「M16自動小銃」の版間の差分

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'''M16自動小銃'''は、[[ユージン・ストーナー]]によって開発された[[アメリカ軍]]の[[口径|小口径]][[自動小銃]]。
'''M16自動小銃'''は、[[ユージン・ストーナー]]によって開発された[[アメリカ軍]]の[[口径|小口径]][[自動小銃]]。


[[アーマライト]]社の製品名は'''[[#AR-15|AR-15]]'''、アメリカ軍の制式名は'''Rifle, Caliber 5.56mm, M16'''(M16 5.56ミリ口径ライフル)。
[[アーマライト]]社の製品名は'''[[#AR-15|AR-15]]'''、アメリカ軍の制式名は'''Rifle, Caliber 5.56mm, M16'''(M16 5.56ミリ口径ライフル)。「ブラックライフル」の異名も持つ
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== 概要 ==
== 来歴 ==
=== AR-15の開発 ===
[[ファイル:Hawaii-convoy2003-12-17.jpg|thumb|250px|right|M16A2]]
後にM16として結実する新型ライフルの開発は、まず、[[:en:L. James Sullivan|ジェームズ・サリバン]]による[[ベンチャー]]事業として着手された。より大きな資本を得るため、サリバンは[[フェアチャイルド (航空機メーカー)|フェアチャイルド]]社と提携することとした{{Sfn|床井|1998|pp=18-25}}。1954年、フェアチャイルド社の銃器開発部門として[[アーマライト]]が設立され、サリバンが社長、チャールズ・ドーチェスターが工場長、そして[[ユージン・ストーナー]]が主任エンジニアを勤めた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
M16は、[[フェアチャイルド (航空機メーカー)|フェアチャイルド]]社の[[アーマライト]]事業部が開発の[[口径]]7.62mmの[[AR-10]]をもとに、[[アメリカ陸軍]]SALVO計画により、小口径5.56mm[[弾薬]]用に設計した[[小銃]]。そののち[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト]]社が製造権を得、[[アメリカ軍]]に提示し、小口径[[アサルトライフル]]として初採用された。従来の[[スプリングフィールドM14|M14ライフル]]から小口径化し、[[兵士]]一人当たりの携行弾数の大幅増加に成功。また、[[プラスチック]]を多用、「ブラックライフル」の異名も持つ。


[[1955年]]、まず[[7.62x51mm NATO弾|7.62mm口径]]の[[AR-10]]が開発された{{Sfn|床井|1998|pp=18-25}}。一方、[[1950年代]]後半より、アメリカ軍では「小口径高速弾ライフル・プログラム」を開始しており、アーマライト社も、[[レミントン・アームズ|レミントン]]社と共同でこの計画で使用する弾薬の開発を行っていた。これとあわせて、AR-10を小口径化した小銃が開発され、のちの'''AR-15'''となった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=114-133}}。
M16が採用した小口径弾、[[アルミニウム合金|アルミ合金]]製の本体という開発当時としては斬新な設計思想は、その後多くの国やメーカーに影響を与え、後にM16にならったアサルトライフルが複数開発された。


=== アメリカ軍での検討 ===
M16は、コルト社や同社の委託で[[ゼネラルモーターズ|GM]]社やH&R社が生産し、アメリカ軍に納入していたが、コルト社の経営危機により製造権が[[アメリカ合衆国連邦政府|アメリカ政府]]に移り、現在では[[FNハースタル|FN]]社が主に生産している。コルト社は[[M4カービン|M4]]を受注しているものの、国内では生産しておらず、カナダ・コルト(米国コルト社に買収された旧ディマコ社)がM16A2に相当するC7と、M4に相当するC8を生産し、制式採用している[[カナダ軍]]に納入している。
[[1957年]]5月、フォートベニングの歩兵学校で、小口径高速弾ライフルのデモンストレーションが行われた。このとき展示されたAR-15は、既存の.222レミントン弾をもとにした.222レミントン・スペシャル弾を使用していたが、この弾薬はのちに改良されて[[:en:.223 Remington|.223レミントン弾]]となった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。


このテストでは、[[アメリカ陸軍武器科]]が[[FN FAL]](T48)をもとに小口径化した改造小銃と、ウィンチェスター社が試作したライトライフルも対象となった。T48改は不合格とされ、ウィンチェスター・ライトライフルとAR-15はM14の後継小銃になりうると評価されたものの、1958年8月、歩兵兵器審議委員会は、いずれも更なる研究開発が必要と結論した。このため、ウィンチェスター社はトライアルの継続を断念した{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
[[ベトナム戦争]]時から使用数が増え、低反動小口径弾薬を使用しているため、命中精度が高い。また、多数のオプションパーツを装着可能で、レンジャー部隊、[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]など幅広く使用される


1959年初頭、AR-15採用の可能性が検討され、[[スプリングフィールドM14]]の代替小銃として選定トライアルを継続するか、小口径小銃のトライアル自体を中断するか、7.62mm口径小銃の代替ではなく特殊用途の小銃として検討するかが議論された。5月には、陸軍戦闘開発実験センターより、「理論上、AR-15で武装した5~7名の小銃組は、M14で武装した11名の分隊よりも多くの目標に命中させることができる」との報告書が公表された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
他の自動小銃に較べ、サイズこそ嵩張るものの軽量高速で命中率が高く、小口径である事から、軍隊以外に[[警察]]や[[国家憲兵]]、[[国境警備隊]]の制式ライフルとして採用している国も多い。


== 作動方式 ==
=== 部隊配備の開始 ===
[[空軍警備隊]]では、航空機への被害を抑えるという観点から、フルサイズの小銃ではなく[[U.S.M1カービン|M2カービン]]を使用しており、これを代替する軽量小型のカービンを模索していた。1960年7月、AR-15を試射した空軍の[[カーチス・ルメイ]]将軍は、この小銃をM2カービンの後継として推薦することにした{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
[[ファイル:101st Airborne Division - Vietnam 03.jpg|thumb|250px|right|XM16E1をクリーニングする[[アメリカ陸軍]]兵士([[1966年]]、[[ベトナム]])]]
書籍などでは、M16の作動方式はリュングマン方式(ダイレクト・インピンジメント方式)と記載される場合が多いが、正確にはリュングマン方式とは異なるものである。M16の場合、ボルトキャリアにガスを直接吹きかけて後退させるのではなく、ボルトキャリアの内部にあるシリンダー部にガスを入れて、そのガスによりボルトを前に勢いよく動作させ、それによりボルトキャリアを後退させる作動方式を採用している。そのためボルトの後部はピストンになっている。
{{main|ガス圧作動方式#リュングマン式}}


1960年11月、空軍による評価試験が承認された。1961年、ルメイ将軍は空軍へのAR-15小銃8万丁の調達を申請したが、旧式とはいえ十分な数のM2カービンを保有しているうえに、陸軍・海兵隊へのM14小銃の調達が進んでいたことから、これに加えて新しい小銃を導入することには抵抗が強かった。このことから、まず東南アジアに駐留する部隊に限定的に導入されることになり、1961年9月、8,500丁の導入が承認された。また[[南ベトナム軍事援助司令部|南ベトナム米軍事援助顧問団(MAAG-V)]]でも、[[M1ガーランド|M1小銃]]よりベトナム人の体格に適合し、M2カービンより威力に優れることを評価して、1,000丁を調達した{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
[[銃床|ストック]]内部には、作動時に後退するボルトキャリア後部・バッファーリング・スプリングを収納するために、円筒状のレシーバーエクステンションがある。このため、全長を短縮した[[カービン]]モデルにフォールディングストック(折り曲げ式銃床)が使用できず、レシーバーエクステンションを軸とした伸縮式のテレスコピックストックが用いられる。


1962年1月、AR-15は'''M16'''としてアメリカ空軍に採用され、空軍は再度8万丁の調達を申請した。当時呈されていた疑義に対して空軍が真摯に対応したことから、議会は今度はこの予算を認可した。また同時期に[[Navy SEALs]]も172丁を試験調達して好評価を与えた。陸軍は、1962年よりフレシェット弾を使用する新型歩兵火器([[:en:Special Purpose Individual Weapon|SPIW]])の開発に着手していたことから、これと競合すると見込まれたAR-15の調達には慎重な立場を採っていたが、1963年には、SPIWの配備までの暫定策としてAR-15を導入することになり、5月よりXM16E1の部隊配備を開始した{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
M16系のテレスコピックストックはフォールディングストックに比べ短縮時の全長が長い欠点があるが、近年[[ボディアーマー]]が一般[[兵士]]の装備としても普及し、ボディアーマー装着時にはストックの長さを調整できるテレスコピックストックが使いやすいため、再評価されている。
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== 操作 ==
== 設計 ==
[[ファイル:101st Airborne Division - Vietnam 03.jpg|thumb|250px|right|XM16E1をクリーニングする[[アメリカ陸軍]]兵士([[1966年]]、[[ベトナム]])]]
[[Image:Stanag mags.jpg|thumb|250px|[[STANAG マガジン]]<br>左が20発用、右が30発用]]
=== 構成 ===
[[File:M16 rifle correct sight picture fig 4-18.png|thumb|right|250px|M16の[[照準器|ピープサイト]]の使用方法]]
上記の経緯より、先行する[[AR-10]]をもとに小口径化して開発されたことから、多くの特色を引き継いでいる。
安全装置を兼ねたセレクターがSAFE位置にあることを確認し、[[弾倉]]をさしこんだあと、リア・サイト下にあるチャージングハンドルに指をかけて引き、放すとチャンバーに初弾が装填される。チャージングハンドルにはロックがあり、指をかけた状態でないと引けない様になっている。弾倉がからのときチャージングハンドルを引くとボルトキャッチによりボルトキャリアが後退したままの位置で保持され、同時にハンマーが起こされる。チャージングハンドルはボルトキャリアの位置に関係なく、放せば定位置にもどる。
この状態では弾倉交換後、銃の左側面にあるボルトキャッチを押すとボルトキャリアが解放されて前進し、初弾の装填とボルトの閉鎖がおこなわれる。


重量軽減と耐腐食性のため、XM16E1では、レシーバーは[[アルミニウム合金]](当初はNo.6061、1968年よりNo.7075)製とし、表面には陽極酸化処理とパーカライジング加工を施した。ただし銃身やボルト、ボルトキャリアーなどの内部機構は[[鋼鉄]]製とされた。また銃床やハンドガード、グリップはGFRP製とされ、銃床内部には発泡プラスチックが充填された。構成部品数は約100個であった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
右手でグリップを握った場合、親指の位置にセレクターレバーがある。SAFE(安全)、SEMI(半自動・単発)、AUTO(自動・連発)またはBURST(3点射)と切りかえることができる。


銃床の内部には、作動時に後退するボルトキャリア後部・バッファーリング・スプリングを収納するために、リコイル・スプリングガイド(リコイル・バッファー)が収納されている。このため、カービンモデルでも側面への折りたたみ式の銃床を採用できず、伸縮式の銃床が採用された。またM16A1の途中から、銃床内部にクリーニング・キットの収納スペースが設けられた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
右側面にある排莢口のダストカバーは発射時にボルトキャリアが動くことで自動的に開くため、通常は閉めておいても良い。酷使によりボルトの不完全閉鎖が起こった場合は右側面のボルト・フォアード・アシスト・ノブを押すことでボルトを前に押し込むことができる。全弾発射されるとボルトが後退位置で保持されるので、右側面のトリガー・ガード前にあるマガジン・キャッチ・ボタンを押しながらマガジンを抜く。


動作方式は[[ガス圧作動方式#ダイレクト・インピンジメント式(リュングマン式)|ダイレクト・インピンジメント式(ガス圧直接利用式)]]とされた。前部照星の根部から上部レシーバーにかけて、銃身上部に沿うように細いステンレス製のガスチューブが伸びており、ボルトキャリア上部のチューブ型のガスポートに接続されている。発射ガスはガスポートからボルトキャリア内のガスチャンバーに導かれ、その膨張する圧力でボルトキャリアが後退する{{Sfn|床井|1998|pp=18-25}}。ボルトには8個のロッキング・ラグが放射状に並んでいる{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
サイトの高さ調整はフロントサイトでおこなう。[[弾丸]]の先の尖った部分でスプリングピンを押し下げながらフロントサイトを回転させることにより高さ調整ができる。左右の調整はリアサイトで行い、同様に弾丸の尖った先でスプリングピンを押しながら回すことで調整する。


