ポアロのクリスマス
ポアロのクリスマス Hercule Poirot's Christmas ![]() | ||
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著者 | アガサ・クリスティー | |
訳者 | 村上啓夫 | |
発行日 |
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発行元 |
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ジャンル | 推理小説 | |
国 |
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前作 | 死との約束 | |
次作 | 殺人は容易だ | |
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『ポアロのクリスマス』(原題:Hercule Poirot's Christmas{アメリカ:Murder for Christmas})は、1938年に発表されたアガサ・クリスティ作のエルキュール・ポアロが登場する推理小説である。本作は、作者の長編作品の中で唯一の密室殺人ものである。
解説[編集]
本作は、作者の最近の作品が洗練されすぎてきて貧血症的になってきたとの指摘と、「もっと血にまみれた、思いきり兇暴な殺人を」という要望に応えて書かれた作品であることが、序文「親愛なるジェームズ」に記されている[注 1]。
霞流一は、本作がチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を二重写しにした作品で、殺された老富豪は強欲で気難しい「スクルージ老人」、老富豪を訪れる3人の来訪者は「3人のゴースト」、舞台となる館の名前が「ゴーストン」、大量の血の赤色と小道具の木釘の茶色がクリスマスカラーであることなどを指摘している[2]。
なお、本作が発表されたとき、評論家のハワード・スプリングは『イヴニング・スタンダード』紙の書評で結末を明かしてしまい、アントニー・バークリーやドロシー・L・セイヤーズなど当時の著名な推理作家を巻き込んだ論争になった。
ストーリー[編集]
クリスマスも間近に迫ったゴーストン館の当主である老富豪シメオン・リーは、クリスマスのイベントとして家族を集めようと決めて、シメオンと同居している長男のアルフレッドとその妻リディアを困惑させる。シメオンは、彼の他の息子たち、国会議員のジョージと画家のデヴィッド、彼らの妻マグダリーンとヒルダはともかくとして、1度も会ったことのない孫娘のピラールや、シメオンの金を着服して行方をくらまし、その後も不始末を起こしては金をせびる放蕩息子のハリーまで呼び戻すというのであった。
こうして再会した一同だが、そこにシメオンの旧友の息子のスティーヴン・ファーも訪れ、邸に滞在することとなった。不仲のアルフレッドとハリー、不遇に死んだ母親を思い父親への長年の恨みを募らせるデヴィッド、妻の浪費と議員活動に金が必要なジョージ、さらに彼らの感情を煽るかのように遺言を書き換えるというシメオンの発言により、邸内には不穏な空気が流れた。
そしてクリスマス・イヴに事件は起こる。シメオンの部屋から聞こえて来た凄まじい騒音と絶叫。鍵のかかっていたドアを破壊して部屋の中に入った一同が目にしたものは、崩れた家具と、その横に倒れるシメオンの血まみれの死体であった。
州の警察部長のジョンスン大佐の家でクリスマスを過ごすために訪れていたエルキュール・ポアロは、地元警察のサグデン警視の捜査に協力することになる。サグデン警視は2人に、シメオンから、時価数千ポンドのダイヤモンドが盗難されたことで相談を受けていたことを告げる。
登場人物[編集]
- シメオン・リー … ゴーストン館の当主
- アルフレッド・リー … シメオンの長男
- リディア・リー … アルフレッドの妻
- ジョージ・リー … アルフレッドの弟、下院議員
- マグダリーン・リー … ジョージの妻
- デヴィッド・リー … アルフレッドの弟、画家
- ヒルダ・リー … デヴィッドの妻
- ハリー・リー … アルフレッドの弟
- ピラール・エストラバドス … シメオンの孫娘
- スティーブン・ファー … シメオンの旧友の息子
- エドワード・トレッシリアン … ゴーストン館の執事
- シドニー・ホーベリー … シメオンの従僕
- サグデン … 警視
- ジョンスン … 大佐。ミドルシャー州の警察部長[注 2]
- エルキュール・ポアロ … 探偵
作品の評価[編集]
辛口の評論に定評があるとされている英国の作家ロバート・バーナードは『欺しの天才 アガサ・クリスティ創作の秘密』(1979年)の中で、傑作として挙げた3作のうちの1作に本作を挙げている[3]。
日本語訳[編集]
本作品は早川書房の日本語翻訳権独占作品である。
出版年 | タイトル | 出版社 | 文庫名等 | 訳者 | 巻末 | ページ数 | ISBNコード | カバーデザイン | 備考 |
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1957年6月30日 | ポアロのクリスマス | 早川書房 | 世界探偵小説全集330 | 村上啓夫 | 都筑道夫 | 288 | 絶版 | ||
1976年11月30日 | ポアロのクリスマス | 早川書房 | ハヤカワ・ミステリ文庫 HM1-15 | 村上啓夫 | 解説 浅田寛厚 | 366 | ISBN 4-15-070015-X | 真鍋博 | 絶版 |
2003年11月11日 | ポアロのクリスマス | 早川書房 | ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 17 | 村上啓夫 | 解説 霞流一 | 468 | ISBN 4-15-130017-1 | Hayakawa Design |
児童書
出版年 | タイトル | 出版社 | 文庫名等 | 訳者 | 巻末 | ページ数 | ISBNコード | カバーデザイン | 備考 |
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2022年 10月18日 |
名探偵ポアロ ポアロのクリスマス |
早川書房 | ハヤカワ・ジュニア・ミステリ | 川副智子 | 解説 大矢博子 | 440 | ISBN 978-4-15-210148-8 | イラスト:二階堂 彩 イラスト編集:サイドランチ |
翻案作品[編集]
テレビドラマ
ラジオドラマ
- 1986年、BBC Radio 4で放送されている。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
外部リンク[編集]
- ポアロのクリスマス - Hayakawa Online