Portal:法学/ニュース/過去ログ/2007年

2007年12月[編集]

  • (新判例)12月25日付-最高裁第三小法廷決定-刑事訴訟法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠には、必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず、当該事件の捜査の過程で作成され、又は入手した書面等であって、公務員が職務上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易なものを含む。取調警察官が、犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって、取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され、捜査機関において保管されている書面は、個人的メモの域を超え、捜査関係の公文書ということができる。これに該当する備忘録については、当該事件の公判審理において、当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には、証拠開示の対象となり得る。これに反する広島高裁2006年8月25日決定、名古屋高裁2007年5月25日決定の判例は変更する。-公判前整理手続期日間整理手続
  • (新判例)12月18日付-最高裁第三小法廷決定-弁護士に対する業務停止3月の懲戒処分について、業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件もの訴訟案件を受任していたなどの事情の下で、上記懲戒処分によって生じる社会的信用の低下、業務上の信用の毀損等の損害が行政事件訴訟法25条2項の「重大な損害」に該当するとして執行停止を認めた事例。
  • (新判例)12月18日付-最高裁第三小法廷判決-1953年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は、2003年改正による著作権の保護期間延長の対象にならず、2003年12月31日の終了をもってその著作権は消滅した。
  • (新判例)12月18日付-最高裁第三小法廷判決-学校法人が、職員の給与について人事院勧告に倣って改定しており、改定後の給与を勧告前の4月に遡って遡及し従前の増額改定の際は11月末に差額分を支給しており、期末勤勉手当は5月の理事会で算定基礎額及び乗率を決定していたが11月の理事会で人事院勧告をうけ正式に決定すると留保していた場合において、人事院勧告において減額勧告がなされた場合に、11月理事会で12月の期末手当で4月分から11月分の給与について減額調整を行うと決定し、そのように支払った場合でも、11月理事会の決定が、既に発生した具体的な期末勤勉手当請求権を処分又は変更したものであるということができないから、労働条件の不利益変更とみることはできず、仮に5月理事会の期末勤勉手当の支給額算定方法の定めが就業規則の一内容であったと解し、11月理事会の決定が不利益変更に当たると解しても、11月理事会の決定は合理性を有するとされた事例。
  • (新判例)12月13日付-最高裁第一小法廷判決-国家公務員法76条、38条2号において禁錮以上の刑に処せられた者が当然失職する旨を定めた規定が、私企業労働者と比べて不当に差別したといえず、憲法13条14条1項に反しない。その上で、禁錮以上の刑に処せられたが、失職事由のあることを職員自身を隠し続け、その後26年11ヶ月にわたり勤務した後失職事由があることを任命権者が主張された場合について、職員自身の失職を主張することが信義則に反するものとはいえないとされた。
  • (新判例)12月13日付-最高裁第三小法廷決定-被告人が第一審判決で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた場合で、控訴審において勾留する場合、刑訴法60条1項所定の「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断は、無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重になされなければならず、嫌疑の程度としては、第1審段階におけるものよりも強いものが要求される。
  • (新判例)12月12日付-最高裁第二小法廷決定-被疑者勾留請求にあたり刑訴規則148条1項3号所定の検察官裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号後段の法律関係文書に該当する。本案訴訟が検察官の強姦を被疑事実とする勾留請求に対する国家賠償訴訟であるところ、本案訴訟の最も基本となる資料で取調べの必要性は高く、被害者が被疑者を相手に損害賠償訴訟を提起し、本案訴訟で国が本件各文書の内容について詳細かつ具体的な記述をした勾留請求を担当した検察官による陳述書が提出されているなどの事情の下で、上記各文書が民訴法220条3号所定の法律関係文書に該当するとして文書提出命令が申し立てられた場合に、刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断が、裁量権の逸脱濫用にあたるとして文書提出命令が認められた。