銃身にクロームメッキを施せば耐久性が向上すると提案されていたが、コスト面の問題から当初は採用されなかった。その後、まず1967年5月から薬室と撃針に、そして1971年からは銃身にもクロームメッキが施されるようになった。逆にボルトは、当初はクロームメッキ処理されていたが、1967年以降はパーカライジング処理となった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
リアサイトはM16ではL字型の孔照門タイプで、近距離(0-300m)用と遠距離(300-500m:Lの刻印が孔の下にある)をどちらかに倒すことで距離を選べる。M16A2では近距離(0-200m)用と遠距離(200-800m:Lの刻印が孔の下にある)をどちらかに倒すことで距離を選べる。微調整はサイト下のレンジ・アジャスティング・ドラム(調整用ダイアル)でおこなうこともできる。


=== 操作 ===
冬季作戦のように厚いグローブを着用しているときは、トリガー・ガードの前側にあるロックボタンのスプリングピンを弾丸の先で押すとトリガー・ガードが下に折り畳め、トリガー・ガードが無い状態で操作できる。
[[Image:Stanag mags.jpg|thumb|250px|[[STANAG マガジン]]<br>左が20発用、右が30発用]]
[[File:M16 rifle correct sight picture fig 4-18.png|thumb|right|250px|M16の[[照準器|ピープサイト]]の使用方法]]
安全装置を兼ねたセレクターがSAFE位置にあることを確認し、[[弾倉]]をさしこんだあと、リア・サイト下にあるチャージングハンドルに指をかけて引き、放すとチャンバーに初弾が装填される。チャージングハンドルにはロックがあり、指をかけた状態でないと引けない様になっている。弾倉がからのときチャージングハンドルを引くとボルトキャッチによりボルトキャリアが後退したままの位置で保持され、同時にハンマーが起こされる。チャージングハンドルはボルトキャリアの位置に関係なく、放せば定位置にもどる。
この状態では弾倉交換後、銃の左側面にあるボルトキャッチを押すとボルトキャリアが解放されて前進し、初弾の装填とボルトの閉鎖がおこなわれる{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。


右手でグリップを握った場合、親指の位置にセレクターレバーがある。SAFE(安全)、SEMI(半自動・単発)、AUTO(自動・連発)またはBURST(3点射)と切りかえることができる{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。
ストックの肩当部分にあるふたは中にクリーニングキットが入っており、クリーニングロッドやチャンバーブラシが内蔵されている。通常分解掃除は弾丸の先を使ってテイク・ダウン・ピンを銃の左側面から押すことで中折れ式にボルトが開放されるので、ボルトを抜き出したあとチャンバー、ボルトの掃除をする。
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右側面にある排莢口のダストカバーは発射時にボルトキャリアが動くことで自動的に開くため、通常は閉めておいても良い。酷使によりボルトの不完全閉鎖が起こった場合は右側面のボルト・フォアード・アシスト・ノブを押すことでボルトを前に押し込むことができる。全弾発射されるとボルトが後退位置で保持されるので、右側面のトリガー・ガード前にあるマガジン・キャッチ・ボタンを押しながらマガジンを抜く{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。
== アメリカ軍次期制式ライフル ==
[[File:1stbat75thregSCAR.jpg|thumb|right|250px|SCARを装備した[[第75レンジャー連隊 (アメリカ軍)|第75レンジャー連隊]]の隊員]]
[[File:HK416 in Samaria.jpg|thumb|250px|HK416を装備したアメリカ陸軍の兵士]]
M16と[[M4カービン|M4]]は、[[ピカティニー・レール|レールシステム]]を採用するなどの改良により、近年主流の[[アサルトライフル]]に戦闘用各種アクセサリーを装着するという流れに対応している。しかし、この後付け的機能追加は、銃としてのバランスや操作性を欠くなど運用面での問題点も少なくないため、[[照準器|照準装置]]などの搭載を設計段階から組み込んだ次期制式ライフルの開発が進んでいる。


サイトの高さ調整はフロントサイトでおこなう。[[弾丸]]の先の尖った部分でスプリングピンを押し下げながらフロントサイトを回転させることにより高さ調整ができる。左右の調整はリアサイトで行い、同様に弾丸の尖った先でスプリングピンを押しながら回すことで調整する{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。
M16とM4の後継ライフルは、当初銃本体に連装式[[グレネードランチャー]]や電子スコープのモジュールを一体化した'''[[OICW]]'''(Objective Individual Combat Weapon)と呼ばれる次世代型ライフルの採用が予定されており、[[ヘッケラー&コッホ|H&K]]社が'''[[XM29 OICW|XM29]]'''を開発していた。この銃の電子スコープには[[暗視装置]]や[[射撃管制装置|火器管制装置]]も組み込まれ、[[グレネード]]の電子[[信管]]は火器管制装置により距離の調定ができる最新のテクノロジーを導入した銃であった。しかしながら、戦場での電子機器の耐久性に対する不安や重く大きく、高いコストなどが問題になり、次期採用は見送られた。


リアサイトはM16ではL字型の孔照門タイプで、近距離(0-300m)用と遠距離(300-500m:Lの刻印が孔の下にある)をどちらかに倒すことで距離を選べる。M16A2では近距離(0-200m)用と遠距離(200-800m:Lの刻印が孔の下にある)をどちらかに倒すことで距離を選べる。微調整はサイト下のレンジ・アジャスティング・ドラム(調整用ダイアル)でおこなうこともできる{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。
このため、H&K社はXM29のライフルモジュールのスピンオフである'''[[H&K XM8|XM8]]'''を提案した。コンセプトも形状も[[ドイツ連邦軍]]が制式採用した同社の'''[[H&K G36|G36]]'''(HK50)に似たこの銃は採用が内定していたものの、[[アメリカ海兵隊|海兵隊]]や[[特殊部隊]]の強い反発により次期制式ライフルの新要求仕様が策定されたため、採用は白紙に戻された。


冬季作戦のように厚いグローブを着用しているときは、トリガー・ガードの前側にあるロックボタンのスプリングピンを弾丸の先で押すとトリガー・ガードが下に折り畳め、トリガー・ガードが無い状態で操作できる{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。
新要求仕様に基づき、現在M16を製造する[[FNハースタル|FN]]社は、すでに[[アメリカ軍]]特殊部隊向けの導入が決定している、モジュールの組替えにより[[歩兵]]用アサルトライフルにも[[分隊支援火器]]にもなり、5.56mmと7.62mmの[[口径]]バリエーションを備える'''[[FN SCAR|SCAR-L/H]]'''(Special Forces Combat Assault Rifle-Light/Heavy respectively)を提案している。


ストックの肩当部分にあるふたは中にクリーニングキットが入っており、クリーニングロッドやチャンバーブラシが内蔵されている。通常分解掃除は弾丸の先を使ってテイク・ダウン・ピンを銃の左側面から押すことで中折れ式にボルトが開放されるので、ボルトを抜き出したあとチャンバー、ボルトの掃除をする{{Sfn|ロットマン|2017|pp=135-173}}。
一方、H&K社もSCAR同様の口径バリエーションを備え、一部特殊部隊向けに納入実績のある'''[[H&K HK416|HK416]]/[[H&K HK417|HK417]]'''で対抗する動きがある。

次期制式ライフルが5.56mmを踏襲するのか新[[弾薬]]の[[6.8×43mm SPC]]へ移行するのかも未決定であるため、これらの候補は6.8mmモデルも前提に設計されている(2005年10月時点)。
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== その他 ==
== M16ライフル ==
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=== 日本での所持 ===
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[[ファイル:AR-15 w thumbhole stock.jpg|thumb|right|250px|日本仕様のAR-15 H-BAR(ヘビーバレル)/標的射撃用モデル<br>警察庁通達によりサムホールストックを装着している]]
!モデル<br />ナンバー||運用者||軍での名称||種別
民間人の銃砲所持に規制の多い[[日本]]だが、M16の民間版である[[#AR-15|AR-15]](販売価格30万円前後)の所持は可能。狩猟用途でライフル所持許可を取得するには銃砲所持許可を取得し[[猟銃]]([[散弾銃]]や競技用ライフル銃など)を10年間継続所持した実績および狩猟免許を取得する必要がある。
|-
|601||rowspan=2|アメリカ空軍||rowspan=2|AR-15||rowspan=5|ライフル{{Sfn|ロットマン|2017|p=40}}
|-
|602
|-
|603||アメリカ陸軍・海兵隊||XM16E1→M16A1
|-
|604||アメリカ空軍||M16
|-
|604改||アメリカ海軍||Mk.4 mod.0
|-
|609||rowspan=2|アメリカ陸軍||XM177E1||rowspan=7|サブマシンガン{{Sfn|ロットマン|2017|p=40}}
|-
|rowspan=2|610||XM177
|-
|アメリカ空軍||GAU-5/P
|-
|rowspan=2|629||アメリカ陸軍||XM177E2
|-
|rowspan=3|アメリカ空軍||GAU-5/A/B
|-
|630||GAU-5/A/A
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|649||GAU-5/A
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|645||アメリカ陸軍・海兵隊||M16A2||rowspan=3|ライフル{{Sfn|ロットマン|2017|p=81}}
|-
|646||アメリカ海軍||M16A3
|-
|945||rowspan=3|アメリカ陸軍・海兵隊||M16A4
|-
|920||M4||rowspan=2|カービン{{Sfn|ロットマン|2017|p=81}}
|-
|921||M4A1
|-
|711||rowspan=2|カナダ軍||C7||ライフル{{Sfn|ロットマン|2017|p=85}}
|-
|725||C8||カービン{{Sfn|ロットマン|2017|p=85}}
|}


=== AR-15 (モデル601, 602) ===
更に狩猟用ライフル銃の[[口径]]は6mm以上でなければならないため、コンバージョンキット(改修部品)で6x45mmや[[7.62x39mm弾|7.62x39mm]]へ変更する必要がある。また、ピストルグリップ(独立握把)は握り部分に穴が空いたサムホール型[[銃床|ストック]]へ、[[弾倉]]は装弾数5発に制限するなどの改修([[兵器]]でなく猟銃化すること。市民の兵器保有は禁止)も要する。
空軍に配備されていた最初期モデルであり、モデル601は1959年から1963年にかけて、モデル602は1963年から1964年にかけて生産された{{Sfn|ロットマン|2017|p=40}}。

銃規制強化や[[アメリカ同時多発テロ事件]]による銃器輸出入規制に呼応し、新規許可は難しくなっている。

=== M16の噂 ===
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]には「玩具メーカーである[[マテル]]社製のM16が存在する」という[[噂]]がある。 [[バービー人形]]や[[遊戯銃|モデルガン]]で有名なマテル社が、[[ベトナム戦争]]時に[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト]]社の委託でM16を生産していた、またはグリップや[[銃床|ストック]]などの[[プラスチック]]部品を生産していたというもので'''[[都市伝説|事実無根]]'''だが、配備当時は珍しかったプラスチックと[[アルミニウム合金|アルミ]]を多用し、それまでの[[小銃]]より小振りで安っぽい印象のあったM16を、[[兵士]]が「マテルの玩具」(Mattel toy)と[[揶揄]]した事や、コルト社が[[自動車産業|自動車メーカー]]の[[ゼネラルモーターズ]](GM)などに生産[[委託]]していたことが噂の発端とされる。実際マテル社はM16のトイガンを販売しており、映画『[[グリーン・ベレー (映画)|グリーン・ベレー]]』では、これを木に叩きつけて折ってしまうシーンがある。また『[[フルメタル・ジャケット]]』の原作では、海兵隊兵士がM16を「マテル」と呼んでいる。

=== 民兵での使用 ===
ライバルといえるAK-47に比較すると、性能に難点がある事や販売・流通にある程度の規制がある事などから、[[民兵]]組織においてM16が使用されているケースは少ない。[[アイルランド共和軍]]([[IRA暫定派]])、[[カレン民族解放軍]]、[[レバノン軍団]]、[[新人民軍]]、[[ヒズボラ]]などでM16やそのファミリー、およびCQなどのクローンが使用されているとみられる。

=== 図柄としての採用 ===
ミャンマーの[[アラカン・ロヒンギャ救世軍]]は、マークにM16の図柄([[:en:Arakan Rohingya Salvation Army|英語版]]参照)を採用している。


=== M16 (モデル604) ===
== バリエーション ==
=== M16(604) ===
[[ファイル:M16duckbill.gif|thumb|250px|right|M16]]
[[ファイル:M16duckbill.gif|thumb|250px|right|M16]]
'''M16'''(モデル604)は、[[アメリカ空軍]]向けの最初の制式モデルであり、1964年から1965年にかけて生産された。並行して陸軍・海兵隊向けに生産されていた[[#XM16E1, M16A1 (モデル603)|M16E1(モデル603)]]とは異なり、ボルトフォワードアシストを備えておらず、ボルト閉鎖不良時の対応に問題を残した{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
'''M16'''(AR-15 モデルNo.604)は、[[アメリカ空軍]]に採用され、[[ベトナム共和国軍|南ベトナム軍]]に供与されたもの。


