領土問題

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領土問題(りょうど もんだい)とは、ある地域が、特に陸地である領土が、どの国家領域に属するかをめぐって、国家間での争いが起きることである。

概説[編集]

国境の線引きに関するわずかな見解の相違や小さな無人島の帰属といったレベルから、主権国家を自称している地域全体を別の国家が自国領土と主張する場合(台湾問題など)まである。

領土問題を抱える国家同士の関係も様々である。係争地域の実効支配をめぐる深刻な対立・衝突がなく、友好的に外交貿易国民の往来が続く場合もあれば(カナダデンマークグリーンランドの間にあるハンス島など)、植民地独立運動を含めて戦争テロのきっかけになることも多い(ノモンハン事件印パ戦争など)。これら領土問題を戦争に発展させないために、国連国際法によって、一国が他国の領土を武力によって占有することを禁じている。実際には、無人の係争地を占拠したり、係争地にいる 他国の軍隊・警備隊や住民の抵抗を実力で排除して軍事占領したりする例は多い。

よく領土問題の原因になるのが、その土地にある石油などの天然資源や農地、重要建造物、国境付近にあるとその流路変更である。また離島はそれ自体に経済的価値がほとんどなくても、本土から離れた軍事拠点として有用だったり、周囲に広大な領海排他的経済水域(EEZ)、大陸棚が付属する可能性が高かったりするため、係争対象になりやすい。各国・民族ナショナリズムが高まった近現代では、人が住むには厳しい絶海の孤島や砂漠や高山であっても領土問題の対象となる(南沙諸島など)。

また、その土地を最初に占有した国家が領有を明確にしていなかったり、付近に他の国家がありながらもその国家の了解を得ていなかったり、居住民族が移動を繰り返して複数の民族が混住していたりするといった歴史的経緯も、領土問題の原因になりやすい。

各国政府は、係争地の実効支配を確実にしたり、その領有や返還を実現したりするため、国内外世論への訴えかけ、法的な理論武装、外交交渉や国際司法裁判所への付託、戦争など様々な手段をとる。領土問題について、個人が自国政府と異なる見解を示した場合、世論の批判を受けるだけでなくロシア連邦のように法的な罪に問われる国もある(2014年3月の刑法改正による)[1]

領土の権原[編集]

領土権を主張する根拠(権原)として、歴史的には以下のようなものがある

がある[2]

国際領土紛争では、「国家権能の平穏かつ継続した表示[3]」という権原を基準に判定される場合が多い。

消極的領土問題[編集]

領土問題、領土紛争となるには2つ以上の国家間で領域に対する領土権の主張(要求)が必要であるが、一方で国際関係上、当該領域に対する領土権は主張しないが、国家承認の文脈において「その領域の領有は認めない」とする立場を表明する事がある。

国際司法裁判所への付託[編集]

領土問題は当事国同士での外交で解決されるのが望ましいが、当事国間で解決することが困難な場合には、国際司法裁判所 (ICJ) への付託ができる。もっとも国際司法裁判所への付託は、紛争当事国の一方が拒否すれば審判を行うことができず、つまり強制管轄権はない[4]。ただし、双方の当事国が義務的管轄権受託宣言を事前に行っている場合には例外的に付託される[5]

しかしながら、当事国間で解決することが困難な場合には、ICJは客観的に判定することを推奨している。

例えば、

などの判決が客観的判定の推奨を確認されている[6]

国際判例による規則[編集]

塚本孝によれば、これまでのICJ国際判例から次の様な規則が得られる[7]

  1. 中世の事件に依拠した間接的な推定でなく、対象となる土地に直接関係のある証拠が優位。中世の権原は現代的な他の権原に置き換えられるべき。
  2. 徴税・課税、法令の適用、刑事裁判、登記、税関設置、人口調査、亀・亀卵採捕の規制、鳥の保護区設定、入域管理、難破事件の捜査などが、国家権能の表示・実効的占有の証拠となる。
  3. 紛争が発生した後の行為は実効的占有の証拠とならない。
  4. 住民による行為は国家の主権者としての行為ではない。
  5. 条約上の根拠がある場合にはそれが実効的占有に基づく主張に優越する。
  6. 国は、相手国に向かって行った発言と異なる主張はできない。
  7. 相手国の領有宣言行為に適時に抗議しないと領有権を認めたことになる。
  8. 歴史的、原初的権原があっても相手国が行政権行使を重ね、相手国の主権者としての行動に適時に抗議しなければ主権が移ることがある。
  9. 発見は未完の権原である(実効的占有が行われなければ領有権の根拠にならない)。
  10. 地理的近接性は領有根拠にならない。領海内の無人島が付属とされることはある。
  11. 地図は国際法上独自の法的効力を与えられることはない。公文書付属地図が法的効力を持つ場合や信頼に足る他の証拠が不足するときに一定の証拠価値を持つ場合はある。