  • (新判例)12月11日付-最高裁第三小法廷決定-金融機関民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について、当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には、当該顧客情報は金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有する場合は別として、民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されない。そして、金融機関と顧客との取引履歴が記載された取引明細表が、顧客自身が所持しているとすれば民訴法4号所定の除外事由に該当せず、文書提出義務がある場合において、本件明細表は、職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえないから同法220条4号ハ、197条1項3号に基づき文書提出を拒むことはできないとされた。-文書提出命令
  • 12月7日付-法務省は、3名の死刑囚に対し死刑を執行したが、はじめて死刑執行に際し、従来発表された人数のみならず、執行されたものの氏名と犯罪事実の要旨を公表した。
  • (新判例)12月7日付-最高裁第二小法廷判決-海岸法37条の4により一般公共海岸区域の占用の許可をするためには、行政財産の使用又は収益の許可の要件が満たされている必要があるというべきであって、一般公共海岸区域は、その用途又は目的を妨げない限度において、その占用の許可をすることができるものと解するのが相当である。したがって、一般公共海岸区域の占用の許可の申請があった場合において、申請に係る占用が当該一般公共海岸区域の用途又は目的を妨げるときには、海岸管理者は,占用の許可をすることができないものというべきである。また、前記の場合において、申請に係る占用が当該一般公共海岸区域の用途又は目的を妨げないときであっても、海岸管理者は、必ず占用の許可をしなければならないものではなく、海岸法の目的等を勘案した裁量判断として占用の許可をしないことが相当であれば、占用の許可をしないことができるものというべきである。もっとも、本件においては採石業を営む者が岩石搬出用の桟橋を設けるため一般公共海岸区域の占用申請に対し県土木事務所長が不許可としたが、その処分は特に海岸を現に公衆に利用したり海岸管理者が使用せず、桟橋の撤去が容易であり、搬出のために陸上の道路を用いることが困難であったなどの事情のもとで、裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものであるとされた。
  • 12月5日付-最高裁第三小法廷は土地区画整理事業の事業計画決定について取消訴訟が提起できるか争われている訴訟を大法廷に回付した。本件においては、1966年の土地区画整理事業計画の事業計画決定には処分性がないとして訴えを却下した判例(通称・青写真判決)があり、判例変更の可能性もある。‐行政事件訴訟法
  • (新判例)12月4日付-最高裁第三小法廷決定-民事訴訟において、訴訟上の救助の決定(以下「救助決定」という。)を受けた者の全部敗訴が確定し、かつ、その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合には、救助決定は当然にその効力を失い、裁判所は、救助決定を民事訴訟法84条の規定に従って取り消すことなく、救助決定を受けた者に対し、猶予した費用の支払を命ずることができる。
  • (新判例)12月4日付-最高裁第三小法廷決定-借地権者が、賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を第三者に譲渡するために、借地借家法19条1項に基づき、賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申立てをした場合において、借地権設定者が、同条3項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることは許されない。
  • (新判例)12月4日付-最高裁第三小法廷決定-賃借権の目的である土地と他の土地とにまたがって建築されている建物を競売により取得した第三者が、借地借家法20条1項に基づき、賃借権の譲渡の承諾に代わる許可を求める旨の申立てをした場合において、借地権設定者が、同条2項、同法19条3項に基づき、自ら当該建物及び賃借権の譲渡を受ける旨の申立てをすることは許されない。
  • (新判例)12月3日付-最高裁第一小法廷決定- 数罪が科刑上一罪の関係にある場合、その最も重い罪の刑は懲役刑のみであるがその他の罪に罰金刑の任意的併科の定めがあるときには、最も重い罪の懲役刑にその他の罪の罰金刑を併科することができる。