=== XM16E1, M16A1 (モデル603) ===
ガス直圧機構に合わない装薬、また、手入れ不足が原因でボルトが汚れ、回転不良や不完全閉鎖が多発した。ボルトチャージハンドルはボルトを開放できるものの、構造的に不完全閉鎖したボルトを閉鎖できない。
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=== M16A1(603) ===
[[ファイル:Sam16a1.jpg|thumb|250px|right|M16A1]]
[[ファイル:Sam16a1.jpg|thumb|250px|right|M16A1]]
[[ファイル:M16A1_M203.jpg#file|thumb|250px|right|M16A1と[[M203 グレネードランチャー]]]]
[[ファイル:M16A1_M203.jpg#file|thumb|250px|right|M16A1と[[M203 グレネードランチャー]]]]
'''M16A1'''(AR-15A1 モデルNo.603)、[[アメリカ陸軍]]に採用されたモデルである。XM16E1として実験的に配備された後に正式採用され、M16A1と命名された。
モデル603は陸軍・海兵隊向けの最初の制式モデルであり、まず1964年より、XM16E1として実験的に生産・配備された後に、1967年以降は、その教訓をフィードバックしたM16A1に移行した。また納入済みのXM16E1も、軍の施設でM16A1仕様に改修された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}


XM16E1では、生産開始直前になって、陸軍の要請を受けて完全閉鎖しなかったボルトを強制的に閉鎖させる「ボルトフォワードアシスト」が追加された。また最初期のモデルは、従来と同様に三叉状の[[フラッシュサプレッサー|消炎器]]を備えていたが、木の枝や蔓に引っかかりやすい上に衝撃に弱く、水も侵入しやすかったことから、1966年9月より、先端が閉じて4つのスロットが切られた鳥かご型へ変更された。1968年から1969年にかけて、既存のXM16E1のほとんどがこの仕様に改修されたが、一部では三叉状のままで使用が継続された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
密林での行軍中に、[[銃口]]に小枝が挟まることを防止するため[[フラッシュサプレッサー|消炎器]]が先割れ型(チューリップ型)から鳥かご型へ変更された。(以降、A1でない方は「ベトナムモデル」と呼ばれるようになった)


1965年よりXM16E1を装備した部隊がベトナム戦争で実戦に参加するようになると、多くの問題が指摘されるようになった。故障の最大の原因が発射薬の変更で、制式化以前は市販のIMR火薬を使用していたのに対し、制式化されたM193弾では、ストーナーの反対にもかかわらず、7.62mm弾などと同じ粒状弾薬が採用された。これはIMR火薬よりも安い一方で燃えカスが多く、ガス圧直接利用式という動作方式もあって、動作不良につながりやすくなっていた。またクリーニング・キットも不足しており、コルト社が「M16は先進ライフルで、メンテナンスの必要はない」と過剰広告していたこともあり、部隊では有効な手入れ法が指導されていなかった。更に、不適切な潤滑油の使用による弾薬の不発化や、弾薬に潤滑油を塗ることによる機関部への異物混入、リコイルスプリングに取り付けられたバッファーの機能不良なども動作不良の原因となっていた。これらに対し、イラストを多用したマニュアルの配備を含む教育強化、ボルトのクロームメッキ処理、ストック内へのメンテナンスキット収納など、順次に改良策が講じられた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。
M16は他の[[自動小銃]]のようにボルトキャリアにハンドルが付いていないため、[[ガス圧作動方式#リュングマン式|リュングマン方式]]とM16の構造により多発した不完全閉鎖時に対応できないため、排莢口後方に「ボルトフォワードアシスト」と呼ばれる、完全閉鎖しなかったボルトを強制的に閉鎖させるボタンが追加された。開発者であるストーナーは“不完全閉鎖はトラブル発生を示すものでそれを強制的に閉鎖させ発射することは銃の破壊につながり危険”と主張したとされる。
{{See also|ガス圧作動方式#M16の作動不良}}


=== M16A2 (モデル645) ===
{{main|ガス圧作動方式#M16の作動不良}}
[[ファイル:M16A2_2.jpg#file|thumb|250px|right|M16A2]]
1980年、[[北大西洋条約機構]](NATO)は、[[FNハースタル]]社が開発した[[5.56x45mm NATO弾|SS109弾]]を新しい標準弾薬として制定し、アメリカ軍でもM855弾として制式化した。これは従来のM16で使われていた.223レミントン弾(M193)と同じ寸法だが、弾丸が重くなり、また鋼鉄製の弾芯を挿入して貫通性能を向上させた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=114-133}}。


M16A1をもとに、この新弾薬の運用に対応して設計を修正したのがM16A1E1であり、1983年に'''M16A2'''として制式化された。M16A1の銃身は12インチで1回転するライフリング(1-12)が刻まれていたが、これは.223レミントン弾(M193)に最適化したものだったため、これより重いM855弾を安定して飛翔させるためには、ライフリング転度を変更する必要があった。このため、M16A2では7インチで1回転するライフリング(1-7)が刻まれた。また銃身の厚みもより肉厚に変更されたほか、下記のような変更が加えられた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。
活字ばかりのマニュアルから、当時の有名漫画家である[[ウィル・アイズナー]]が執筆したグラマーな女性の漫画入りのマニュアルに改め、[[兵士]]への注意を喚起したとされる。これは兵士がマニュアルに目を通すよう仕向けるためとも、文字を読みたがらない兵士に漫画の絵で理解させるためとも言われている。


[[ベトナム]]の高温多湿気候下での実戦投入を通じて、ボルトのクロームメッキ処理、ストック内へのメンテナンスキット収納といった改良が加えられたほか、ハンドガードはゆるい三角形の断面形のものに変更された。

=== M16A2(645) ===
[[ファイル:M16A2_2.jpg#file|thumb|250px|right|M16A2]]
[[ファイル:US Navy 111210-N-PB383-726 Sailors fire at their targets with M-16 service rifles during small arms qualifications aboard the amphibious transport.jpg|thumb|250px|right|M16A2で射撃訓練を行うアメリカ海軍の水兵([[ニューオーリンズ (ドック型輸送揚陸艦)|揚陸艦ニューオーリンズ]]の乗組員)]]
'''M16A2'''(AR-15A2 モデルNo.645)は、'''M16A1'''の改良型[[アサルトライフル]]である。

* 使用[[弾薬]]をそれまでのM193(.223Rem:5.56x45mm)から、防弾素材への貫通力を増すためスチール弾芯を採用したM855([[5.56x45mm NATO弾|NATO制式弾]]SS109準拠:5.56x45mm)に変更。M855を使用できるように[[ライフリング]]のピッチ変更などの改良を施した。実際にはどちらの弾薬も扱えるが、集弾性などを高めるなどの理由で改良された。
* リアサイト([[照準器]])をそれまでのL型2段階切り替えからダイヤル方式の多段階調整式に変更した。
* リアサイト([[照準器]])をそれまでのL型2段階切り替えからダイヤル方式の多段階調整式に変更した。
* フロントハンドガードを三角断面の左右分割形状から、円断面の上下分割形状に変更。上下対称形のため、ハンドガードに左右で別形状の部品を必要としたM16(A1)よりも部品の種類がひとつ減ることになる。材質もナイロン系の高強度プラスティックに変更された。
* フロントハンドガードを三角断面の左右分割形状から、円断面の上下分割形状に変更。上下対称形のため、ハンドガードに左右で別形状の部品を必要としたM16(A1)よりも部品の種類がひとつ減ることになる。材質もナイロン系の高強度プラスティックに変更された。
* ディフレクター(排莢反射突起)排莢口の追加。れにより排出された空[[薬莢]]が後方ではなく真横から斜め前方に落ちるため、左利きの射手でも使用しやすくなった。
* トリッジ・ディフレクター(排莢反射突起)の追加:排莢突起を付すとで、排出された空[[薬莢]]が後方ではなく真横から斜め前方に落ちるため、左利きの射手でも使用しやすくなった。
* 弾薬の節約及び点射による命中精度向上のため、フルオート機構から3点バースト(3点射)機構に変更した。
* 強度を上げるため、[[銃砲身|銃身]]を太いものに変更した。ただしハンドガードに覆われている部分は[[M203 グレネードランチャー]]を装着する都合上、M16と同じ細い外径のままである。ヘビーバレル化したのは実質フロントサイト部より前方だけであり、着剣戦闘を非推奨としていることから、「A1よりはまし」といった程度だとされることもある。
* 弾薬の節約及び点射による命中精度向上のため、フルオート機構から3バースト(3点射)機構に変更した。
* [[銃床]]の形状を変更し、長さがA1より少し長くなった。材質もナイロン系の高強度プラスティックに変更された。
* [[銃床]]の形状を変更し、長さがA1より少し長くなった。材質もナイロン系の高強度プラスティックに変更された。
* マガジン・キャッチ・ボタンを誤って押さないよう、ボタンの周りに突起が追加された。
* マガジン・キャッチ・ボタンを誤って押さないよう、ボタンの周りに突起が追加された。
* [[マズルブレーキ|消焔制退器]]の側面スリットを、外周の上半分だけとした。[[火薬]]ガスが上方向に噴出するため、射撃時に[[銃口]]が跳ね上がるのを緩和し、また、砂塵を巻き上げにくくなった。
* [[マズルブレーキ|消焔制退器]]の側面スリットを、外周の上半分だけとした。[[火薬]]ガスが上方向に噴出するため、射撃時に[[銃口]]が跳ね上がるのを緩和し、また、砂塵を巻き上げにくくなった。
これらの改良を経て[[アメリカ軍]]制式ライフルとして使用が開始されたが、3バースト機構について[[兵士]]からは「命中精度にバラつきがあり、使い勝手が悪い」との意見もあるほか、M16A2やM16A4はバースト射撃の作動機構にギアラック式を採用しているため、2発発射された時点で引き金を戻した場合、次に引き金を引いたときには1発しか発射されない欠点がある。
これらの改良を経て[[アメリカ軍]]制式ライフルとして使用が開始されたが、3バースト機構について[[兵士]]からは「命中精度にバラつきがあり、使い勝手が悪い」との意見もあるほか、M16A2やM16A4はバースト射撃の作動機構にギアラック式を採用しているため、2発発射された時点で引き金を戻した場合、次に引き金を引いたときには1発しか発射されない欠点がある。


=== M16A3 (モデル646) ===
現在、[[アメリカ陸軍]]と[[アメリカ海兵隊]]はM16A2の後継として[[M4カービン]]とM16A4を採用しており、M16A2はほとんど使用されていない。
[[ファイル:US Navy 111210-N-PB383-726 Sailors fire at their targets with M-16 service rifles during small arms qualifications aboard the amphibious transport.jpg|thumb|250px|right|M16で射撃訓練を行うアメリカ海軍の水兵([[ニューオーリンズ (ドック型輸送揚陸艦)|揚陸艦ニューオーリンズ]]の乗組員)]]
上記の通り、M16A2はフルオート射撃のかわりに3点射を行うように設計されているが、特殊部隊の戦闘ではフルオート射撃の機能が必要だったことから、海軍がスポンサーとなり、フルオート射撃機能を備えた派生型としてM16A2E3が開発された。これは1992年よりNavy SEALsに配備され、1996年には'''M16A3'''の制式名を与えられた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。


その後、SEALs以外にも、海軍[[憲兵]]や[[シービー|建設工兵]]にも配備が進められた。また2007年には、艦艇乗員用として配備されていたM14も、M16A3に代替更新された{{efn2|ただし溺者救助用の救命索発射銃として、各艦あたり2丁ずつのM14が残された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。}}{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。
=== M16A3(901) ===
'''M16A3'''(AR-15A3 モデルNo.901)は、'''M16A2'''の改良型[[アサルトライフル]]である。


=== M16A4 (モデル945) ===
セレクターの3バーストをフルオートに置き換え、信頼性を向上させたもの。現在[[アメリカ海軍]]によって採用されている。
[[ファイル:24th MEU conducts a Kilo Co. Squad Exercise 150214-M-AR522-021.jpg|thumb|250px|right|M16A4を構える第24[[海兵遠征部隊]]の隊員]]
[[M4カービン]]ではキャリング・ハンドルを脱着式にし、アッパー・レシーバー上部に[[ピカティニー・レール]]を持つフラットトップ・レシーバーが採用されたが、これは非常な成功を収めたことから、M16シリーズのメインストリームにもバックフィットされることになった。これによって開発されたのが'''M16A4'''で、1996年に陸軍が、また1998年には海兵隊も制式化した{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。


