海兵遠征部隊

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AAV7装甲車とともに上陸する第31 MEU。

海兵遠征部隊(かいへいえんせいぶたい、Marine Expeditionary Unit、MEUとは、アメリカ合衆国海兵隊海兵空地任務部隊 (MAGTF) の一種。常設されている最小規模の部隊で、海兵遠征旅団(Marine Expeditionary Brigade、MEB)よりも小さく、特別目的海兵空地任務部隊(SPMAGTF)よりも大きい。

他の日本語訳には、海兵隊遠征大隊'海兵機動展開隊[1]がある。なお、以前は海兵両用部隊(MAU: Marine Amphibious Unit)と呼ばれていた。

概要[編集]

海兵遠征部隊(MEU)は、増強された海兵隊歩兵大隊を基幹として、混成ヘリコプター飛行中隊、兵站部隊、そして司令部部隊より編成されている。指揮官は海兵隊大佐、総兵員は約2,200名で、アメリカ陸軍旅団戦闘団のほぼ半分の規模、日本陸上自衛隊では連隊戦闘団(RCT)に相当する。

MEUの特徴は、このような低い階梯において、航空・地上戦闘部隊と兵站部隊とを統合し、独立した作戦行動能力を有する戦闘単位として常設したことにある。[2]MEUの地上部隊は、1個歩兵大隊を基幹として、砲兵・戦車・工兵などの各兵科を加えた諸兵科連合部隊であり、独立した作戦単位として戦闘可能である。MEUはまた、部隊を空中機動させ、また直援火力として期待しうる規模の航空戦力を有している。また、MEUは、独自の兵站部隊によって、15日間に渡って完全に独力での作戦行動が可能となっているが、長期間にわたって、その火力の全力を発揮し続ける正規戦に対応する能力は備えていない。

このように、小規模の部隊で統合作戦能力を実現したことにより、MEUは、アメリカ合衆国の政治指導者に対し、地域紛争、さらには戦争以外の各種活動について、まったく新しい選択肢を提供できるようになった。MEUは、海軍の遠征打撃群 (ESG) に組み込まれることで、これらの事態に対処するための最善の即応兵力となる。このとき、MEUはESGの揚陸艦に乗艦して、洋上機動によって紛争地域の沖合いまで進出し、上陸用舟艇および航空機によって上陸、展開する。この際、MEUの航空兵力およびESGの艦対地火力がMEUの展開を援護し、また、ESGの護衛艦は、イージスシステムによって、地対地ミサイルから有人攻撃機に至るまでの航空攻撃から、地上に展開したMEUを防衛することができる。これにより、アメリカ軍は、紛争の早期の段階で、沿岸域から地上の戦闘空間の全域にわたって支配を及ぼし、また、後続部隊のための橋頭堡を確保できる部隊を迅速に配備する能力を手に入れた。

編成と装備[編集]

地上戦闘部隊[編集]

地上戦闘部隊(Ground Combat Element、GCE)は、MEUにおいては、大隊上陸チーム(BLT)を中核とした諸兵科混成部隊である。1個歩兵大隊(972名)[3]を基幹として、戦車、対戦車、砲兵、軽装甲偵察、水陸両用強襲、工兵の各部隊を有しており、兵力は通常1200名程度である。

  • 歩兵大隊 
  • 砲兵中隊 - 155mm榴弾砲[4] 6門を有する。
  • 軽装甲偵察中隊 - LAV-25装輪装甲車を有する。
  • 水陸両用強襲車小隊 - AAV-7水陸両用強襲車を有する。
  • 戦車小隊 - M1A1戦車を有する。
  • 戦闘工兵小隊
  • 海上特殊目的部隊 - Maritime Special Purpose Force, MSPF
  • 直接行動小隊 - Direct Action Platoons : DAP
  • 海兵隊無線偵察小隊 - USMC Radio Reconnaissance Platoon

航空戦闘部隊[編集]

