「キリスト教福音宣教会」の版間の差分
脚注の表記を修正 |
m 脚注に出典先URLをリンクさせた |
||
1行目: | 1行目: | ||
{{出典の明記|date=2014年7月29日 (火) 03:07 (UTC)}} |
{{出典の明記|date=2014年7月29日 (火) 03:07 (UTC)}} |
||
[[File:ChristianGospelMission.jpg|thumb]] |
[[File:ChristianGospelMission.jpg|thumb]] |
||
'''キリスト教福音宣教会'''(キリストきょうふくいんせんきょうかい、Christian Gospel Mission<ref name="vison">{{cite web|url=https://j-cgm.net/about/ |title=私たちについて|publisher=キリスト教福音宣教会|accessdate=2020-07-24}}</ref>)は、[[大韓民国|韓国]]の[[キリスト教]]の土壌から生まれた[[新宗教]]で、創設者は[[鄭明析]]。日本での通称は「'''摂理'''」(せつり)である。2019年『宗教年鑑』によると、「キリスト教福音宣教会」は「その他の包括宗教団体一覧(キリスト教系)」の15番目に記載されており<ref |
'''キリスト教福音宣教会'''(キリストきょうふくいんせんきょうかい、Christian Gospel Mission<ref name="vison">{{cite web|url=https://j-cgm.net/about/ |title=私たちについて|publisher=キリスト教福音宣教会|accessdate=2020-07-24}}</ref>)は、[[大韓民国|韓国]]の[[キリスト教]]の土壌から生まれた[[新宗教]]で、創設者は[[鄭明析]]。日本での通称は「'''摂理'''」(せつり)である。2019年『宗教年鑑』によると、「キリスト教福音宣教会」は「その他の包括宗教団体一覧(キリスト教系)」の15番目に記載されており<ref name="nenkan170">{{Cite web | |
||
url=https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/pdf/r01nenkan.pdf |title= 宗教年鑑|accessdate= |
|||
2020-09-27 |year=2019 |format=PDF |publisher=文化庁 |page=170}}</ref>、2018年12月31日時点で、教会25、布教所9(計34)を有すると書かれている<ref name="nenkan100">{{Cite web | |
|||
url=https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/pdf/r01nenkan.pdf |title= 宗教年鑑|accessdate= |
|||
2020-09-27 |year=2019 |format=PDF |publisher=文化庁 |page=100}}</ref>。 |
|||
==概要== |
==概要== |
2020年9月27日 (日) 04:58時点における版
キリスト教福音宣教会(キリストきょうふくいんせんきょうかい、Christian Gospel Mission[1])は、韓国のキリスト教の土壌から生まれた新宗教で、創設者は鄭明析。日本での通称は「摂理」(せつり)である。2019年『宗教年鑑』によると、「キリスト教福音宣教会」は「その他の包括宗教団体一覧(キリスト教系)」の15番目に記載されており[2]、2018年12月31日時点で、教会25、布教所9(計34)を有すると書かれている[3]。
概要
1981年3月に教団設立者である鄭明析が韓国で設立した「MS宣教会」を起源とする[4]。その後、MS宣教会はいくつかの変遷を経て、1999年に「キリスト教福音宣教会」となり現在に至る。日本支部の設立は1985年。公称で世界約30か国に300の教会があり、数万人の会員がいるとされ、韓国で4万人、日本で2千人、その6割が女性といわれる[5]。