=== M16シリーズの銃剣 ===
なお、刻印に関してM16A2のフルオートモデルにあたるのは「M4/M16A2E3」となっているため、[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト]]製のM16A3刻印は存在しない。[[FNハースタル|FN]]製に担当するモデルは存在している。
まず1964年、[[M7 (銃剣)|M7銃剣]]とグラスファイバー製のM8A1鞘が採用された。形状はシンプルなストレート状で、[[スプリングフィールドM14|M14]]用の[[M6 (銃剣)|M6]]の改良型とされている{{Sfn|ロットマン|2017|pp=114-133}}。


またM16A2の採用にあわせて、1984年には[[M9 (銃剣)|M9多目的銃剣]]とM10鞘が採用され、1987年より支給が開始された。これは戦闘用ナイフとして使うほかにも、鞘と組み合わせればワイヤーカッターとして使えるほか、上部ブレードはノコギリになっているなど、多機能性を持っていた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=114-133}}。
=== M16A4(905&901) ===
[[ファイル:24th MEU conducts a Kilo Co. Squad Exercise 150214-M-AR522-021.jpg|thumb|250px|right|M16A4を構える第24[[海兵遠征部隊]]の隊員]]
'''M16A4'''(AR-15A3 モデルNo.905/901)は、'''M16A2'''、'''M16A3'''の改良型[[アサルトライフル]]である。


アメリカ海兵隊はM9を本格採用せずM7を使い続けたが、M7と[[Ka-Bar|Ka-Barナイフ]]の機能を統合する銃剣として[[OKC-3S]]を開発・採用した。
M16A4はM16A2/A3のキャリング・ハンドルを脱着式にし、アッパー・レシーバー上部に[[ピカティニー・レール]]を持つフラットトップ・レシーバーを装備した新制式[[小銃]]である。フラットトップ・レシーバーを装備することで、これまでのレシーバーでは専用のマウントが必要だった光学[[照準器]]や[[暗視装置]]の装着も非常に容易になり、状況に応じてそれらの光学機器を付け替えられるようになった。


{{-}}
なお、コルトM16シリーズには9から始まる三桁の生産ナンバーが付けられており、[[アメリカ軍|米軍]]制式名M16A4がM905となっていたがコルト社(Colt's Patent Firearms)は経営難のため再編し、現在M16A4を納入しているのは新たに設立されたコルト・ディフェンス社(Colt Defense LLC)であるが、このコルト・ディフェンス社では旧コルト時代と異なり軍用モデルのM16及びM4に、「M」ではなく「RO」から始まる三桁の生産ナンバーを付けているため、それぞれRO905(セミオート・3バースト)、RO901(セミオート・フルオート)としている。しかも製品名が変更され、これまでコルトM16A2、M16A3とされてきたM16シリーズの名称は全てコルトM16A4に統一されている。
== 派生型 ==

=== コルト・コマンドー ===
=== カービン / サブシンガン ===
==== XM177 / GAU-5 ====
短銃身化、コルト社のアサルト[[カービン]]の総称。
{{main|コルト・コマンドー}}
{{main|コルト・コマンドー}}
1964年、コルト社は、AR-15をもとに銃身長を短縮したCAR-15カービンと、更に短縮したサブマシンガンの開発に着手した。前者はモデル610、後者は609として設計され、1967年1月、アメリカ陸軍は、モデル610をXM177、モデル609をXM177E1として制式化した。また空軍でもGAU-5/Aとして採用された。4月には銃身を38ミリ延長したモデルが登場し、陸軍ではXM177E2、空軍ではGAU-5/A/Aとして採用された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=8-75}}。


==== M4(720) ====
==== M4カービン ====
'''M4'''(CAR-15A2 モデルNo.720)は、'''M16A2'''の[[カービン]]型である。
{{main|M4カービン}}
{{main|M4カービン}}
1980年代には、M16のカービン版を求める声が再び上がり、1984年9月、M16A2カービン・プログラムが開始された。これによって開発されたのがXM4で、1987年、'''M4'''として制式化された。これはM16A2と同様にフルオート射撃のかわりに3点射を行うように設計されていたが、その後、特殊部隊からの要望に応えてフルオート射撃機能を備えたM4E1が開発され、'''M4A1'''として制式化された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。


==== 9mmSMG ====
[[特殊部隊]]などに実験配備された'''[[コルト・コマンドー#CAR-15コマンドー (XM177 / GAU-5)|XM177]]'''などの前例はあるものの、[[第二次世界大戦]]時に採用された[[U.S.M1カービン|M1カービン]]以来の[[アメリカ軍|米軍]]制式[[カービン]]。コンセプトはXM177の[[銃砲身|短銃身]]と伸縮式[[銃床]]を継承している。
{{main|コルト9mmSMG}}
また[[9x19mmパラベラム弾]]を使用する[[短機関銃]]版も開発された。モデル635は、作動方式を[[ブローバック]]に変更しており、またマガジンは[[UZI (SMG)|ウージー・サブマシンガン]]のものに改良を加えて使用する{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。


==== M4A1(927) ====
=== 狙撃銃 ===
==== SPR Mk12 ====
[[ファイル:M4-Transparent.png|thumb|250px|right|M4A1]]
'''M4A1'''(CAR-15A3 モデルNo.927)は、'''M4カービン'''の改良型[[カービン]]である。M4A1は[[特殊部隊]]用にM4の3バースト機構をフルオート機構に変更したもの。キャリングハンドルは着脱式となる。

==== M4E2(925) ====
'''M4E2'''(CAR-15A3 モデルNo.925)は、'''M4カービン'''の改良型[[カービン]]である。

ハンドガードにアクセサリー装着用の[[ピカティニー・レール]]を持つMWS(Moduler Weapon System)を装着したもの。MWSとして[[ナイツアーマメント]]社のRIS(Rail Interface System)が採用される。

このモデルは現在[[アメリカ陸軍]]で主力[[小銃]]として採用されている。

=== AR-15 9ミリ サブマシンガン ===
'''AR-15 9ミリ サブマシンガン'''は、M16A2コマンドを[[9x19mmパラベラム弾]]使用の[[短機関銃]]にしたものである。[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト]]の'''[[コルト9mmSMG|9mm SMG]]'''(M635)や、ブッシュマスターの'''カーボン15 9mm カービン'''など[[M4カービン|M4]]サイズの物である。

=== AR-15 ピストル ===
'''AR-15 ピストル'''は、M16を[[拳銃|ピストル]]サイズにしたものである。使用弾は[[9x19mmパラベラム弾]]と[[5.56x45mm NATO弾]]が有る。代表的な物はブッシュマスターの'''カーボン15ピストル'''である。

=== M16 LSW(741) ===
[[ファイル:Danish LSV M04.jpg|250px|thumb|[[デンマークの軍事|デンマーク軍]]のM16 LSW]]
'''M16 LSW(741)'''は、M16A2を基に開発されたLSW(Light Support Weapon、軽支援火器、[[分隊支援火器]])である。ハンドガードが角が丸い四角形となり、下面にグリップ角が追加された。
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=== SPR Mk12 ===
[[ファイル:SPRCrane.jpg|thumb|250px|right|SPR Mk12 Mod 0]]
[[ファイル:SPRCrane.jpg|thumb|250px|right|SPR Mk12 Mod 0]]
'''[[:en:Mk 12 Special Purpose Rifle|Special Purpose Rifle(SPR) Mk12]]'''は、通常の[[狙撃銃]]よりもコンパクトでM4A1よりも射程・射撃精度に優れた[[選抜射手]]ライフルとして開発された。Navy SEALsによる偵察用ライフル・プロジェクトがベースとなっており、開発は2000年より開始された。ただしロック・アイランド陸軍兵器工廠とクレイン海軍基地兵器開発センターに民間企業が加わっており、開発経緯は不詳の部分が多い。陸軍特殊部隊はMk.12 mod.0、SEALsと陸軍レンジャー部隊はmod.1を採用した。ただしSEALsはSPRをあまり高く評価しておらず、406ミリ銃身のカービンを選ぶ傾向がある{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。
'''[[:en:Mk 12 Special Purpose Rifle|SPR Mk12]]'''は、'''M16A4'''、'''M4A1'''を[[狙撃銃]]として改良した特殊目的ライフル(Special Purpose Rifle)である。

SPR Mk12は、[[アメリカ陸軍特殊部隊群|アメリカ陸軍特殊部隊]]第5SFGとUSAMU(United States Army Marksman Unit=アメリカ陸軍射手育成部隊)が[[特殊部隊]]用の[[狙撃]]と精密射撃任務用ライフルとして共同開発したもので、量産型にMod0とMod1がある。精密射撃を実現するため、専用[[弾薬]]として[[弾頭]]重量を4g(62グレイン)のM855から5g(77グレイン)に増した新設計のMk 262 Mod0/1を使用し、[[ライフリング]]のツイストも適合するように1/7へと変更されている。


[[銃砲身|銃身]]は高精度、軽量化したもので、ハンドガードとともに、基部以外は他のパーツに接触しないフローティング式になっている。[[銃口]]には専用の[[サプレッサー]]の取り付けが可能である。
[[銃砲身|銃身]]は高精度、軽量化したもので、ハンドガードとともに、基部以外は他のパーツに接触しないフローティング式になっている。[[銃口]]には専用の[[サプレッサー]]の取り付けが可能である。標準の[[照準器|スコープ]]はリューポルド社のTS-30A2で、ほかにロイポルト社のLRM3やナイトフォース社のNXSなども用いられる{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}


なお本銃とあわせて、精密射撃用弾薬として、[[弾頭]]重量を4g(62グレイン)のM855から5g(77グレイン)に増した新設計のMk.262 mod.1/2が開発された。これは従来の弾薬と比して射程が長く、ストッピングパワーも向上していることから、ほとんどの特殊部隊が採用するようになった。ただし鋼製の弾芯が挿入されていないために貫通力が低く、また製造に手間がかかるため高価でもある{{Sfn|ロットマン|2017|pp=114-133}}。
標準の[[照準器|スコープ]]はリューポルド社のTS-30A2で、マウントレールにも精度が高く耐久性もあるSWANスリーブを採用している。


=== SAM-R ===
==== SAM-R ====
[[ファイル:Marines-with-sniper-rifle-2.jpg|thumb|250px|right|SAM-R]]
[[ファイル:Marines-with-sniper-rifle-2.jpg|thumb|250px|right|SAM-R]]
'''[[:en:United States Marine Corps Squad Advanced Marksman Rifle|SAM-R]]'''は、'''M16A4'''を[[狙撃銃]]として改良した[[選抜射手|分隊上級射手]]ライフル(Squad Advanced Marksman Rifle)である。
'''[[:en:United States Marine Corps Squad Advanced Marksman Rifle|SAM-R]]'''は、'''M16A4'''を[[狙撃銃]]として改良した[[選抜射手|分隊上級射手]]ライフル(Squad Advanced Marksman Rifle)である。
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=== SDM-R ===
==== SDM-R ====
[[Image:SquadDesignatedMarksmen.jpg|thumb|250px|[[SDM-R]]]]
[[Image:SquadDesignatedMarksmen.jpg|thumb|250px|[[SDM-R]]]]
'''[[SDM-R]]'''は、'''M16A4'''を[[狙撃銃]]として改良した[[選抜射手]]ライフル(Squad Designated Marksman Rifle)である。
'''[[SDM-R]]'''は、'''M16A4'''を[[狙撃銃]]として改良した[[選抜射手]]ライフル(Squad Designated Marksman Rifle)である。
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=== SR-25 ===
=== 分隊支援火器 ===
[[ファイル:Danish LSV M04.jpg|250px|thumb|[[デンマークの軍事|デンマーク軍]]のM16 LSW]]
{{main|SR-25}}
M16をもとにした[[分隊支援火器]]も開発されており、LSW(Light Support Weapon、軽支援火器)と称される{{Sfn|床井|2006|p=300}}。
'''SR-25'''は、ナイツ・アーマメントがAR-10(AR-15、M16)をベースにして開発した[[7.62x51mm NATO弾]](.308 ウィンチェスター弾)を使用する[[狙撃銃]]である。

M16の各バージョンを元にして製造されているため、数機種のバリエーションが存在する。ハンドガードが角が丸い四角形となり、下面にグリップが追加された。M16ライフルの機関部を流用して、これに肉厚のヘビー・バレルと折りたたみ式の二脚を付している。給弾は[[弾倉]]式で、標準的な[[STANAG マガジン]]のほか、[[:en:Beta C-Mag|C-MAG]]などの[[弾倉#ドラムマガジン|ドラムマガジン]]も用いられる{{Sfn|床井|2006|p=300}}。