2007年11月[編集]

  • (新判例)11月30日付-最高裁第二小法廷決定-銀行が保管する法令で義務づけられた資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために作成し、保存する文書が民事訴訟法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当しないとされた事例-文書提出命令
  • (新立法)11月28日付-労働契約法が成立した。-労働法
  • (新判例)11月16日付-最高裁第二小法廷判決-執行役員であった者が退職慰労金の支給を求めた事案で、A社の執行役員制度は取締役を減少させて設けられたものであるが、従前の取締役と報酬等の待遇は同等で、従業員であった者が執行役員に就任するには退職して取締役会からの委任に基づき就任し、従業員退職時に退職金を受け取りかつ執行役員に就任することによって得られた報酬総額が同じ期間従業員として勤続し続けた場合の給与及び退職金額よりも3000万円上回るもので、A社が規定していた執行役員退職慰労金規則は代表取締役の決裁で変更可能な内規で執行役員に開示されず、さらにA社では2004年度及び2005年度において執行役員への退職慰労金の支給を業績悪化や不祥事等を理由に取り止めていたなどの事情の下で、A社が支給していた退任する執行役員に対して支給してきた退職慰労金は、功労報償的な性格が極めて強く、執行役員退任の都度、代表取締役の裁量的判断により支給されてきたにすぎないものと認められるから、A社が退任する執行役員に対し退職慰労金を必ず支給する旨の合意や事実たる慣習があったということはできず、執行役員であった者は同規則に基づき退職金慰労金の支給を求めることができないとされた事例。
  • (新判例)11月14日付-最高裁第三小法廷決定-硫酸ピッチ入りドラム缶の処理を下請業者に委託し同ドラム缶がが不法投棄された事案で、上記業者が他の業者に丸投げして不法投棄をすることを確定的に認識していたわけではないが、不法投棄に及ぶ可能性を強く認識しながら、それでもやむを得ないと考え同業者に委託したとして、上記業者を介して共犯者により行われた不法投棄について、委託元の役員や委託会社に廃棄物の処理及び清掃に関する法律所定の不法投棄罪の未必の故意による共謀共同正犯が成立するとされた事例。
  • (新判例)11月13日付-最高裁第三小法廷決定-証人威迫罪における「威迫」は直接相手と相対する場合だけでなく、不安困惑の念を生じさせる文書を送付して相手に送付する場合も含まれる。
  • (新判例)11月8日付・最高裁第一小法廷判決-特許権者等が我が国及び国外において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ、それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、特許権者は、その特許製品について、特許権を行使することが許されるというべきであり、上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては、当該特許製品の属性、特許発明の内容、加工及び部材の交換の態様のほか、取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であり、当該特許製品の属性としては、製品の機能、構造及び材質、用途、耐用期間、使用態様が、,加工及び部材の交換の態様としては、加工等がされた際の当該特許製品の状態、加工の内容及び程度、交換された部材の耐用期間、当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきであるとして、キヤノン製のプリンター用のインクタンクリサイクル品が特許権侵害となるとされた事例。-消尽
  • (新判例)11月1日付・最高裁第一小法廷判決-原爆二法について国が在外被爆者について、国外に居住している場合は支給対象にならないという誤った法解釈を前提とした通達を作成、発出し、継続したことが国家賠償法上違法であり、過失があるとして慰謝料の請求が認められた事例。-原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律

2007年10月[編集]

  • 文化勲章受章者に元法務大臣民事訴訟法学者の三ヶ月章が、文化功労者小田滋前国際司法裁判所判事、民法学者の星野英一が選ばれた。-10月27日追加
  • 新判例)10月19日付け・最高裁第二小法廷判決-マンション夫婦の住み込み管理人の労働基準法32条の労働時間について、判示の事情の下で、平日の午前7時から午後10時までの時間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、管理人らは,管理員室の隣の居室における不活動時間も含めて、本件会社の指揮命令下に置かれていたものであり、上記時間は、労働基準法32条上の労働時間に当たるというべきであるとされ、土曜日は1人分について、日曜日については実際に従事した時間分のみを労働時間と算定し、管理人らが病院に通院したり,犬を運動させたりしたことがあったとすれば、それらの行為は,管理員の業務とは関係のない私的な行為であり、管理人らの業務形態が住み込みによるものであったことを考慮しても、管理員の業務の遂行に当然に伴う行為であるということはできず、病院への通院や犬の運動に要した時間において、管理人らが本件会社の指揮命令下にあったということはできず、労働基準法上の労働時間ということはできないとされた事例。
  • 新判例)10月19日付け・最高裁第二小法廷判決-医療法7条(法改正前)の病院開設許可に対して、解説許可された周辺に医療施設を開設する医療法人等は、許可処分の取消しを訴える原告適格を有しない。-行政事件訴訟法
  • 新判例)10月19日付け・最高裁第二小法廷判決-自動車総合保険契約の人身傷害保障特約条項において、「自動車の運行起因事故及び運行中事故により急激かつ偶然な外来事故により、被保険者が身体に傷害を被ること」を保険支払事由としているが、疾病免責条項を置いておらず、重過失でない限り保険料を支払う旨の規定があった場合は、運行事故が疾病に起因して生じた場合も保険の支払事由にしていると解すべきであり、保険金請求者は、運行事故と被保険者がその身体に被った傷害(本件傷害除外条項に当たるものを除く。)との間に相当因果関係があることを主張、立証すれば足りるというべきである。
  • 新判例)10月16日付け・最高裁第一小法廷決定-刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要である、ここでいう合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは、反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく、抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には、有罪認定を可能とする趣旨であって、そのことは、直接証拠によって事実認定をすべき場合と,情況証拠によって事実認定をすべき場合とで、何ら異なるものではない。