世界各地の領土問題[編集]

東アジア[編集]

東アジアの領土問題
大韓帝国時代の地誌教科書『大韓地誌』
竹島(独島)は日本の領土と把握されている
  • 北方領土(日本・ロシア):千島列島(クリル諸島)のうち、北海道に隣接する「国後島択捉島色丹島歯舞群島」(南クリル及び小クリル)の主要四島。実効支配しているのはロシア側であるが、日本ロシア連邦の間で、今なお領有権の主張が続いている。明治期の蝦夷開拓以来、アイヌ民族と日本人が共に暮らしていた地であった。
    • 第二次世界大戦末期の1945年、ソビエト社会主義共和国連邦によって武力介入、占領した。その後、1992年ソビエト崩壊により同地域はロシアに引き継がれたが、現在に至るまで同地域の実効支配は続いている。日本は、北方四島は1951年に締結したサンフランシスコ平和条約にて「放棄した地域」に含まれないとして、日本側の領有権、及びロシア側の不法占拠を主張。現在に至るまで返還要求は継続している[8]。なお、ロシア側によれば「南クリル(北方四島)は第二次世界大戦の結果ソビエト連邦が獲得した正当な領土で、ロシア連邦サハリン州の不可分の領土」と主張している[9]
  • 南樺太:第二次大戦の戦後処理として、1951年に連合国側と締結したサンフランシスコ平和条約(第2条C項)により、日本政府は千島列島[10]、南樺太及びこれに近接する諸島の権利・権原及び請求権を放棄する事を認めたが、1945年以降北方四島を含む同地域を実効支配していたソビエト連邦は同条約に調印しなかった。また、中華人民共和国はサンフランシスコ講和会議に招聘されていない。同条約に基づき日本政府は、「国際法上、南樺太及び千島列島(得撫島以北の北千島)の最終的な帰属は未定である」、「その後の最終的な帰属は将来の国際的解決手段に委ねられる」という立場を一貫して取っている。アメリカ合衆国なども、ソ連および継承するロシアによる南樺太の領有は認めていない立場[11]であるが、北方四島ほどには明確な国家としての態度は取っていない。ロシアが実効支配し、他に南樺太に対する領土権の主張をする国家は存在せず、帰属問題(承認問題)だけが未解決という状態が継続している[12][疑問点]
  • 沖ノ鳥島(日本・東京都):日本が島を領有し、その島を基点に排他的経済水域を設定しているが、大韓民国中華人民共和国は、日本の領有権について異議は唱えていないが、沖ノ鳥島は島ではなく「岩」として、海洋法に関する国際連合条約の第121条第3項(人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない)を根拠に、沖ノ鳥島のEEZ主張は認められないと主張している。
  • 竹島(日本・島根県):日本海の南西部、北緯37度15分、東経131度52分に位置する島。日本大韓民国朝鮮民主主義人民共和国がそれぞれ領有権を主張している。「竹島」は日本における呼称で、韓国・北朝鮮では「独島(獨島、トクト、독도、Dokdo)」、第三国では「リアンクール岩礁(Liancourt Rocks)」と呼ばれている。現在は韓国が、「軍国主義時代の日本が強制的に編入した島」であったとの主張の下、領有権を主張し、実効支配している。日本側は過去に何度か国際司法裁判所 (ICJ) への付託を提案しているが、韓国側は「独島に領土問題は存在しない」との見解により、その都度これを拒否している。なお、韓国が日本の保護国となる以前の1889年発行の大韓帝国の教科書には「竹島(独島)は韓国領でない」記述が記され、韓国側の主張には根拠が薄いことが指摘されている[13]こちらも参照
  • 尖閣諸島(日本・沖縄県):中華人民共和国、中華民国(台湾)が領有権を主張しているが、日本国政府は尖閣諸島に領有権問題は存在しないとの立場である。
    • 1969年 - 1970年に、国際連合が「尖閣諸島一帯には石油、レアメタルなどが埋蔵されている」などの石油資源がある文章を発表のち、「ふたつの中国」が領有権を主張し始めている。
    • 日本では尖閣諸島(魚釣島、大正島、南小島、北小島)と呼んでいるが、中華人民共和国では釣魚島、中華民国は釣魚台と呼んでいる。
  • 北方限界線(NLL)(韓国):韓国と北朝鮮の朝鮮半島西側海上における軍事境界線。1953年の朝鮮戦争休戦に際し、陸上の38度線(軍事境界線)と共に西側海上に設けられた休戦ライン。これは休戦協定において韓国側は同意したものの、北朝鮮側は国連とアメリカが一方的に決めたものだとして、いっさい認めなかった。この海上には延坪島をはじめとする多くの島嶼を韓国側が実効支配している。1999年には北朝鮮側が一方的に自らの主張する軍事境界線を設定し、これを根拠として韓国側と海上において軍事衝突を繰り返した。2010年には延坪島で砲撃事件があり多数の死傷者や難民を出した。
  • 白頭山(北朝鮮):大韓民国と中華人民共和国が領有権を主張している(大韓民国は朝鮮半島全土の領有を主張しているため、同国の主張では飛び地とはならない)。中国側は「長白山」と呼んでいる。
  • 蘇岩礁(韓国・中国):暗礁であるが、韓国中国間でEEZの確定していない海域の暗礁へ大韓民国が海洋調査施設を建設している。
  • 可居礁:東シナ海にある暗礁。韓国政府は可居礁と命名し、中韓二国間で黄海の排他的経済水域を巡る紛争の1つ。
  • 丁岩礁:東シナ海にある暗礁。1999年から2002年にかけて中華人民共和国が調査し発見。韓国海洋水産部は波浪礁と命名し領有を主張。
  • 間島(中国):旧満州国で北朝鮮との国境の町。歴史問題(高句麗史)を巡って大韓民国が領有権を主張している。