なお、アメリカ海兵隊でも、同様のHBARモデルを分隊支援火器として検討したが、銃身が加熱して連続射撃ができないことが問題視され、性能試験は1977年に中止された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。
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=== M231 FPW ===
{{main|M231 FPW}}
[[ファイル:M231 1.svg|thumb|250px|[[M231 FPW]]]]
'''M231 FPW'''は、[[M2ブラッドレー歩兵戦闘車|M2/M3ブラッドレー]]の[[銃眼|ガンポート]]で使用するために開発された[[小銃]]{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。

M16A1を元にしているが、射撃はフルオート以外不可能で、作動方式はオープンボルト、[[照準器]]や[[銃床|ストック]]は取り外されている。当初は、緊急時に車外で使用するための伸縮式ワイヤー・ストックを装備する計画もあったが、実現しなかった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。

狙って当てるようなものではなく、あくまでも[[弾幕]]を展開することにより敵[[歩兵]]から車両を防御することを狙ったものである。[[弾薬]]には[[曳光弾]]を使用し、射撃時にはガンポートの上に設けられた窓から、その弾道を目視して射線を調整する{{Sfn|ロットマン|2017|pp=78-111}}。

ブラッドレーのガンポートが廃止されたため現在は使用されていない。


=== AR-15 ===
=== AR-15 ===
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アメリカ国内で多発する[[銃乱射事件]]の多くで犯人がAR-15を凶器に使用している([[オーロラ銃乱射事件]]、[[サンディフック小学校銃乱射事件]]、[[サンバーナーディーノ銃乱射事件]]など)<ref>{{Cite web |author= |date=2016-06-20|url=https://wired.jp/2016/06/20/ar-15/|title=銃乱射事件で使われた「AR-15」の破壊力を、医師たちが語った|work=wired.jp|publisher= |accessdate=2018-02-15}}</ref>。
アメリカ国内で多発する[[銃乱射事件]]の多くで犯人がAR-15を凶器に使用している([[オーロラ銃乱射事件]]、[[サンディフック小学校銃乱射事件]]、[[サンバーナーディーノ銃乱射事件]]など)<ref>{{Cite web |author= |date=2016-06-20|url=https://wired.jp/2016/06/20/ar-15/|title=銃乱射事件で使われた「AR-15」の破壊力を、医師たちが語った|work=wired.jp|publisher= |accessdate=2018-02-15}}</ref>。

=== M231 ファイアリング・ポート・ウェポン(FPW) ===
{{main|M231 FPW}}
[[ファイル:M231 1.svg|thumb|250px|[[M231 FPW]]]]
'''M231 FPW'''は、[[M2ブラッドレー歩兵戦闘車|M2/M3ブラッドレー]]の[[銃眼|ガンポート]]で使用するために開発された[[小銃]]、717.6mm。

射撃はフルオート以外不可能で、作動方式はオープンボルト、[[照準器]]や[[銃床|ストック]]は取り外されている。
狙って当てるようなものではなく、あくまでも[[弾幕]]を展開することにより敵[[歩兵]]から車両を防御することを狙ったものである。[[弾薬]]には[[曳光弾]]を使用し、射撃時にはガンポートの上に設けられた窓から、その弾道を目視して射線を調整する。

ブラッドレーのガンポートが廃止されたため現在は使用されていない。
{{-}}
{{-}}


== M16系統の銃を製造する会社 ==
=== CAR-703 ===
{{main|AR-15を製造する会社の一覧}}
'''CAR-703'''は、[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト]]社が設計したM16をガス・ピストン(作動)方式にしたもの。M16A2のプロトタイプとして設計されたが、結局ガス圧作動・リュングマン式のM645がM16A2として採用された。アッパーレシーバーの高さが上がっており、[[アーマライト]]社の[[AR-18]]の影響がうかがえる。[[1969年]]5月に完成した。


M16は、コルト社や同社の委託で[[ゼネラルモーターズ|GM]]社やH&R社が生産し、アメリカ軍に納入していたが、コルト社の経営危機により製造権が[[アメリカ合衆国連邦政府|アメリカ政府]]に移り、現在では[[FNハースタル|FN]]社が主に生産している。コルト社は[[M4カービン|M4]]を受注しているものの、国内では生産しておらず、カナダ・コルト(米国コルト社に買収された旧ディマコ社)がM16A2に相当するC7と、M4に相当するC8を生産し、制式採用している[[カナダ軍]]に納入している。
== 比較 ==
{| class="wikitable"
|-
! 名称(モデル) !! 連射モード !! 全長 !! 詳細
|-
| [[M16自動小銃#M16(604)|M16]] || フルオート || 990mm || 1960年採用 20インチ銃身<br />※制式採用前の名称は[[M16自動小銃#AR-15|AR-15]]
|-
| [[M16自動小銃#M16A1(603)|M16A1]] || フルオート || 985mm || 1967年採用 ボルトフォワードアシストボタンの追加 他
|-
| [[M16自動小銃#M16A2(645)|M16A2]] || 3点バースト || 999mm || 1982年採用 A1をさらに改良
|-
| [[M16自動小銃#M16A3(901)|M16A3]] || フルオート || 999mm || A2のフルオートモデル
|-
| [[M16自動小銃#M16A4(905&901)|M16A4]] || フルオート || 999mm || A3のレシーバーに[[ピカティニー・レール]]を装備
|-
| [[コルト・コマンドー#CAR-15 カービン|CAR-15カービン]] || フルオート || 853mm || 15インチ銃身 '''A1'''の短銃身化
|-
| CAR-15 SMG || フルオート || 729 - 660mm || 10インチ銃身 伸縮式銃床を追加
|-
| [[コルト・コマンドー#CAR-15 コマンドー(XM177/GAU-5)|XM177E1]] || フルオート || 826 - 719mm || 10インチ銃身 大型のフラッシュハイダーを追加
|-
| XM177E2 || フルオート || 826 - 757mm || 11.5インチ銃身 XM148[[グレネードランチャー]]/[[グレネードランチャー#小銃擲弾|ライフルグレネード]]が発射可能に
|-
| [[M4カービン]] || 3点バースト || 840 - 760mm || 1994年採用 <br />14.5インチ銃身 '''A2'''を短縮([[カービン]])化、[[ピカティニー・レール]]を装備
|-
| M4A1 || フルオート || 840 - 760mm || 1994年採用 M4のフルオートモデル
|-
| M4E2 || フルオート || 840 - 760mm || M4A1のハンドガードにも[[ピカティニー・レール]](MWS)を装備
|-
| [[M16自動小銃#M16 LSW(741)|M16 LSW]] || フルオート || 1000mm || A2を[[分隊支援火器]]として開発<br />角型のハンドガードにし[[二脚|二脚(バイポッド)]]・フォアグリップを追加
|-
| [[コルト9mmSMG]] || フルオート || 730 - 650mm || M16を元にした[[短機関銃]]<br />10.5インチ銃身 1982年製造<br />[[UZI (SMG)|ウージー短機関銃]]の弾倉([[9x19mmパラベラム弾]])を使用
|-
| [[M231 FPW]] || フルオート || 71.76mm || 15.5インチ銃身 1980年製造<br />[[M2ブラッドレー歩兵戦闘車]]のガンポートから射撃するために開発されたもの<br />照星・銃床が省かれており、[[曳光弾]]の光跡で照準を行う
|-
| [[M16自動小銃#AR-15|AR-15]] || なし || 990mm || 開発時の製品名<br />アメリカ空軍で制式採用前の名称でもあるが<br />現在はセミオートのみの民間版の名称
|-
| [[SR-25]] || なし || 1118mm || セミオート[[狙撃銃]] 1990年設計<br />[[7.62x51mm NATO弾]] [[ナイツ・アーマメント]]社製<br />20インチ銃身、または24インチ銃身
|-
|}


== M16の派生型など ==
=== 他社の派生型 ===
[[ファイル:Canadian C7A2 Rifle.JPG|thumb|250px|C7A2を使用するカナダ軍兵士]]
[[ファイル:Canadian C7A2 Rifle.JPG|thumb|250px|C7A2を使用するカナダ軍兵士]]
[[ファイル:HK416.jpg|thumb|250px|[[H&K HK416]]]]
[[ファイル:HK416.jpg|thumb|250px|[[H&K HK416]]]]
313行目: 275行目:
; OA15(ドイツ/オバーランドアームス)
; OA15(ドイツ/オバーランドアームス)
: 主に民間用。
: 主に民間用。
;[[HK416]](ドイツ/[[H&K]])
;STM 556 (オーストリア/シュタイアーマンリッヒャー)
:試作品。ワンタッチで着脱可能な銃身やレシーバーとハンドガードの一体化
などの革新的な機能をもつ。ラインメタル社と共同開発した改良型、RS556は
ドイツ連邦軍次期制式銃トライアルに参加の予定。
;[[HK416]] ([[ドイツ/H&K ]])
:[[M4カービン]]の改修を依頼し開発。[[ガス圧作動方式#ショートストロークピストン式|ショートストロークピストン式]]、、[[ピカティニー・レール]]システムの標準装備。
:[[M4カービン]]の改修を依頼し開発。[[ガス圧作動方式#ショートストロークピストン式|ショートストロークピストン式]]、、[[ピカティニー・レール]]システムの標準装備。
; [[CQ 311]](中国/[[北方工業公司]])
; [[CQ 311]](中国/[[北方工業公司]])
325行目: 283行目:
: [[スーダン]]においても同様の国産ライフルが製造されているといわれるが、M311やS5.56を再模倣したものともされる。スーダンはM16の原型である[[AR-10]]を使用した経験があり、西側寄りになった[[1980年代]]の[[ヌメイリ]]政権時代にM16を含む旧西側製装備を輸入していた。
: [[スーダン]]においても同様の国産ライフルが製造されているといわれるが、M311やS5.56を再模倣したものともされる。スーダンはM16の原型である[[AR-10]]を使用した経験があり、西側寄りになった[[1980年代]]の[[ヌメイリ]]政権時代にM16を含む旧西側製装備を輸入していた。


== アメリカ軍次期制式ライフル ==
== M16シリーズの銃剣 ==
[[File:1stbat75thregSCAR.jpg|thumb|right|250px|SCARを装備した[[第75レンジャー連隊 (アメリカ軍)|第75レンジャー連隊]]の隊員]]
当初、M16用として[[M7 (銃剣)|M7バヨネット]]が採用された。形状はシンプルなストレート状で、[[U.S.M1カービン|M1カービン]]用の[[M4 (銃剣)|M4]]、[[M1ガーランド]]用の[[M5 (銃剣)|M5]]、[[スプリングフィールドM14|M14]]用の[[M6 (銃剣)|M6]]と酷似しており、共通のM8スキャバード(後にM8A1が登場)を使用する。
[[File:HK416 in Samaria.jpg|thumb|250px|HK416を装備したアメリカ陸軍の兵士]]
M16の後継機種としては、多くの候補が提案・検討されてきた。そもそもアメリカ陸軍では、上記の通り、M16はフレシェット弾を使用する新型歩兵火器([[:en:Special Purpose Individual Weapon|SPIW]])の完成までの暫定策としての性格もあったが、SPIWの開発は頓挫した。また海兵隊は[[ストーナー63]]をM16の後継として試用したが、採用はされなかった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=176-183}}。


1986年からは未来型戦闘ライフル([[:en:Advanced Combat Rifle|ACR]])の計画が開始された。SPIWで検討されたようなAAI社のフレシェット・ライフルや[[H&K G11]]、[[シュタイヤー・マンリヒャー|シュタイヤー]]社のフレシェット・ライフル、ストーナー率いるAres社の先進個人武器システム、そしてM16A2E2が検討の俎上にのぼったが、結局いずれも多くの問題を抱えているうえに現用火器を凌駕する性能は得られないことが判明し、計画自体が中止された{{Sfn|ロットマン|2017|pp=176-183}}。
M16A2の採用に合わせて登場したのが[[M9 (銃剣)|M9バヨネット]]で、こちらはM10スキャバードと合わせてM9MPBSとも呼ばれ、[[銃剣]]としての用途以外にもワイヤーカッターなどの多機能性を持つ。


1990年代末には個人戦闘兵器([[OICW]])計画がスタートした。これは銃本体に連装式[[グレネードランチャー]]や電子スコープのモジュールを一体化しており、[[ヘッケラー&コッホ|H&K]]社は[[XM29 OICW|XM29]]を開発していた。しかし複雑さや重量過多、予算超過が問題になり、2004年に開発中止となった{{Sfn|ロットマン|2017|pp=176-183}}。
アメリカ海兵隊はM9を本格採用せずM7を使い続けたが、M7と[[Ka-Bar|Ka-Barナイフ]]の機能を統合する銃剣として[[OKC-3S]]を開発・採用した。