航空戦闘部隊(Aviation Combat Element、ACE)は、MEUにおいては、3つの他の型のヘリコプターと1つの分遣S/VTOL部隊によって増援された中型/重量級ヘリコプター飛行隊により編成された海兵隊混成飛行隊(強化)である。 以下の航空機を含む。

兵站戦闘部隊[編集]

7トントラックにフォークリフトを搭載する第22 MEUの海兵隊員

兵站戦闘部隊(Logistics Combat Element、LCE)は単独での作戦に必要なあらゆる兵站専門の部隊である。医療、歯科、整備、工兵、その他の技術の専門である。戦闘補給支援グループ(MEU Service Support Group、MSSG)とも通称され、また、かつては戦闘補給支援単位(Combat Service Support Element、CSSE)と呼ばれていた。

指揮部隊[編集]

第22 MEUの心理戦特技兵

指揮部隊(Command Element、CE)は、海兵遠征部隊司令官とその幕僚を含み、他の3つの実戦部隊に対し指揮統制(Command and Control)を行なう。その中には海軍砲火、偵察、監視、特殊通信、電子偵察、広報活動の特別な分遣・協力部隊が含まれる。

遠征打撃群[編集]

キアサージ遠征打撃群

近年は海兵遠征部隊は中東と西太平洋において遠征打撃群(Expeditionary Strike Group、ESG)の一部として、そして紛争や戦争が無ければ定期的に大西洋とインド洋にほぼ6ヶ月間、派兵されていた。 遠征攻撃グループは通常、ミサイル巡洋艦(CG)やミサイル駆逐艦(DDG)、原子力潜水艦(SSN)に護衛され、必要な将兵を乗せた3隻の両用戦艦船より編成される。

なお、ESGの編成が開始される以前は、洋上展開する海兵遠征部隊は、両用即応グループ(Amphibious Ready Group、ARG)の一部として派遣されていた。現在のESGは、ARGに水上戦闘群(SAG)を編入したものと言うことができる。

主要装備一覧[編集]

陸上戦闘部隊 (GCE) 兵站戦闘部隊 (LCE) 航空戦闘部隊 (ACE)
AAV7水陸両用強襲車 15両 キャタピラー D7ブルドーザー 3両 AH-1W 攻撃ヘリコプター 4機
LAV装輪装甲車 16両 TX51-19Mフォークリフト 6両 UH-1N汎用ヘリコプター 3機
M1A1戦車 4両 7トントラック 30両 CH-46中輸送ヘリコプター 12機
155mm榴弾砲[4] 6門 Mk 48 LVS大型輸送車 1両 CH-53E重輸送ヘリコプター 6機
M252 81mm 迫撃砲 8門 LMT 3000浄水装置 1基 AV-8B攻撃機 6機
M224 60mm 迫撃砲 8門 逆浸透膜浄水装置 2基 MANPADSチーム 45セット
TOW対戦車ミサイル 8基
ジャベリン携行対戦車ミサイル 8基
ハンヴィー 63両

小火器[編集]

海兵遠征部隊のサイクル[編集]