東南アジア[編集]

中華人民共和国が主張している「九段線」(緑色)

南アジア[編集]

北部が中国の領土にされる前のブータン。北部が北側に出ている。2006年より前の国境
北部が中国の領土にされた後のブータン。2006年の新国境線
  • ブータンと中華人民共和国との領土問題:主張する国境線に食い違いが大きく、2010年時点において交渉中[14]。2011年時点で、ブータンと中華人民共和国とは国交が樹立していない[15]。ブータンの面積は、従来は約46500km2だったが、2006年に発表した新国境線で北部の多くが中華人民共和国領とされたため、約38400km2に減少した[16]
  • 中国・インド国境紛争:下記をはじめとした諸領土を巡って、中華人民共和国とインドが紛争を起こしている。
  • カシミール:インドとパキスタン、中華人民共和国が領有権を主張。特にインドとパキスタンは激しく対立し、武力衝突に発展したこともある(印パ戦争)。

中央・西アジア[編集]

東ヨーロッパ[編集]

南ヨーロッパ[編集]

南アメリカ[編集]

アフリカ[編集]

北アメリカ[編集]

オセアニア[編集]

既に解決された領土問題[編集]

ヨーロッパ[編集]

南アメリカ[編集]

アジア[編集]

アフリカ[編集]

国際司法により解決した領土紛争[編集]

特設仲裁裁判所[編集]

常設仲裁裁判所[編集]

常設国際司法裁判所[編集]

  • 「東部グリーンランド事件」(デンマーク対ノルウェー1933年)

国際司法裁判所[編集]