続いて、H&K社は[[H&K XM8|XM8]]を提案した。これは部品を交換することでライフル、カービン、コンパクト・カービン、オートマチック・ライフルに組み替えられるのがセールスポイントだったが、やはり現用火器に対する優位性が薄いとして、採用目前の2005年にキャンセルされた{{Sfn|ロットマン|2017|pp=176-183}}。

新要求仕様に基づき、現在M16を製造する[[FNハースタル|FN]]社は、すでに[[アメリカ軍]]特殊部隊向けの導入が決定している、モジュールの組替えにより[[歩兵]]用アサルトライフルにも[[分隊支援火器]]にもなり、5.56mmと7.62mmの[[口径]]バリエーションを備える'''[[FN SCAR|SCAR-L/H]]'''(Special Forces Combat Assault Rifle-Light/Heavy respectively)を提案している。


一方、H&K社もSCAR同様の口径バリエーションを備え、一部特殊部隊向けに納入実績のある'''[[H&K HK416|HK416]]/[[H&K HK417|HK417]]'''で対抗する動きがある。
== M16系統の銃を製造する会社 ==

{{main|AR-15を製造する会社の一覧}}
次期制式ライフルが5.56mmを踏襲するのか新[[弾薬]]の[[6.8×43mm SPC]]へ移行するのかも未決定であるため、これらの候補は6.8mmモデルも前提に設計されている(2005年10月時点)。
{{-}}

== その他 ==
=== 日本での所持 ===
[[ファイル:AR-15 w thumbhole stock.jpg|thumb|right|250px|日本仕様のAR-15 H-BAR(ヘビーバレル)/標的射撃用モデル<br>警察庁通達によりサムホールストックを装着している]]
民間人の銃砲所持に規制の多い[[日本]]だが、M16の民間版である[[#AR-15|AR-15]](販売価格30万円前後)の所持は可能。狩猟用途でライフル所持許可を取得するには銃砲所持許可を取得し[[猟銃]]([[散弾銃]]や競技用ライフル銃など)を10年間継続所持した実績および狩猟免許を取得する必要がある。

更に狩猟用ライフル銃の[[口径]]は6mm以上でなければならないため、コンバージョンキット(改修部品)で6x45mmや[[7.62x39mm弾|7.62x39mm]]へ変更する必要がある。また、ピストルグリップ(独立握把)は握り部分に穴が空いたサムホール型[[銃床|ストック]]へ、[[弾倉]]は装弾数5発に制限するなどの改修([[兵器]]でなく猟銃化すること。市民の兵器保有は禁止)も要する。

銃規制強化や[[アメリカ同時多発テロ事件]]による銃器輸出入規制に呼応し、新規許可は難しくなっている。

=== M16の噂 ===
[[アメリカ合衆国|アメリカ]]には「玩具メーカーである[[マテル]]社製のM16が存在する」という[[噂]]がある。 [[バービー人形]]や[[遊戯銃|モデルガン]]で有名なマテル社が、[[ベトナム戦争]]時に[[コルト・ファイヤーアームズ|コルト]]社の委託でM16を生産していた、またはグリップや[[銃床|ストック]]などの[[プラスチック]]部品を生産していたというもので'''[[都市伝説|事実無根]]'''だが、配備当時は珍しかったプラスチックと[[アルミニウム合金|アルミ]]を多用し、それまでの[[小銃]]より小振りで安っぽい印象のあったM16を、[[兵士]]が「マテルの玩具」(Mattel toy)と[[揶揄]]した事や、コルト社が[[自動車産業|自動車メーカー]]の[[ゼネラルモーターズ]](GM)などに生産[[委託]]していたことが噂の発端とされる。実際マテル社はM16のトイガンを販売しており、映画『[[グリーン・ベレー (映画)|グリーン・ベレー]]』では、これを木に叩きつけて折ってしまうシーンがある。また『[[フルメタル・ジャケット]]』の原作では、海兵隊兵士がM16を「マテル」と呼んでいる。

=== 民兵での使用 ===
ライバルといえるAK-47に比較すると、性能に難点がある事や販売・流通にある程度の規制がある事などから、[[民兵]]組織においてM16が使用されているケースは少ない。[[アイルランド共和軍]]([[IRA暫定派]])、[[カレン民族解放軍]]、[[レバノン軍団]]、[[新人民軍]]、[[ヒズボラ]]などでM16やそのファミリー、およびCQなどのクローンが使用されているとみられる。

=== 図柄としての採用 ===
ミャンマーの[[アラカン・ロヒンギャ救世軍]]は、マークにM16の図柄([[:en:Arakan Rohingya Salvation Army|英語版]]参照)を採用している。


== 登場作品 ==
== 登場作品 ==
346行目: 330行目:
* [[アーマライト]]
* [[アーマライト]]
* [[M9 (銃剣)]]
* [[M9 (銃剣)]]
* [[コルト・コマンドー]] 短銃身化、コルト社のアサルトカービンの総称
* [[AK-47]]
* [[AK-47]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|first=G.|last=ロットマン|year=2017|title=M16ライフル (THE M16:Osprey Weapon Series)|publisher=並木書房|isbn=978-4890633661|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|last=床井|first=雅美|year=1998|title=最新軍用ライフル図鑑|publisher=徳間書店|isbn=978-4198909031|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|last=床井|first=雅美|year=2006|title=最新マシンガン図鑑|publisher=徳間書店|isbn=978-4198925277|ref=harv}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2018年3月3日 (土) 14:33時点における版

M16
M16A1
M16
種類 軍用小銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 アーマライトコルト
FN USA
パンサーアームズ(DPMS)
ブッシュマスター
年代 ベトナム戦争-現代
仕様
種別 アサルトライフル
口径 5.56mm
銃身長 508mm
ライフリング 6条右回り
使用弾薬 5.56x45mm NATO弾
装弾数 20発/30発(箱形弾倉
作動方式 ガス圧作動・ガス圧作動方式#ガス直噴式
ロータリーボルト/マイクロ・ロッキング・ラグ閉鎖
全長 999mm
重量 3,500g
発射速度 900発/分
銃口初速 975m/秒(M16A1)
884m/秒
有効射程 500m
歴史 
設計年 1957年
製造期間 1960年-現在
配備期間 1960年-現在
配備先 アメリカ軍
関連戦争・紛争 ベトナム戦争
湾岸戦争
イラク戦争
バリエーション M4(コルト製) SR-25(ナイツ・アーマメント製)
製造数 800万丁以上
(AR-15系統の製造数でブッシュマスター社が1位)
テンプレートを表示

M16自動小銃は、ユージン・ストーナーによって開発されたアメリカ軍小口径自動小銃

アーマライト社の製品名はAR-15、アメリカ軍の制式名はRifle, Caliber 5.56mm, M16(M16 5.56ミリ口径ライフル)。「ブラックライフル」の異名も持つ。

来歴

AR-15の開発

後にM16として結実する新型ライフルの開発は、まず、ジェームズ・サリバンによるベンチャー事業として着手された。より大きな資本を得るため、サリバンはフェアチャイルド社と提携することとした[1]。1954年、フェアチャイルド社の銃器開発部門としてアーマライトが設立され、サリバンが社長、チャールズ・ドーチェスターが工場長、そしてユージン・ストーナーが主任エンジニアを勤めた[2]

1955年、まず7.62mm口径AR-10が開発された[1]。一方、1950年代後半より、アメリカ軍では「小口径高速弾ライフル・プログラム」を開始しており、アーマライト社も、レミントン社と共同でこの計画で使用する弾薬の開発を行っていた。これとあわせて、AR-10を小口径化した小銃が開発され、のちのAR-15となった[3]

アメリカ軍での検討

1957年5月、フォートベニングの歩兵学校で、小口径高速弾ライフルのデモンストレーションが行われた。このとき展示されたAR-15は、既存の.222レミントン弾をもとにした.222レミントン・スペシャル弾を使用していたが、この弾薬はのちに改良されて.223レミントン弾となった[2]

このテストでは、アメリカ陸軍武器科FN FAL(T48)をもとに小口径化した改造小銃と、ウィンチェスター社が試作したライトライフルも対象となった。T48改は不合格とされ、ウィンチェスター・ライトライフルとAR-15はM14の後継小銃になりうると評価されたものの、1958年8月、歩兵兵器審議委員会は、いずれも更なる研究開発が必要と結論した。このため、ウィンチェスター社はトライアルの継続を断念した[2]

1959年初頭、AR-15採用の可能性が検討され、スプリングフィールドM14の代替小銃として選定トライアルを継続するか、小口径小銃のトライアル自体を中断するか、7.62mm口径小銃の代替ではなく特殊用途の小銃として検討するかが議論された。5月には、陸軍戦闘開発実験センターより、「理論上、AR-15で武装した5~7名の小銃組は、M14で武装した11名の分隊よりも多くの目標に命中させることができる」との報告書が公表された[2]

部隊配備の開始

空軍警備隊では、航空機への被害を抑えるという観点から、フルサイズの小銃ではなくM2カービンを使用しており、これを代替する軽量小型のカービンを模索していた。1960年7月、AR-15を試射した空軍のカーチス・ルメイ将軍は、この小銃をM2カービンの後継として推薦することにした[2]

1960年11月、空軍による評価試験が承認された。1961年、ルメイ将軍は空軍へのAR-15小銃8万丁の調達を申請したが、旧式とはいえ十分な数のM2カービンを保有しているうえに、陸軍・海兵隊へのM14小銃の調達が進んでいたことから、これに加えて新しい小銃を導入することには抵抗が強かった。このことから、まず東南アジアに駐留する部隊に限定的に導入されることになり、1961年9月、8,500丁の導入が承認された。また南ベトナム米軍事援助顧問団(MAAG-V)でも、M1小銃よりベトナム人の体格に適合し、M2カービンより威力に優れることを評価して、1,000丁を調達した[2]

1962年1月、AR-15はM16としてアメリカ空軍に採用され、空軍は再度8万丁の調達を申請した。当時呈されていた疑義に対して空軍が真摯に対応したことから、議会は今度はこの予算を認可した。また同時期にNavy SEALsも172丁を試験調達して好評価を与えた。陸軍は、1962年よりフレシェット弾を使用する新型歩兵火器(SPIW)の開発に着手していたことから、これと競合すると見込まれたAR-15の調達には慎重な立場を採っていたが、1963年には、SPIWの配備までの暫定策としてAR-15を導入することになり、5月よりXM16E1の部隊配備を開始した[2]

設計

XM16E1をクリーニングするアメリカ陸軍兵士(1966年ベトナム

構成

上記の経緯より、先行するAR-10をもとに小口径化して開発されたことから、多くの特色を引き継いでいる。

重量軽減と耐腐食性のため、XM16E1では、レシーバーはアルミニウム合金(当初はNo.6061、1968年よりNo.7075)製とし、表面には陽極酸化処理とパーカライジング加工を施した。ただし銃身やボルト、ボルトキャリアーなどの内部機構は鋼鉄製とされた。また銃床やハンドガード、グリップはGFRP製とされ、銃床内部には発泡プラスチックが充填された。構成部品数は約100個であった[2]

銃床の内部には、作動時に後退するボルトキャリア後部・バッファーリング・スプリングを収納するために、リコイル・スプリングガイド(リコイル・バッファー)が収納されている。このため、カービンモデルでも側面への折りたたみ式の銃床を採用できず、伸縮式の銃床が採用された。またM16A1の途中から、銃床内部にクリーニング・キットの収納スペースが設けられた[2]

動作方式はダイレクト・インピンジメント式(ガス圧直接利用式)とされた。前部照星の根部から上部レシーバーにかけて、銃身上部に沿うように細いステンレス製のガスチューブが伸びており、ボルトキャリア上部のチューブ型のガスポートに接続されている。発射ガスはガスポートからボルトキャリア内のガスチャンバーに導かれ、その膨張する圧力でボルトキャリアが後退する[1]。ボルトには8個のロッキング・ラグが放射状に並んでいる[2]

銃身にクロームメッキを施せば耐久性が向上すると提案されていたが、コスト面の問題から当初は採用されなかった。その後、まず1967年5月から薬室と撃針に、そして1971年からは銃身にもクロームメッキが施されるようになった。逆にボルトは、当初はクロームメッキ処理されていたが、1967年以降はパーカライジング処理となった[2]

操作

STANAG マガジン
左が20発用、右が30発用
M16のピープサイトの使用方法

安全装置を兼ねたセレクターがSAFE位置にあることを確認し、弾倉をさしこんだあと、リア・サイト下にあるチャージングハンドルに指をかけて引き、放すとチャンバーに初弾が装填される。チャージングハンドルにはロックがあり、指をかけた状態でないと引けない様になっている。弾倉がからのときチャージングハンドルを引くとボルトキャッチによりボルトキャリアが後退したままの位置で保持され、同時にハンマーが起こされる。チャージングハンドルはボルトキャリアの位置に関係なく、放せば定位置にもどる。 この状態では弾倉交換後、銃の左側面にあるボルトキャッチを押すとボルトキャリアが解放されて前進し、初弾の装填とボルトの閉鎖がおこなわれる[4]