2007年9月[編集]

  • 新判例)9月28日付け・最高裁第二小法廷判決-1989年(平成元年)前改正前の国民年金法が、学生等について任意加入は認めたものの、免除制度を設けなかったこと及び20歳以上の学生に対し無拠出型の年金制度を定めなかったことが立法不作為として生存権を定める憲法25条、法の下の平等を定める憲法14条1項に反しない。-国民年金
  • 新判例)9月28日付け・最高裁第二小法廷判決-租税特別措置法66条の6で定めるタックスヘイブン対策税制の適用上、特定外国子会社等(タックスヘイブンに設立した子会社等)の一定の留保金について内国法人に益金が参入されるからといって、同条1項で定める内国法人(日本にある親会社等)に係る特定外国子会社等に生じた欠損の金額を損金の額に算入することはできない(5年間の繰越は可能)。-法人税法
  • 新判例)9月18日付け・最高裁第三小法廷判決-広島市暴走族追放条例事件- 広島市暴走族追放条例の定める集会の中止・退去命令の規定等が一般人にも適用されるようにも読めるように規定しているが、この条例は本来的な意味における暴走族及びその類似集団による集会が、本条例16条1項1号、17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解され、このように限定的に解釈すれば、本条例16条1項1号、17条、19条が憲法21条1項、31条に違反しないとされた事例。(反対意見、補足意見有り)
  • 鳩山邦夫法務大臣が、9月25日午前の会見で死刑執行について「法相が絡まなくても、自動的に客観的に進むような方法を考えたらどうか。」と述べ法務大臣の署名がなくても死刑が執行できるようすべきだと発言。これに対し、亀井静香死刑廃止議員連盟会長は、「(法相に)人間の資格なし」と発言。28日の会見では、死刑執行自動化に向けた勉強会を立ち上げることを表明。政府内からは、町村官房長官から「思いつきでやってはまずい」など、疑問の声も。野党からも、反対や疑問の声が上がっている。日本における死刑も参考(9月29日追加)
  • 2007年(平成19年)新司法試験合格者が13日発表され、1851名(既修1216名、未修635名)が合格した。合格率は、出願者数比合格率34.27%、受験者数比合格率40.18%であった。-(9月14日追加)
  • 光市母子殺人事件弁護人に対して、テレビ番組で橋下徹弁護士が懲戒請求を呼びかけたところ、全国で3900件もの懲戒請求が寄せられ、2006年の全国の懲戒請求数1367件を大きく上回る事態になった。これに対し、弁護人は、橋下弁護士に対して、「懲戒請求を煽動した」として、損害賠償請求を提起している。-朝日新聞-(9月8日追加)
  • 国籍法3条1項違憲訴訟 - 父が日本人で母が外国人の婚姻をしてないカップルの元で生まれた非嫡出子の場合、父が胎児認知を行わない場合、出生後に婚姻しないと日本国籍を取得できないことを定めた国籍法3条1項が憲法14条に違反しないかが争われた訴訟が2件大法廷に係属した。-(9月5日追加)
  • 防衛施設庁が廃止され、本省に業務が移管された。-(9月1日追加)

2007年8月[編集]

2007年7月[編集]

更新中止

2007年6月[編集]

更新中止

2007年5月[編集]

2007年4月[編集]

2007年3月[編集]

2007年2月[編集]

2007年1月[編集]