鳩のなかの猫
『鳩の中の猫』(はとのなかのねこ、原題:Cat Among the Pigeons)は、イギリスの小説家アガサ・クリスティによって1959年に発表されたエルキュール・ポアロシリーズの長編推理小説である。
解説[編集]
劇中で語られる中東のラマット王国での革命は、1958年に発生したイラクのクーデター[1]を下敷きにしている。クリスティは実際に、発掘等で何度もイラクを訪れていた。
本作の内容は、推理小説というよりサスペンス小説に近いものになっている。ポアロも、物語の終盤に入って友情出演のような形で登場するにとどまっている[2]。
あらすじ[編集]
ジェニファー・サットクリフなどが通うロンドンにある有名な私立女子校・メドウバンク校において、新任の体育教師が射殺されるという殺人事件が発生する。彼女は、深夜に学校の室内競技場において殺されたのだった。やがて、メドウバンク校において第二・第三の殺人事件が発生してしまう。
この事件の数か月前、中東のラマット王国では、民主化を進めていた若き国王アリ・ユースフに対する革命が勃発。ユースフは親友でジェニファーの叔父であるパイロットのボブ・ローリンスンと共に航空機で脱出しようとするが、途中で事故により墜落したことで二人とも死亡してしまう。しかし、ローリンスンは革命直前、自らに迫る危機を察したユースフの依頼を受け、数十万ポンドの価値をもつ王家の宝石を密かに国外に送り出すことに成功していた。
一見関係ないように見えたこの2つの事件だが、やがて絡み合っていく。
主な登場人物[編集]
- オノリア・バルストロード - メドウバンクの創設者兼校長。引退を考えており、後継者の選定を考えている。
- チャドウィック - 数学教師。愛称「チャディ」。メドウバンク創立以来のバルストロードの盟友だが、学校を率いるタイプではないと思われており、事実上後継者候補からは外されている。
- グレイス・スプリンガー - 体育教師。第一の被害者。
- エレノア・ヴァンシッタート - 歴史とドイツ語の教師。バルストロードの後継者最有力候補。
- アイリーン・リッチ - 英語と地理の教師。
- アンジェール・ブランシュ - フランス語教師。
- アン・シャプランド - バルストロードの秘書。
- エルスペス・ジョンスン - メドウバンクの寮母。
- アダム・グッドマン - メドウバンクの庭師。
- ジェニファー・サットクリフ - メドウバンクの女学生。
- ジュリア・アップジョン[3] - メドウバンクの女学生。ジェニファーの友人
- アリ・ユースフ - ラマット王国国王[4]。
- ボブ・ローリンスン - ラマット国王お抱えの飛行士。ユースフ国王の親友でジェニファーの叔父
- シャイスタ - ラマット王国王女。ユースフ国王の従妹で婚約者。メドウバンク校の新入生
- ロビンスン[5] - 謎の人物
- パイクアウェイ[6] - 公安課大佐
- ケルシー - ハースト・セント・サイプリアン警察署の警部
- エルキュール・ポアロ - 私立探偵
映像化[編集]
- ポワロがバルストロード校長の旧友という関係で物語の最初から登場する他、ユースフとローリンスンは王宮での革命勢力との銃撃戦で死亡する、スプリンガーが同僚の弱みを握って脅迫する癖を持つサディスティックな人物である、ヴァンシッタートなど原作の登場人物が数名登場しない等、設定を一部改変している。
脚注[編集]
- ^ 7月14日革命:これにより王制から共和制へ移行した。
- ^ クリスティー文庫28『鳩のなかの猫』(ハヤカワ文庫、2004年)p.467「解説」より
- ^ ジュリアにポアロのことを教えてくれたサマーヘイズ夫人は『マギンティ夫人は死んだ』に登場している。
- ^ 正確には「首長(シェイク)」。作中では「殿下(プリンス)」とも呼ばれる。
- ^ 本作以外のクリスティ作品では、『バートラム・ホテルにて』『フランクフルトへの乗客』『運命の裏木戸』に登場する。
- ^ 本作以外のクリスティ作品では、『フランクフルトへの乗客』『運命の裏木戸』に登場する。
外部リンク[編集]
- 鳩のなかの猫 - Hayakawa Online