現行犯

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現行犯(げんこうはん)とは、犯罪を行っているところ、ないしその直後を現認された状況を指す概念。また、現行犯人のことを現行犯ということもある。

現行犯人[編集]

現行犯人(げんこうはんにん)とは現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を言う(刑事訴訟法212条1項)。現行犯ということもある。

現行犯人を逮捕する(現行犯逮捕)には、令状逮捕状)は不要である(憲法33条、令状主義の例外)。これは、犯罪を行っている場面ないしその直後を現認されており、不当な逮捕が行われる可能性が低いとされるためである。しかし、実際には犯罪を行っている場面を現認していなくても犯罪後の経過時間が短いと判断されれば現行犯という扱い(準現行犯)として逮捕することが認められているため、誤認逮捕が多い。[要出典]四日市ジャスコ誤認逮捕死亡事件はこれが起きた実例である。現行犯として逮捕したものの、現行犯逮捕の要件を充足していなかった場合は、裁判官により勾留請求が却下される。その場合、被疑者はただちに釈放される。

また、司法警察職員警察官等)、検察官検察事務官でない者(私人)であっても逮捕することができる(憲法33条・刑事訴訟法213条)。私人の現行犯人逮捕にあっては、直ちに司法警察職員か検察官に引き渡す義務が生じる(同214条。分かりやすく記すと、取り押さえたらすぐに110番するなりして警察官を呼び、引き渡せばよい。義務を怠った場合は逮捕・監禁罪になる)。司法警察職員のうち司法巡査巡査が相当)が現行犯人を引き渡された場合は、速やかに司法警察員巡査部長以上が相当)に引致しなければならず、逮捕者の氏名・住所と逮捕事由を聞き取らなければならない(刑事訴訟法215条)。

なお、一般のニュース報道では多くの民放が、このケースでは「現行犯逮捕」という表現を用いているが、NHKでは数年前[いつ?]から「**の疑いでその場で逮捕」という表現に改めている。

準現行犯[編集]

準現行犯(じゅんげんこうはん)とは、一定の条件に当てはまる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる場合をいう。犯罪行為の直後でなくても、時間的近接性が認められればあたる。この場合は、現行犯人とみなされ(刑事訴訟法212条2項)、令状なく私人でも逮捕することができる(準現行犯逮捕)。

具体的には以下の事由に該当する者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる場合である。

  1. 犯人として追呼されているとき(犯人と明確に認識している者に追跡されているような場合。「ドロボー!」と叫ばれて追いかけられている等)。
  2. 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき(盗品を所持していたり、殺人に使ったと思われる血のついたナイフを所持しているような場合)。
  3. 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき(返り血を浴びたような大量の血痕が服についているような場合)。
  4. 誰何(すいか)されて逃走しようとするとき(警察官に職務質問のため声をかけられて・または巡回中の姿やパトカーを見て逃げ出すような場合)。

逮捕が違法になる場合[編集]

逮捕は、後日の刑事裁判における公判維持のために、被疑者の身柄と犯罪の証拠を保全するために行われる身柄拘束である。 したがって、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、証拠を隠滅するおそれもない場合には、被疑者を逮捕してはならない。 被疑者が逃亡するおそれまたは証拠を隠滅するおそれがあることは、「逮捕の必要性」と呼ばれる(「逮捕の必要」とも。逮捕の項を参照)。逮捕の必要性は、本来は逮捕状による逮捕を可能とする要件(刑事訴訟規則143条の3参照)であるが、現行犯逮捕にもこの要件が必要であると考えるのが学説の多数である(裁判例には、必要とするものと不要とするものとがある)。この要件が満たされない場合には、捜査機関への任意の出頭を求める等の行為のみが許容され、これに反して現行犯逮捕をすることは違法である(刑法220条逮捕罪に該当する)。

さらに上記の要件に加えて、軽微な罪についての特則としては、30万円以下の罰金拘留または科料に当たる罪の場合には、被疑者の住居もしくは氏名が不明の場合または逃亡するおそれがある場合にのみ現行犯逮捕ができる、という規定がある(刑訴法217条)。逮捕の理由となっている犯罪がこのような軽微な罪である場合には、例えば被疑者が身分証明書を提示する・名刺を切って行く等して住所氏名を明らかにし、かつ逃亡するおそれがないと認められる場合には、被疑者が犯人であることが明白であってもなくても、現行犯逮捕をすることはできない(上記と同様、違法な逮捕をすることは刑法220条の逮捕罪に該当する)。

しかし、現行の刑法典において、この「30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪」は、

のみであり、この刑事訴訟法217条の規定が適用される事例は実際にはほとんどない。

関連項目[編集]