  • 「マンキエ・エクレオ諸島事件」(イギリス対フランス、判決1953年)
  • 「国境地区の主権に関する事件」(ベルギー対オランダ1959年)
  • プレア・ビヘア寺院事件」(カンボジア対タイ1962年)
  • 「国境紛争事件」(ブルキナファソ対マリ1986年)
  • 「陸地、島および海の境界紛争に関する事件」(エルサルバドル対ホンジュラス1992年)
  • 「領土紛争事件」(リビア対チャド1994年)
  • 「カシキリ/セドゥドゥ島事件」(ボツワナ対ナミビア1999年)
  • 「カタールとバーレーンとの間の海洋境界画定及び領土問題に関する事件」(2001年)
  • 「カメルーン・ナイジェリア間の領土・海洋境界画定事件」(2002年)
  • 「リギタン島およびシパダン島の主権に関する事件」(インドネシア対マレーシア2002年)
  • 「国境紛争事件」(ベニン対ニジェール2005年)
  • 「ニカラグアとホンジュラスの間のカリブ海における領土及び海洋紛争」(2007年)
  • 「ペドラブランカ/プラウバトゥプテ、中央岩及び南暗礁に対する主権」(マレーシア対シンガポール2008年)
  • 「黒海海洋境界画定事件」(ルーマニア対ウクライナ2009年)

凍結している領土問題[編集]

  • 南極大陸南極における領有権主張の一覧を参照。 フランス、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、イギリス、ノルウェー、ニュージーランド、ブラジル、ドイツ等が南極大陸における領有権主張(特に英仏爾3国は海外領土の属領として領有主張)を行っていたが、南極条約によって領有権は凍結された。ただし領有権自体を否定したわけではないので、将来的に領土問題が再燃する可能性はある。また、オーストラリアやアルゼンチンのように今も南極における領土主張に意欲を見せている国もある。

「県境」の領土問題[編集]

日本国内において、県境が定まらずもめることも、「領土問題」ということがある。蔵王連峰蔵王県境裁判)や中海など[19]

富士山の山頂は静岡県山梨県が所有を争った末、「県境を定めない」と、敢えて未確定としている[20][21]

脚注[編集]

  1. ^ 【プーチン支配】「露のクリミア」誇示/一体化へ陸空路を整備「領土」否定発言で服役『読売新聞』朝刊2018年2月25日(国際面)。
  2. ^ 塚本 孝 『国際法から見た竹島問題』(PDF)、2008年10月26日、pp. 3-9.。2008年11月9日閲覧。
  3. ^ title of peaceful and continuous display of State authority
  4. ^ 塚本 孝 『国際法から見た竹島問題』(PDF)、2008年10月26日、pp. 3-9.。2008年11月9日閲覧。
  5. ^ 日本に対しオーストラリアが提訴した南極海における捕鯨事件など
  6. ^ 高野雄一編『判例研究 国際司法裁判所』東京大学出版会 1965、横田喜三郎『国際判例研究 第一』有斐閣 1933
  7. ^ 塚本 孝 『国際法から見た竹島問題』(PDF)、2008年10月26日、pp. 3-9.。2008年11月9日閲覧。
  8. ^ 外務省:パンフレット「われらの北方領土2012年版」
  9. ^ ロシア側の主張:日本語パンフレット「クリル列島(千島列島)はロシアの領土である」 国後島ユジノクリリスク郷土博物館発行。
  10. ^ 日本の立場は、放棄対象は「得撫島以北の北千島」に限るとしている。
  11. ^ 1952年(昭和27年)3月20日アメリカ合衆国上院
  12. ^ 外務省:「北方領土に関するQ&A(関連質問)」
  13. ^ 『週刊ポスト』2012年10月26日号
  14. ^ Ugyen Penjore (2010年1月14日). “Joint field survey next on agenda” (英語). Kuensel Newspaper. 2011年11月21日閲覧。
  15. ^ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/kankei.html 最近のブータン情勢と日本・ブータン関係 日本外務省
  16. ^ 河添恵子「中国に侵蝕されるブータン王国」、『月刊WiLL』、ワック・マガジンズ2010年11月 [要ページ番号]
  17. ^ 詳細はイギリス領インド洋地域を参照。
  18. ^ Indo-Pakistan international border₋[1]
  19. ^ 「日本全国『県境』の謎」ISBN 978-4-408-10712-7
  20. ^ なぜ富士山頂に境界がないのか? - 富士山NET(山梨日日新聞社
  21. ^ 富士山頂の住所は静岡県? 山梨県知事が国土地理院に「誤解与える」と是正求める - J-CASTニュース(2014/6/4)

文献情報[編集]

関連項目[編集]