右手でグリップを握った場合、親指の位置にセレクターレバーがある。SAFE(安全)、SEMI(半自動・単発)、AUTO(自動・連発)またはBURST(3点射)と切りかえることができる[4]

右側面にある排莢口のダストカバーは発射時にボルトキャリアが動くことで自動的に開くため、通常は閉めておいても良い。酷使によりボルトの不完全閉鎖が起こった場合は右側面のボルト・フォアード・アシスト・ノブを押すことでボルトを前に押し込むことができる。全弾発射されるとボルトが後退位置で保持されるので、右側面のトリガー・ガード前にあるマガジン・キャッチ・ボタンを押しながらマガジンを抜く[4]

サイトの高さ調整はフロントサイトでおこなう。弾丸の先の尖った部分でスプリングピンを押し下げながらフロントサイトを回転させることにより高さ調整ができる。左右の調整はリアサイトで行い、同様に弾丸の尖った先でスプリングピンを押しながら回すことで調整する[4]

リアサイトはM16ではL字型の孔照門タイプで、近距離(0-300m)用と遠距離(300-500m:Lの刻印が孔の下にある)をどちらかに倒すことで距離を選べる。M16A2では近距離(0-200m)用と遠距離(200-800m:Lの刻印が孔の下にある)をどちらかに倒すことで距離を選べる。微調整はサイト下のレンジ・アジャスティング・ドラム(調整用ダイアル)でおこなうこともできる[4]

冬季作戦のように厚いグローブを着用しているときは、トリガー・ガードの前側にあるロックボタンのスプリングピンを弾丸の先で押すとトリガー・ガードが下に折り畳め、トリガー・ガードが無い状態で操作できる[4]

ストックの肩当部分にあるふたは中にクリーニングキットが入っており、クリーニングロッドやチャンバーブラシが内蔵されている。通常分解掃除は弾丸の先を使ってテイク・ダウン・ピンを銃の左側面から押すことで中折れ式にボルトが開放されるので、ボルトを抜き出したあとチャンバー、ボルトの掃除をする[4]

M16ライフル

モデル
ナンバー
運用者 軍での名称 種別
601 アメリカ空軍 AR-15 ライフル[5]
602
603 アメリカ陸軍・海兵隊 XM16E1→M16A1
604 アメリカ空軍 M16
604改 アメリカ海軍 Mk.4 mod.0
609 アメリカ陸軍 XM177E1 サブマシンガン[5]
610 XM177
アメリカ空軍 GAU-5/P
629 アメリカ陸軍 XM177E2
アメリカ空軍 GAU-5/A/B
630 GAU-5/A/A
649 GAU-5/A
645 アメリカ陸軍・海兵隊 M16A2 ライフル[6]
646 アメリカ海軍 M16A3
945 アメリカ陸軍・海兵隊 M16A4
920 M4 カービン[6]
921 M4A1
711 カナダ軍 C7 ライフル[7]
725 C8 カービン[7]

AR-15 (モデル601, 602)

空軍に配備されていた最初期モデルであり、モデル601は1959年から1963年にかけて、モデル602は1963年から1964年にかけて生産された[5]

M16 (モデル604)

M16

M16(モデル604)は、アメリカ空軍向けの最初の制式モデルであり、1964年から1965年にかけて生産された。並行して陸軍・海兵隊向けに生産されていたM16E1(モデル603)とは異なり、ボルトフォワードアシストを備えておらず、ボルト閉鎖不良時の対応に問題を残した[2]

XM16E1, M16A1 (モデル603)

M16A1
M16A1とM203 グレネードランチャー

モデル603は陸軍・海兵隊向けの最初の制式モデルであり、まず1964年より、XM16E1として実験的に生産・配備された後に、1967年以降は、その教訓をフィードバックしたM16A1に移行した。また納入済みのXM16E1も、軍の施設でM16A1仕様に改修された[2]

XM16E1では、生産開始直前になって、陸軍の要請を受けて完全閉鎖しなかったボルトを強制的に閉鎖させる「ボルトフォワードアシスト」が追加された。また最初期のモデルは、従来と同様に三叉状の消炎器を備えていたが、木の枝や蔓に引っかかりやすい上に衝撃に弱く、水も侵入しやすかったことから、1966年9月より、先端が閉じて4つのスロットが切られた鳥かご型へ変更された。1968年から1969年にかけて、既存のXM16E1のほとんどがこの仕様に改修されたが、一部では三叉状のままで使用が継続された[2]

1965年よりXM16E1を装備した部隊がベトナム戦争で実戦に参加するようになると、多くの問題が指摘されるようになった。故障の最大の原因が発射薬の変更で、制式化以前は市販のIMR火薬を使用していたのに対し、制式化されたM193弾では、ストーナーの反対にもかかわらず、7.62mm弾などと同じ粒状弾薬が採用された。これはIMR火薬よりも安い一方で燃えカスが多く、ガス圧直接利用式という動作方式もあって、動作不良につながりやすくなっていた。またクリーニング・キットも不足しており、コルト社が「M16は先進ライフルで、メンテナンスの必要はない」と過剰広告していたこともあり、部隊では有効な手入れ法が指導されていなかった。更に、不適切な潤滑油の使用による弾薬の不発化や、弾薬に潤滑油を塗ることによる機関部への異物混入、リコイルスプリングに取り付けられたバッファーの機能不良なども動作不良の原因となっていた。これらに対し、イラストを多用したマニュアルの配備を含む教育強化、ボルトのクロームメッキ処理、ストック内へのメンテナンスキット収納など、順次に改良策が講じられた[2]

M16A2 (モデル645)

M16A2

1980年、北大西洋条約機構(NATO)は、FNハースタル社が開発したSS109弾を新しい標準弾薬として制定し、アメリカ軍でもM855弾として制式化した。これは従来のM16で使われていた.223レミントン弾(M193)と同じ寸法だが、弾丸が重くなり、また鋼鉄製の弾芯を挿入して貫通性能を向上させた[3]

M16A1をもとに、この新弾薬の運用に対応して設計を修正したのがM16A1E1であり、1983年にM16A2として制式化された。M16A1の銃身は12インチで1回転するライフリング(1-12)が刻まれていたが、これは.223レミントン弾(M193)に最適化したものだったため、これより重いM855弾を安定して飛翔させるためには、ライフリング転度を変更する必要があった。このため、M16A2では7インチで1回転するライフリング(1-7)が刻まれた。また銃身の厚みもより肉厚に変更されたほか、下記のような変更が加えられた[8]

  • リアサイト(照準器)をそれまでのL型2段階切り替えからダイヤル方式の多段階調整式に変更した。
  • フロントハンドガードを三角断面の左右分割形状から、円断面の上下分割形状に変更。上下対称形のため、ハンドガードに左右で別形状の部品を必要としたM16(A1)よりも部品の種類がひとつ減ることになる。材質もナイロン系の高強度プラスティックに変更された。
  • カートリッジ・ディフレクター(排莢反射突起)の追加:排莢孔後方に突起を付すことで、排出された空薬莢が後方ではなく真横から斜め前方に落ちるため、左利きの射手でも使用しやすくなった。
  • 弾薬の節約及び点射による命中精度向上のため、フルオート機構から3点バースト(3点射)機構に変更した。
  • 銃床の形状を変更し、長さがA1より少し長くなった。材質もナイロン系の高強度プラスティックに変更された。
  • マガジン・キャッチ・ボタンを誤って押さないよう、ボタンの周りに突起が追加された。
  • 消焔制退器の側面スリットを、外周の上半分だけとした。火薬ガスが上方向に噴出するため、射撃時に銃口が跳ね上がるのを緩和し、また、砂塵を巻き上げにくくなった。

これらの改良を経てアメリカ軍制式ライフルとして使用が開始されたが、3点バースト機構について兵士からは「命中精度にバラつきがあり、使い勝手が悪い」との意見もあるほか、M16A2やM16A4はバースト射撃の作動機構にギアラック式を採用しているため、2発発射された時点で引き金を戻した場合、次に引き金を引いたときには1発しか発射されない欠点がある。

M16A3 (モデル646)

M16で射撃訓練を行うアメリカ海軍の水兵(揚陸艦ニューオーリンズの乗組員)

上記の通り、M16A2はフルオート射撃のかわりに3点射を行うように設計されているが、特殊部隊の戦闘ではフルオート射撃の機能が必要だったことから、海軍がスポンサーとなり、フルオート射撃機能を備えた派生型としてM16A2E3が開発された。これは1992年よりNavy SEALsに配備され、1996年にはM16A3の制式名を与えられた[8]

その後、SEALs以外にも、海軍憲兵建設工兵にも配備が進められた。また2007年には、艦艇乗員用として配備されていたM14も、M16A3に代替更新された[注 1][8]

M16A4 (モデル945)

M16A4を構える第24海兵遠征部隊の隊員

M4カービンではキャリング・ハンドルを脱着式にし、アッパー・レシーバー上部にピカティニー・レールを持つフラットトップ・レシーバーが採用されたが、これは非常な成功を収めたことから、M16シリーズのメインストリームにもバックフィットされることになった。これによって開発されたのがM16A4で、1996年に陸軍が、また1998年には海兵隊も制式化した[8]

M16シリーズの銃剣

まず1964年、M7銃剣とグラスファイバー製のM8A1鞘が採用された。形状はシンプルなストレート状で、M14用のM6の改良型とされている[3]

またM16A2の採用にあわせて、1984年にはM9多目的銃剣とM10鞘が採用され、1987年より支給が開始された。これは戦闘用ナイフとして使うほかにも、鞘と組み合わせればワイヤーカッターとして使えるほか、上部ブレードはノコギリになっているなど、多機能性を持っていた[3]

アメリカ海兵隊はM9を本格採用せずM7を使い続けたが、M7とKa-Barナイフの機能を統合する銃剣としてOKC-3Sを開発・採用した。

派生型

カービン / サブマシンガン

XM177 / GAU-5

1964年、コルト社は、AR-15をもとに銃身長を短縮したCAR-15カービンと、更に短縮したサブマシンガンの開発に着手した。前者はモデル610、後者は609として設計され、1967年1月、アメリカ陸軍は、モデル610をXM177、モデル609をXM177E1として制式化した。また空軍でもGAU-5/Aとして採用された。4月には銃身を38ミリ延長したモデルが登場し、陸軍ではXM177E2、空軍ではGAU-5/A/Aとして採用された[2]

M4カービン

1980年代には、M16のカービン版を求める声が再び上がり、1984年9月、M16A2カービン・プログラムが開始された。これによって開発されたのがXM4で、1987年、M4として制式化された。これはM16A2と同様にフルオート射撃のかわりに3点射を行うように設計されていたが、その後、特殊部隊からの要望に応えてフルオート射撃機能を備えたM4E1が開発され、M4A1として制式化された[8]

9mmSMG

また9x19mmパラベラム弾を使用する短機関銃版も開発された。モデル635は、作動方式をブローバックに変更しており、またマガジンはウージー・サブマシンガンのものに改良を加えて使用する[8]

狙撃銃

SPR Mk12

SPR Mk12 Mod 0

Special Purpose Rifle(SPR) Mk12は、通常の狙撃銃よりもコンパクトでM4A1よりも射程・射撃精度に優れた選抜射手ライフルとして開発された。Navy SEALsによる偵察用ライフル・プロジェクトがベースとなっており、開発は2000年より開始された。ただしロック・アイランド陸軍兵器工廠とクレイン海軍基地兵器開発センターに民間企業が加わっており、開発経緯は不詳の部分が多い。陸軍特殊部隊はMk.12 mod.0、SEALsと陸軍レンジャー部隊はmod.1を採用した。ただしSEALsはSPRをあまり高く評価しておらず、406ミリ銃身のカービンを選ぶ傾向がある[8]

銃身は高精度、軽量化したもので、ハンドガードとともに、基部以外は他のパーツに接触しないフローティング式になっている。銃口には専用のサプレッサーの取り付けが可能である。標準のスコープはリューポルド社のTS-30A2で、ほかにロイポルト社のLRM3やナイトフォース社のNXSなども用いられる[8]

なお本銃とあわせて、精密射撃用弾薬として、弾頭重量を4g(62グレイン)のM855から5g(77グレイン)に増した新設計のMk.262 mod.1/2が開発された。これは従来の弾薬と比して射程が長く、ストッピングパワーも向上していることから、ほとんどの特殊部隊が採用するようになった。ただし鋼製の弾芯が挿入されていないために貫通力が低く、また製造に手間がかかるため高価でもある[3]