教団は名称変更を頻繁に行っている[6]。1980年の設立時は愛天教会、韓国では教祖のイニシャルと同じJMS(Jesus Morning Star)とよばれるが、「JMS」という称号は当宣教会の正式名称ではない[7]。日本ではMS教と呼ばれていた[5]。通称は「摂理」で、教団は「すべてが神の配慮によって導かれている」という意味のキリスト教用語であると説明している[1]。日本の信者が自らを「摂理人」と呼ぶことから、日本のメディアでも摂理と呼ばれている[6]。
1999年3月の韓国テレビ局のドキュメンタリー番組の報道で、鄭明析による女性信者へのわいせつ行為・性的暴行が一気に社会問題になり、教祖は2009年に実刑判決を受けた[5][8]。(詳細→女性信者の性的被害)ジャーナリストの野方いぐさ[注 1]は、教祖逮捕で事件が幕切れしたように見えるが、性的暴行の被害者だけでなく、元信者たちも、教団の影響からなかなか抜け出せなかったり、このような教団の勧誘をしていたことの罪悪感に苦しむなど、その心の傷は大きいと述べている[5]。
日本では統一教会と同じく、正体を隠した勧誘が行われており、勧誘対象の中心は大学生だが、2006年に高校生の入信も確認されている[5]。教会には幼い子供から高齢者まで老若男女が通っているという[9]。「50の大学に信者」をもち「サークル装い勧誘」していると報道され、大学では被害者をこれ以上増やさないよう対策が取られている[6]。
宗教社会学者の櫻井義秀は、「摂理の宣教活動や教義はかなりの程度統一教会の影響を受けたもの」であり、真似をされたからと言って統一教会にキリスト教福音宣教会の監督責任があるわけではなく[注 2]、同教団が起こした諸問題に統一教会が関わっているわけではないが、韓国では両者を比較して特徴を論じる研究書が少なくないと指摘している[6]。
韓国の毎日放送(MBN)は、鄭明析の一連の性的暴行事件に関する過去の報道内容に対して一部の内容を訂正するプレスリリースを出しており[10]、YTNは過去の報道の内容の一部を修正している[7]。
教典および教義
団体の基本理念・目標
イエス・キリストの福音を伝えることに対する至上命令を基本に、21世紀最大のトピックである平和をこの地に実現しようという全世界と全世代への「愛すれば平和が来るだろう」という精神を伝え、実践することを設立理念としている[11]。 「信じて死んでから天国に行こうという単純な救いの論理から抜け出し、生きているとき地上でも天国を成すべきだ。」という意味で、天国ではなく、生きている現実の世の中で、理想世界を具現しようということを目標に置いている[12]。 また、「宗教は理論ではなく生活」であり、神を愛することで神の性格に似ようとし、御言葉を聞いて実践することを重視し[13]、実際の生活の中で、聖書に記録された神とキリストの教えと愛を実践することによって、生活に息づかせ、真に平和な世界の実現を目指している[1][12]。
キリスト教福音宣教会では御言葉を重要視しており、特に主日、水曜日に伝えられる御言葉を重要視している。
当教団の本部は、大韓民国忠清南道錦山郡珍山面石幕里(月明洞[ウォルミョンドン])にある[14]。
30個論
鄭が修道生活の中で聖書を通読し体系化した「30個論」というものがある。その教えは世界基督教統一神霊協会に類似しているという指摘がある[15][16]。宗教研究者卓明煥によれば、「30個論」のうち、26・27・28・29・30ら「高級編」を含む9講論には、統一教会の教典「原理講論(원리강론)」と「相当程度」の共通点がみられるという[17][18]。
宣教方法
「一人が 一人を布教しよう」というスローガンが掲げられ、布教の実績をメンバー同士で競わせている。勧誘は、大学の偽装サークルなどといった非宗教的な団体を通じて、宗教的な性質や教義、本当の目的を明らかにせずに行われている[19][20]。その勧誘方法は、法律家により「詐欺」と説明された[21]。日本においては東京大学、東京外国語大学、早稲田大学などで大学生の信者を獲得したが、「宗教団体であることを隠した悪質な信者勧誘や、脱会希望者への執拗な引き留め行為」が問題視された[22]。その後、駅前のカフェや書店の宗教・思想コーナーで高校生を勧誘する傾向が見られるようになる[23]。
献金
他のキリスト教の教会と同様に毎週日曜日に行われる「主日礼拝」の際に献金が行われる。第一週の全ての献金は韓国人女性幹部に送金され、残りが教会運営費に充てられる[24]。
