検察側の証人
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『検察側の証人』(けんさつがわのしょうにん、原題:The Witness for the Prosecution)とは、アガサ・クリスティ作の短編推理小説(法廷サスペンス小説)および、それを元に書かれた戯曲のタイトルである。1925年に発表された後、1933年に書籍としての刊行がなされ、1953年に戯曲が初演された。
概要[編集]
1933年に刊行された短編集『死の猟犬』に収録された短編小説である(初出は1925年に雑誌『Flynn's Weekly』誌に掲載された物)。
その後、クリスティ本人がこれを戯曲化し、1953年に初演されている。
1957年にはビリー・ワイルダーによって映画化された(詳細は『情婦』を参照)。
1982年には、アメリカMGMにより、ラルフ・リチャードソン、ボー・ブリッジス、デボラ・カー、ドナルド・プレザンス、ウェンディ・ヒラー、ダイアナ・リグ、ピーター・サリス、マイケル・ガフなどの配役でテレビドラマ化されており、日本でも公開時もタイトルは『検察側の証人』のままであった。また、他のクリスティ作品同様に、舞台劇やテレビドラマとして何度か演じられている。
クリスティー文庫(早川書房)では、短編小説としての物は『死の猟犬』に収録されているのみだが、米版では本作を主タイトルとした推理小説の短編集『The Witness for the Prosecution and Other Stories』(1948年刊行)もある。日本語版では創元推理文庫や角川文庫版[1]から、「検察側の証人」を主タイトルにした短編集が刊行されている。
ストーリー[編集]
勅選弁護士ウィルフリッド・ロバーツ卿は、純朴な青年レナード・ボールの弁護をすることになった。彼は、街中で知り合い親しくなった金持ちの未亡人を撲殺した容疑で逮捕され、直接証拠は無いものの、状況証拠やその家の家政婦の証言などは明らかに彼が犯人であると指し示していた。更には被害者が生前レナードが妻を持っていることに気づかず、死んだ場合はレナードに全財産を譲るという内容の遺言書を書いていたため、金銭目的なら動機も十分にあった。
弁護には難題な案件だったものの、ウィルフリッドは事件当時のアリバイを証言できる彼の妻ロメインを証人として彼の無実を勝ち取ろうとする。しかし、事務所にやってきたロメインは明らかにレナードに敵意を持っており、しかも、夫は別にいて、彼との婚姻関係は正式な物ではないと述べる。仕方なく、ウィルフリッドは彼女の証言を得ることを諦める。
裁判が始まり、圧倒的に不利だった被告側だったが、直接証拠が無いということもあり、ウィルフリッドの手腕によって巻き返していく。そんな中、検察側の証人としてロメインが現れ、レナードにとって不利な証言を行う。一転して、レナードの有罪が確定的となる中、ウィルフリッドは、彼女の証言は嘘であると直感する。
ロメインの証言は、レナードを無罪にする証拠に真実味を持たせるための計画の一部であった。レナードが殺人を犯していたことをロメインが話して作品は終わる。
変更[編集]
この作品は、アガサ・クリスティーの作品の中では殺人者が罰せられないで終わる数少ない作品であり、彼女はそのことに不満を感じるようになった。そのため、戯曲化の際には最後の場面にレナードの若い恋人を登場させ、ロメインがレナードを刺し殺す終わり方に変更している。
登場人物[編集]
- ウィルフリッド・ロバーツ
- レナードの担当弁護士。かなりの年であるが、法曹界では老練な弁護士として有名。
- レナード・ボール
- 親しかった未亡人の殺人容疑を受け、ウィルフリッドの事務所を訪れる。
- ロメイン
- レナードの妻。彼のアリバイを証言できる唯一の人物だったが、それはせず、弁護側ではなく検察側の証人として夫に不利な証言をする。
脚注[編集]
- ^ 松本恵子訳、1958年 角川小説新書、その文庫化である1969年2月 角川文庫 [赤]502-8 404-250208-3 は、刊行時、書名、収録作名共にビリー・ワイルダー監督の映画『情婦』と同じだったが、文庫版は後に『検察側の証人<情婦>改題』という書名に変わった。
関連項目[編集]
- 『情婦』