ポケットにライ麦を
『ポケットにライ麦を』(ポケットにライむぎを、原題:A Pocket Full of Rye)は、イギリスの女流作家アガサ・クリスティの1953年に発表された推理小説。 マープルシリーズの長編第6作目にあたり、クリスティの代表作である『そして誰もいなくなった』と同様に、マザー・グースの童謡の歌詞どおりに殺人が起きるいわゆる「見立て殺人」をテーマにした作品[1][2]。
あらすじ[編集]
投資信託会社の社長、レックス・フォテスキューが毒殺された。その捜査にとりかかったばかりのフォテスキュー家でさらにフォテスキュー夫人も毒殺され、小間使いのグラディスが洗濯バサミで鼻を挟まれた絞殺死体として発見された。グラディスはミス・マープルがかつて行儀作法を教えた娘であった。かくしてマープルは犯人に言い知れぬ憤激を覚えながら現場に乗り込み、ニール警部にマザー・グースの童謡を口ずさみ、事件が童謡の歌詞どおりに起きていることを示唆する。
登場人物[編集]
- ジェーン・マープル
- 探偵好きな独身の老婦人。
- レックス・フォテスキュー
- 投資信託会社社長。
- アディール・フォテスキュー
- レックスの後妻。
- パーシヴァル(ヴァル)・フォテスキュー
- レックスの長男。
- ジェニファ・フォテスキュー
- パーシヴァルの妻。
- ランスロット(ランス)・フォテスキュー
- レックスの次男。
- パトリシア(パット)・フォテスキュー
- ランスロットの妻。
- エレイヌ・フォテスキュー
- レックスの娘。
- エフィ・ラムズボトム
- レックスの義姉。
- アイリーン・グローブナー
- レックスの秘書。
- ヴィヴィアン・デュボア
- アディールの男友達。
- メアリー・ダブ
- フォテスキュー家の家政婦。
- クランプ
- フォテスキュー家の執事
- クランプ夫人
- クランプの妻。フォテスキュー家の料理人。
- グラディス・マーティン
- フォテスキュー家の小間使い。
- ニール
- 警部[3]。
補足[編集]
- 本作に用いられている「6ペンスの唄」は、クリスティの作品では他に短編の「六ペンスのうた」(短編集『リスタデール卿の謎』に収録)と「二十四羽の黒つぐみ」(短編集『クリスマス・プディングの冒険』に収録)にも用いられている。
- 「6ペンスの唄」は、クリスティの作品以外でもエラリー・クイーン著『フランス白粉の謎』の章題や、アラン・ブラッドリー著『パイは小さな秘密を運ぶ』の中でも用いられている[4][5]。
脚注[編集]
- ^ 原題 "A Pocket Full of Rye" は、マザー・グースの童謡 "Sing a Song of Sixpence"(6ペンスの唄)の第2節の歌詞 "A Pocket Full of Rye" を引用したものである。
- ^ クリスティにはマザー・グースが引用された作品が『愛国殺人』や『五匹の子豚』等多数あるが、童謡の歌詞どおりに殺人が起きる見立て殺人ものは、『そして誰もいなくなった』以外では本作と『三匹の盲目のねずみ』のみである。
- ^ ポアロものの『第三の女』に同名の主任警部が登場する。ただし、同一人物であるかどうかは不明。
- ^ 『フランス白粉の謎』では、1「女王さまがたは応接間にいた」、2「王さまがたは勘定部屋にいた」と、各章題に用いられている。
- ^ 『パイは小さな秘密を運ぶ』の中で、主人公の少女が「20と4羽のクロツグミ、パイに包まれ焼かれちゃう」と、童謡の一部を引用している。なお、同作品では他にもマザー・グースの引用として、コックロビンの童謡への言及やハンプティ・ダンプティに例えられた人物の登場などが見られる。