社会人の場合は月給の10分の1を献金し、ボーナスがあればボーナス献金を要求される。ウォルミョンドンにある施設の建設費として信者一人あたり10万円の献金を命じられた[24]。
献金が多額であれば信仰心の厚い信者として扱われるため、多額を寄付しなければならない状況に追い込まれる[24]。
1997年には、幹部より1人10万円の献金ノルマが日本の信者に課せられた[24]。他にも教祖の逃亡先での高級住宅購入費用に数千万円を提供した信者もいたという[24]。
会員への指導
まずは自分自身が成長すること、そして将来に良い結婚、良い家庭を作ることが教義にある。聖書に基づく婚姻、結婚に関する教育を結婚適齢期の会員にはしている。教義上の理由により男女の交際を禁じている。結婚できるかどうかは最終的に教祖が決定し、信徒に選択の自由はない[25]。 2006年の春までに、日本人信者を対象にした「祝福式」が6回行われ、少なくとも150組以上が参加した。祝福行事は2泊3日ほどの合宿形式で行われ、男女とも27歳以上、信仰歴3年以上、3人以上を教団に伝道したことが参加条件とされる[25]。
飲酒は「霊が死ぬ」として禁じられている[24]。
女性信者の性的被害
カルトとして批判されており[26]、韓国では近年社会問題となっている[8]。1999年に教団が元信者の女性を拉致・監禁したことが明らかになり[8]、同年脱会者団体「エクソダス」が設立された[8]。日本でも、少なくとも十数人の女性信者の被害も確認されている[5]。女性参加者は鄭明析との面談を受けるが、鄭はその際に婦人病を予防する「健康チェック」などと称して、わいせつ行為や性的暴行を繰り返していた[25]。
教祖・鄭明析による女性信者への性的暴行があったことが次々判明し[8]、鄭は1999年に海外逃亡し[6]、2007年に拘束され、2009年に女性信者への強姦及び準強姦罪で懲役10年の実刑判決を受けた[5]。
年表
- 1978年 - 鄭明析が宣教を始める[5][1]。
- 1980年 - 愛天教会を設立[5][16]。
- 1983年 - キリスト教メソジスト派の神学校を卒業。牧師按手礼を受ける[27]。
- 1985年 - 日本支部設立[28][注 3]。
- 1988年 - 台湾支部設立[28]。
- 1996年 - 国際クリスチャン連合として組織を改編[要出典]。
- 1999年 - キリスト教福音宣教会設立[28]。
- 2001年 - 鄭明析が強姦や詐欺などの容疑でソウル中央地検にICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際指名手配される[5]。
- 2006年 - 朝日新聞が7月28日から、「摂理」を批判告発する報道を開始[6]。日本でも社会問題として注目される[29]。
- - 日韓の元女性信者が東京で記者会見し被害実態を証言、「被害者は大勢いる」として世論喚起[30]
- 2007年 - 中国公安当局が遼寧省鞍山市郊外の鄭明析の隠れ家を強制捜索し、翌月鄭を拘束[5]。
- 2008年 - 中国国務院は鄭の身柄引き渡しを決定し、2月に韓国のソウルに送還されソウル拘置所に収容された[5]。
- 2009年 -鄭明析に女性信者に対する強姦及び準強姦罪で懲役10年の実刑判決を受ける[5]。韓国最高裁は鄭の上告を棄却し刑が確定した[5]。
関連項目
脚注
- ^ a b c d “私たちについて”. キリスト教福音宣教会. 2020年7月24日閲覧。
- ^ “宗教年鑑” (PDF). 文化庁. p. 170 (2019年). 2020年9月27日閲覧。
- ^ “宗教年鑑” (PDF). 文化庁. p. 100 (2019年). 2020年9月27日閲覧。
- ^ “被害者の性的暴行告訴なく壁に 監禁、傷害での立件視野”. 東京新聞 (中日新聞社). (2007年2月17日). オリジナルの2007年2月20日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 野方 2009.
- ^ a b c d e f 櫻井 2006.
- ^ a b “정명석 총재 관련 보도에 대한 정정보도문” (朝鮮語). www.ytn.co.kr (2015年3月16日). 2020年9月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 櫻井・中西 2010, pp. 414-415.
