スタイルズ荘の怪事件
スタイルズ荘の怪事件 The Mysterious Affair at Styles | ||
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著者 | アガサ・クリスティー | |
訳者 | 矢沢聖子ほか | |
発行日 |
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発行元 |
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ジャンル | 推理小説 | |
国 |
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言語 | 英語 | |
形態 | ハードカバー | |
ページ数 | 296ページ(原著初版、ハードカバー) | |
次作 | 秘密機関 | |
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『スタイルズ荘の怪事件』(スタイルズそうのかいじけん、原題:The Mysterious Affair at Styles)は、1920年に発表されたアガサ・クリスティの長編推理小説である。著者の商業デビュー作であり、エルキュール・ポアロシリーズの長編第1作かつ初登場作品にあたる。
発表は1920年であるが、執筆は1916年であり、またアメリカでの刊行年である。イギリス本国での出版は翌1921年である。日本語初訳は『スタイルズの怪事件』(日本公論社刊 東福寺武訳 1937年)。
概要[編集]
クリスティは1916年に本作を書き上げ、複数の出版社へ原稿を送ったが採用されなかった。彼女自身、応募の事実を忘れた頃にボドリー・ヘッド社のジョン・レーンに見出され、最後の章を書き直して1920年に出版された[1]。当初は、新人作家としてはまずまずの2千部程度売れただけであったが、その後着実に評価を挙げてミステリの古典として認められるようになった[2]。本作は薬剤師の助手時代の経験が生かされており、後にクリスティは読者の感想の中で最も嬉しいと感じたのは調剤学の専門誌から薬物に関する知識を褒められたことだったと述べている[1]。
本作は、風変わりでユーモラスなベルギー人探偵エルキュール・ポアロの初登場作品であり、同シリーズのレギュラーであるアーサー・ヘイスティングズやジャップ主任警部も初登場している。ヘイスティングズがポアロの活躍を記述したという作品形式は、シャーロック・ホームズシリーズに見られる当時の主流であった推理小説の形式である。
なお、本作品の舞台であるスタイルズ荘は、同シリーズの完結作である『カーテン』の舞台としても使われている。
あらすじ[編集]
第一次世界大戦中に負傷しイギリスに帰還したヘイスティングズは、旧友ジョンの招きでエセックスにあるスタイルズ荘を訪れる。ある夜、20歳年下の男と再婚したジョンの義母エミリーは突然発作を起こし、一時は持ち直したが再び発作に襲われた彼女は息絶えてしまう。エミリーの死に疑問を抱いたヘイスティングズは、再会した旧友エルキュール・ポアロに事件の捜査を依頼する。
登場人物[編集]
- アーサー・ヘイスティングズ - 物語の語り手。
- エルキュール・ポアロ - 私立探偵。
- ジェームズ・ジャップ - スコットランドヤードの警部。
- エミリー・イングルソープ - スタイルズ荘の女主人。
- アルフレッド・イングルソープ - エミリーの夫。妻との仲は良好。
- ジョン・カヴェンディッシュ - エミリーの義理の息子。ヘイスティングズの旧友。
- メアリー・カヴェンディッシュ - ジョンの妻。夫とミセス・レイクスの関係を疑っている。
- ロレンス・カヴェンディッシュ - ジョンの弟。優れた医師。
- エヴリン・ハワード - エミリーの友人。彼女のハウス・コンパニオンを務めており、家族同然の扱いを受けている。
- シンシア・マードック - エミリーの旧友の娘で、スタイルズ荘に住まわせてもらっている。薬剤師。
- バウアスタイン - 毒理学者。
- ドーカス - メイド頭。
- アーニー - メイド。
- マニング - 庭師。
- ベイリー - 使用人。
- ウィルキンズ - エミリーの主治医。毒物の研究家。
- アルバート・メース - 薬局の店員。
- ミセス・レイクス - 近所の農場の未亡人。メアリーからはジョンと不倫していると疑われている。
日本語訳版[編集]
- 日本語訳題は『スタイルズ荘の怪事件』のほかに、『スタイルズの怪事件』や『スタイルズ荘の怪死事件』など、微妙に異なるタイトルも存在する。
- 1952年10月『別冊宝石』23号「世界探偵小説全集1 アガサ・クリスティ篇」 に「ABC殺人事件」(伴大矩=訳)、本作「スタイルズ事件」(宇野利泰、桂英二=訳)、「そして誰れもいなくなつた」(清水俊二=訳)を収録。他に江戸川乱歩の序文「アガサ・クリスティ」、表紙・目次は水田力。
