年10月8日閲覧。
  19. ^ Matt Snyder (2018年7月12日). “Orioles slugger Chris Davis is in the midst of a historically bad season”. CBS Sports. https://www.cbssports.com/mlb/news/orioles-slugger-chris-davis-is-in-the-midst-of-a-historically-bad-season/ 2018年10月2日閲覧。 
  20. ^ a b c David Ginsburg (2018年9月28日). “Orioles Davis calls it a season with record-low .168 average”. Associated Press. https://apnews.com/a9a24ad0275c48488cd0fd8061f931a4/Orioles-Davis-calls-it-a-season-with-record-low-.168-average 2018年10月2日閲覧。 
  21. ^ a b 183億円強打者が不名誉な記録 規定打席歴代ワーストの打率「.168」でシーズン終える”. THE ANSWER. 株式会社Creative2 (2018年10月1日). 2018年10月2日閲覧。
  22. ^ Lynn Zinser (2011年8月3日). “Bill Bergen's Awesome Record of Baseball Futility”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2011/08/04/sports/baseball/bill-bergens-awesome-record-of-baseball-futility.html 2018年10月6日閲覧。 
  23. ^ Joe Dittmar. “Bill Bergen”. SABR.org. SABR(アメリカ野球学会). 2018年10月6日閲覧。
  24. ^ Leaderboard Glossary: What are the minimum requirements to lead a Rate Stat?”. Baseball-Reference.com. Sports Reference. 2018年10月6日閲覧。
  25. ^ a b c d e Jessica Camerato (2019年4月13日). “It's a hit! Chris Davis ends hitless streak”. MLB.com. 2019年4月14日閲覧。
  26. ^ a b c d Joe Trezza (2019年4月8日). “Chris Davis breaks hitless streak record”. MLB.com. 2019年4月14日閲覧。
  27. ^ Orioles' Chris Davis ends 0-for-54 skid in win over Red Sox”. Associated Press (2019年4月14日). 2019年4月14日閲覧。
  28. ^ オリオールズの元本塁打王デービスがシーズン全休へ 今季も復活ならず”. 日刊スポーツ (2021年5月20日). 2021年5月20日閲覧。
  29. ^ Orioles' Chris Davis Announces His Retirement” (英語) (2021年8月12日). 2021年8月12日閲覧。
  30. ^ Connolly, Dan(2011-07-30). Emotional Koji talks about being traded. The Baltimore Sun(英語). 2012年1月28日閲覧
  31. ^ Baltimore Orioles Single Season Home Runs Leaders”. Baseball Almanac. 2023年5月23日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]