中間期/造成期
部隊展開の完成に向けて海兵遠征部隊は世界中の事件に対応するために、約一ヶ月間の「特殊作戦能力」を維持する。完成されたその時点で、従属する主な戦闘部隊を開放して指揮単位だけとなる。
指揮単位は人員を選び、新たに従属する主な戦闘部隊を加える計画を始め、能力向上訓練を行なう、新たなサイクルに入る。従属する主な戦闘部隊を配下に収めると、海兵遠征部隊は6ヶ月間の激しい派兵前トレーニングをはじめる。(訳注:「能力向上」と訳した元の英単語work-upには「ゴミ」という意味もある。)
能力向上訓練期間
6ヶ月の能力向上訓練期間はただ「はう、歩く、走る」だけだといわれる。海兵と水兵は、個人単位で、小さな単位で、さらに戦術単位での理論と実習を通じた教育によって、海兵遠征部隊の多数の小さな部隊が統合された時に、団結し柔軟で力強い戦力を身に付ける。
能力向上訓練期間は以下の課程よりなる:
  • 市街地狙撃
  • 山岳戦闘
  • 機械化強襲
  • 非戦闘的退避作戦
  • 偵察泳法
  • 大量負傷者
  • 人道援助作戦
能力向上訓練期間での訓練は以下を含む:
  • 両用戦隊―海兵遠征部隊 統合訓練(PMINT)
  • 都市環境演習での訓練(Training in an Urban Environment Exercise、TRUEX)
  • 遠征攻撃グループ訓練(Expeditionary Strike Group Exercise、ESGEX)
  • 特殊作戦能力認定演習(the Special Operations Capable Certification Exercise、CERTEX or SOCCEX)
かつて、海兵遠征部隊が特殊作戦能力の認定をうけると「海兵遠征部隊(特殊作戦可能)」(MEU(SOC))と呼ばれるようになっていた。現在では、全ての海兵遠征部隊が特殊作戦を遂行できるという海兵隊の立場から、この名称は使われなくなっている。
派兵
海兵遠征部隊は能力向上訓練の後、6ヶ月間広域戦闘司令官の下に派遣される。この時、海兵遠征部隊は、自己完結戦力を持ち特殊作戦と通常作戦のさまざまな状況に応じて、戦闘司令官の命令を完遂することが出来るので、前方展開されることになる。
任務は以下を含む:

海兵遠征部隊のリスト[編集]

公式名称
Official Name
記章
Insignia
司令部
Headquarters
米国本土 西海岸の海兵遠征部隊
第11海兵遠征部隊
11th Marine Expeditionary Unit
11thMEUlogo.png
カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトン
Marine Corps Base Camp Pendleton, California
第13海兵遠征部隊
13th Marine Expeditionary Unit
13thMEUlogo.png
カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトン
Marine Corps Base Camp Pendleton, California
第15海兵遠征部隊
15th Marine Expeditionary Unit
15thMEUlogo.png
カリフォルニア州キャンプ・ペンデルトン
Marine Corps Base Camp Pendleton, California
米国本土 東海岸の海兵遠征部隊
第22海兵遠征部隊
22nd Marine Expeditionary Unit
MEU22.jpg
ノースカロライナ州キャンプ・レジューン
Marine Corps Base Camp Lejeune, North Carolina
第24海兵遠征部隊
24th Marine Expeditionary Unit
24MEULOGOsm.jpg
ノースカロライナ州キャンプ・レジューン
Marine Corps Base Camp Lejeune, North Carolina
第26海兵遠征部隊
26th Marine Expeditionary Unit
26thMEUlogoblue.jpg
ノースカロライナ州キャンプ・レジューン
Marine Corps Base Camp Lejeune, North Carolina
日本駐屯の海兵遠征部隊
第31海兵遠征部隊
31st Marine Expeditionary Unit
31stMEUlogo.jpg
日本沖縄県キャンプ・ハンセン
Marine Corps Base Camp Hansen

脚注[編集]

  1. ^ 平成18年版 防衛白書 第4章 日米安全保障体制の強化防衛省政策会議 議事要旨 平成22年2月9日(火) {{{1}}} (PDF)
  2. ^ アフガニスタンでの戦闘中、アメリカ陸軍は、歩兵中隊榴弾砲1門と兵站分遣隊、民事部隊を配属し、独立行動可能な中隊戦闘群として組織することで良好な実績を上げているが、これはあくまで臨時編成であり、しかも、航空戦闘部隊は統合されていない。
  3. ^ MCCDC (1998年10月). “Organization of Marine Corps Forces (PDF)” (英語). 2012年8月21年閲覧。
  4. ^ a b 現在、M198 155mm榴弾砲からM777 155mm榴弾砲に更新中。

関連項目[編集]