SAM-R

SAM-R

SAM-Rは、M16A4狙撃銃として改良した分隊上級射手ライフル(Squad Advanced Marksman Rifle)である。

SAM-Rは、アメリカ海兵隊に配備されているM14をベースとしたDMR(Designated Marksman Rifle)の後継として開発された。競技銃用ステンレス銃身のクリーガーSSを採用し、ハンドガードはナイツ社RASでフローティング式になっている。

標準のスコープはリューポルド社のTS-30A2である。SPR Mk12とのコンセプトや仕様の共通点も多い。

SDM-R

SDM-R

SDM-Rは、M16A4狙撃銃として改良した選抜射手ライフル(Squad Designated Marksman Rifle)である。 わかりやすく言えばSAM-Rアメリカ陸軍版である。

分隊支援火器

デンマーク軍のM16 LSW

M16をもとにした分隊支援火器も開発されており、LSW(Light Support Weapon、軽支援火器)と称される[9]

M16の各バージョンを元にして製造されているため、数機種のバリエーションが存在する。ハンドガードが角が丸い四角形となり、下面にグリップが追加された。M16ライフルの機関部を流用して、これに肉厚のヘビー・バレルと折りたたみ式の二脚を付している。給弾は弾倉式で、標準的なSTANAG マガジンのほか、C-MAGなどのドラムマガジンも用いられる[9]

なお、アメリカ海兵隊でも、同様のHBARモデルを分隊支援火器として検討したが、銃身が加熱して連続射撃ができないことが問題視され、性能試験は1977年に中止された[8]

M231 FPW

M231 FPW

M231 FPWは、M2/M3ブラッドレーガンポートで使用するために開発された小銃[8]

M16A1を元にしているが、射撃はフルオート以外不可能で、作動方式はオープンボルト、照準器ストックは取り外されている。当初は、緊急時に車外で使用するための伸縮式ワイヤー・ストックを装備する計画もあったが、実現しなかった[8]

狙って当てるようなものではなく、あくまでも弾幕を展開することにより敵歩兵から車両を防御することを狙ったものである。弾薬には曳光弾を使用し、射撃時にはガンポートの上に設けられた窓から、その弾道を目視して射線を調整する[8]

ブラッドレーのガンポートが廃止されたため現在は使用されていない。

AR-15

AR-15は、M16アーマライトで開発された時の製品名。制式採用前はAR-15(モデル No.602)としてアメリカ政府に納入された。現在は各銃器メーカーが販売するセミオートのみの民間版にこの名称が使用されている。

民間版のAR-15はM16からフルオート機構を削除した以外は基本的に構造は同じで、外観はM16/M4の各バリエーションに準じたものがある。また、標的射撃用にはフローティングマウント化したヘビーバレルやハンドガードを採用し、スコープ装着のためフロントサイトを省略したモデルもある。フルオート用トリガーブロックを組み込む違法改造防止のため、レシーバー内の部品構成や配置はM16と意図的に変えている。

ブッシュマスター社やオリンピック・アームズ社などは銃身を極端に短くし、ストックを取り去ったピストルモデルを製品化している。これらは特殊部隊用にサブマシンガン化したM16に倣ったものだが、精度に関しては当然ライフルサイズに比べて劣る上、場合によっては動作に悪影響を与えるデザインを行っている場合もある。

コルト社はアサルトライフル販売規制による市場イメージを考慮し、製品名をAR-15からコルトスポーターコルトマッチターゲットなどに変更した。コルト社以外にもアーマライト社(M15)やナイツアーマメント社(SR-15)、ブッシュマスター社(XM-15)など数社が類似製品を販売しているが、一部についてコルト社はライセンス侵害を訴えている。

アメリカ国内で多発する銃乱射事件の多くで犯人がAR-15を凶器に使用している(オーロラ銃乱射事件サンディフック小学校銃乱射事件サンバーナーディーノ銃乱射事件など)[10]

M16系統の銃を製造する会社

M16は、コルト社や同社の委託でGM社やH&R社が生産し、アメリカ軍に納入していたが、コルト社の経営危機により製造権がアメリカ政府に移り、現在ではFN社が主に生産している。コルト社はM4を受注しているものの、国内では生産しておらず、カナダ・コルト(米国コルト社に買収された旧ディマコ社)がM16A2に相当するC7と、M4に相当するC8を生産し、制式採用しているカナダ軍に納入している。

他社の派生型

C7A2を使用するカナダ軍兵士
H&K HK416
コルト・カナダ C7(カナダ/コルト・カナダ[旧ディマコ])
カナダ軍制式銃。M16A2ライセンス品。連射機能(フルオート)とリアサイト(L型2段切換方式)はM16(A1)に準じている。
C7A1(カナダ/コルト・カナダ[旧ディマコ])
カナダ軍制式銃。M16A3ライセンス品(Elcan C79 optical sightが装備されている)。
M16A1-603K(韓国/大宇)
韓国軍制式銃。M16A1ライセンス品。
K2(韓国/大宇)
韓国軍制式銃。M16ベースにAK-47を参考にガス圧利用にした派生型。
65式歩槍(台湾/聯勤)
中華民国軍制式銃。M16ベースに、作動方式をAR-18を参考にガスピストン方式にした派生型。
M15(アメリカ/アーマライト)
主に民間用。
XM15(アメリカ/ブッシュマスター)
主に民間用。
XR15(イギリス/セイブルディフェンス)
主に民間用。
OA15(ドイツ/オバーランドアームス)
主に民間用。
HK416(ドイツ/H&K
M4カービンの改修を依頼し開発。ショートストロークピストン式、、ピカティニー・レールシステムの標準装備。
CQ 311(中国/北方工業公司
M16A1のデッドコピー品。基本形では、プラスチック部品(フロントハンドガード、ピストルグリップ、ストック)の形状がM16A1とは異なる。フルオート機能を備えた軍用向けと、セミオートのみの欧米民間市場向けが存在する。中国でも、過去の公開軍事演習において、「M16」装備の仮想敵部隊が存在した。
軍用として輸出はしていないとされていたが、青瓦台襲撃未遂事件において北朝鮮特殊部隊が使用ともいわれ、ミャンマーなどにも相当数、輸出。なお、同社ではCQC M4カービンも製造。
イランにおいてM311をベースにしたS5.56と呼ばれる国産自動小銃が製作されたともいわれる。イラン軍は主に革命前に国産化されたH&K G3と革命後に流入したAK-47系統を使用。また、現在使用のKH2002 "Khaybar"というアサルトライフルのベースも上記のCQ 311である。
スーダンにおいても同様の国産ライフルが製造されているといわれるが、M311やS5.56を再模倣したものともされる。スーダンはM16の原型であるAR-10を使用した経験があり、西側寄りになった1980年代ヌメイリ政権時代にM16を含む旧西側製装備を輸入していた。

アメリカ軍次期制式ライフル

SCARを装備した第75レンジャー連隊の隊員
HK416を装備したアメリカ陸軍の兵士

M16の後継機種としては、多くの候補が提案・検討されてきた。そもそもアメリカ陸軍では、上記の通り、M16はフレシェット弾を使用する新型歩兵火器(SPIW)の完成までの暫定策としての性格もあったが、SPIWの開発は頓挫した。また海兵隊はストーナー63をM16の後継として試用したが、採用はされなかった[11]

1986年からは未来型戦闘ライフル(ACR)の計画が開始された。SPIWで検討されたようなAAI社のフレシェット・ライフルやH&K G11シュタイヤー社のフレシェット・ライフル、ストーナー率いるAres社の先進個人武器システム、そしてM16A2E2が検討の俎上にのぼったが、結局いずれも多くの問題を抱えているうえに現用火器を凌駕する性能は得られないことが判明し、計画自体が中止された[11]

1990年代末には個人戦闘兵器(OICW)計画がスタートした。これは銃本体に連装式グレネードランチャーや電子スコープのモジュールを一体化しており、H&K社はXM29を開発していた。しかし複雑さや重量過多、予算超過が問題になり、2004年に開発中止となった[11]

続いて、H&K社はXM8を提案した。これは部品を交換することでライフル、カービン、コンパクト・カービン、オートマチック・ライフルに組み替えられるのがセールスポイントだったが、やはり現用火器に対する優位性が薄いとして、採用目前の2005年にキャンセルされた[11]

新要求仕様に基づき、現在M16を製造するFN社は、すでにアメリカ軍特殊部隊向けの導入が決定している、モジュールの組替えにより歩兵用アサルトライフルにも分隊支援火器にもなり、5.56mmと7.62mmの口径バリエーションを備えるSCAR-L/H(Special Forces Combat Assault Rifle-Light/Heavy respectively)を提案している。

一方、H&K社もSCAR同様の口径バリエーションを備え、一部特殊部隊向けに納入実績のあるHK416/HK417で対抗する動きがある。

次期制式ライフルが5.56mmを踏襲するのか新弾薬6.8×43mm SPCへ移行するのかも未決定であるため、これらの候補は6.8mmモデルも前提に設計されている(2005年10月時点)。

その他

日本での所持

日本仕様のAR-15 H-BAR(ヘビーバレル)/標的射撃用モデル
警察庁通達によりサムホールストックを装着している

民間人の銃砲所持に規制の多い日本だが、M16の民間版であるAR-15(販売価格30万円前後)の所持は可能。狩猟用途でライフル所持許可を取得するには銃砲所持許可を取得し猟銃散弾銃や競技用ライフル銃など)を10年間継続所持した実績および狩猟免許を取得する必要がある。

更に狩猟用ライフル銃の口径は6mm以上でなければならないため、コンバージョンキット(改修部品)で6x45mmや7.62x39mmへ変更する必要がある。また、ピストルグリップ(独立握把)は握り部分に穴が空いたサムホール型ストックへ、弾倉は装弾数5発に制限するなどの改修(兵器でなく猟銃化すること。市民の兵器保有は禁止)も要する。

銃規制強化やアメリカ同時多発テロ事件による銃器輸出入規制に呼応し、新規許可は難しくなっている。

M16の噂

アメリカには「玩具メーカーであるマテル社製のM16が存在する」というがある。 バービー人形モデルガンで有名なマテル社が、ベトナム戦争時にコルト社の委託でM16を生産していた、またはグリップやストックなどのプラスチック部品を生産していたというもので事実無根だが、配備当時は珍しかったプラスチックとアルミを多用し、それまでの小銃より小振りで安っぽい印象のあったM16を、兵士が「マテルの玩具」(Mattel toy)と揶揄した事や、コルト社が自動車メーカーゼネラルモーターズ(GM)などに生産委託していたことが噂の発端とされる。実際マテル社はM16のトイガンを販売しており、映画『グリーン・ベレー』では、これを木に叩きつけて折ってしまうシーンがある。また『フルメタル・ジャケット』の原作では、海兵隊兵士がM16を「マテル」と呼んでいる。

民兵での使用

ライバルといえるAK-47に比較すると、性能に難点がある事や販売・流通にある程度の規制がある事などから、民兵組織においてM16が使用されているケースは少ない。アイルランド共和軍IRA暫定派)、カレン民族解放軍レバノン軍団新人民軍ヒズボラなどでM16やそのファミリー、およびCQなどのクローンが使用されているとみられる。

図柄としての採用

ミャンマーのアラカン・ロヒンギャ救世軍は、マークにM16の図柄(英語版参照)を採用している。

登場作品

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ ただし溺者救助用の救命索発射銃として、各艦あたり2丁ずつのM14が残された[8]

出典

  1. ^ a b c 床井 1998, pp. 18–25.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ロットマン 2017, pp. 8–75.
  3. ^ a b c d e ロットマン 2017, pp. 114–133.
  4. ^ a b c d e f g ロットマン 2017, pp. 135–173.
  5. ^ a b c ロットマン 2017, p. 40.
  6. ^ a b ロットマン 2017, p. 81.
  7. ^ a b ロットマン 2017, p. 85.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m ロットマン 2017, pp. 78–111.
  9. ^ a b 床井 2006, p. 300.
  10. ^ 銃乱射事件で使われた「AR-15」の破壊力を、医師たちが語った”. wired.jp (2016年6月20日). 2018年2月15日閲覧。
  11. ^ a b c d ロットマン 2017, pp. 176–183.

参考文献

  • ロットマン, G.『M16ライフル (THE M16:Osprey Weapon Series)』並木書房、2017年。ISBN 978-4890633661 
  • 床井, 雅美『最新軍用ライフル図鑑』徳間書店、1998年。ISBN 978-4198909031 
  • 床井, 雅美『最新マシンガン図鑑』徳間書店、2006年。ISBN 978-4198925277 

外部リンク