出版年月 | タイトル | 出版社 | 文庫名 | 訳者 | 巻末 | ページ数 | ISBNコード | カバーデザイン | 備考 |
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1937年 | スタイルズの怪事件 | 日本公論社 | 東福寺武 | 解説 アガサ・クリステイについて 東福寺武 | 350 | ||||
1955年12月 | スタイルズ荘の怪事件 | 大日本雄辨會講談社 | クリスチー探偵小説集:ポワロ探偵シリーズ2 | 松本恵子 | 224 | ||||
1957年 | スタイルズ荘の怪事件 | 早川書房 | 世界探偵小説全集 364 | 田村隆一 | 解説 都筑道夫 輝かしき処女作 | 216 | 勝呂忠 | ||
1959年 | スタイルズ荘の怪事件 | 新潮社 | 新潮文庫 赤135G[3] | 能島武文 | 訳者あとがき | 321 | |||
1961年 | スタイルズの怪事件 | 東京創元社 | 世界名作推理小説大系 別巻4 | 松原正 | 中島河太郎 | 「三幕の悲劇」(西脇順三郎=訳)を同時収録 | |||
1963年 | スタイルズの怪事件 | 東京創元社 | 創元推理文庫 | 松原正 | 訳者あとがき | 287 | |||
1971年 | スタイルズ荘の怪事件 | 角川書店 | 角川文庫 赤502-9 | 能島武文 | 342 | 上原徹 | [4] | ||
1975年 | スタイルズ荘の怪事件 | 新潮社 | 新潮文庫 赤135G,ク-3-6 | 能島武文 | 訳者あとがき | 321 | ISBN 4102135073 | 鈴木邦治、野中昇 | 改版 |
1975年 | スタイルズ荘の怪事件 | 講談社 | 講談社文庫 | 久万嘉寿恵 | 260 | ||||
1976年 | スタイルズの怪事件 | 東京創元社 | 創元推理文庫 | 田中西二郎 | 316 | ||||
1982年 | スタイルズ荘の怪事件 | 早川書房 | ハヤカワ・ミステリ文庫 HM1-67 | 田村隆一 | 解説 田村隆一 この緑と青の薬壜の中に | 296 | ISBN 4-15-070067-2 | 真鍋博 | |
1987年5月 | エルキュル・ポアロ[5] | 講談社 | 久万嘉寿恵 | 解説:「ポアロとクリスティーの横顔」数藤康雄 「アガサ・クリスティー著作リスト」各務三郎 |
493 | ISBN 4-06-203404-2 | |||
1995年 | スタイルズ荘の怪事件 | 新潮社 | 新潮文庫 ク-3-18 | 真野明裕 | 解説 各務三郎 | 312 | ISBN 4102135197 | 鈴木邦治、野中昇 | |
2003年 | スタイルズ荘の怪事件 | 早川書房 | ハヤカワ・クリスティー文庫 1 | 矢沢聖子 | 解説 数藤康雄[6] | 361 | ISBN 4-15-130001-5 | Hayakawa Design | |
2004年 | スタイルズの怪事件 新版 | 東京創元社 | 創元推理文庫 105-23 | 田中西二郎 | 訳者あとがき | 351 | ISBN 4-488-10544-0 |
児童書
出版年 | タイトル | 出版社 | 文庫名 | 訳者 | 巻末 | ページ数 | ISBNコード | カバーデザイン | 備考 |
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1990年 | スタイルズ荘殺人事件 | ポプラ社 | ポプラ社文庫. 怪奇・推理シリーズ | 室田陽子 | 222 | 村井香葉 | |||
2003年 | スタイルズ荘の怪死事件 | 講談社 | 青い鳥文庫 | 花上かつみ | 373 | ISBN 4-06-148608-X | 高松啓二 |
テレビドラマ[編集]
ラジオドラマ[編集]
- 2005年、BBC Radio 4で放送されている。
脚注[編集]
- ^ a b 「自伝」第五部V
- ^ 『アガサ・クリスティー百科事典』 数藤康雄・編(ハヤカワ文庫)より、作品事典 長編「1 スタイルズ荘の怪事件」を参照。
- ^ 「赤」は「赤帯」=「海外文学」。
- ^ 現在、グーテンベルク21が電子書籍化している。
- ^ 数藤康雄=編、従来講談社文庫で発行されていたものの合本。「スタイルズ荘の怪事件」、「ゴルフ場殺人事件」、「アクロイド殺害事件」、「青列車の謎」、「オリエント急行殺人事件」、「ABC殺人事件」(アクロイドのみ原百代、それ以外は久万嘉寿恵の翻訳)を収録。
- ^ (序文)マシュー・プリチャード 『スタイルズ荘の怪事件』によせて
外部リンク[編集]
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