- ^ “東京主信仰教会「よくあるご質問」”. 2020年9月7日閲覧。
- ^ “MBN뉴스” (Korean). 2015年10月閲覧。 “[정정보도문] 과거 종교집단 수사 저항…교주 ‘해외도피’ 2014年5月15日に放送された記事の内容に、事実と違う内容が含まれていたという訂正のプレスリリースであり、カルトではないとしたり、鄭が無実であるといったことは述べられていない。”
- ^ “세계 50여개국 20여만명의 회원 보유, 기독교사의 이정표(世界約50カ国、20万人あまりのメンバー保有、キリスト教の道しるべ)2013-10-15”. 환경소방경찰신문(環境消防警察新聞). 2016年3月8日閲覧。
- ^ a b “기독교복음선교회 정명석 총재(キリスト教福音宣教会 鄭明析総裁)”. 시사뉴스저널(時事ニュースジャーナル)2005年8月号. 2016年3月8日閲覧。
- ^ “기독교의 새로운 시도, 기독교 복음선교회(キリスト教の新しい試み、キリスト教福音宣教会)”. 주간저널(週刊ジャーナル). 2016年3月8日閲覧。
- ^ “「정명석 총재의 자연 성전 '감동스런 성전'(鄭明析総裁の自然聖殿 "感動的な聖殿")」2010/05/17”. Break News(ブレイクニュース). 2017年5月28日閲覧。
- ^ “'Love' cult snares student”. Japan Times. (2002年10月27日)
- ^ a b Sakurai, Yoshihide (18 May 2007b), “日本のカルト問題 : 「摂理」を事例に”, 日本近代学会大会 , "1975-77年の間に統一教(統一教会)に関わった。そのために、摂理の教義は統一教会の教義とかなり似通ったものになっている。"
- ^ 卓明煥 (탁명환)『기독교 이단 연구』국제 종교 문제 연구소、1986年。[要ページ番号]
- ^ 櫻井 2006, pp. 2–3 [143–4]: ”研究家、卓明煥『キリスト教異端研究』(国際宗教問題研究所、1986)によれば(表2)、14,17,19,20,26,27,28,29,30 の各章に統一教会の『原理講論』と相当程度の類似がある。”
- ^ “How to Spot a Woolly Wolf”. The Keimyung Gazette. (2006年8月18日) 2014年3月1日閲覧. "JMS uses to acquire new members, Hosting there events are front organizations: organization with no obvious links to JMS."
- ^ “Alleged Cult Sows Seeds Via Campus Event |”. The Guardian, University of California, San Diego, USA (2006年11月13日). 2014年3月1日閲覧。 “recently held an event at UCSD, which included a modeling show featuring young women, singing and videotaped religious messages from the group’s founder”
- ^ “Cult aimed at elite in 50 universities”. Asahi Shimbun. (2006年7月31日). オリジナルの2013年12月19日時点におけるアーカイブ。 2015年4月6日閲覧. ""It's a fraudulent activity, as they conceal the group's identity in luring members," a lawyer said."
- ^ a b 時任兼作 (2011年1月25日). “元幹部が市長になった”. 週刊朝日. 2014年7月29日閲覧。
- ^ “「カルト」から学生守る - 全国カルト対策大学ネットワーク - 160以上の大学が連携 - 恵泉女学園大 川島堅二学長に聞く”. 中外日報 (2013年5月18日). 2014年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月29日閲覧。
- ^ a b c d e f “「摂理」献金年間1億円超、教祖の逃亡資金にも”. Asahi.com. (2006年7月31日). オリジナルの2006年7月31日時点におけるアーカイブ。 2014年5月8日閲覧。
- ^ a b c “摂理の合同結婚式150組以上が参加 教祖が縁組”. 朝日新聞. (2006年7月31日). オリジナルの2006年7月31日時点におけるアーカイブ。 2014年7月29日閲覧。
- ^ “Setsuri cult facilities raided over immigration suspicions”. The Japan Times (2007年1月20日). 2014年7月29日閲覧。
- ^ 秋本彩乃『命の道を行く 鄭明析氏の歩んだ道』パレード、2019年、150頁。ISBN 9784434262944。
- ^ a b c 秋本彩乃『命の道を行く 鄭明析氏の歩んだ道』パレード、2019年、106頁。ISBN 9784434262944。
- ^ 「情報の裏を読む」「「摂理」というカルト」 有田芳生コラム 2006/07/30
- ^ 「「被害者 大勢いる」 元女性信者 勇気ある告発 「摂理」教祖の暴行」 2006年8月8日(火)「しんぶん赤旗」
注釈
出典
- 櫻井義秀、中西尋子『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』北海道大学出版会、2010年。ISBN 978-4832967205。
- 櫻井義秀「「カルト」の被害をどう食い止めるか : 摂理とキャンパス内勧誘」『中央公論』2006年10月、142-149頁。
- 野方いぐさ「「性的な堕落」は教祖自身!?」『GAKKENムックEsoterica別冊[図説]宗教と事件―この国をほんとうに動かしたのは誰か?殺人事件からスキャンダルまで』、学研プラス、2009年、150-151頁。ISBN 9784056054477。
- 文化庁編『宗教年鑑 令和元年版』文化庁、2019年。 平成26年版から冊子の市販は行わず、文化庁ホームページでPDFファイルにて公開。
- 秋本彩乃『命の道を行く 鄭明析氏の歩んだ道』パレード、2019年。ISBN 9784434262944。